純白少女の行く末は 作:りらりー
「──ここ、どこです?」
少女──シトラは思わず出た疑問に首を傾げる。本当に身に覚えがなかったからだ。
遂に買われた、と言うなら分かるのだ。
だがそれにしては状況がおかしい。なにせ、シトラは自分でも己に提示されていた価格がちょっとどころじゃなくお高い事が分かるのだ。
なら、こんな妙な状況になるはずがない。
何度か訪れて、見定めて。それでいて、なお欲しいと思ったときにそれを『買う』のだから。
とんでもないお金持ちでポンと買ってしまったと言うのもあり得るが。
「ま、いいでしょう」
そして、ベッドから降りようとし──、
「──っとと」
バランスを崩して倒れそうになり、咄嗟に地面へ足を付ける。ヒヤリとした感触が足裏から伝わり、思わず『ひえっ』と声を出した。
そして、一息ついて辺りを見渡す。
「……なんもないですね」
視界に入るのは平坦な部屋。少し冷たい空気が喉に刺さるが、それだけ。新品の木々で出来た壁に扉。上に掲げられているのは、それなりに高価な『魔力灯』と言う物だったはず。
「うーん」
そうしてしばらく見渡した後、一度頷くと扉へと向かう。
(外、出ましょうか)
なんとなくわくわくした気持ちがその行為を助長しているのも理解しながら、しかし危険と分かっていても止まることはない。それは狭い世界しか知らなかった弊害でもあったのだろう。
そして、ガチャリと扉は開く。そして目に入ったのは──、
「……紙?」
壁に貼られた、大きな大きな一枚の紙であった。
一目見ればシトラには分かった。それは地図である。長い長方形が並んだそこは階段であろう。半円のような物が描かれたそこは扉であろう。
そして、紅い丸に塗り潰されたそこが現在地──
(……あれ?)
思わず左右に首を振る。長く伸びる通路がどちららにもあり、その先の点は黒く染まるほど遠いようだった。敷かれたカーペットはやけに鮮やかな赤色だった。
「……ですよね」
もう一度地図を見上げる。紅い丸が刻まれた位置は、左側に位置する角のつきあたり──つまりは、これが現在地だとするなら左右に通路など伸びている筈がない。
右上を眺める。そこにポツリとある数字は1。違和感はない。だが、余りにも怪しすぎた。
「……信用ならないですね、この地図」
だが、ある程度参考にはなるだろう。
再度後ろを見遣る。何もない部屋。変哲もない扉。
出てしまっても、構わないだろう。
「れっつらごーです」
なんとなく、自分を励ましたくなり適当な掛け声が喉から漏れ出る。
とりあえず左に行こう。そう決めると、以外と足は軽かった。