ウマ娘とかいう種族に転生した話   作:史成 雷太

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前回、レースの出走条件は獲得賞金ではなくて収得賞金では? というご指摘を受けました。
調べたらその通りでした!
すみません!

ですが、書き直しに時間がかかりそうなので、このままになってしまいそうです。
書き直しができるようならしたいと思いますが、未定ですので『この世界では獲得賞金が出走条件なんだなぁ』と思ってください。たぶんこの先もこの話は出てきますので、ご容赦ください。

指摘してくださった方ありがとうございました。


The brightest star

良家で過ごす午後。

 

今、シンボリ家は色々と忙しいことになっている。

ルドルフが轢かれかけたということで、URAに生徒の安全をしっかり管理していないことへの抗議をしているようで、表沙汰にはならないようだが関係者たちは誰が首を切られるのかわからない状況とのこと。

それと、申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが、僕のリハビリには必要なものがあるようで、手配をしてくれているようだ。

ありがとうございます。

 

そんな中、僕はできることが少ないので、お嬢様になった気分で優雅に本を読んでいた。まあ、ガチガチの論文をまとめたトレーニング本なのだが。

やはり、筋肉ですわ。

筋肉がすべてを解決しますわ。

おーっほっほっほ。

そうしていると、バンと障子が蹴り開けられた。

 

「よお、ルドルフ、来たぜ」

「え!? 誰!?」

「……お前こそ誰だ」

「……ふん、俺を知らないとは、情報の重要性を知らん阿呆のようだな?」

「へえ、言うじゃねえか。だがお生憎様、私は外に目を向けてるんだ。ここでどんだけ偉かろうが興味ないぜ」

「俺は偉いわけじゃねえが……強いぞ?」

 

ウマ娘だったから咄嗟に悪役ロールをする。

この方向性だけは変えるつもりはないため、とりあえず。

 

そのウマ娘は鹿毛を長くしており、挑発的な表情をしている。しかもとんでもなくイケメンなウマ娘だ。

おそらく、ルドルフと同じ世代か、一つ下くらいだ。

 

そのウマ娘は僕のベッドに片膝を立てて、僕の顔の横に手をつく。

完全に見下ろす恰好だ。

僕も負けじと不敵に目を細めて正面からその顔を見やる。

 

「そうはいうが、お前、怪我しているようだな? ん? 私が介抱してやろうか?」

「怪我が走らない理由にならないんでな。介抱か……頼もうかなっと!」

 

僕はその襟首をつかんで、強引に体勢を崩して、逆転する。

 

「俺のベッド役ならな」

「てめえ……」

 

にらみ合う。

その時に、先ほど開かれた障子からひょっこりとルドルフが顔を出した。

 

「ラック、リンゴを剥いたぞ、って何やってるんだお前たちは!」

「「こいつが」」

「言い訳無用! とりあえず、シリウスはベッドから降りろ! ほらラックも放せ!」

 

ルドルフはぷんぷんと怒る。

 

「何をやっているんだ。全く。絶対安静だと言われただろう」

「ふん、あのくらい、本のページを捲るのと同じだ」

「シリウスもだ。怪我人になにをやっているんだ」

「私を舐めたやつは誰であれ許さないと決めているんだ」

「というか、二人はお互いのことを知っているのか?」

「「いや、まったく」」

「……そうだろうな」

 

ルドルフはそのウマ娘のことを紹介してくれる。

 

「シリウスシンボリだ。そうだな、私の幼馴染だ。年齢は一つ下だな。よくうちの施設を使いに来る」

 

次に僕の紹介をする。

 

「こっちはブラックトレイターだ。今は怪我を治すためにうちに来ている。今は……ちょうどクラシック級になったくらいだ」

「へえ、トレセン学園の生徒か。どのくらい強いんだ?」

「三戦三勝、そのうち一つはG1だ。それにトゥインクルシリーズではないが、ミスターシービーに2回、マルゼンスキーに1回勝っている」

 

そう言われるとクソつええな僕。

 

「はあ? こいつが!? あの二人に!?」

 

うん、シンザン記念に関してはほぼズルだけど。

 

「……シリウスは少しはメディアを確認した方がいいぞ。強い弱いはともかくブラックトレイターは有名だ」

「へえ」

 

シリウスシンボリは言われて自分のスマホで僕を検索しているようだった。

そして、目を細める。

 

「おい、なんでこんなやつ面倒見てるんだよ、捨て置けよ」

「……ブラックトレイターは私を庇って怪我を負ったんだ」

「おい、ルドルフ!」

 

言わないでよ!

