さて、生徒会の仕事。
書類整理はお手の物とは言わないが、前世の記憶を持つ僕はそこらの生徒よりかはできる。
問題はそれ以外だ。
一つは海外から来るウマ娘の対応。
これに関しては比較的スムーズに終わらせることができる。言語の壁があるが、2周目の人生において堪能とは言わないが、英語で対応はできる。
ただ、舐めた態度のウマ娘が来ることもあるので、そこはわからせないといけない。
シンザン会長やルドルフのようなオーラは出ないので、僕は得意の演技で乗り切っている。
次に校内での問題解決。
これは学業の先生や生徒が入れられる意見箱を見て、審議し承認するか否かを決める。
意外とこれが時間がかかる。
生徒の数は1000じゃ足りなく、ましてや寮生活で不満もたまることもあるからだ。
だから、細やかに仕事をする必要がある。
おそらくルドルフが力を入れていたのはここだ。
そして、一番問題だったのは校外への情報提供だ。
ルドルフはもう学園の顔になりつつある。だから、代わりに僕が出たら大変なことになる。
……で、どうしようかと迷った結果、やっぱり僕が出ることにした。
生徒会での僕の目標は仕事をなくした状態でルドルフにバトンタッチすることだから、むしろブラックトレイターの名前で強引にでも終わらせた方がいいという判断だ。
すぐに交代すれば、『奪い取ったはいいけど、すぐに奪い返された』みたいなストーリーできそうだし。
でも、トレセン学園の評判落とさないようにしないと。
……あれ?
結構無茶だったりする?
僕ミスった?
……いや、もうブラックトレイターとして生徒会乗っ取る宣言しちゃったしやるしかない!
コンコンとノックがあり、僕は「入れ」と言う。
入ってきた記者たちはぎょっとした目で僕を見る。
「ようこそ、俺の生徒会へ」
「な、わ、我々はシンボリルドルフさんに取材をと……」
「ああ、それは間違いだ。お前たちは『生徒会長に学園を案内してほしい』という依頼をしてきた」
そういうと、同じことだろうという顔をする。
だが、僕は『生徒会長代理』と書かれた腕章を引っ張って見せる。
「今は俺が生徒会長だ」
「ど、どういうことですか!?」
「どうもこうもねえ。生徒会は俺が乗っ取ったってことだ」
「し、シンボリルドルフさんはどこへ……」
リギルなんだけど、ルドルフの体調不良のために僕が代わりにいるなんて言えないしなぁ。
あ、でも、勘違いしてくれるかな?
「シンボリルドルフは……今はとてもじゃないがレースに出れない状況でなぁ。可哀想に。理由なんて、てんで見当もつかないが……きっと今は大変なんだろうなぁ。ま、だからこそ、俺に生徒会長のお鉢が回ってきたってことだ。よくわかったか?」
「な……!」
「そういうことだ。じゃあ、仕事をしよう。それとも、今すぐ帰るか? シンボリルドルフのことは仕事の内に入っていないからな。俺が許可しなきゃ、お前らは部外者だ。俺はどっちでもいい。仕事をするか、帰るか。どっちだ?」
そういうと、記者たちは顔を見合わせて、仕事をすると言った。
後ろではグルーヴちゃんがドン引きしている気配がする。
そうだ、この機会に紹介しておこう。
「おい、こいつの顔を覚えておけよ。こいつはエアグルーヴだ。あのシンボリルドルフの置き土産だ」
「シンボリルドルフさんの?」
「そうだ、あいつが目をかけていたウマ娘だ。そいつを使えるのは気分がいいからな。紹介してやる」
そう言って、顎で記者を指すとグルーヴちゃんは顔をしかめながらも自己紹介をする。
「……先行入学をしているエアグルーヴです。この学園とシンボリルドルフ生徒会長に恥じない働きをして見せます」
「俺に恥じない、な?」
「……よろしくお願いします」
グルーヴちゃんは悪の元で働かされるシンデレラに見えるだろう。
満足気にうなずくとグルーヴちゃんは不満げに僕を見る。この子、ちょっとルドルフに似てるな。悪役ロールを止めろとか言い出しそうだ。
ちなみに、理事長に僕が生徒会長の仕事をすることを相談したが、「賛成! 君もこの機会に名誉を挽回するといい!」と言われてしまった。ごめんなさい、汚名を挽回してしまいます。いや、取り戻すわけじゃないから挽回はおかしいか。
菊花賞を終えて僕はむしろ有名になった。
