ウマ娘とかいう種族に転生した話   作:史成 雷太

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すみません、予約投稿ミスってしまい、本日は1話だけの投稿になります。
明日はしっかり2話投稿するのでご了承ください。




How can I believe in myself?

神戸新聞杯には強者たちが出走する。

注目はモンスニーちゃん、カールちゃん、そしてスズカコバンちゃんというウマ娘だ。

阪神レース場で行われ、2000mだ。なので、僕としてはカールちゃんが一番の強敵になると思っている。未知数なのはスズカコバンちゃん。

ダービーで一緒に走ったが、その時は10着だった。そこで本来の力よりも強く走ってしまい軽い怪我をしてしまう。そのまま夏は長期休養を取ったのだった。マルゼンスキー曰く、G1を取れる才能を持っているとのこと。

 

もちろん、僕も注目の的だ。

世紀の大悪党はまだ不敗を貫いている。

その悪党が負ける姿を見たい。

その悪党を負かす勇者を見たい。

その一身でレース場に観客は足を運ぶ。

 

夏が終わり、僕は一度だけ取材を受けた。

僕をこき下ろすことを書くところだ。

 

『これからの目標は?』

「もちろん、菊花賞だ。俺以外のウマ娘が3冠を取るなんて、誰も望んじゃいないだろう? 阻止しに行く」

『トライアルレースに出走するとのことですが、すでに出走権は持っているのでは?』

「ああ。持ってるからなんだ? 俺に歯向かおうとするやつを潰すだけだ」

『トライアルレースに出走することでその枠が狭まるという意見もありますが?』

「ははは! その意見を言ったやつを褒めておいてくれ。俺が勝つのを疑っていない敬虔なる俺のファンだ。で、そうだな。それが? なにか悪いのか? 俺は枠を潰したいんだよ。誰かの夢を潰したいんだ。そのために出る」

 

枠を潰す。

それは確かにそうだ。優先出走権というのはみんながみんな喉から手が出るほど欲しいもの……ではない。

菊花賞に出たいと思っているウマ娘はマージンを取っている。つまり、優先出走権という一発勝負に賭けるウマ娘の方が少ない。

菊花賞は秋に行われる。

皐月賞やダービーじゃできないが、マージンを取るくらいの時間はあるのだ。

 

では、何故トライアルレースに出るのか。

それはステップレースとして出るのだ。一種のセオリーだ。

モンスニーちゃんも、カールちゃんもトライアルレースに出なくても菊花賞に出ることはできる。だが、トライアルレースで勝負することによって、闘志を保つのだ。……カールちゃんは少し出る理由は違うが。

菊花賞に出るためにトライアルレースに出るのではない。菊花賞に勝つためにトライアルレースに出る。

 

とはいえ。

とはいえ、みんなそんな返しを期待しているわけではないだろう。

だから、僕は悪辣に言う。

民衆はヒーローを望むように、民衆はヒールも望む。

そして、それは僕だ。

 

阪神レース場ではその取材を記事にした雑誌が売っている。

それは飛ぶように売れているようで、購買は人混みで溢れている。

 

僕は控室で出走を待っている。

もちろん、トレーナーもいる。

 

「トレーナー」

「なんだ?」

「スズカコバンちゃんは強いの?」

「……そうだな、確かに才能がある」

「じゃあ、僕は負けそう?」

「どうだろうな。……才能だけなら全く勝てないが、お前は夏で強くなった。それは確かなことだ」

「そっか」

 

それだけをトレーナーは言った。

もしかして、慰めてくれているのだろうか。まあ、どちらでもいいかと思う。

2000m。

スタミナとパワーは十二分以上。スピードも強化された。

ここで勝てないなら、僕は菊花賞で勝てないだろう。

ずしりと肩が重くなるような気がした。

だが、精神はともかく、体の調子は悪くない。いや、調整を怠らなかったのでむしろいい。

 

頬を叩いて気合を入れる。

こんな気持ちでは勝てるものも勝てない。

鏡を見て、不敵に笑ってやる。

 

