ウマ娘とかいう種族に転生した話   作:史成 雷太

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エピローグ。
短いです。


Let's have fun next time anyway

「ふん、ふんふーん」

 

火照った体にシャワーが心地いい。

 

ああ、楽しかった。

心躍るレースだった。

負けたのは本当に悔しいけど、ラックとのレースはいつも楽しい。

まさか、マルゼンスキー先輩を倒せるとは思っていなかった。

 

次は勝つ。

次はいつだろう。

クラシック路線に行くなら皐月賞は絶対。

もしかしたら、デビュー戦で当たっちゃうかも。

そうしたらどうしよう。

まあ、別にデビュー戦の賞金を渡せばいいか。

勝手に払っちゃってもいいかもしれない。

 

キュっと水を閉め、体を拭いて外に服を着る。

 

「ふふふふーんふーん」

 

早く走りたいな。

早く着替えてミイラみたいになったラックをからかいに行こう。

 

シャワー室を出ると、そこにはシンザン生徒会長がいた。

 

「やあ」

「こんにちは、会長」

「少しいいかね?」

「うーん」

 

気分的には良くないが、今回のことでは世話になったのだ。

少しくらいいいだろう。

 

「いいですよ」

「そうか、ありがとう」

 

アタシ達は府中に帰ってきていた。

みんな疲労困憊で、アタシのトレーナーがバスを運転して送ってくれたのだ。

 

生徒会室に連れられ、入っていく。

茶菓子を出されたので、モグモグと食べる。

ラックに自慢しちゃお。

この前めちゃめちゃサインを自慢されたけど、アタシ会長のファンなんて言ってないよね? あんまりそういうの興味ないんだけど。

 

「まずは、2着おめでとう」

「知ってます? 会長。1着は勝ちでそれ以外は負けって言われるんですよ?」

「手厳しいな。いや、すまない」

「いえいえ」

 

会長は少しだけ何かを考える仕草をする。

 

「私は、自分がなんでもできると思ってやってきたんだが……」

「ふむ?」

「意外とそうでもないらしいということにここ数年でようやく気付いたよ」

「ふーん。だから生徒会って人数少なかったんですね?」

「それは、どうだろうなぁ。学業とレースを両立できるウマ娘がいないからかな」

「両立できてる子もいるんじゃないんですか?」

「G1に勝って学業もする。その上で生徒会の仕事があるのは大分難しい」

 

言われてみれば、まあ、そうかと思う。

というか、G1は高すぎない?

G2くらいならいくらでも、とは言わないけど悩むほどいないわけではないだろうに。

 

「それで、なんです?」

「私は生徒会を辞めようと思っている」

 

それは少なくない衝撃があった。

シンザンというネームバリューはすさまじいものだ。

なにせ『神』と言われたウマ娘だ。

シンザンを超えろと掲げられたスローガンはあまりにも有名だ。

 

「今すぐに、とは言わないけどな」

「ふうん、じゃあ後継者を見つけないとですね」

「そう! その通りだ」

 

会長は我が意を得たりとばかりに指を立てる。

 

「後継者……1年以内には見つけたいんだ」

「見つければいいんじゃないですか?」

「そうだ。その通り。ミスターシービー」

 

嫌な予感がする。

こういうのはいつも当たるのだ。

 

「生徒会長を任せ――」

「いやです。ぜったい」

「……そう邪険にするな。少し話を聞いてほしい」

「いやですよぅ。ジュニア級のか弱いウマ娘に言うことじゃないし」

「どうしてもか?」

「どうしても」

「じゃあ、ブラックトレイターに頼もう」

 

その瞬間、手元にあった湯呑が会長の後ろで割れた。

 

「なんで、ラックが出てくるの?」

「……せめて質問してから投げてくれないかな?」

「なんでラックが出てくるの?」

「適任じゃないか。学業は優秀だし、あのマルゼンスキーを下したジュニア級のウマ娘。しかも、フレンドリーで、ウマ娘のためならなんでもする。ま、そのフレンドリーさに周りが応えているのかは別だが、時間がどうにかするだろう」

