0歳 俺「
6歳 なんと俺に妹と弟が!双子だってさ。妹は
11歳 最悪の年だった。親戚の集まりが退屈で優華と蔓とかくれんぼしてたら、大人たちが俺は父さんと母さんの本当の子供じゃないって話してるのを聞いてしまった。
優華と蔓がいるんだから俺は外に出せみたいなことを父さんに言ってる。
父さんは「下らない事をいうな。大樹は俺の息子だ」と言ってくれてて涙が止まらなかった。
12歳 父さんがイギリスで働くことが決まり、家族みんなで父さんについていくことになった。予定では3年らしい。
15歳 父さんの仕事の期間が延びることになった。日本の高校に通いたいなら一人で戻ってもいいと言われたけど、海外に来てからいい感じに親戚と縁が切れたので俺はこのまま日本に戻らなくてもいいかなと思ってることを伝えた。
16歳 優華と蔓が日本の中学に通いたいといいだした。2人と離れるのは寂しいけど今生の別れってわけじゃないしな、なんて感傷に浸ってたら2人が一緒に来て欲しいとか言い出した。え?まじ?俺、高校編入になっちゃうんだけど……あ、こら、服ひっぱるな伸びる伸びる、え?一生のお願い、にーちゃんと一緒じゃないと生きてけない?そっか、なら仕方ないな、にーちゃんに任せとけ!
17歳 イマココ。なんでかよくわからんが日本に帰ってきた。どうしてこうなった?
今日から日本での新しい学校生活始まるというのに、優華と蔓はまだ仲良くベットで微睡んでいる。
早く起きろって。お前ら初日から遅刻する気か。
まだ眠いよと甘えてくる2人の身支度をなんとか整えて、送り出すと俺も新しい高校に向かう。
秀尽学園、それが俺の通う新しい高校だ。
◇◇◇◇
4/15
学校の雰囲気悪いなとは思ってたけど、屋上からの飛び降りが起きて今日は生徒も教師も大騒ぎだった。
進学校と聞いてたけど、優華と蔓に秀尽は行くなって言っとかないとな。
同学年が自殺未遂とか鬱々しいこともあったし、夕飯はご馳走でも作って気分転換するか~
……んー、優華も蔓も好きな豆腐ハンバーグにするか。付け合わせはー…とかぼーっと考えながら左耳の耳たぶをむにむにと揉む。この耳たぶ揉むやつはいつのころからの癖で考え事するときとかについやってしまう。マッサージ効果もあって若干気持ちいいんだよね。
お買い物お買い物ーっとスーパーに向かってたら脇道から突然金髪の美少女飛び出してきて押し倒され形に倒れてしまう。
何とか自分の後頭部は庇った俺の反射神経ナイスお仕事だ。
「きゃ」
「ぅお……つぅ、大丈夫?」
「え?あ!ご、ごめんなさい」
金髪美少女が慌てて立ち上がると、俺に押し付けられてた柔らかな感触がふわりと消えていき、若干名残惜し……いやなんでもないです。
膝に手をつき手を差し伸べてくる金髪美少女の手を取り、俺もどっこらしょっとおっさんのように立ち上がると、一瞬驚いたような顔をした後に、笑われてしまった。
いや、美少女と形容したけど笑った顔はほんとめちゃくちゃ可愛い。
おっさんぽかったかなと思いかけたけど、この笑顔を見れたなら全然おっけーか。
よく見ると美少女は金髪碧眼、白いパーカーに秀尽のブレザーにミニスカート、赤いタイツにブーツ。4月に転入したばかりの俺でもしってる秀尽の有名人、高巻杏だ。有名人といっても聞こえてくるのは体育教師と付き合ってるとかなんとか下世話なものが多く良い話は聞かない。
「ありがと、俺は大丈夫。君は?怪我とかしてない?」
「うん、私も大丈夫。ほんとごめんね、坂本と雨宮くんに押し出されて……坂本のやつ許さないんだから」
高巻さんは慌てた様子で出てきた路地に戻ると「確か名前と、学校…あと城だっけ…」と何やらスマホを見ながらブツブツいってる。
坂本と雨宮。どちらも転入初日に聞いた名前だ。坂本は学園の不良で、雨宮は犯罪者だとか保護観察だとかだったかな、目の前の高巻さんも加えて、関わらない方が良い生徒としてクラスメイトから教えられている。
