今日は3回投稿します。
次は15分後、その次は19時半です。
よろしくお願いします。
僕はウイニングライブに参加することができなかった。
限界を超えて酷使した足は赤く腫れあがり、その日に動くことができなかったからだ。
すぐにトレーナーが来て、病院に行くと僕に言ったのだ。
僕はシービーのウイニングライブだから参加したいと言ったが、それは許可されなかった。
シービーにも言ったのだが、シービーも病院に行けと言った。
それでも駄々をこねていると、東条トレーナーとルドルフがやってきて僕を連行した。
病院では折れてはいないが、足を酷使しすぎだと言われ、休養を言い渡された。本来だったら、筋肉がズタズタになるくらいに酷使されているとも言われた。
ウイニングライブはタブレットで観ることになった。
かっこよく踊るシービー。
僕のクラシックは終わった。
もしかしたらすぐに治るかもしれないが、トレーナーが今年は絶対にレースに出さないと言った。
有馬記念にも出たいなと思っていた僕はがっかりした。
「どうして、あんな無茶をした?」
「どうしてって、ああしないと勝てないでしょ?」
「勝つ必要など、ないと言ったはずだ。こんなことになるくらいなら、歩いて帰ってこい! あとちょっとで、お前は走れなくなるかもしれなかったんだぞ!」
病室で、僕はトレーナーにそう言われた。
大声で言うトレーナーに僕はびっくりした。
ここまで口調を荒げるのは珍しかったからだ。
「なに、怒ってるのトレーナー? もうちょっとだったんだ、ほら、僕としては大金星って言えるでしょ? 結果は結果だけど、あのシービー相手にあそこまで行ったんだ。しかも、レコードだよ! もう才能がないとか関係ないよね!」
僕は笑ってそう返す。
その瞬間、僕は強い力で掴まれる。
トレーナーは怖い表情をしている。
僕、頑張ったじゃないか。
できるところまでやった。
ほら、世界にだって、手が届いてたんだよ?
褒めてよ、トレーナー。
お前にしては頑張ったなって。
怒ってよ、トレーナー。
何で1着じゃないんだって。
「いっ……たいな。でも……勝った方がいいでしょ? まあ、確かに負けて怪我は良くない。うん。ごめん。だから、次は勝つよトレーナー」
そう言うと、トレーナーの目の色が変わった。
「バカ野郎が!! お前がどれだけ愚かなことをしているのか、わかってるのか!? 怪我がどれだけのウマ娘を苦しめてきたのか、まだわからないのか!? トレーナーはレースには手が出せない! トレーニングじゃないんだぞ!! 怪我をするくらいなら、レースなんぞ――」
パンと乾いた音がする。
東条トレーナーがトレーナーを叩いたのだ。
東条トレーナーはトレーナーを睨みつける。
「黙りなさい。私もトレーナーだから気持ちはわかる。だけど、それ以上言わせないわ。この子がどんな気持ちでレースに臨んでいたのか、わからないわけじゃないでしょう!?」
トレーナーはそう言われ、震える息を整える。
目を強く瞑り、自分を落ち着かせる。
今気づいたが、トレーナーの顔は蒼白で、脂汗もにじませていた。
ともすれば、僕よりも死にそうな顔色だ。
長い沈黙の後、トレーナーはぽつりと言う。
「……すまない」
「少し頭を冷やして来なさい」
「……わかった」
トレーナーは震える手をどうにか抑える。
そして、僕に目を合わせて言った。
「俺には、お前が必要だ。それを忘れないでくれ」
それを見送ると、東条トレーナーは跪いて僕に目線を合わせる。
「ブラックトレイター。あなたもよ。あなたは頑丈で治りが早いかもしれないけど、怪我をしていい理由にはならないの。それが一生のものになるのかもしれないんだから」
「……でも、勝ちたかったんだ。まだ、シービーと走ってもいいって、思いたかったんだ」
「ラック……」
ルドルフが心配そうに僕を呼ぶ。
「……少し、休みます」
「……わかったわ。ルドルフ、行きましょう」
「しかし……」
「ルドルフ、心配しないで。ちょっと落ち込んでるだけだから。すぐに元気になる。じゃないと、シービーが満足に勝利の余韻に浸れないでしょ?」
「……無理はするなよ」
「もちろん」
そうして、僕は一人になった。
僕は負けた。
別に無敗に拘っていたわけではない。
シービーに勝ちこしていること自体が奇跡だ。
だから、これは単純に負けて悔しいだけ。
すぐに元気になるさ。
これからの予定も立てないといけないしね。
それからトレーナーが一度帰ってきて僕と話したが、何故か頭がぼうっとして何を話したのか覚えていなかった。
面会時間ギリギリまでトレーナーは居てくれたが、結局時間がきて帰らされてしまった。
僕はそれから数日、治療のために面会は禁止になった。
大丈夫。
まだいろんな人との約束がある。
早く元気になってそれを守らないと。
だけど、悔しいことは連続でやってくる。
それからすぐのジャパンカップ。
プロミス先輩はアタマ差で2着になった。
その代償は大きく、その時の怪我が原因で引退することになった。