ウマ娘とかいう種族に転生した話   作:史成 雷太

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本当は出す予定はなかったのですが、出したくなったので出しちゃいました。
世代は前後したりデビュー時期が違ったりということで。


A Season of Encounters and Reunions

まずい。

とてもまずい。

何がまずいかと言うと感謝祭と入学式だ。

いや、忘れていたわけじゃない。

だが、準備を引き継いだわけでもない。

 

僕は急いで必要な書類をかき集める。

そして、わかったことがある。

シンザン会長は一人で学園の運営をするために業者などの外部のことは自動的に依頼が行くようになっていたことだ。

 

それに気づいたのが生徒会長代理になってすぐだったことも幸いした。

僕は急いで様々な準備をする。

まず、入学式だ。

これは理事長が動いてくれるから僕はスケジュール調整や会場の設営だけで大丈夫だ。

……僕がスピーチをするというのは問題だが、まあそこはいい。

入学式はいける。

ダメだったらどこかしらを頼ろう。

 

問題は感謝祭だ。

トレセン学園の感謝祭の規模は大きい。

毎年何万人もやってくるし、そもそも生徒の数もマンモス校であるから多い。人数不足でパンクしないかが問題だ。

 

少ない人数でこなせるようにしないといけない。

そのためには入念な準備をして問題を少なくする必要がある。

まず、やらなきゃいけないことは風紀委員や美化委員に協力要請。そして、オープンキャンパスの案内のためにチームにも要請することとその配置。

また、クラスやチームがやろうとしているイベントの把握、空き部屋やターフの確保と貸し出し書類の整備。

外部への情報提供は必要だし、そこは僕が出ないといけない。

 

ほんとにこれシンザン会長一人でやってたの?

ほんとにこれルドルフ一人でやる予定だったの? いや、グルーヴちゃんはいたけどさ。

 

僕は学園を駆け回ることになった。

 

 

 

入学式。

新入生は期待を胸に、少し誇るように新しい制服を着ていた。

輝かしさとほほえましさがそこにはあった。

出会いの季節だ。

ほとんどのウマ娘は初対面ながら隣になった子と話し、友達になっていた。

 

とはいえ、素直な気質が多いウマ娘とはいえそれがすべてというわけじゃない。

特にシリウスシンボリはフレンドリーではなかった。

いや、ある意味ではフレンドリーであったのかもしれないが、それはタラシという意味であった。

その顔の良さからすでに注目を集めていたが、シリウスはあえて無視していた。

 

僕は生徒の誘導を行っている。

ホワイトローヤルとしてだ。

シリウスには気づかれていないようだ。

 

「こちらへ来てください! はい、列を乱さないでくださいね!」

 

はーいと従ってくれる。

僕は思っているよりも仕事が楽だと感じていた。やっぱりみんな素直だ。

そうこうしていると、声をかけられる。

 

「な、なあ! あんた!」

「うん? あれもしかして」

「あんた、ホワイトローヤルか? あん時の姉ちゃんか?」

「タマモちゃん! 今年入学なの!?」

「せやで! 姉ちゃんのおかげや!」

 

葦毛のウマ娘、タマモクロスちゃんがいた。

そうか、今年入学だったのか。

 

「というか、よくわかったね?」

「へへ、姉ちゃんは別嬪さんやと思っとったからな!」

「ふふ、ありがと。入学おめでとうタマモちゃん」

「おう! ありがとな! しかし、姉ちゃん生徒会なんか。どーりで速いわけや」

「今だけね。お手伝いみたいなものだから」

 

そう言うと、タマモちゃんは僕をじっと見つめる。

なんだか居心地の悪い視線だ。

 

「ウチ、調べたんやけどな?」

「な、なにをかな?」

「ホワイトローヤル」

「僕?」

「そうや。姉ちゃんのレースをもういっぺん観たいって思ってな。せやけど、探しても探しても出てこーへん」

「……レースじゃあんまり成績残せなかったからなー」

「代わりに出てきたんはミスターシービーだとかメジロモンスニーだとかダイナカールだとか……ブラックトレイターとかや」

「……有名だからね?」

「姉ちゃん」

「なにかな?」

「姉ちゃん、ブラックトレイターやろ」

 

ぎく。

ご、誤魔化すか?

どうする、僕!

 

「そんな顔せんでもええよ。しゃべったりせえへん。ただ、難儀やなぁと思ってな?」

「うー、ありがと」

「なんであんな評判になっとるん? 姉ちゃんならもっとヒーローになってもおかしくないで?」

「まあ、それは色々事情があってね」

「ヒーロー探したらヒール出てきた時のうちの気持ちを考えてえや」

「……ごめんね?」

「ま、別にええで。うちは知ってる。それだけで十分や」

「ほんとうにありがとう……」

 

今はそこまで話している暇もないし、そこで僕はタマモちゃんと別れて自分の仕事に戻ることにした。

 

入学式はつつがなく進行していく。

国歌、校歌斉唱も終わり、理事長のスピーチも行われる。

理事長は身長が足りないため、あらかじめ台が置かれている。スピーチが終わるとたづなさんが回収していく。

 

そして、新入生代表スピーチ。

代表はイナリワンというウマ娘だった。

鹿毛の髪をボリュームのあるツインテールをしており、少しだけ江戸弁訛りが混じっていた。

あの髪の毛もふもふしたい。

 

