Battle Dolls -VR世界で大型人型ロボットに乗って戦うeスポーツ少女-   作:のこのこ大王

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本日2話目


第2話

 

 

 

 

 

 

 京都私立華聖女学院高等学校

 

 私が逃げ込み先に選んだ場所。

 Battle Dollsは世界的に認められたスポーツだ。

 だからこそ日本にも部活動として存在し、非常に人気である。

 しかし全てがそうではない。

 

 ……そう、この学校にはBattle Dolls部が存在しない。

 元々はお嬢様学校だったらしく、どちらかと言えばそんなものよりも女性らしい教養がなんとか……。

 要するにここには私の過去を知るような人物は居ないだろうし、夏美と比べられることもない。

 初めての一人暮らしは色々と大変だけど、それでも手にした自由の方が大きい。

 そうして早いもので一ヶ月が過ぎた。

 

「と~うかちゃ~ん。一緒にか~えろ~?」

 

 幸いにして友達も出来た。

 この無駄にデカい胸を押し付けながら抱きついてくるのは『(ひいらぎ) 四葉(よつば)

 私とは違い、スイーツ巡りが趣味だという女の子らしい子だ。

 どういう訳か気に入られ、友達になっていた。

 

「で、今日はどこのお店にいくつもり?」

 

「お?聞く?聞いちゃう?」

 

 そう言いながら空中に表示されたディスプレイから、とある記事の内容を表示する。

 

「ほら、これ!今日から開店する新しいお店!」

 

「……えぇ、昨日もパフェだったじゃない」

 

「昨日のはアイスパフェじゃない。今日のはフルーツパフェなの!」

 

 私からすれば大差が無いのだが、彼女からすれば力説するほどの差なのだろう。

 そして摂取した影響は全部その胸に行く……なんて羨ましい。

 などと考えている時だった。

 突如目の前に情報がポップアップする。

 

『1年:清水冬華 用件:大至急部室棟3Fへ -早乙女(さおとめ) 可理菜(かりな)-』

 

 学校からの公式な呼び出しだった。

 

「早乙女?どっかで聞いたことがある気が……」

 

「確か、学園長の孫だったような?」

 

「……何でそんな人が私を部室棟なんかに呼び出すの?」

 

「さあ?とりあえず行ってみればいいじゃん」

 

 流石に公式な呼び出しを無視する訳にも行かず、私は部室棟へと向かう。

 

「……ところで、どうしてついてくるの?」

 

「いや~、何となく面白そうだったから?」

 

「パフェ食べに行くんじゃないの?」

 

「ほらそれはまた明日にでも2人でね?」

 

「行くことは諦めてなかったのか……」

 

 そんな雑談をしつつも部室棟3Fへとたどり着いた私は、何故か他とは違い1つしかない扉を開けた。

 

「……ッ!」

 

 先ほどの疑問はスグに理解した。

 教室をいくつも繋げた巨大な部屋に用意されているVR装置の数々。

 しかもそれらは全て『Battle Dolls専用』の特注品だ。

 これだけの設備を揃えているのは、プロチームぐらいではないだろうか?

 そう思えるほどの設備の数々と、過去のトラウマが重なり頭が痛くなる。

 

「ようこそ清水冬華さん。お待ちしておりましたわ」

 

 声がする方を見れば本格的なベンチのような観戦スペースのような場所に2人の少女が居た。

 1人はショートカットで如何にも気が強そうな感じがするうちの学校では珍しい感じの人。

 そしてもう1人は声をかけてきたであろう黒髪ストレートロングの人形を思わせる美人さんだ。

 

「まずはお座りになって紅茶でもどうぞ」

 

 何となく嫌な予感がするも主導権は相手にある。

 ここは大人しく座って様子を見ることにした。

 

「うわ~、美味しい~これ~」

 

 我が友は何のためらいも無く座ると早速紅茶を飲んでいた。

 その能天気さも羨ましい。

 

「単刀直入に言います。清水冬華さん、アナタを新たに新設するBattle Dolls部にご招待しますわ」

 

 その言葉に思わず胸が苦しくなる。

 

「……この学園には無かったはずですよね?」

 

「そうです。だからこその『新設』ですわ」

 

「……どうしてですか?」

 

「……それは新設の件でしょうか?それとも入部の件でしょうか?」

 

「どちらもです」

 

「わかりました。では順にご説明しましょう」

 