 

ほら最高だ。

そう会長は言った。

 

アタシはゆらりと立ち上がった。

 

「ラックはアタシのだよ」

「いいや、君のじゃない」

「でも、生徒会のでもない」

「そうだね、ブラックトレイター『が』生徒会になるんだから」

 

じっと見つめ合う。

ピリピリとした空気が張り詰める。

 

不意にふっと生徒会長は笑った。

 

「冗談だよ。君も、ブラックトレイターも生徒会は合わないだろう。まあ、ブラックトレイターの場合は合いすぎて壊れるというのが正しいか」

「……じゃあ、何?」

「私も仕事が忙しくなる。こちらではなくURAの方だ。だから、後任を探してほしいんだ」

「アタシにメリットないんだけど?」

「これはブラックトレイターのためなんだ」

「え、なんで?」

 

会長は心底悲しそうに言う。

 

「ブラックトレイターのURAの評価は知っているか?」

「知らないけど」

「URA荒らしだ」

「荒らし?」

「そう。トレセン学園に特別措置で入学し、その影響で奨学金制度が議題に上がった。理事長が推しているので通ることになるだろう。そうしたら寒門のウマ娘が入学するようになるかもしれない。格式はがたがたになる。元凶であるブラックトレイターはURAにとっては存在自体が不都合なんだ」

「それは……」

 

反論をしようとしたら制される。

 

「わかっている。今言ったことはそういう評価ということだ。加えて、今回のことだ。URAの作った制度をレースを利用して一つ壊し、それによってURAの一派が辞めることになった」

「そんなの勝手じゃないの?」

「レース結果を盾にして実行したのは私だが、制度を作ったURAの職員をどうにかしてほしいというのはブラックトレイターが言い出したことなんだよ。準備の期間が短かったから、ブラックトレイターの思惑を隠しきることができなかった」

 

アタシは黙る。

 

「しかも、だ」

「まだ何か?」

「URAだけじゃないんだよ」

「は? まだあるの?」

「ああ、そうだ。学園のウマ娘やトレーナーからのブラックトレイターの評価は地に落ちている」

「なんでさ。確かに友達はいないけど」

「金を払わずに入学。デビュー戦は余裕だと豪語する。良くない噂のトレーナーと専属契約をしている。……それに、今日のレースの勝ち方も問題だった」

「はあ? 何が?」

「外から見たらマルゼンスキーを潰しに行っただけのウマ娘に見えるんだ」

「待ってよ。ラックだけじゃなくて、アタシたち全員の勝ち筋はあれしかなかったじゃん」

「そうだ。だけど、わからないんだろう。特にスポーツマンシップにあふれている者には汚い戦法に見えたんだ。他のウマ娘は勝つために走ったが、ブラックトレイターはマルゼンスキーを負かすために走ったのだと。結果的に勝ったが、それすら疑念になった。そういう声があったからかは知らないが、先ほどURAからブラックトレイターにドーピング検査をしろと言われたよ」

「……」

 

アタシは無意識に足で地面をかいていた。

 

「どうにかしに行く。ブラックトレイターが不当にレースに出れないなんて事態になりかねないからな」

「……はあ、だから後は頼むって?」

「そうだ。頼めないか?」

 

アタシは考える。

適任なんているだろうか。

強いて言うならマルゼンスキー先輩だ。

だが、東条トレーナーが止めそうだ。

折角走れるようになったのに邪魔するなって言われるだろう。それでレースに出れなかった、なんて日にはラックに嫌われるだろうし。

ダイナカールやメジロモンスニーは?

……今日のレースで目が燃えていたからダメだろうな。

責任感があって強くて頭が良くて……あ。

 

「1年」

「ジュニア級か?」

「ううん、1年待てない?」

「どういうことだ?」

「適任がいるんだ。家柄も責任感もあって強くて頭が良い」

「G1を勝ってるのか?」

「うん。G1バだよ」

 

――未来のね。

 




一体誰なんだ!
次の生徒会長は誰なんだ!
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