演技しているんだから察してよ!

 

「ラック、私は君には共感を抱いているが、そのやり方は好ましいとは思ってないからな? というか、シリウスは結構な頻度でうちに来るから毎回喧嘩されるのも面倒だ」

「う……」

 

そう言われると、お世話になっている身分だから弱い。

 

「どういうことだ?」

「ラック――ブラックトレイターはヒールとしての演技をしているんだ。そうすることでトゥインクルシリーズを盛り上げようとしている。ネットにある情報はあえてそうしているんだ」

「ほー、なんだ、面白いことしてるじゃねえか。強くなかったらただのバカで終わるけどな。私には才能があるようには見えないんだが」

 

なんで天才方はそうやってすぐに見抜くの?

 

「……シリウス、ラックのパワーはお前の目標にも為になると思うぞ?」

「そうは思えないけどなぁ?」

「じゃあ、見てもらおう」

 

そう言ってルドルフは僕を脱がしにかかる。

いやん、エッチ。

僕は怪我をしたとはいえ、バッキバキの筋肉は健在だ。怪我をしたらすぐに消え失せるものでもない。

シリウスシンボリはびっくりしてた。

なんか、そのリアクション久しぶりだ。

パワーだけなら輓バにも負けません!

 

「確かに、そのパワーなら洋芝もいけそうだ」

「だろう? 私もラックを見習いたいくらいだ。体の頑丈さは難しそうだがな」

「……欲しいな」

 

ぽつりとシリウスシンボリがつぶやく。

そして、僕の頬に手を添える。

 

「私のことはシリウスと呼んでほしい。なあ、私のところに来ないか? 外に行こう。怪我を治したら、一緒に。お前が欲しい」

 

顔が良すぎて目がつぶれそう。

シービーは無自覚なカリスマ性を振りかざすタイプで、ルドルフはそうあれとカリスマ性を発揮するタイプだ。

しかし、このシリウスシンボリ、自分という絶対のためにカリスマ性を使うタイプだ。自覚がある分性質悪い!

 

「ダメだぞ、シリウス。ダメだ」

「ん? 皇帝様のものじゃないだろう?」

「そうだが、君のものにもならない」

「それはラックが決めることだろう?」

「ラックはトゥインクルシリーズに必要な人材だ」

「いいじゃないか、皇帝様はたくさん持っているんだから、譲ってくれても」

「ダメだ。シリウス。ダメ」

「ラック? どうなんだ?」

 

いつの間にかラックと呼ばれている。

距離の詰め方えぐすぎる。

 

「えぇ、どうしよう。展開次第かな? 予定はないけど、海外レースが盛り上げる要因になるなら行くって感じかな」

 

もし、凱旋門賞を取れた! ってなったら盛り上がるだろうしね。

 

「ま、私はまだ2年あるからな。それまでに考えておいてほしい」

「そうするよ」

「……しかし」

「なに?」

「そっちが素か? 雰囲気違いすぎるぞ」

「私も、まだそのギャップには慣れない」

「なんだ、まだ素を知ってすぐなのか?」

「まあな。とても自分を嫌っていた犬が急に懐いた感じがする」

「犬!?」

 

僕ってルドルフには犬かと思われてたのか!?

どこが?

すぐ噛みつくところ?

