ウマ娘とかいう種族に転生した話   作:史成 雷太

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ダービー編エピローグ的な話。


Only for now, I ignore my mind

ウイニングライブは大変だった。

人気がとかではなく、1着が二人もいるのだ。

色々と相談した結果、メインボーカルをデュオで行うことになった。即興で。

やめて!

僕は君と違って歌上手じゃないから頑張ってどうにかしてるだけなの!

こことここ分けようかなんて言われてもすぐにできるわけじゃないの!

まあ、やりましたけどね。

 

意外だったのはなんと観客席の全体の2%くらいは僕のイメージカラーのライトが灯っていたことだ。

帰り際にエゴサーチしたら、あの悪役ロールが逆にウケていた層がいたらしい。

あと、シビ×ブラとかいう言葉を見つけてしまったこともあった。うん、これはシービーの所為だ。まあ、シビ×ルドもシビ×モンとかもあったし許容範囲内……なのかなぁ。これ、生ものってやつでしょ。こういうのもあるんだなぁ。というか、シービー全部攻めやん。脚質かな?

 

ついでに勝った後の失態をどう見られているのかを調べたら、ターフの音声までは拾えていなかったようでセーフ。

僕が動揺する姿を見られたことに喜ぶ人や悪役にも分け隔てなく接するシービーの寛容さが見られているだけなので大丈夫そうではあった。……まあ、あの時は完全に仮面が外れてたから、『ギャップが……』とSNSで言っている人もいて、これからは勝った後も油断しないようにしようと決心した。

 

で、トレーナーに褒めてもらった後は、早速シリウスに会いに行った。

とは言っても、家の場所とかは知らないのでルドルフの家にいれば来るかなと思って遊びに行ったのだが。

 

「ダービー優勝おめでとう」

「ありがとう! 来年はルドルフだね!」

「ああ、そうなれるよう、粉骨砕身するとしよう」

「うん! 同年代にルドルフに勝てる子がいるとは思えないけど、クラシックレースが終わったら一緒に走れるからね。その時に弱かったらシービーと一緒に笑うからね」

「ふふ、それは怖い。だが、こちらとて同じことだ。私と鎬を削るのだ。これからも頑張ってほしい」

「もちろん!」

 

それからお互いの近況を話し合った。

 

「どう? リギルは。上手くやってる?」

「母親と同じことを言うんだな。もちろん。チームの先輩方も良くしてれるからな」

「マルゼンスキーとも仲良くやってる?」

「ああ、一番良くしてもらっている。大分心配してくれているよ」

「心配?」

「ああ、ライバルたる存在ができるのかどうかとね」

「さっきもいったけど、僕は思えないなぁ」

「誇示するわけではないが、それくらいの実力でなければならないからな、私は。だから、たとえそうでも君がいると言ったら嬉しそうにしていたよ」

「マルゼンスキーは強いぞぉ。全員でかかってようやく勝てたから」

「ははは、わかっているとも。だからこそだよ。東条トレーナーもマルゼンスキーを語る時は自信満々だったからな」

「東条トレーナーとはどう?」

「ああ、自分が強くなっていると自覚できるほどだ。指導力はやはり間違いがないな。それに性格も好ましいな。リギルに入って良かったよ」

「僕は未だにクソ怒られたのがちょっとトラウマだけどね」

「それ、リギルでは語り草になっているぞ。あのブラックトレイターとミスターシービーが潜入しに来たと。というか、君のあの演技、リギルでは結構疑われているぞ。リギルの前ではしなくていいんじゃないか?」

「そうやってすぐやめさせようとする! 僕の演技がバレるわけないじゃないか!」

「……マルゼンスキーが君と予定がある時には上機嫌になるからな。君が、というよりマルゼンスキーが信用されているんだよ」

「それはぁ、まあ、そういうことならそういうことはあり得るかもしれないけどぉ……」

「というか、そっちはどうなんだ? ダービーではなにやらやらかしていたようだが?」

「圧強くない? やらかしたのはシービーで~す」

「君こそ、受け入れてなかったか?」

「受け入れてないもん……」

「ふぅん?」

「こ、こっちはいつも通りだよ! トレーニングも始まったし、菊花賞こそはシービーに勝つから」

「ダメダメ、勝つのはアタシだよ」

 