うん、俺も高巻さんも怪我は無いし俺には可愛い妹弟の夕飯を準備するという最優先使命がある。さっさと買物すませて買えるかー
と歩き出そうとしたところで、視界が歪む。
え、立ち眩み?さっき頭ぶつけたっけ…まずい、倒れる前にしゃがまない…ブツンと世界が暗転した。
◇◇◇◇
混濁した意識に無数の風景が現れては消えていく。
氷に閉ざされた、知らないはずなのに見覚えのある学校
無数のコードに繋がれ医療用ベッドに横たわる少女
壁に分断された街
楽園の扉
空に浮かぶ舟
一つの街を残して崩壊する地上
噂が現実となり日常が崩壊していく街
存在しない時間、天から落ちてくる夜の女王
人の願いを叶えるために、世界を霧で覆い隠す神
闇の中で蠢く悪意
羽ばたく黄金の蝶
俺の、俺の知らない「俺」の無数の記憶が、感情が、俺の中から溢れだし、俺と溶けあっていく。
俺が……消え……俺は……誰だ……このちっぽけな17年間の記憶に残る空木大樹?それとも……
◇◇◇◇
遠くから、声が聞こえる。急速に覚醒する意識、重い瞼をうっすらと開くと、高巻さんが心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫?ねぇ、起きて」
「ん……俺、ここは?って、なにアレ」
俺の中の知らない俺の記憶に混乱しながらも周囲を見渡すと目の前には巨大な城が聳え立っている。夢でも見ているのかと思い頬を抓るが……うん、夢じゃなさそうだ……けど、頭も痛ければ身体もだるい。
「私もわかんない。スマホに知らないアプリが入ってて、坂本の言ってた言葉を言ってただけで、こんな…」
「その制服、君も秀尽の生徒だよね?えーっと、俺、4月に転入してきた2年の空木大樹。君は?」
俺は、ここに来るまでに自覚していた「空木大樹」の名前を名乗った。俺を「空木大樹」と証明できるものは、ある。生徒手帳だ。だけどもう一つの、別の俺を証明できるものは俺の中にしかない。頭の中に靄がかかっているように、俺自身の事が思い出せない。俺は左耳のピアスに触れ、指の腹で撫でる。冷たく、固い感触に心が落ち着いてく。
「あ、私は高巻、同じ2年の高巻杏、宜しくね」
うん、知ってる。秀尽の有名人だしね。
「姫ー!!」
大きな声と共に剣と盾を手にした兵士がこちらに向かって走ってくるってかなんであんなのがいるんだよ!
あっという間に囲まれてしまう。
「きゃ!ちょっと、離しなさいよ!」
「くっそ、離せ、高巻さん!!」
ガンッ
先ほどから上手く動かない身体をなんとか動かし、2人の兵士に捕まった高巻さんに手を伸ばそうとすると、後頭部に強い衝撃と痛みを感じ、意識が薄れていく。なんだよこれ……。
「空木くん!ちょっとやめなさいよ!」
最後に高巻さんの声が聞こえ、再び俺は意識を失った。
◇◇◇◇
「もう我慢はしないっての…行くよ!カルメンっ」
力強い声に意識が覚醒し、後頭部のずきずきとした痛みに顔をしかめる。
「やるじゃないか。だがな、こっちにはまだこいつがいるんだよ!さぁどうする?コイツが殺されてもいいのか?」
後ろ髪を引張られ喉を逸らされると冷たい何かが押し当てられ微かな痛みを喉に感じる。
何…が…手も足も動かねぇ…視線を動かすと俺は手枷足枷首枷を嵌められ、門にいた兵士に髪を引張られ剣を押し当てられている。
隣にはほぼ裸に無数のハートが飾られたマントと冠というイカレタ格好の体育教師、少し離れた所に身体のラインが丸見えの赤いボディスーツに身を包んだ高巻さんがいる。高巻さんの後ろには赤と黒のドレスに身を包んだ豊満な胸を持つ…巨人が。
高巻さんの左には黒のロングコートを纏い、白のドミノマスクをつけた男、右には黒革のジャケットに赤いマフラーと髑髏のマスク、それに…なんだあれ?二頭身の直立したね…こ?