俺はブラックトレイターだ。

不敗のウマ娘。

勝って当然のウマ娘だ。

 

よし、いける。

 

「行ってくる」

「ああ」

 

僕は立ち上がって、パドックに向かった。

 

 

 

パドックではいつも通りのブーイングをされて、挑発を返して戻る。

すると、そこで話しかけられる。

 

「あなた、いつもこうなの?」

「あ? 誰だてめえ」

「スズカコバンよ」

「ああそう」

「……」

「……なんだよ?」

「返事、もらってない。あと自己紹介も」

 

僕はそこまで言われて初めてそちらを向く。

黒鹿毛のウマ娘だ。緑のゼッケンを着ている。おっとりとしたタイプの顔をしているようで、話し方も見た目通りにゆっくりと話している。

 

「知ってるだろ? 必要ねえ」

「でも、返事を返すのは大事」

「嫌だね」

「大事……」

「……」

「……」

「ああもう、ブラックトレイターだ。いつもこうだ、知ってるだろ! 話しかけるな!」

「そう。あなたに言いたいことがあるの」

「うるせえな、黙ってろ」

「あなたがいたから私は走れるの」

「は?」

 

思わず僕はその顔を凝視してしまう。

なに?

どういうこと?

貴様への憎しみが力になるのだ、みたいな話?

その考えとは裏腹にスズカコバンちゃんはそんな表情を全く見せずに言う。

 

「私、家が小さいの」

「……」

 

その一言で少しだけスズカコバンちゃんが言いたいことがわかった。

 

「……俺とお前は同期だろうが。入学は関係ねえんじゃねえのか?」

「そうね。確かに家が小さいって言っても、拒否されるくらいではなかったわ」

「じゃあ、なんだよ」

「脚部不安があったの。最初は負けっぱなしで、トレーナーにも見放された……。でも、あなたとマルゼンスキー先輩が活躍したから、寒門でも活躍できるし、脚部不安もどうにかできるかもって走り続けられた」

「……そうかよ」

「ありがとう、ブラックトレイター。私、あなたと走るのが楽しみだったの」

「一回走っただろ」

「うふふ、覚えててくれたのね。あの時は気持ちが逸りすぎて怪我をしちゃったし、あなたとは勝負にならなかったけど、今日は頑張るわ」

「精々頑張りな、勝つのは俺だがな」

「ええ、いい勝負にしましょう」

 

スズカコバンちゃんはそのままパドックへ出て行った。

 

僕のしてきたことは無駄じゃなかった。

それが少しだけ僕の心を穏やかにした。そして、マルゼンスキーがスズカコバンちゃんを気にかけている理由が少しわかった。

僕やマルゼンスキーに少しだけ似ているのだ。それになんだか、儚い雰囲気に惹きつけられるようだ。

 

僕はだからこそ、負けたくないと闘志を燃やした。

 

『さあ、菊花賞トライアルレースである神戸新聞杯! ここで優秀な成績を収めたウマ娘は菊花賞への優先出走権を獲得することができます。G1レースにも負けない優駿が集まったこのレース、どうなるのでしょうか! 人気上位のウマ娘を紹介します』

 

すぐにレースはやってくる。

ターフは稍重。だが、天気は晴れだ。適度な水分がしっかりとした感触を足に伝えてくれる。

今日はよく冷える。

僕の体温と外気が互いに拒絶し合っている。

 

悪くない。

むしろ、いい。

改めて自分の調子を確認した。

 

今日は12人。

僕は外側から6番目。真ん中位置だ。

モンスニーちゃんは3番、カールちゃんは7番。スズカコバンちゃんは12番だ。

今日は人数が多いわけではない。

先頭を走るのは容易だ。

それは他のウマ娘も同じで、今日は自分の得意なレースを押し付け合うことになるだろう。

 

『人気上位のウマ娘を紹介します。この人気は不満か3番人気、スズカコバン。2番人気、オークスの女王ダイナカール』

『私一押しのウマ娘です。オークスの時のような走りを見たいですね』

『そして、1番人気はこのウマ娘! メジロモンスニー! ここで勝って菊花賞勝利への足掛かりとなるか。……各ウマ娘、ゲートに入っていきます』

 