あのミスターシービーと対を成すワールドレコーダー。しかも、始末の悪いことにそれだけの実力を持っていながら性格が死ぬほど腐っている。
URAとメディアと観客の僕の扱いは似ているようで違う。
『悪』と『悪役』は別なのだが、URAはどちらかというと『悪役』として僕を扱ってくれるらしい。まあ、URAも商売なので事実をぼかしながら売り出すみたいだ。
URAは菊花賞で負けた僕をどうするのか不安だったけど、そこは会長がどうにかしてくれたみたいだ。……というか、会長が僕を推薦したことになっているので、このトゥインクルシリーズの盛り上がりは会長のおかげとなっているようで、URA内部で幅を利かせているらしい。
とはいえそれは悪役あってのこと。なので、僕の悪役は今しばらくは続行してほしいと言っていた。言われなくてもやりますけれども……。
次にメディア。
メディアは僕を『悪』として扱っている。トゥインクルシリーズの汚点、みたいな扱いだ。理由はいくつかあって、その中で大きなのが『悪』として売り出した方が売り上げがあることと、僕はメディアを挑発しまくっていたのでそもそも嫌われているのだ。多少僕の演技にぼろが出ても悪役を続けていられているのはメディアのおかげと言っても過言ではない。
とはいえ、そう扱っているだけであって、僕がいなくなったら利益が落ちることもわかっているようで、直接害しにくるということはないようだ。
で、最後に観客。
観客というが、URAとメディア以外という括り。彼らは大体が僕を『悪』として扱っている。色々と挑発してきたが、デビュー戦などは直接僕が悪いことをしたことになっているので、印象は最悪だ。
だけど、僕に何かができるというわけではない。良家に叱られたURAは生徒の安全確保を強化せざるを得なくなったし、僕を害したら普通に犯罪者だ。それと、風の噂によるとシンボリ家とメジロ家が警備強化を手伝っているとのことでさらに僕に何かできる環境はなくなった。
しかし、いろんな考えを持つ人もいるようで、心情としては嬉しいことで立場的には嬉しくないことに、僕のファンもいるよう。
その人たちは有馬記念から心配してくれたようで、SNSでも休んでほしいという声がいくつかあった。
紹介が終わったので、僕たちは校内を歩いて回ることにする。
校舎や食堂、部室棟やトレーニング施設などを見て回ることになる。
生徒の生活している寮は女性の記者だけでの案内だ。
その時に乙名史という記者が話しかけてくる。確か、月刊トゥインクルという雑誌の記者だ。
「ブラックトレイターさんも寮に泊っているのですか?」
「あ? ああ、そうだ。全寮制じゃないが安上がりだからな」
「同室の方はどのようなウマ娘なのですか?」
げ、と僕は思う。
実は僕が泊っている場所は生徒が泊るような部屋じゃないのだ。僕は使っていない小さい物置に泊っている。
というのも、僕の悪評が大きくなるにつれ、同室の子には負担がかかってしまうからだ。だから、僕は半分無断で部屋を出て物置に泊まっている。……寮長にも見逃されているのでそれでよしとしている。
まあ、それ自体に不満や負担はない。そもそも、部屋に帰ったら寝るだけだ。それまでは帰らずにトレーニングか勉強をしてるので特に思うことはない。自業自得だしね。
……実は孤児院からの手紙は元の部屋に来ていたのに気づかずにいて、届け先のない手紙は送り返されてしまっていたらしい。
とはいえ、どう答えたものか。
「……興味ないな。どうでもいい。そこまで寮には帰らないからな」
そう言えば記者は夜な夜な悪いことをしているのではないかと勘違いする。はずなのだが、乙名史記者は興奮したように言う。
「それはつまり! 日中はトレーニングをしているということですか!? 夢を叶えるために! 普通ではないほどの日常を送っていると!!」
「は!? いや、俺をなんだと思っているんだ!?」
「素晴らしい! 考えてみれば、そうでなければワールドレコードなど到底成し得ない偉業! シンボリルドルフさんが生徒会を任せるだけはあります!!」
「ちょ、ちょっと待て! 任せられたわけじゃねえから! 俺が生徒会を乗っ取ったんだ!」
「つまり、自ら生徒会長の代わりを!?」
「そうだけど、そうじゃねえ……!」
は、話には聞いていたけど、全然思い通りに解釈してくれない!