後ろから声が聞こえてびっくりして振り返ると、そこにはシービーがいた。

 

「シービー!」

「やっほ、お邪魔します」

「ああ、ゆっくりしていくといい」

「シービー、何しに来たの?」

「あら? その言い方冷たいんじゃないの~?」

「きゃー!」

 

シービーは僕にのしかかってきてそのまま押し倒される。

 

「いいのぉ? 君とアタシが仲がいいってこと、バラしちゃうよ?」

「ひ、卑怯だぞ! 脅しには屈しない! 殺せ!」

「いい度胸だ! こうしてやる!」

「きゃははは!」

 

くすぐられ、悶絶する。

シービーがいたずらな顔……というより、嗜虐的な顔をする。

 

「くすぐり、弱いんだ?」

「よわくないが?」

「へええええ?」

「……ゆるして?」

「ダメー!」

「ぎゃああああああ!」

「こらこら、あまり騒ぐんじゃない」

 

ルドルフに助けられて、シービーは出されたお茶菓子を貪るモードに移行する。

ルドルフは苦笑いだ。

 

「君たちはずいぶん仲がいいな」

「まあね? ルドルフも仲良しでしょ?」

「否定はしないが……」

「ルドルフも仲間に入れてほしいんだ?」

「まあ、そうだなぁ。私は友人が少ないから……」

「ええ? そうなの? シービー?」

「うーん、人脈自体は広いと思うよ? 流石にアタシもルドルフの交友関係までは知らないから」

「みんな気後れしてしまうようでな……コミュニケーションの練習をしているのだが……」

「僕は友達だよ?」

 

僕がそう言うと、ルドルフは少しだけ嬉しそうに微笑む。

僕とシービーは顔を見合わせてにやぁと笑う。

ルドルフは嫌な予感がしたのか、後退る。

 

「おい、待て……何か嫌な予感がするぞ。なんだ、そのわきわきした手は!」

「「ルドルフちゃ~ん」」

 

僕たちはルドルフにルパンダイブを決めて、くすぐりにかかる。

だが、ルドルフもそれに反撃をしてくる。

こやつ、早くも本格化を終えおって!

往生せい!

 

「なにやってんだよ、お前ら……」

 

わちゃわちゃしていると、いつの間にかシリウスが呆れたように僕たちを見下ろしていた。

 

「シリウス! おかえり!」

「ここはお前の家じゃねえし、私の家でもねえ」

 

真面目なルドルフは抜け出してシリウスにお茶を差し出す。

メガネは斜めになっていたが……。

 

「……私はゆっくりしに来たわけじゃないんだけどな……」

「まあまあ、いいじゃん。ちょっと話してからでもトレーニングの質は変わらないよ」

「だから、ここはお前の家じゃないぞ……」

「それはそうだが、ラックの言う通りだ。少しゆっくりしていくといい」

 

ルドルフもそう言うと、シリウスは観念したようにその場に腰を下ろした。

 

「ま、いいだろ。私も言いたいことがあったしな」

 

シリウスは僕を見る。

 

「ダービー、おめでとう。お前はすごかった」

「ありがとう、シリウス」

 

横ではシービーが自分を指さしている。

シリウスはめんどくさそうにしながらも、「お前もな」と付け足す。

 

「夢、諦めないでよね、シリウス」

「――ああ、そうだな。ここで反故にするのはウマ娘じゃねえからな」

「うん、シリウスが海外で活躍するの、僕は待ってるから」

「ああ。お前を見てわかった。私も諦めない。どんな形でも夢を叶えに行くさ」

「うん! それでこそシリウスだ!」

 

でも、と僕は言う。

 