この感覚も久しぶりだ。

ゲートは嫌いじゃない。

その中に入った瞬間に気持ちが切り替わるからだ。

 

だが、それも一瞬。

すぐにレースは開始される。

 

『さあ、神戸新聞杯……今スタートしました! ハナを切るのはやはりこのウマ娘! ブラックトレイター! 力強い走りで先頭を進んでいきます。ダービーウマ娘に負けじと追うのはオークス女王ダイナカール』

 

相変わらず僕はラップ走法だ。

しかし、2000mはもはや僕にはやや短い。

爆逃げと思われるような逃げに徹する。

神戸新聞杯では最初の500mは直線だ。そこでなるべく距離を取っておきたい。

ちらりと後ろを見ると、僕と次の集団の丁度中間ほどにカールちゃんがいる。流石の速さだ。まだ余裕があるところを見ると、仕掛け時は少し遅めかもしれない。

モンスニーちゃんとスズカコバンちゃんは後方から4、5番手ほど。真ん中よりも少し前で位置取っている。

 

僕は観客たちの声援と罵倒を置き去りにするように走る。

 

『さあ、早くも先頭が第一コーナーへ差し掛かる。そこから3バ身開いてダイナカール。さらに3バ身開いて3番手スズカコバンとなっております』

 

縦長なレースだ。

僕に有利なレース展開になりつつある。

約1000mまでで上り坂を終える。その時に差がついていたら追い付くのは難しいだろう。

 

……まて。

今、何かがおかしかった。

僕は後ろをちらりと見る。

 

――カールちゃんのすぐ後ろにスズカコバンちゃんが来ている。

 

ゾッと背筋が凍るような感覚を覚える。

来ている。

すぐに追いつける位置に来ている。

 

このラップ走法というのはいわば自分の基礎能力のゴリ押しだ。

つまり、相手の身体能力が僕を上回った瞬間、僕の敗北は決定される。

 

ラップ走法はタイムだけではない。

スタミナも逆算している。

スタートしたらそこからペースは計算通りに進まないといけない。変えてはいけないのだ。

 

僕は迷う。

どうするべきか。

この距離から揺することはできない。

距離が離れすぎている。

唯一揺する方法としてペースを上げるというのがあるが、それをするとすべての計算が狂う。

それをするのは今じゃない。

 

だったなら、やることは一つしかない。

今の僕のペースを信じる。

 

僕は基礎だけならどんなウマ娘にも負けない。

ましてや、今ここにいるのはシービーじゃないし、ルドルフでもない。

きっと、スズカコバンちゃんやモンスニーちゃん、カールちゃんは僕に追い付く。

だけど、僕は負けない。

 

このペースはどんなステイヤーでも自殺的なペースだからだ。

 

心を固めろ。

今までの自分を信じろ。

残り半分だ。

 

『向こう正面を登ります。1番手、ブラックトレイター先頭を譲りません。2番手、3番手でダイナカールとスズカコバンが競り合っています。それから4番手争いは激しく3人がもつれあっています』

 

モンスニーちゃんはステイヤーで差し、追い込みの脚質。きっとそろそろ上がってくる。

カールちゃんはマイル中距離型、どちらかというと差しが得意だが、今は僕の逃げに置いていかれないように距離を詰めている。

スズカコバンちゃんは……情報が少ないのでなんとも言えないが、中距離、差しだろう。カールちゃんと同じ位置についている。

 

何を狙っているのかはわからないが、僕がやることは自分を信じて走ること。

そうすれば、それだけでプレッシャーになる。

 

みんなは少しずつ距離を詰めてきている。

そして、モンスニーちゃんは進撃を始めた。

 

『さあ、メジロモンスニー上がってくる。3番手のスズカコバンを追って速度を上げている! 狂気のロングスパートだ!』

 

第三コーナーは下り坂。

そして、緩いカーブだ。

速度が落ちることはない。

 

『先頭はブラックトレイター! 2から4番手に横一線にダイナカール、スズカコバン、メジロモンスニー! いや、スズカコバン少し落ちたか!?』

 

いける。

僕はその速度のまま最終コーナーに入る。

スタミナも十分だ。

ここで並ばれなければ、負けることはない!