 

「じゃあ、私は暇があれば子犬ちゃんを口説きに来ようかな」

「出禁にするぞ?」

「その時は忍び込むさ」

「口説くのは勘弁だけど、トレーニングとかは付き合うよ」

「あ、それは」

「へえ、それは楽しみだ」

「今日もトレーニングやるんだよね?」

「ああ、じゃあ見てもらおうか」

「おい、シリウス」

「なんだよ?」

「後悔するぞ」

「なんだよ、食われるわけじゃねえし」

「よし、行こう! 僕もここのトレーニング室見たいし!」

 

僕はそう言って杖を持って立ち上がった。

「なんでその怪我ですぐに立ち上がれるんだ」というつぶやきは無視することにした。

 

トレーニング室に向かうと、僕は感動した。

トレセン学園と変わらない設備がそろっている。

 

「すっごい!」

「だろう? うちの設備はちょっとした自慢なんだ」

「さっさとやるぞー」

「あ、ダメだよ、準備体操しな!」

「……わかったよ」

 

こうしてシリウスのトレーニングが始まった。

 

「後5回!」

「ふぅぬ! も、もう!」

「4!」

「クソァ!」

「いいよ! 3!」

「ォ……!」

「2!」

「っ!」

「1!」

「お……らあ!」

「声が出るならまだ大丈夫だね! 追加で10回!」

「おまっ!?」

「できないの?」

「やってやらぁ!」

「だから言ったんだが……」

 

基本的に僕のトレーニングはスパルタ式だ。

できるできないではなく、やる。

だが、無理はしない。

そのギリギリのラインを見極めるのだ。

 

「頑張った! すごいすごい! その年じゃ僕はそこまでできなかったよ!」

「へ、あ……あたりまえ……だろ?」

「次は懸垂行ってみようか!」

「……やってやらあ!」

「最高だ! 普通ならそこまでできないよ! よし頑張っていこう!」

「うおおおお!」

 

シリウスはすごい。

言うだけのスペックはある。

このまま国内に残ればクラシックも狙えるのではないのだろうか。

 

「よし、次はコース練習だ!」

「まだまだあ!」

 

虫の息になったシリウスをマッサージする。

これに関しては実は独学ではなく、整体師の人に教えてもらったのだ。筋も良いと言われたので自信がある。

 

「……ラック」

「どうしたの? 痛かった?」

「やっぱり、海外に来ないか?」

「どしたの急に」

「私のトレーナーになってくれよ」

「いや、僕選手だから」

「なんでもできるじゃねえか」

「なんでもできるように頑張ったからね。まあ、その所為で会長には器用貧乏の烙印を押されたけど」

「しかし、確かにラックはトレーナーに向いているかもな」

「ルドルフまで……」

 

と言われているが、まあこれにはカラクリがある。

そもそも、ウマ娘とヒトなら同じ感覚を持っているウマ娘の方が言語化がしやすい。それに加えて僕はヒトの時の感覚も覚えている。二つの体の感覚を覚えている僕は客観的に体を動かせるのだ。語弊を恐れずに言うならば、ゲームのキャラを動かすような感じに近い。

ウマ娘になってからも、さっき言ったように自分で色々と試したことがあるので教えられることは多いのだ。

 

「というか、いるでしょ、家のトレーナー。トレーナーじゃなくても教官が」

「……ああ、まあな。だがまあ、それは学園に入ったら関係ねえからな」

「メジロモンスニーって子は自分の家のトレーナーに教えてもらってたけど」

「それはメジロ家のというより、メジロ家が育てたトレーナーが学園にいるんだ。そのトレーナーはメジロ家以外も担当することがあるだろう」

「ふうん、色々あるんだね」

 

なんだか歯切れの悪い感じだったが、家のことだろうし深く突っ込まない方がいいか。

そこでその日のトレーニングは終わった。

 

 

 

海外進出。

それはURAの悲願だ。そして、多くのウマ娘の悲願でもある。

日本はレース後進国として扱われていた。それは間違いではない。今のところ、海外のレースで勝ったウマ娘はほとんどいない。海外進出はしているが、大きな賞ではことごとく敗退を期している。