それも終わり、とうとう生徒会長のスピーチが回ってくる。

 

『生徒会長代理ブラックトレイター』

「ああ」

 

僕の名前が呼ばれるとざわめき始める。

困惑や、噂を聞いていたウマ娘はやっぱりそうだったんだという顔をしている。

シリウスは面白そうに笑っている。

 

「ブラックトレイターだ。非常に残念なことにシンボリルドルフは今日来ない。ということで俺が代わりにやらせてもらおう。さて、ここに集まったウマ娘たちは全国から選りすぐられたエリートたちだ。だが、勘違いするなよ。ここでも勝てるのは一握り。特にクラシックレースなんぞ、その中のほんの少しだけだ。そこであえて俺から言わせてもらおう。勝て。勝つために学び、勝つために走り、勝つために生活しろ。厳しい競走人生が今、この場から始まるんだからな」

 

ちゃんとスピーチすると言っていたので、たづなさんの顔が怖いことになっている。

そろそろ切り上げないと。

 

「ウマ娘は走るために生まれてきた……わけじゃない。だが、ここにいるウマ娘は走るために来た。勝つためにいる。そうだろう? ならばその選択に誇れる道を歩め。以上だ」

 

僕はそう切り上げて舞台を後にした。

席に戻るとたづなさんが「後でお説教です」と小声で言ってきた。

 

入学式が終わると自由時間になる。

ここから寮に戻るでもいいし、ここらの散策をしてもいい。

 

晴れて僕の仕事も終わり……というわけでもない。

生徒会なので見回りがある。

ないとは思うが迷子になる可能性もあるからだ。

 

適当にとはいかないので、担当の場所を見回る。

そうしていると、人だかりができていることに気づいた。

 

入学式のために入ってきた報道陣やウマ娘……在校生も新入生も集まっている。

イベントはなかったはずだが。

 

「おい、そこで何をやってる!」

 

そう声をかけると全員がぎょっとした顔をしてこちらを見る。

 

「そこで何をしていると聞いたんだ。カメラ持ってるやつら、止めろ。入学式以外に許可をした覚えはないぞ。不法侵入と盗撮で訴えられたくなかったら仕舞って事情を説明しろ」

 

そう言うと一人のウマ娘が手を上げた。

 

「すみませんアタシのせいです」

 

僕は目を瞬かせた。

あんまりにその顔が綺麗だったからだ。美しい栗毛は輝いているし、スタイルもいい。

僕はそのウマ娘を知っていた。

というか、有名なウマ娘だ。

名前は確か、ゴールドシチー。

けど、有名人が入学するのは珍しくないはずなんだけど。

 

「お前の所為だとはどういうことだ。どうして俺の仕事を増やしたのか、言って見ろ」

「いえ、アタシが人を集めてしまったみたいで……」

「ああそう。じゃあ解散。報道陣はもう帰れ。わかったな? はい以外認めない」

 

そう言うと集まっていた人たちは散り散りになっていく。

何人か恨めしそうにこちらを見てきたが無視。

 

解散を見届けて見回りにもどろうとして、ゴールドシチーちゃんを放っておくことができないことに気づく。

ゴールドシチーちゃんが移動したらまた囲まれるだろう。

ため息を吐いて、ゴールドシチーちゃんに手招きをする。

 

「あの……」

「で、どこ行こうとしてたんだ?」

「え、あ、トレーニング施設です」

「ああそう。仕事を増やされても困るから案内してやるよ」

「あ、ありがとうございます」

 

僕は歩きながら話す。

 

「で、何であんなに囲まれてたんだ? シンボリルドルフだって入学式であんなに囲まれなかったぞ」

「それは……アタシがモデルだから」

「モデルだとなんかあんのか? ウマ娘なんてみんなアイドルみたいなもんだろ?」

「いや、全然違うから」

「あ?」

「い、威嚇しないでよ……ください」

「……わかったよ。話し方は好きでいい。話が進まん。で?」

「……モデルやりながらレースに出るなんて、本気じゃないって思われてるみたいで」

「本気じゃないんだろ。二足の草鞋で行けると思ってんのか?」

「っ! 本気だし! 二つのことを本気でやっちゃいけないっての!?」

「あっそ。じゃあ、証明してみせな」

「し、証明ったって……」

「今すぐには無理だな。選抜レースがあるからそこで勝てばいい。それができなきゃどっちも無理だって話だ」

「そんなの……」

「あのな、お前が特別だからこう言ってるんじゃねえからな? モデルをやってようとやってなかろうと同じことだ。ここにいる以上、走りで自分を証明し続けないといけねえんだ。それは誰だろうと同じだ。マルゼンスキーも、ミスターシービーも、シンボリルドルフだってそうだ。もちろん、俺も。わかったか?」

「……あんたも、自分を証明したいんだ?」

 

そう言われて悪役っぽくなかったか? と考えた。

いや、別にそうでもないか。

 

「おかしいことか? 俺は俺の証明をするためにここにいる」

「……そっか」

 

それから無言になったゴールドシチーちゃんを案内して入学式の仕事が終わった。

もちろん、たづなさんにはこってり絞られた。

 

 

 




例のごとく関西弁がわからない僕です。すみません。
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