代行者、近界に立つ。   作:フェクト

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こんにちは。今回の話は大分難産でした。おかしい部分が多々あると思いますが見つけたら優しく教えて下さい。


第5話

───────意識が浮上する。目を開け、視界に入った白い天井と鼻に入ってくる消毒液の匂いでここが病院であることを理解した。

 

「(俺は何故病院に────、そうだ俺は門に吸い込まれて─────駄目だな、そこから先が思い出せん。)」

 

 

まぁ、思い出せないなら後で医者にでも聞けばいい、と思い出す事を辞めて今の自分の状況を確認する。

 

「(枷らしきものはない…監視カメラも1つあるだけか。ならば敵の国に捕らえられた可能性は低いな。トリガーが無いのは単純に落としてきたのか、ここに連れてきた奴が持っていったのか…後者の方が可能性が高いな。)」

 

と、ベッドの上で思考していると病室のドアがノックされる。何時でも逃げられるように窓の鍵を開け、どうぞ、と返事をする。

 

「初めまして、だな。白上克巳君。────突然ですまないがまず1つ聞かせて欲しい。…君がこの街に来た目的は何かな?」

 

───────この男、強いな。そんな感想が質問の答えより先に頭に浮かぶ。完全な初対面でも分かる強者特有の気配に少しだけ高揚する。しかし今は彼の質問に答えなければならない。息を吸い、その答えを口に出す。

 

 

 

「無い。」

 

「は?」

 

「無い、と言ったのだ。俺は門に巻き込まれただけ。目的など存在しない。」

 

その答えを聞いてその男は一瞬呆然として─────安心したように、少しだけ肩の力を抜いた。

 

「それで、お前は誰なんだ?」

 

そういえば自己紹介をしていなかったな、と男が自分の名前を告げる。

 

「私の名前は忍田真史という。ボーダーという組織で本部長をしている者だ。…あぁボーダーについての説明はまた後ほどする。」

 

「分かった。…そういえば俺も自己紹介をしていなかったな。俺の名前は白上克巳。近界にある小さな国で兵士をしている。──いや、今ではしていた、という表現が正しいのか。」

 

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「どうなりそうですか、忍田本部長。」

 

「…今の所敵対意志は見受けられない。しばらくは様子を見る、というのが私の意見だ。───────そして、彼の正体については君の考えが正解のようだ。」

 

病室から出てきた男─────忍田真史に病室の前で待機していた嵐山准が問いかける。この『どうなりそう』というのは嵐山がボーダーに連れ帰った白上克巳の処分についてである。

 

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さて、何故彼が処分を受けそうになっているのかということについて説明しておこう。その理由は至極単純、彼が門から出てきた人型近界民(暫定)だからである。そして彼は人型近界民として即座に処分を下される()()()()()。それを止めたのが嵐山准。彼は昔近界に連れ去られた自分の従兄妹の幼馴染と門から出てきた青年がそっくりであること、そして、そっくりであることから連れ去られた従兄妹の幼馴染が門を通じて帰ってきた可能性を上層部に提示した。当然そっくりであるというだけなので信憑性が無く上層部のほとんどには無視されかけたのだが、本部長である忍田は違った。忍田は本当に帰って来た人間である可能性を主張した。もちろん可能性は限りなく低い故に処分を考えない訳ではないが確認をしてみる価値はあるだろう、という考えがあった。最高司令官である城戸はその可能性は限りなく低いとして処分を下そうとしたものの本当に連れ去られた子供であった場合を考え、病院で採血などを行い同一人物かを調べ、もし全く別の人物であった場合もしくは敵対意志を持っていた場合即座に捕虜とし、嵐山准及び忍田真史には相応の処分を受けて貰う、という妥協案を提示した。これが白上克巳が即座に処分を受けるという事態を逃れた理由である。

 

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「(でも、本当に良かった。これで克巳君が捕虜になる事はないと思っていいだろう。)」

 

ほっ、とボーダーに戻る忍田本部長の背中を見送り息を吐く。唯一の懸念点であった敵対意志の有無に関しても大丈夫だった。加えて名前も一致していたというのだから彼が克巳君である事は確実と言っても過言ではない。…いや彼が克巳君である事は顔を見た時には分かっていたがそれでも決定的な証拠が出てくると安心するものだ。

 

「(さて、そろそろ入らないと。…俺の事覚えてるかなぁ。)」

 

少し、不安が過ぎる。何しろ彼との関係性は従兄妹の幼馴染という微妙に遠いもの。何度か顔は合わせているがそれでも忘れられている可能性は少なからず存在する。

 

「(でも、何時までもうじうじしてる訳にはいかないし。覚悟を決めないと。)」

 

気合いを入れ、ドアの前に行き2度ノックをする。

 

「どうぞ。」

 

再度気合いを入れる。ドアに手を掛け横に引く。目に写るのはこちらを向いている克巳君。先に口を開いたのは向こうだった。

 

「…誰だ?」

 

ガツン、と脳を槌で叩かれたような衝撃が走る。予想はしていたがそれでも本当に忘れられているとなると少し込み上げてくるものがある。だが、とりあえず自己紹介をしておかなければ不審者と思われかねない、と口を開く。

 

「俺は嵐山准。君の幼馴染の小南桐絵の従兄妹なんだけど…流石に覚えてなかったか。」

 

そんな事を口に出して、困惑の表情を浮かべる彼を見る。まぁそんな事を言われても覚えてないものは覚えてないよなぁ、と考え、気にしなくていいよ、と言おうとして───────最悪の事態が頭を過ぎる。いやまさかそんな事がある筈がない、と思考を振り払おうとする。まさか─────

 

「すまない…そもそも小南桐絵とは誰だ?もし連れ去られる前の知り合いなら俺は覚えていない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

また、頭を槌で殴られたような衝撃が走る。自分の事を覚えていないのは予想できたがまさか全部忘れているとは───────。

 

「すまない。やはり知り合いだったのだろうか。それは本当にすまない事をした。」

 

話しかけられて我に返る。まるで自分の過失のように言っているがこれに関しては誰も悪くないだろう。しかし─────

 

「(これ、桐絵に話した方がいいよな。)」

 

そう、気になるのは自身の従兄妹のことだ。自分は微妙に遠い関係にあったからダメージは低かった。しかし桐絵は彼ととても近い関係にあった。自身よりダメージは大きいだろう。話さない訳にはいかないらけれど話したら桐絵は確実に悲しむから話したくない、という真反対の気持ちが入り乱れる。どうしよう、と思考がぐちゃぐちゃになる。どっちが正しいのか分からなくなる。そうして考えて───

 

「おい、大丈夫か?」

 

「っ、あぁ、大丈夫だ。突然すまなかったな。俺はこれで。」

 

話しかけられて、今度こそ我に返った。悩みは解決していないがここは病室だ。1度ボーダーに戻って頭を冷やそうと考えて───────そう言えばボーダーには頼れる友人がいることを思い出した。()にはあまり迷惑をかけたくはないが相談するくらいは良いだろう、と考える。

 

 

 

病院の自動ドアをくぐる。向かうのはボーダーの本部ではなく玉狛支部。頼るのはそこにいるであろう未来視の副作用(サイドエフェクト)を持つ男─────迅悠一だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キャラの話し方を真似るの難しいですね。もし良ければこのキャラはこんな話し方だよ、と教えて下さい。
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