Battle Dolls -VR世界で大型人型ロボットに乗って戦うeスポーツ少女-   作:のこのこ大王

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第9話

 

 

 

 

 

■side:京都私立華聖女学院高等学校 1年 清水 冬華

 

 

 

 

 

 まさに決勝戦に相応しい。

 実況アナウンサーが言うように、とても素晴らしいと言える戦いだった。

 戦術で機体性能差を埋めようとしたスピードスター。

 それを気合で跳ねのけ、機体性能差勝負に持ち込んだストームトルーパー。

 最後もスピードスターの脆弱さが出てしまったと言える決着だった。

 もちろん先輩があそこまでストームトルーパーを使いこなせていたからということもあるけど。

 

 VR装置から出てきた先輩は満面の笑みで

 

「勝ったぜっ!」

 

 と親指を立てていた。

 それに沸き立つ四葉と緒方さん。

 

「では、勝負を決めてきましょう」

 

 早乙女さんは、あくまで冷静にそう言うとVR装置の中へと入っていく。

 鹿島先輩はそんな早乙女さんの姿に少しだけつまらなさそうにしたが、スグに笑顔で自分を称える後輩2人を相手にしはじめた。

 

 

 

 

 

■side:京都府立田神高校 1年 藤崎 美潮

 

 

 

 

 

 ゆっくりとVR装置の扉が開く。

 

「いや~、負けちゃったよ~」

 

 苦笑しながら『相手強かったねぇ』なんて言いつつこちらに歩いてくる遥先輩。

 その悔しさを我慢しているかのような態度が、私には痛々しく見えた。

 

「せんぱ―――」

 

「―――美潮ちゃん。悪いのだけど飲み物を買ってきてくれないかしら?」

 

 遥先輩に声をかけようとした瞬間、それを止めるかのように那奈先輩からそんなことを言われる。

 

「……え?……はい」

 

 急なことに戸惑ったけど、先輩が言うからには何かあるのだろう。

 そう思って私は控室を出た。

 

「―――でも」

 

 遥先輩の表情が気になって私は部屋を出てスグ扉の近くで立ち止まる。

 すると少ししてから声が聞こえてきた。

 

「ごめんね、那奈。負けちゃって」

 

「……もう、我慢しなくていいわ。美潮ちゃんも居ないのだから」

 

「―――あと……あとちょっとだったんだ。あの一撃で、あの一撃で勝てなくてもいい。引き分けに持ち込めればまだ可能性はあったんだ!……クッソォォォォッ!!」

 

「解ってるわ。アナタは頑張ってくれた。あとは私に任せて」

 

「那奈ァ……悔しい、悔しいよぉぉぉ!!」

 

 本音を漏らしながら泣き始めた遥先輩。

 思わず私まで涙が出てくる。

 

 あと1勝。

 この試合さえ勝てば悲願だった全国大会に出れるというのに。

 最後の障害が邪魔をする。

 これほど努力してきた先輩達が、何故報われないのか?

 別に全国大会優勝などという夢物語を語っている訳ではないはずなのに。

 

「叶ったっていいじゃない……報われたっていいじゃない。それだけの努力を先輩達はしてきたのだから……ッ!!」

 

 

 

 

 

■side:京都府立田神高校 3年 泉 那奈

 

 

 

 

 

 しばらくして美潮ちゃんが飲み物を買って帰ってきた。

 思えば彼女にも気を使わせてしまった。

 

「―――ありがとう」

 

 お礼を言いつつ買ってきてもらった飲み物を一口飲む。

 

「先輩」

 

「しっかり見ててね、美潮ちゃん。アナタの先輩が勝つ所を」

 

「はいっ!」

 

 すると遥が右手で握りこぶしを作ってそれを前に突き出してきた。

 なので私も握りこぶしを作ってそれに軽くぶつける。

 

「応援してる」

 

「任せて。必ず勝ってみせるから」

 

 私はそう言うとVR装置の中へと入る。

 ふと持ち込んでしまった飲み物を見て、それをVR装置に登録する。

 VR世界にはリアルでのコックピット内のものを色々と持ち込める。

 だがあくまで持ち込めるというだけだ。

 試合に影響があるものはダメだし、飲食物を持ち込んだとしてもVR世界内での飲食は「した気分になるだけ」なのであまり意味がないとされている。

 それでも私は飲み物を持ち込んだ。

 