 

だが、その瞬間、僕は緑のゼッケンを見た。

 

『おおっと! スズカコバン、内側をついてブラックトレイターと並んだ! どういうことだ、どういうトリックを使ったのか!?』

 

僕はスズカコバンちゃんに追い付かれた。

すぐ後ろにカールちゃんとモンスニーちゃんがいる。

 

――そうか。

第三コーナーで息を入れてあえて速度を落として、急カーブである第四コーナーでえぐり込むようにインコースをついたのか。

 

まずい。

負ける。

負けてしまう。

 

『スズカコバン! スズカコバン! 最終直線に入る! 勝つのか!? あのブラックトレイターに、ミスターシービーでも勝ち切れない怪物にスズカコバンが勝つのか!? しかしブラックトレイターも譲らない! どちらが勝つのがわからない!』

 

嫌だ。

負けるのは嫌だ。

勝ちたい。

こんなところで、負けたくない!

 

しかし、無常にもスズカコバンちゃんが一歩先に出る。

 

『差した! スズカコバン抜かした! ブラックトレイターを捕らえた! 残り100m! スズカコバン先頭! スズカコバン先頭!』

 

くそ。

まだ。

終わってないんだ。

レースは終わってない!

 

残り50mを切った瞬間、僕にとっては信じられないことが起こった。

スズカコバンちゃんのスピードが緩んだのだ。

 

僕は最後の力を振り絞り、加速した。

 

『ブラックトレイター差した! 差し返しました! なんということだ! 大接戦の末勝利したのはブラックトレイター、1着です! これが大悪党の意地! ダービーウマ娘の意地です!』

 

疲れた。

今すぐにでも、ターフに寝ころんで寝てしまいたい。

だが、僕はすぐにスズカコバンちゃんが心配になってそちらを見る。明らかに不自然な失速だ。もしかしたら怪我をしたのかもしれない。

 

だが、僕はすぐに思い違いをしていることに気づく。

スズカコバンちゃんはヒューヒューと喉を鳴らし、尋常じゃない汗を垂らしていたのだ。

スズカコバンちゃんの失速は何も不自然ではなかった。

――スタミナの限界だったのだ。

 

もし、スズカコバンちゃんがもう少し速かったら。

もし、スズカコバンちゃんにもう少しスタミナがあったなら。

もし、スズカコバンちゃんにもう少し時間があったなら。

……もし、スズカコバンちゃんがダービーで怪我をしなかったら。

僕は負けていただろう。

 

その事実に僕は目を背けたかった。

だが、スズカコバンちゃんはハンデを乗り越えてここまで僕を追い詰めた。

それをするのはモンスニーちゃんかカールちゃんだと思っていたのに。

 

スズカコバンちゃんは本当に限界だったのだろう。

足をもつれさせて倒れそうになる。

近くにいた僕はそれを支える。

 

僕が助けたように見えるだろうか。

……だけど、スズカコバンちゃんを捨て置くこともできない。

仕方なしに僕は乱暴に抱き上げて、観客席の方を向く。

……スズカコバンちゃんのトレーナーさんは……あの人だ。確か、ダービーにも来ていた。

 

スズカコバンちゃんを渡すためにそちらへ行く。

その時、スズカコバンちゃんが呟くように言う。

 

「いい……レースだったわ」

「それは勝ってから言うんだな」

「じゃあ……あなたにとっていいレースね」

「……なんだそれ」

 

呆れた表情を作りながら僕はスズカコバンちゃんのトレーナーさんに言う。

 

「おい、邪魔だから連れて帰れ」

「ちょ、ちょっと!」

「ほらよ」

 

はらはらとした表情で僕を見ていた女性トレーナーはスズカコバンちゃんを受け取ると、安堵の表情を浮かべた。

 

「ラック」

 

そこから離れようとすると、声をかけられた。

わざわざカールちゃんとモンスニーちゃんが来てくれていたのだ。

 

