巫女なボクと化身使いなオレ   作:支倉貢

61 / 61
第54話 vs秋空チャレンジャーズ2 〜背負うものなき試合〜

それから試合が再開され、数分が経過する。再び、相手選手が雷門のディフェンスラインに攻め込んでくる。

その中で、蘭丸がボールをキープしている選手から流れるような動きでボールを奪っていった……しかし。

 

「うわぁっ‼︎」

「っ……なにっ……⁉︎」

 

同じく、ボールを奪おうと駆け込んでいたマサキと、衝突した。突然のことに、蘭丸は驚き目を見開き、マサキを見ていた。

が、次の瞬間、蘭丸は痛みに顔を顰め、倒れ込んだ。

 

「蘭丸‼︎」

 

ボクは倒れた蘭丸に駆け寄り、助け起こす。

 

「大丈夫⁉︎」

「あ、ああ……」

 

蘭丸を支えながら立たせて、ボクはドリブルで相手陣営へ切り込むマサキを見た。マサキは天馬くんのパスを求める声も聞かず、自分でシュートを放った。しかし、それはGKに止められ、マサキは悔しげに顔を歪めていた。

 

「ねえ、何かあったの?」

「……足を、踏まれたんだ」

「え⁉︎」

 

ボクは驚いて、マサキに再び視線を投げる。

……どうして、蘭丸にそんな酷いことを。マサキ……一体何を考えてるの?

疑わしげな視線をマサキに向ける。マサキはボクと視線を交わして、ニヤリと笑った。

 

「……‼︎」

 

ボクは、思わず言葉を失った。どうして……? 何でそんなことするの? マサキ……。言いたいことはたくさんあるのに、混乱で頭の中がごちゃごちゃしてて訳わかんない。

蘭丸が、マサキとピリピリしてる理由がやっとわかった。原因は、マサキにあったんだ……!

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ大人の本気を見せてやれ‼︎」

 

木暮さんがチームメイトに呼びかけると、中盤を突破され、カラフルな髪のおばあちゃんにボールが渡った。そして、そのおばあちゃんが指笛を吹いた。

ん? まさかこれは……。

 

「「「皇帝ペンギン2号‼︎」」」

「おおーっ‼︎ 出たァ、皇帝ペンギン2号‼︎ わああっ! すごいすごい‼︎」

 

昔TVでやってた試合で、鬼道さんがやってた帝国学園のシュート技! まさか生で見れるとは思わなかったよ! ん? でもこれ鬼道さんじゃないから生って言える……?

興奮してから、少し考え込んだボクの横を、シュートが通り過ぎる。

 

「……あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"‼︎ しまったぁぁぁ‼︎」

「アホかお前‼︎」

 

すっかりディフェンスの仕事を忘れていたボクに、倉間くんが怒る。まあ、当然だよね……。うう、申し訳ない。

ボクがシュートを止めようと走り出したその時、シュートの前に躍り出てきた影があった。マサキだ。

マサキはシュートを前に、構えをとった。

 

「ハンターズネット‼︎」

 

宙に現れた網のオーラに皇帝ペンギン2号は食い止められた。

 

「えっ⁉︎」

「なにっ……⁉︎」

「すごい必殺技だ……!」

 

周囲から感嘆の声が上がる中、マサキは笑みを浮かべてボールを大きく出した。ボールは天馬くんに渡り、さらにボクにパスを出す。ボクはダイレクトで、必殺技を発動した。

 

「業の華‼︎ そりゃああ‼︎」

「やらせるか‼︎ 旋風陣‼︎」

 

木暮さんが必殺技で止めようとするも、あいにくボクのシュートはそれで止められるほどヤワじゃないもんねっ! シュートは木暮さんを吹き飛ばし、GKも跳ね飛ばしてゴールに突き刺さった。

 

「「「やったぁぁああああ‼︎」」」

 

天馬くん、信助くん、ボクの三つ巴でジャンプしながら喜ぶ。その時、得点を告げるホイッスルが鳴った。

 

「やっぱりすごいや、雷門は……!」

 

ディフェンス技を破られた木暮さんも、その顔には笑顔が。……やっぱり、サッカーって勝手も負けても笑顔になれるものなんだ。ボクは改めてそう感じた。

その後、試合終了のホイッスルが、河川敷に鳴り響いた。





【挿絵表示】


皆様のおかげで巫女ボク2周年! 応援ありがとうございます!
6月に始まったので、6月といえば……ジューンブライド! ってことで。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。