ウマ娘とかいう種族に転生した話   作:史成 雷太

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調べたら意外と年代が近かった子。

競輪の選手のモデルになった人、知っている人がいて驚きました。
僕は調べて初めて知りました。
みなさん博識ですね。


White lightning

4月。

とうとう、僕もこの学園に来て1年が過ぎた。

そして、ルドルフが正式に入学することになった。ルドルフは単純に嬉しそうだったし、僕もルドルフを盛大に祝った。シービーはいつのまにかいて僕の作ったケーキを貪っていた。相変わらず自由である。

中継された会長のスピーチもルドルフのスピーチも見事だった。僕は僕のあげたネックレスをつけているのを見逃さなかった。

ルドルフの当面の目標は三冠。そのためにはやはりリギルに入る予定だと言っていた。

僕のラップ走法も四六時中ストップウォッチを握りしめていたら大分様になってきていた。加えて、体の方も怪我をしたとは思えないほどに仕上がってきている。

これなら青葉賞も大丈夫だろうとトレーナーが言ってくれた。

 

さて、それも終わると感謝祭がやってくる。

感謝祭はいわば、文化祭と体育祭が一緒になったようなものだ。生徒であるウマ娘が自ら様々な催し物をして、同じ生徒や学園外から来た人たちをもてなすのだ。

例えば、関西出身のウマ娘は粉ものの出店をしているし、外国出身のウマ娘は出身の国の物を出し物として扱っていたりする。

もちろん、ウマ娘だから『走る』という催し物もある。

誰でも走れるレースや、大きなハンデを持ってヒトと走るレース。借り物競走だとかもあった。

その中でも生徒会は……というか、生徒会長は忙しい。

もちろんのこと、他の役員はいないため、一人で取り仕切ることになるからだ。風紀委員などに協力を要請し、様々な問題に対処する。それに加えて、チームに入っているウマ娘には入学を考えている小さなウマ娘を案内するように配置をして、オープンキャンパスとしても機能させている。

 

ちなみに、僕は去年は忙しくて来れなかったので、初めての感謝祭となる。

……でも、僕はおいそれと見て回るわけにはいかない。

何故なら僕は悪い意味で有名だからだ。

なので、見つからないように端っこの方で大人しくしている。

ここは学園の行き止まりにある場所で、ベンチと木とラインナップの悪い自販機だけだ。

ぼーっとしていると、がさがさという音が聞こえてくる。

なんだ? と思って、そちらを見ると、なにやら繁みから白い耳が突き出ていた。

葦毛のウマ娘だ。

ずいぶん小さいようだ。

それがわかった僕は心底迷った。たとえ小さい子でも僕のことを知っている可能性はあるし、とはいえ見たところひとりの小さなウマ娘に威圧的な態度を取ったら可哀想だ。

と、思ったところでシービーにバレた時ようにと渡されたおもちゃの仮面があったことを思い出した。

稲妻仮面ライダーという特撮作品の主人公のものだ。

孤児院にはテレビがなかったので、くわしくは知らないがウマ娘の因子を注入された男が悪の組織とレースで戦うという内容だったと思う。

 

そう、エーちゃんが見ていた番組だ。

だから僕は少しだけ内容を知っていた。

 

僕はそれを被って、そのウマ娘に近づいた。

がさっと出てくるウマ娘は本当に小さく、赤と青のリボンをしていた。

 

「やった出れた! なんやもう、ちっこいウチでも通りにくいとか、抜け道も気い使えへんのか? って誰がちっこいねん!」

 

一人で突っ込みを入れるそのウマ娘はどうやら関西出身らしい。

 

「さあて、せっかく入れたんやし、見学といこか」

「どこを見たいの?」

「そりゃ本場に来たんやから、レースやな! ごっついウマ娘がそろっとるっておかんも言うてたし。それと、なんや粉ものが出てるらし……」

 

そこでピタッととまる葦毛の子。

ギギギと僕の方を振り向き、驚愕の表情を浮かべる。

 