だからこそ、プロミス先輩は海外勢が集まるジャパンカップに憧れたし、URAは日本だけの強いウマ娘を作ろうとしている。

 

だが、僕は知っている。

一人、海外で勝利するだろうと言われたほどのウマ娘がいたことを。

それは実際に見たわけではないし、それがどういう経緯でそうなったのかはわからないし、調べてもいない。だが、そのウマ娘は故障で海外に行くことはなくなったことだけは知っている。

 

名前は『テンポイント』。

 

僕にはまだ関係ない話だし、海外進出というのも深く考えていたわけではない。

だが、少しだけそのことを考えるようになった。

 

時間は過ぎていく。

僕はすぐに上半身だけならトレーニングをすることを許可された。

もちろん、上半身と下半身のバランスを考えなきゃいけないが、それでも僕には朗報だった。

想像以上に早いと主治医さんには言われた。

 

ともあれ、筋トレとプールトレーニングならできるようになった。

……プールトレーニングは止められていたが、僕はパワーに任せて上半身だけでバタフライができることを証明したら許可された。

 

そして、それにシリウスも付き合ってくれている。ルドルフもだ。

 

「後、20!」

「やってやる!」

 

やっぱり誰かとトレーニングをするというのは良いものだ。

僕も事故の規模からしたら恐ろしく早くトレーニングを開始しているが、それでも体の鈍りというのを感じる。

現在1月の半ば。

僕はこれまで部屋で大人しくしていた。

打ち身のアイシングやストレッチなどをして回復を促すことに必死だからだ。

それに、ここは良家。

しかも、年越しすぐ。

沢山の親戚が挨拶に来るのだ。親戚だけではなく、URA関係者も来るという。それが挨拶なのか事件に対する謝罪なのかはわからないが。僕は僕がここにお世話になっているということを知られたくないため、奥に引っ込んでいたのだ。

会ったのは無遠慮に入ってきたシリウスくらいだ。

 

シリウスと同じくらいのトレーニングで様子を見る。

まだまだできるが、無理は禁物だ。

ルドルフはシリウスの限界よりも多めにやっている。

これでデビューどころか入学前なのだから驚きだ。僕はもちろん、シービーもうかうかしてられないな。

 

ストレッチをしながら、体をチェックする。

これを怠ると、逆に治りが遅くなる。自分でチェックするし、後で主治医さんにもチェックしてもらう。

それをしていると、シリウスが話しかけてくる。

 

「……そういうの、自分でやるんだな」

「まあね。後で主治医さんにチェックしてもらうけど」

「この前、私にトレーナーがいるだろうって言ったけど、お前はどうなんだ?」

「……うーん、そうだなぁ。どうなんだろうね?」

「は? 玉虫色の答えなんて欲しくねえよ」

「いや、本当にわからないんだ。でも、今僕のところにいないってことは契約解除されちゃったかもしれないかな」

「はあああ!? 契約解除された!?」

「ちょっと声大きいよ」

「不穏な単語が聞こえたが?」

 

ほら、トレーニング中だったルドルフが来ちゃったじゃん。

 

「おい、ルドルフ、こいつのトレーナーはどこだ?」

 

シリウスは睨むようにルドルフに聞く。

ルドルフも眉間にしわを寄せて何かを考える。

 

事故が起きて僕が起きてからトレーナーは僕のところに来ていない。

加えてルドルフはトレーナーの話題を避けているように思える。

そんなことされたら、察しが悪いやつでも気づく。

十中八九契約解除されたのだろう。

 

「……私は、知らない。もうトレセン学園には行っていないからな」

「自分のウマ娘が死にかけたってのに、見舞いの一つもないってか? トレーナーってのはそうなのかよ!」

「待て、違うぞシリウス! トレーナーがみんなそうだということではない!」

「じゃあ、どうしてこいつは今一人なんだよ!」

「それは……」

 

いやん、僕のために喧嘩しないで!