い、いや、他のウマ娘にとってはそれでいいのかもしれないけど、僕にとっては不都合だ!
「その証拠に我々に対する仕事はきっちりとこなしてくれています!」
「ぐっ……!」
そうだけど!
言ってることはほぼ正解だけど!
まずい。
このまま暴走させておけば他の記者がどう解釈するのかもわからなくなってくる!
「もういいだろう! 寮はここまでだ! ルドルフが作った原稿があるから、それを読んでおけ!」
僕はそう言って、寮の紹介文を記者に渡す。
そして、そのままトレーニング施設……練習用ターフを案内する。
そこではたくさんのウマ娘が各々のトレーニングをしている。
もちろん、リギルやカノープスもいる。だが、ルドルフはいないことが見て取れる。ルドルフがトレーニングしていたら僕はキレるところだ。
「ここは第一ターフだ。基本学園が開くと同時に使えるようになり、閉まると同時に追い出されることになる。芝のメンテナンスは夜に行われるから基本年中無休だ。だが、定期的に大掛かりな植えなおしが入るから、その日だけは使えない。……ま、いくつかターフはあるからその時は他が使えるがな」
「……あの、ブラックトレイターさん?」
「ちなみにメンテナンスのバイトはいつでも募集している。俺のために働きたいというのであれば、即刻応募しろ。悪いようにはしない。それはちゃんと記事にしろ。いいな?」
「質問を……いいですか?」
「ダメだ。許可しない。ダートも同じように使われている。だが、そっちは使うウマ娘が少ない。ダートにも芝はあるレースもあるしな。だが、むかつくことだがダートのウマ娘も芝のウマ娘に負けず劣らない実力を持っている。ダートに出たことのある俺だからわかる」
「隣にいるのはミスターシービーさん、ですよね……?」
「質問は許可しないって言ったろうが……」
ターフに行き、説明をしていると、そこでトレーニングをしていたシービーに見つかり、ニコニコしながら寄ってきたのだ。
「なんだよ、俺は今、忙しいんだ。お前もそうだろ?」
「えー? 休憩ちゅー! ね、何やってんのラック! 面白そう!」
「俺は今、生徒会長だ。そして、生徒会長命令だ。トレーニングに戻れ」
「やだ!」
「戻れ!」
「やだー!」
「もどれ! おい、誰かスピカのトレーナーを呼んで来い! 沖野トレーナーだ!」
「トレーナーは許可してくれたもーん!」
そうだよね!
そういうこと言う人だもんね!
沖野トレーナーはウマ娘の自由意思を尊重してくれると同時にウマ娘に夢を見ている人だ。だから、さらにウマ娘が輝くためのライバルというものを大切にしているみたいだ。
だから、シービーを自由にさせているよう。
僕は仕事中だけどね!?
シービーは僕にぎゅっと抱き着き、そこから離れないアピールをする。
頬を膨らませて僕の上半身に絡みつく。
……こうなったらシービーは動かない。
諦めよう。
「次だ」
「え……いいんですか?」
「なにか問題が?」
「……いいえ」
僕はそのままシービーを絡みつかせたまま案内をすることにした。
後ろからは沖野トレーナーが「あれ!? シービー、休憩中だけって言ってたよな!?」と言っていたが無視した。シービーも無視していた。
結局シービーはそのままずっとついてきた。
というより、文字通りくっついていた。
見ろ!
これが英雄様の本性だからな!