「正義の稲妻仮面ライダーがウチを捕まえに来たぁー!?」

 

そう言ってぴゅーと走り始めてしまう。

……中々のスピードだ。

とはいえ、そのまま人混みの中に入ったら危ない。

僕は捕まえることを決める。

 

スタートの速い僕はその子を3秒で捕まえることができた。

その子はえぐえぐと泣き始める。

 

「ウチは、ウチは親不孝もんですぅ……おとん、おかん、ごめんなぁ」

「なんで泣いてるの……」

「ウチを警察に突き出すんやろ? ウチは不法侵入をしたんや……覚悟はできとる」

 

何やら覚悟ができている様子。

だが、別に公開されている日だし、不法侵入でもない気もするが……。

 

「大丈夫大丈夫。今日は感謝祭だから捕まえないよ」

「じゃあ、なんでウチを捕まえたんや?」

「あの速度で走ると危ないでしょ? 親御さんは?」

「ううん……ウチは一人で来たんや。おかんはうちで寝とる」

「そっか。案内してくれる生徒がいたでしょ? はぐれちゃった?」

 

そう聞くと、その子は目を泳がす。

 

「それはぁ、ちょっとうん、まあはぐれたと言うか……」

「……まあ、いっか。シービーにでも頼もうかな」

「ちょ、ちょい待ち! いや、待ってください! ウチ、見つかるわけにはいかんのです!」

「ん? そりゃまたどうして?」

「ウチ……何も言わずにここ来たんや。ウチは貧乏やから、トレセン学園に入れるだけのお金がない。でも、入りたいって知られたらおとんもおかんも無理してまう。だから、ウチが来たことはバレたくないんや。もし、何かの間違いでここに来たんがバレたら……」

 

その言葉に僕は胸打たれた。

なんて、なんて健気な子なんだろう。

同時になんて悲しい話なんだろう。

家族のために自分の夢を諦めようとしている。

境遇自体はまるで誰かを見ているようだ。

確かに、オープンキャンパスのために来ている子は申し込みをしないといけない。学園の生徒にバレたら連絡が行く可能性があるな。

 

「いい子だね……」

「ちょ! なんで泣いとるんや!?」

「わかった。仮面の下がぐしょぐしょになっちゃったけど、君の言う通りにしよう。でも、一人で居ると危ないから一緒に回ろっか」

「ええんか? 迷惑やないんか?」

「もちろん! あ、そうだ、確か言わないといけないんだったね。ようこそ、トレセン学園へ。僕は……ホワイトローヤル。君は?」

「ウチはタマモクロス! よろしくな!」

 

こうして、僕は幼きタマモクロスと邂逅したのだった。

 

 

 

僕はタマモクロスを肩車しながら歩く。

タマモクロスは最初にレースを見たがったが、そもそも早くからはレースをしないので、出店を見て回ることにした。

 

「タマモちゃんは関西出身なの?」

「せやで。せやけどまあ、いろんなとこを転々としとるかんじやな」

「そうなんだ。やっぱりお好み焼きとか食べに来たの?」

「せやけど、考えてみればウチ、お金持ってへんわ」

「じゃあ、僕が奢ってあげようか」

「いや! そないなことはできひん。見ず知らずの人に奢ってもらうなんて!」

「義理堅いんだなぁ。でも、僕お腹減ったんだよね。でも、たくさん食べて回りたいから協力してほしいんだ」

「……ほな、少しだけやったら……」

「じゃあ、決まり! たくさん食べようね!」

 

そうして、僕たちは食べ物をたくさん買った。

貧乏なときのひもじさは僕は知っているので、世話を焼きたがったのだ。

タマモちゃんは少食だったけど、美味しそうに食べた。お好み焼きには文句を言いながらもちゃんと食べていた。

 

そうしていると、レースが開催される時間も近づいてくる。

僕のレースは最後の方なので、ゆっくり観ることができる。

タマモちゃんはやはりというか、生のレースに興奮していた。

 