まあ、正確には僕のトレーナーのためだけど。

 

「二人ともストップ! ビークールよビークール!」

「……お前はどうなんだよ、捨てられたんだぞ?」

「まだわからないからなー。と言いたいところだけど、ルドルフの反応を見る限りそうみたいだ」

「……黙っていて、すまない」

「いや、別にいいよ。僕を気遣ってくれたんだよね」

「だが、結果的に……」

「うーん……確かに、ショックだよ。僕とトレーナーにはそれだけの絆があったと思ったんだけど」

 

それは本音だった。

あのクリスマス、僕は楽しかったし嬉しかった。

孤児院からの手紙、あれはトレーナーが直接孤児院に行ったのだろう。僕を大切に思ってくれていた。……と思っていた。

だけど、今まで二人でやったことは変わらない。

僕も、トレーナーも立場は厳しいことは変わりないのだ。

希望的観測だ。

だけど、トレーナーには僕しかいないと思っている。

 

「僕は必ずターフに戻る。絶対だ。そうなったのなら、トレーナーはまた僕の元に帰ってくる」

「……ラック、私がトレーナーを紹介してもいい。あのトレーナーに執着しなくてもいいんじゃないか?」

「ルドルフ、自分を理解してくれる存在がどれだけいると思う? その点僕は恵まれている。孤児院のみんなもシービーもルドルフも理解してくれていると思う。でも、トレーナーは僕を理解した上で、それを一緒にやると言ってくれたんだ。たとえそれがビジネスライクな関係だったとしても、僕は嬉しかった」

 

ルドルフは黙ってそれを聞く。

 

「まだ、トレーナーに何も返せてないんだ。借りた分は利子を付けて返す」

 

空元気だろう。

だけど、僕は止まるわけにはいかないのだ。

シービーとの約束がある。僕自身の目標もある。今は、今だけは悩む暇もない。

 

「だから、今はいい。彼が、僕のトレーナーじゃなくても」

「……理解できねえよ。やっぱり、それでもお前のトレーナーがしたことは裏切りだ」

 

シリウスはそう言って、部屋を出て行ってしまった。

ルドルフはため息を吐く。

 

「シリウス……」

「ルドルフ、シリウスはどうかしたの? トレーナーとの関係うまくいってないの?」

「そのようだな。……実は私もそんなに詳しく聞いていないんだ」

「そっか」

 

とはいえ、僕が踏み込んでもいい話なのだろうか。

でも、問題抱えているなら解決したほうがいいと思う。僕がそれに協力できればいいんだけど。

 

「ルドルフとシリウスってどういう関係なの? 同じ『シンボリ』だけど」

「……そうだな、遠い親戚といった感じだな。本家分家みたいなものだ。わかるか?」

「そっか。シンボリ家は大きいみたいだからね」

「ああ、今も何人いるか把握するのが大変だ。……どこまでがシンボリなのかもわからないからな」

「家にトレーナーはいないの? ルドルフは教えてもらってないの?」

「いるぞ。ただ、トレーナーというより、各分野の専門家と言った方が正しいな。栄養士だったり整体師だったり、主治医だったりだな」

「走ることを教えてくれる人はいないの?」

「いるぞ。教官という立ち場だがな。とはいえ、基礎を教えてくれるだけだ」

「小さい時からトレーナーがいればいいのに」

「いや、それはどうだろうな。小さい頃から走るというのは癖がつきやすいんだ。だから、早い内から勝ちに執着するというのは危険だと聞いたことがある。トレーナーがいないのはその所為だろうな」

「……ちょっと違うけど、心当たりあるな」

 

僕も入学してからトレーナーにフォームを矯正された。

あれはヒトだった時からの走り方だったが、ウマ娘のフォームも見様見真似でしていたから癖になってしまっていた。

 

「じゃあ、シリウスもトレーナーじゃなくて教官がいるんだ?」

「そうだな、その通りだ」

「ふうん」

 

トレーナーに忌避感を抱いているように思えたが、トレーナー自体はあまり関係なさそうだ。

まあ、シリウスのストイックさだ。

ここに来ないという選択肢はないだろう。

 

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