それから試合が再開され、数分が経過する。再び、相手選手が雷門のディフェンスラインに攻め込んでくる。
その中で、蘭丸がボールをキープしている選手から流れるような動きでボールを奪っていった……しかし。
「うわぁっ‼︎」
「っ……なにっ……⁉︎」
同じく、ボールを奪おうと駆け込んでいたマサキと、衝突した。突然のことに、蘭丸は驚き目を見開き、マサキを見ていた。
が、次の瞬間、蘭丸は痛みに顔を顰め、倒れ込んだ。
「蘭丸‼︎」
ボクは倒れた蘭丸に駆け寄り、助け起こす。
「大丈夫⁉︎」
「あ、ああ……」
蘭丸を支えながら立たせて、ボクはドリブルで相手陣営へ切り込むマサキを見た。マサキは天馬くんのパスを求める声も聞かず、自分でシュートを放った。しかし、それはGKに止められ、マサキは悔しげに顔を歪めていた。
「ねえ、何かあったの?」
「……足を、踏まれたんだ」
「え⁉︎」
ボクは驚いて、マサキに再び視線を投げる。
……どうして、蘭丸にそんな酷いことを。マサキ……一体何を考えてるの?
疑わしげな視線をマサキに向ける。マサキはボクと視線を交わして、ニヤリと笑った。
「……‼︎」
ボクは、思わず言葉を失った。どうして……? 何でそんなことするの? マサキ……。言いたいことはたくさんあるのに、混乱で頭の中がごちゃごちゃしてて訳わかんない。
蘭丸が、マサキとピリピリしてる理由がやっとわかった。原因は、マサキにあったんだ……!
「そろそろ大人の本気を見せてやれ‼︎」
木暮さんがチームメイトに呼びかけると、中盤を突破され、カラフルな髪のおばあちゃんにボールが渡った。そして、そのおばあちゃんが指笛を吹いた。
ん? まさかこれは……。
「「「皇帝ペンギン2号‼︎」」」
「おおーっ‼︎ 出たァ、皇帝ペンギン2号‼︎ わああっ! すごいすごい‼︎」
昔TVでやってた試合で、鬼道さんがやってた帝国学園のシュート技! まさか生で見れるとは思わなかったよ! ん? でもこれ鬼道さんじゃないから生って言える……?
興奮してから、少し考え込んだボクの横を、シュートが通り過ぎる。
「……あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"‼︎ しまったぁぁぁ‼︎」
「アホかお前‼︎」
すっかりディフェンスの仕事を忘れていたボクに、倉間くんが怒る。まあ、当然だよね……。うう、申し訳ない。
ボクがシュートを止めようと走り出したその時、シュートの前に躍り出てきた影があった。マサキだ。
マサキはシュートを前に、構えをとった。
「ハンターズネット‼︎」
宙に現れた網のオーラに皇帝ペンギン2号は食い止められた。
「えっ⁉︎」
「なにっ……⁉︎」
「すごい必殺技だ……!」
周囲から感嘆の声が上がる中、マサキは笑みを浮かべてボールを大きく出した。ボールは天馬くんに渡り、さらにボクにパスを出す。ボクはダイレクトで、必殺技を発動した。
「業の華‼︎ そりゃああ‼︎」
「やらせるか‼︎ 旋風陣‼︎」
木暮さんが必殺技で止めようとするも、あいにくボクのシュートはそれで止められるほどヤワじゃないもんねっ! シュートは木暮さんを吹き飛ばし、GKも跳ね飛ばしてゴールに突き刺さった。
「「「やったぁぁああああ‼︎」」」
天馬くん、信助くん、ボクの三つ巴でジャンプしながら喜ぶ。その時、得点を告げるホイッスルが鳴った。
「やっぱりすごいや、雷門は……!」
ディフェンス技を破られた木暮さんも、その顔には笑顔が。……やっぱり、サッカーって勝手も負けても笑顔になれるものなんだ。ボクは改めてそう感じた。
その後、試合終了のホイッスルが、河川敷に鳴り響いた。