グルーヴちゃんはちょっと引いていた。
そして、早々に記者を帰らせて次の仕事に取り掛かる。
何故かシービーもいるが。
「で、シービーは手伝ってくれるの?」
「いいよ! 面白そうだし!」
「次は意見箱だし丁度いいか」
「いいのか!?」
「いいよ。手伝ってもらわなかったからルドルフは不調になったんだし、同じことしちゃだめだよ」
「それは……そうなのか?」
「そうそう。紹介しよっか。グルーヴちゃん、こちらミスターシービー。知っての通り三冠ウマ娘」
「よろしく~」
「で、こちらがエアグルーヴちゃん。ルドルフから話を聞いてるかもしれないけど、先行入学して生徒会を手伝ってくれてるんだ」
「よろしく頼みます、先輩」
「いいよ、ラックと同じで。堅苦しいのは苦手だし」
「そうで……そうか、わかった」
で、とシービーは僕の顔を見つめる。
「で、どうしてラックは生徒会長なんかしてるの?」
「ルドルフが無茶して体調崩しても仕事してたからだよ。……シービー、知らなかった?」
まあ、東条トレーナーとマルゼンスキーが知らなかったからシービーが知らなくても無理はないかと思ったのだが、シービーは真顔で舌を出して言った。
「失敗したか。ラックが言えば反省するのはわかってたけど、ラックが生徒会長になるのはわからなかったなぁ。せっかくラックを生徒会に入れないためにルドルフを選んだのに」
「は?」
ちょ、ちょっと聞き捨てならないことを言っていたように思う。
「ど、どういうこと?」
「え? 何が?」
「ルドルフのこと知ってたの? というか、生徒会にしないためってなに?」
「知ってたよ。ルドルフはラックと同じタイプのウマ娘だからね。無茶するだろうなって思ってた。リギルの人達には特に警戒して隠そうとしていたみたいだけど」
「生徒会は?」
「冗談だって言ってたけど、シンザン会長が生徒会長を選ぼうとしてる時に言ってたんだ。だから、ルドルフを後釜に添えたの」
「なんで?」
「ラックは生徒会長になったら潰れるけど、ルドルフは生徒会長になったら強くなるかもって思ったからかなー」
「僕、聞いてないけど?」
「言ってないからね」
「というか、知ってたなら注意してよ! ルドルフ!」
「ダメ。アタシが言っても聞かないから。ルドルフは頑固だから、同じような目標を持つラックが注意するか痛い目見ないとわからないよ」
もう少し遅かったら痛い目見させてた、とあっけらかんというシービー。
一番怖いタイプだな……。
「ルドルフはすぐ戻ってくるだろうし、やっちゃおっか!」
「衝撃の事実を言われた後に気楽に行けないわ……」
「いーのいーの! どうせラックの評判じゃ生徒会長は長く続かないから!」
「さいですか……」
ともあれ、シービーの言う通りだ。
さっさと意見箱の中身を消化してしまおう。ルドルフが帰って来た時に多くなっていたら本末転倒だし、それまでに無くしてしまおう。
僕たちは意見箱をひっくり返す。
持った時に思ったが、想像以上に入っている。ルドルフがこれまでやってきてこれか。やはり時間がかかるな。
同じような意見をまとめてすぐにダメそうと思えるものは排除していく。だが、それでも半分以上残る。
「『寮に虫が出ます。助けてください』……虫よけの発注。いくらするんだろう。とりあえず、業者に言って見積。で、殺虫灯つける。……これならすぐできるかな」
「『食堂でお腹いっぱい食べれません』……そういえば、学食は食べ放題ではなかったな。金銭的に難しい生徒もいるか。どうする、ラック」
「うーん。そうだなぁ、当てがない……わけじゃないか」
「本当か?」
「うん。北海道のトレセン学園に相談しよう。もしかしたら解決できるかもしれない。格安で仕入れられれば無料で使えるようにURAがしてくれるかもしれない。食トレは必要だし」
「わかった。頼めるか」
「『生徒会が怖いです』……あはは! これ、送ってくる子が一番怖いもの知らずだね! どうする、ラック?」