「すごい! すごい速い!」

「でしょ。みんな一線で活躍するウマ娘だからね」

「ウチ、来れて良かったわ!」

「そっか、それは良かったね」

「ねえちゃんは走らんへんの?」

「僕は……今日はお休みかな」

「そうなん? 怪我でもしよったか?」

「したにはしたけど、それは大丈夫。気にしないで」

「そか」

 

タマモちゃんは心配しながらも、突っ込むのはやめてくれた。

空気の読める子だなぁ。

 

「というか、ねえちゃんはなんで仮面被っとるんや?」

「それはぁ、僕は稲妻仮面ライダーが好きなのでですね……」

「なんで敬語なんや? まあでもウチもや! かっこええよな! 必殺稲妻ダッシュ!」

「そうだね! 僕もいつかはできるかもしれないからね!」

「うんうん、ねえちゃんならできるわ! ウチが保証したる」

「ありがとう。タマモちゃんもいつかできるよ。僕が保証してあげる」

「うん……ありがとな」

 

そう言うと、少しタマモちゃんはアンニュイな表情を浮かべた。

 

「? どうしたの?」

「いや、リップサービスでも嬉しいわ」

「リップサービス? なんのこと?」

「気ぃ使わんでええよ。ウチは葦毛やからな」

 

そこまで言われてタマモちゃんが気にしていることに思いいたる。

『葦毛のウマ娘は走らない』。

今はそう言われているのだ。

実際今まで日本で葦毛のウマ娘が活躍したことは少ない。

海外だとわからないが、少なくとも日本での活躍は少ないと言わざるを得ない。G1を制したのは手で数えられるほどだったと思う。

 

でも、僕は知っている。

前世ではタマモクロスという葦毛の馬はその通説をぶち壊したのだと。そして、もう1頭の葦毛と共に時代を築き上げたのだと。

 

僕はタマモちゃんを撫でる。

 

「『葦毛のウマ娘は走らない』って、タマモちゃんはそう信じてるの?」

「ちゃう! ……でも、ウチはいつもそう言われてたんや。ウチはチビやし、走れへんって」

「ふうん。じゃあ、タマモちゃんは諦めるの?」

「諦めるて……どうしようもないやんけ」

「できるよ。君が走れることを証明できる」

「どうやって?」

「それはもちろん、走るんだ」

 

僕はそう言って、時間を確認する。

うん。年少レースは難しいけど、あれならエントリーできるはずだ。

僕はタマモちゃんの手を引いて、受付へ歩いて行く。

 

「は、走るて、どこを!? なにを!?」

「そりゃターフをだよ。年齢別リレーならまだ受付いけるはず」

「ウチ、シューズもないんやで!?」

「大丈夫、貸してくれる。いい? 君は走るだけでいい。君には才能がある。絶対一着を取れるから」

「……せやけど、ウチは……」

「じゃあ、やられっぱなしでいいの? 稲妻仮面ライダーはやられっぱなしだったの?」

 

そう言うと、タマモちゃんは顔を上げる。

 

「わかった! ウチも走る! 葦毛やからってバカにされてたまるか!」

「よし! かっこいい子だ!」

 

受付へ行くと、ギリギリだったが出走を受理される。

だが、どうやら生徒の出走数が足りないようだった。なので、良かったら僕も走らないかと言われる。

 

「いや、僕は……」

「なんや、ねえちゃんは一緒に走ってくれへんのか?」

「うっ。……わかったよ。ただ、仮面つけたままでいい?」

 

そう言うと、受付の子は苦笑いをしながらも頷いてくれた。

 

「うん、じゃあ、この子はタマモクロス。で、僕はホワイトローヤル。登録お願いね」

 

それから、貸出シューズや体操服に着替え、僕たちはターフに立った。

小学生前半の年齢、後半の年齢、学園の生徒という順番で走る。リレーなので、バトンでの交代だ。

300m、700m、1200mの2200m。

僕には短すぎる距離だが、まあ、大丈夫だろう。

 

「勝とうね」

「おう!」

 

タマモちゃんは気合十分のようだった。

 