「でも、約束はまだ半分だ」

「は? お前はよくやったろうが。何が半分なんだ?」

「僕はダービーに勝った。その次は日本のウマ娘が世界に通用することを証明しないと。……まあ、僕がしなくても証明されるかもしれないけど」

 

そう言うと、シービーが興味深そうに僕を見てくる。

 

「そうなの? アタシのこと言ってるの?」

「シービーも、とは思ってるよ。でも、早ければ今年に証明されるから。ほら、プロミス先輩だよ」

「ああ! ラックがずいぶん懐いてる先輩ね」

「うん、尊敬してるウマ娘だ。今年に先輩はジャパンカップに挑むんだ。僕は勝つと信じてる」

「ジャパンカップ?」

「うん。ジャパンカップは世界の強豪が来るからね。ウマ娘のオリンピックなんて言われてるんだよ?」

「へえ、面白そうだね……」

「今年は菊花賞があるから僕たちは出るのは難しいけど」

「ラックは行けるんじゃない?」

「可能性はあるけど、そもそも勝てるとは言えないから。単身でマルゼンスキーと戦えるようになって初めて出場権くらいに思ってるから」

「いいな! アタシ、来年は絶対出る!」

 

言い合ってると、シリウスは少しだけ笑った。

 

「そうか……世界に挑戦したいのは、私だけじゃないんだよな」

「そうだよ! 先輩が勝ったら僕も海外行きたいってトレーナーに話してるし!」

「「は?」」

 

僕がそう言うと、シービーとルドルフがこっちをガン見してきた。

 

「どういうこと?」

「私も聞いてないが」

「言ってないからね」

「どうして言わないんだ!?」

「いや、まだ話したってだけだし、どうなるのかわからないからねー」

 

シービーとルドルフはわたわたと僕を掴むが、反対にシリウスは嬉しそうに僕を見る。

 

「そうか! 私に付いてきてくれるんだな!」

「選手としてね! だから、もし向こう行ったらライバルだよ、シリウス」

「……お前がライバルか、いいなそれ。最高だ」

 

獰猛な笑みを見せるシリウス。

その圧はやっぱりシンボリとつくだけあるなぁと思う。

 

「アタシも海外、視野に入れようかな」

「待て待て、海外に行くのもまだ早計だろう。私がシニアに入ってからでも遅くないだろう?」

「何をそんなに動揺してるの、二人とも……」

「いや、だって一生アタシの隣で走ってくれると思ってたし……」

「私はまだ正式なレースで君と走ったことないんだぞ、私と走るまで待ってほしいんだ」

「わかった、わかったから。二人とも倒してから行くから」

「「負けないが」」

「負けん気は同じなんだから……」

 

と、そこでシービーがなんでここにいたのかを聞いていなかったことに気づいた。

 

「で、シービーは用事があってここに来たんじゃないの? 遊びに来たの?」

「あ、そうだ。忘れてた。合宿、一緒に行こうよラック」

「合宿?」

「そう! 去年、アタシを置いてったの忘れてないからね?」

「いいよ。……去年は言ってもトレーナーに止められてたでしょ?」

「でも、行きたかったんだもん!」

「こらこら、ちゃんとトレーナーに従うんだぞ、シービー」

「ルドルフ……君もアタシを置いてった側なんだからね……」

「さ、シリウス。トレーニングに行くんだろう? 付き合うよ」

「逃がさないからね」

 

こうしててんやわんやしてシリウスを巻き込んで併走トレーニングをすることになった。

……僕、私服なんだけども……。

 

シービーは鬼のように強かったとだけ言っておこう。

 




次回からは夏合宿編

35話にて皇帝の二つ名はまだ獲得してないんじゃないかとの意見がございました。
うん、まあその通りです。
ですが、ルドルフの名前はルドルフ1世から取られていますし、シンボリ家の秘蔵っ子です。シンザンが次の生徒会長に選んだということもあって実力も疑いの余地もありません。
なので、皇帝と呼ぶには十分な理由がそろっていたと思います。
二つ名というよりも実況が盛り上げるためにつけたあだ名とでも思ってください。
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