 そして試合開始時間まで目を閉じて集中力を高める。

 現在1敗。

 次私が負ければ試合終了。

 もし引き分けでも1敗1引き分け。

 全国大会ならそれでも試合は続くが本大会ではルール上判定負けとなってしまう。

 

「―――だから私は勝つ以外に道はない」

 

 1勝1敗に持ち込めば3試合目が発生する。

 私達の運命を決める3試合目を後輩の美潮ちゃんに押し付ける形になるのは心苦しいが、道はそれしかない。

 

 思い出すのは先ほどの試合。

 相手は第三世代機を使用していた。

 今度も第三世代機が出てきても不思議ではない。

 そうなると火力不足が心配だ。

 思わず機体情報を呼び出す。

 

 そして散々悩んだ結果。

 少し武装を変更することにした。

 武装を変更してスグだった。

 VR装置が起動し始める。

 何とか武装交換は間に合ったようね。

 

 マップは山岳基地。

 巨大な山をくり抜いて建設したような高低差や地下まである立体的な施設。

 内部にも様々なギミックがあり、非常に位置取りを気にしなければならないマップだ。

 

 基地内の大型トレーラーから立ち上がるという演出で機体を起動させる。

 第二世代機:ブレイブファイター。

 非常にバランスが取れた完全な人型の第二世代機で、現在プロの試合でも一番の使用率となっている機体。

 専用の武装なども無く非常にカスタムしやすい反面、改造する腕やセンスが無ければ平凡な機体となりがちである。

 

 私の場合は

 両手で大型ライフル。

 腰にトイフェルファウストが2つ。

 それとマシンガンが2丁。

 左脚部にハンドガンが1丁。

 右脚部にナイフが1本。

 背中から伸びるサブアーム2つにはシールドが2つ。

 最後に今回急遽装備させた右腕外側の少し大きな外部装甲。

 

 立ち上がったと同時に試合開始のアナウンスが鳴る。

 それを聞いてスグに基地内に向かって走り出す。

 ブースターを使用して高速でというのも考えなくもないが遥のスピードスターのように外部タンクを装備していない。

 それに下手に加速すると複雑な地形故に壁に激突しかねない。

 更に言えば急減速で足を使ってしまえば関節部などに余計なダメージが出てしまう。

 だからこそ原始的ではあるものの走ることを選択する。

 

 目指すは基地最上部。

 あそこは絶好の狙撃ポイントだ。

 だからこそそこに―――

 

 基地2階の壁の無いエリアを通ろうとして違和感を感じて停止する。

 そして左手に内蔵されている偵察用カメラを外に向けて手鏡を突き出すように出す。

 するとこちらに大型ライフルを構えているタンク型の姿。

 

 次の瞬間。

 大きな発砲音と共にカメラが撃ち抜かれて破壊される。

 

「困ったわ。上に行くにはここを通るしかないのに」

 

 通りたい場所が通れない。

 なら―――

 

「やるしかないじゃない」

 

 ゆっくりと深呼吸を繰り返す。

 そして―――飛び出した。

 

 狙うは最速で敵機体腹部にあるであろうコックピット。

 そしてスコープ越しにこちらを狙っている相手も間違いなく同じでしょう。

 なら、これは早撃ち勝負。

 

 発砲音と共に衝撃で機体が揺れる。

 次の瞬間。

 

 爆発音と共に大きな振動。

 それを歯を食いしばって耐える。

 相手の狙撃でこちらの大型ライフルを破壊されたようだ。

 しかしそれは相手も同じことだったようだ。

 咄嗟にライフルを捨てたこと。

 そしてサブアームのシールドによってダメージらしいダメージは無かった。

 メインモニターである頭部を出して相手を確認すると相手もライフルを失っただけのようだ。

 恐らく左手に展開されていたシールドである程度のダメージを緩和したのでしょうね。

 

 私は腰にあるマシンガン2丁を両手で持つ。

 相手もどこから取り出したのかマシンガンを右手に持ち左手に先ほどのシールド。

 そして両肩の滑腔砲がゆっくりとこちらを向いて―――

 スグにその場を離脱すると、私が居た場所に滑腔砲が撃ち込まれる。

 

「まだまだ勝負はこれから。―――負けないわよ」

 

 とりあえず位置バレしている以上、この場に留まっても仕方が無い。

 相手に見えないようにその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 




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