「……ルドルフ、それ気にしてギャグの練習をしてるからなぁ。グルーヴちゃん、気づいたら褒めてあげて」
「……承知した」
「でも、それじゃ解決にならないかなぁ」
今の生徒会はシンザン会長&ルドルフがイコールになっている。
確かにあの二人は怖い。怖いと言うより威圧感がある。
意見箱はあるが、直接何かを言いに来るというのは難しいだろうな……僕も怖かったし。
「……思いつかないな」
「うーん、じゃあ後回し?」
「いや、でもルドルフの夢としては避けては通れない道だし、せめて生徒会に気軽に来れるようにしたいな。……生徒の意見を聞きに行こうか」
「今から?」
「うん、アンケート取ったらルドルフに嫌な顔されそうだし、直接」
「おっけー! 行こう!」
僕たちは校舎へ向かうことにした。
「おい、そこの……」
「ひっ、ブラックトレイター!?」
「……まあ、いい。次だ。……おう、ちょっと待て」
「話しかけてこないで!」
「……うん、ダメだ!」
僕は全然ダメだった。
そりゃそうか。
こら、シービー笑うな。……グルーヴちゃんはそんな顔するくらいだったら笑ってくれ。
「代ろうか?」
「いや、待って! 僕の本気を見せてあげる。ん、ううん! あー、あー、私の名前はホワイトローヤル。オッケ、行こう」
「ほ……?」
僕は髪の毛を下ろして清楚な感じの雰囲気を作る。
流石に2年くらい演技を続けていると色々と身についてくるのだ。穏やかな顔を作ればブラックトレイターとはわからないだろう。同級生は怪しいけど。レースを観てるだけの人なんかは普段の僕を見てもブラックトレイターとわからないほどだ。
「ねえ、少しいいかしら」
「うん? どうしたの?」
「シンボリルドルフさんについてお聞きしたことがあるんですけど……」
「会長?」
「はい、生徒会に相談したいことがあるんですけど、どのような方なのか気になって……」
「あー、そうだねー。生徒会長、ちょっと近寄りがたいよねぇ。私も話したことないけど、なんかこう、王様! って感じで怖かったし……」
「そうですよね……」
「でも、意見箱があるから、そこに投函するといいよ!」
「わかりました、ありがとうございます」
「いいよー、じゃあねー」
「はい、では」
僕は二人の元に戻る。
「驚いたな、演技でここまで変わるのか」
「でしょ? 四六時中演技してるからねー」
「しかし、ホワイトローヤル……どこかで聞いたような」
「あ、もしかして去年感謝祭来てた?」
「感謝祭……あ、思い出したぞ! あの仮面のウマ娘か!」
「あったりー! よく覚えてたね」
「あの走りで聞いたことのない名前だったからな、少し印象に残ったんだ」
「そっか! ……で、ルドルフなんだけどやっぱり恐れられてるみたいだねぇ」
「だねー、クラシックも始まるし皐月賞勝ったらもっと恐れられちゃうかもね」
「うん、どうにかしたいなぁ」
「アタシは無理だと思うけど」
「でも、きっかけくらいは作りたいな」
「どうやって?」
「……もう少し聞き込みしよっか」
「うーん、シンボリ家のご令嬢だしなー、私らとは格が違いますわ。三冠も望まれてるんでしょ?」
「いやぁ、リギルの友だちもシンボリルドルフさんは別格だって。流石に近寄りがたいかな」
「お堅い感じがねぇ」
「あのひと、笑うの? いや、薄っすら笑ってるのは見たことがあるけど、なんというか、強者の余裕みたいな感じだったよねー」
「生徒会……は行かないかな。そこに行くのは呼び出された時くらいだし、生徒会行くって言ったら『なにやらかしたの!?』ってなるよ」
「生徒会室、なんか出そうで怖い」
「普段通りもしないしなー、生徒会室の裏も薄暗いじゃない?」
「レースでボコボコにされました」
色々意見は出たが、まあルドルフのことを知らないからこその意見だった。
ルドルフ、模範になろうと外面は硬いからなぁ。
結局、その日は解決策も発見できずに終わった。