「なんだよ」

「負けた。悔しいな……桜花賞でもこんなに悔しくなかったぞ」

「わたくしも……何度言ったのかわかりませんが、今度こそあなたに勝ちますわ」

「はん! 言ってろや! お前たちが勝つのは未来永劫ないから安心しろ!」

「ふ、そういうお前も悪くはないな」

「ビッグマウスなのは普段からでしてよ」

「……そういうことをここで言うなよ」

 

二人は悔しいだろうに、そう言うと笑った。

 

それからスズカコバンちゃんはウイニングライブができないほど疲労しており出られず、3着のモンスニーちゃんと4着のカールちゃんと踊ることになった。

相変わらずライトは2色だったが、端っこの方が赤く光っており、僕は望む望まないはともかく、少しだけ嬉しくなった。

 

ともあれ、僕は今回も勝った。

次は京都新聞杯だ。

次も勝つ。

そして、シービーやモンスニーちゃんとの決着は菊花賞だ。

 

 




前回、シンザンの話がわかんない! との意見をいただきました。
これまた僕の実力不足で混乱させました。すみません。
少しだけ解説したいと思います。
必要ない方は読まずに飛ばしてください。




















主人公であるブラックトレイターは転生者です。
元の世界で死に、この世界でウマ娘として生まれました。
神様に会ってなどいませんし、どうして転生したのかもわかりません。
ただあるのは『世界の異物としての自覚と孤独』だけでした。
似ている世界。だが、致命的に元の自分の住んでいた世界じゃない。その証拠がウマ娘という自分自身の体。世界と自分の記憶の齟齬によって他の誰も味わうことのできない孤独を感じていました。
シンザンや院長はそれを孤児特有のものだと考えていましたが、もっと根が深い問題だったのです。

この世界の異物である自分の居場所がここにはあるのか?
それに答えをくれたのがエーちゃんとトレーナーでした。
エーちゃんは血を分けた姉妹で、生まれた時からラックをを愛してくれました。そこに裏も表もないことは明確でした。
トレーナーはお互いに目標を持ち、ギブアンドテイクの関係でした。そして、それは対価というわかりやすい指標がある居場所だったのです。

トレーナーが無償の愛を与えたら壊れてしまうのがわからないという方がいました。
理由はそれではギブアンドテイク、つまり有償の関係が終わってしまうからです。
ラックはエーちゃんのように最初から最後まで愛してくれる存在や、トレーナーのような最初から最後までギブアンドテイクであるという、わかりやすいものしか信じられなくなっているのです。

これらのことをラックは自覚なく、そしてシンザンとトレーナーはわかっていました。
だからこそ、トレーナーたちは望む望まないにかかわらず、あの関係を続けなければならなかったのです。

そして、少しだけ重要になってくるのはキョウエイプロミスです。
最初の夏合宿、キョウエイプロミスはラックのことを『自分と同じ存在』と称しました。目標に向かっていく姿勢は自分と同じものだと。
つまりそれは、キョウエイプロミスは自分がいる限り、ラックは間違っていないと言ってあげたのです。
キョウエイプロミスはラックに無償の愛でも有償の関係でもなく、『共感』をラックに植え付けました。
それは孤独を消すものではないし、キョウエイプロミスはラックではないけれど、ラックの孤独を軽減する一つの要因になりました。
だから、ラックはキョウエイプロミスに懐いているのです。



僕が何故『転生』をこのように描いたかと言うと、僕だったら知らない世界に転生した時、孤独感で押しつぶされるだろうと考えたからです。
目の前にヒトがいたとしても、この世界は自分の世界じゃないので、そのヒトは生物学的にもホモサピエンスじゃないかもしれない。もしかしたら、物理法則なんて変わっているのかもしれない。星の大きさも、人々の常識も、談笑する相手が何を思っているのかも、全く自分の世界とは異なるかもしれない。
見た目だけが人間の宇宙人の中に放り込まれても、自分だけは違うと思ってしまう感覚と言った方がいいでしょうか。
主人公が生まれた時に感じていたのはそれに近い感覚なのです。
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