なんだ?仮面舞踏会?夢でも見てるのかと思ったが、首に押し当てられた冷たい剣が与える微かな痛みにこれが現実と思い知らされる。
「が、ぁぁっぁあああああ!」
突如脇腹に熱い痛みが走り思わず叫び声を上げる。目を向けると俺の脇腹から剣が生えている。というかこれ後ろから刺されて…マジか…よ…
「空木くん!!!」
「てめぇ卑怯だぞ!!!」
「ほらほらさっさと下がれ!さっさと下がらんどうするかわからんぞ」
「うあああああああ」
乱暴に引き抜かれた剣がさらに俺に痛みを与えてくる。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
刺しぬかれたところからぼたぼたと血が流れていく。
熱い熱い、熱い血に濡れた箇所が熱く、燃えるように痛い
「言う事聞いて、早く手当しないとホントに死んじまうかもなぁ。さぁどうする」
死…俺……死ぬ?
嘘だ……え……だって……今日は…優華と葛と豆腐ハンバー……
ああ、痛みと恐怖で目から涙が溢れだす。
「や、だ……死にたく…」
「空木もこういってるぞ、助けたかったら大人しく言う事を聞くんだな。そうすればまだ間に合うかもしれんぞ」
熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い
◇◇◇◇
「フハハハハハハハハッ!愚かなものだ。どうにもできない事があるという世の理をまだ学ばぬか!」
突如、声が響く。人を嘲り、見下すような声色
「黙れ……」
「終わりを、破滅を望む想いもまた君自信の願いだ。このまま昏き奈落に落ちるか、全てに抗い戦い続けるか選びたまえ」
先ほどとは別の。柔らかな力強い声が響く。人を安心させるようなその声に、俺は言いようのない不快感を覚えた。
「黙れ…俺は、俺は!諦めない!!!!」
「っは!まだ止まらぬか、ならば愉しませてもらおう、さぁ苦しみ、運命に圧し潰され苦痛に歪むお前の生を見せてみろ!」
「抗うための力は既に手にしている」
「煩い…煩い…もう二度とお前らの……」
「さぁ、君は自分が何者か、名乗ることは出来るかね」
世界から音が消える。
俺は……誰だ。
俺の中にある知らない男の記憶。
だけど俺は確かにそれが俺自身だと認識してる。
俺が偽物なのか、記憶の俺が本物なのか……俺は……
混乱する意識の中「「たいにーちゃん!」」と俺を呼ぶ妹と弟との記憶が一際輝き、思わず目を見開く。
そうだ、こんな所で終わるわけにはいかないんだ。あいつ等を置いて死んでなんかいられない。
俺が誰かだって?
「俺は、俺は空木大樹だ!!!それが誰でもない今の俺だ!!!!!!!!!!」
「ック、フハハハハハッ!よかろう、喜劇の幕開けだ!!」
「我等は汝」
「汝は我等」
「我等は汝が心の海よりいでしもの」
声と共に目の奥から闇が溢れだし俺の顔を覆っていく。
バキンッという音とともに俺を拘束していた枷が砕けちった。
俺の顔を覆う闇を両手で掴み力を込めて引き剥がす。泥のような闇はなお俺の顔に張り付くがその全てを振り払った。
「そうだ!俺は抗う!御託を並べる暇があったら力を振るえ『全ての災いをもたらすもの』!!」
俺は…この力を知っている、この力の使い方も知っている。
両手に掴んだ闇が弾けると今度は俺の全身にまとわりつき、俺の服と溶けあっていく。
溢れた闇は俺の足元に音もなく広り、闇の中からは黒い粒子が立ち上がる。黒い粒子の中には無数の金色の蝶が飛んでいた。
ペルソナ覚醒をしていますが、名前を問われた際の答えが「空木大樹」のため、この時点では敗北です。
空木大樹を名乗る → 17年以前の記憶に目を背け、「空木大樹」として生きた17年間のみを肯定している。そのため、ペルソナが本来のペルソナから『全ての災いをもたらすもの』に変化している。また、他ペルソナは使用不可の状態にある。