果たして、レースが始まる。

が、どうやら、僕たちの一番最初の子は転んでしまったようだ。必死に走るが、追い付けない。

半分を走ったところで最下位だ。

それどころかどんどんと離されてしまう。

僕は声を出して応援する。観客も応援しているようだ。

 

そして、タマモちゃんにバトンが渡される。

 

歓声は動揺に変わる。

速い。

まるで電光石火の速さだ。

 

『葦毛のウマ娘は走らない』

 

それをまるで嘲笑うような速さだ。

タマモちゃんは必死で走る。

だが、その表情は笑顔だった。

まるでこれが自分だと言わんばかりの走り。

 

葦毛のウマ娘、タマモクロス。

時代を作ったウマ娘の産声だった。

 

……そして、何バ身も離された状態から追いつく。

もし、もう少し長かったら追い越していただろう。

なら、その役目は僕のものだ。

 

タマモちゃんからバトンを受け取る。

 

悪いが、勝とうと言ったからには負けてやることはできない。

転びながらも必死に走ったあの子もタマモちゃんも負けさせてやることはできないのだ。

 

僕はフルスロットルで駆けだした。

 

 

 

「す、すごい! ねえちゃんごっつ速いやん!」

「でしょ。ちょっとしたものなんだ。でも、ほら、タマモちゃん。あの順位は君が作ったものだ」

 

僕は掲示板を指さす。

1位。

それが僕たちの順位だった。

タマモちゃんはその順位を見て、大興奮だった。

 

「ウチ、速いやん!」

「うん、そうだよ。ね、証明できたでしょ」

「うん! ありがとう、ねえちゃん!」

「あなた、探したわよ」

 

話していると、後ろから声をかけられる。

振り向くと東条トレーナーが立っていた。

 

「そろそろだからってマルゼンスキーに探しに行くように言われたのよ。まさか、レースに出てるなんて思ってもみなかったけど」

「あはは、事情がありまして」

「そろそろ集合よ」

「なんや、ねえちゃん、用事か?」

「うん、ごめんね。案内はここまでだ」

「その子は?」

「この子はさっきのレースで出てた子ですよ。観ました?」

「ええ、とても速かったわ。ここでの活躍が待ち遠しいくらい」

「……その、ウチは……」

 

タマモちゃんは勢いがしぼむ。

僕は東条トレーナーに事情を説明して、タマモちゃんのことをお願いするようにたのんだ。東条トレーナーはそれに頷いてくれた。

 

「東条トレーナー」

「なにかしら?」

「あれあります? オープンキャンパス用のパンフ」

「あるわよ。はいこれ」

「ありがとうございます」

 

僕はそれを受け取って、タマモちゃんに差し出す。

 

「でも、ウチ、貧乏で……」

「タマモちゃん。実は来年から特待生制度ができるんだ。僕も知ったのは最近だけど。成績が良かったら学費が免除されるんだ。選択肢の一つとして受け取ってくれないかな?」

 

そう言うと、タマモちゃんは目を見開く。

 

「う、ウチ、トレセン学園に入れるん?」

「ちゃんといい子で成績が良かったらね」

「ほんまか……?」

「もちろん。そして、君ならできるよ。僕が保証する」

 

タマモちゃんはそのパンフを受け取る。

そして、ごしごしと目を擦る。

 

「ありがとな、ねえちゃん……」

「うん。いいよ。それに、その制度を作るために頑張ってくれたのは生徒会長と理事長だから」

「それでも、ありがとな」

「うん」

「……そろそろ時間よ」

「うん、行きます。じゃあ、タマモちゃん。あとはこのお姉さんが案内してくれるから」

 

僕はそう言って、手を振る。

 

「じゃあね、タマモちゃん。待ってるから」

「うん! ウチ、絶対入学して見せるわ!」

「楽しみにしておくよ!」

 

 




ごめんなさい。
正直、関西弁はまじでわかってないので、スルーしてください。
訂正してくださるなら、作者は泣いて喜びます。
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