 彼女は手にしていたカップをテーブルに置くと説明を始めた。

 

「我が校は伝統のある学園ですが、その伝統ももはや昔の話。若者の減少による生徒数の減少に対応出来ているとは言えない状況です。何せ取り立てて自慢出来るようなものが無い学園ですので。だからこそ新たにそれを創ろうと思い立ちました。そこで世界中で人気のBattle Dollsに目を付けたということです」

 

「そこで呼ばれたのがアタシって訳だ。アタシは2年の『鹿島(かしま) 真琴(まこと)』。いや正直助かったね。うちは家族が多い典型的な貧乏一家だからさ。学費や部活にかかる費用が一切免除って言われちゃ断れないさ」

 

 気の強そうな人の話が会話に入ってきた時に、彼女のことを思い出した。

 

特攻少女(とっこうしょうじょ)……」

 

「お?私を知ってるの?」

 

「……確かニュースで1度見たことが」

 

 昨年、1年生ながら全国大会で強豪校の3年生エースを打ち破ったことで注目された人だったはず。

 引くことを知らないひたすら正面からの突撃に付いた二つ名が確かそうだったはずだ。

 

「Battle Dollsは基本的にメイン3名と補欠2名の計5名でのエントリー。ファースト・セカンド・サードの3試合中で先に2本先取した方が勝ちとなります。このあたりは当然ご存じですよね」

 

 彼女はいつの間にか手にしていた扇子を開いたり閉じたりしながら話を続ける。

 

「残念ながら我が校にはBattle Dollsの経験者がおりません。これでは出場しても即負けてしまうだけでしょう。ですので鹿島さんをお呼びしました。ですがこれでもまだ足りません」

 

 そしてクルクルと回し始めた扇子の先を急にこちらに向けた。

 

「そこでアナタの出番という訳です。ファーストを鹿島さん、セカンドを私が勤めて可能な限り2本先取による勝利を目指します。清水冬華さん、アナタには万が一のためのサードをおまかせしたいと考えておりますの」

 

「わ、私は……」

 

「補欠2名に関しては正直素人でも問題ありません。……が、サード選手に関してはそうは言えません。何事にも万が一というものが存在しますからね。まあご心配なさらずともあくまで保険という意味合いです。基本的には先ほど言った通り私達2人で2本先取による勝利で終わらせる予定ですので」

 

 その一方的で、しかも勝つ前提というのが何とも傲慢な話だと思う。

 でもそれを言い切るだけの自信が2人にはあるのだろう。

 

「Battle Dollsってアレでしょ?おっきなロボットでバーン!って戦うやつ!」

 

「ええ、そうですよ。……よろしければアナタもどう?今ならプレイに必要なお金は全て学園側が負担しますわよ?」

 

「い~な~、面白そう~」

 

「ちょ、ちょっと四葉!」

 

「一回やってみたかったんだよねぇ~。ロボットに乗って空を飛ぶの!」

 

「……ええぇ」

 

 Battle Dollsでは基本的にロボットは歩くか走るだ。

 確かにジャンプや空を飛ぶなんてことも出来なくはないがエネルギーを馬鹿みたいに消費する。

 それこそ1分も空を飛べばエネルギー切れを起こして動けなくなるだろう。

 だからこそ漫画に出てくるようなブースターによる高速移動で戦うという感じではなかったりする。

 まあ最近はホバー技術などが登場して、高機動化しつつもあるけど。

 

「清水冬華さん。アナタが何故乗り気でないのか、何のために我が学園を選ばれたのかは失礼ながら既に調べさせて頂きました。そしてその上でのご提案であるとご理解下さい」

 

「……」

 

 その言葉を聞いて益々胸を締め付けられるような思いがする。

 才能全てを姉に取られた残り物。

 凡人で何の取り柄もない妹。

 天才の姉の邪魔をする存在。

 散々周囲から言われてきた心無い言葉を思い出す。

 

「何も私達も最初から全国大会優勝などとは言いません。今年はあくまで全国大会出場が目的。そうなれば次年度にはもっと多くの人を呼び込めるでしょう。そうなれば全国大会優勝も見えてくる」

 

 彼女は紅茶を口にして一呼吸おいてから話を続ける。

 

「ですので今年だけで構いません。人助けだと思ってご協力願えませんでしょうか?もちろんご協力頂ければ費用などは全てこちらで負担致しますわ」

 

「面白そうじゃん、やろうよ冬華」

 

「わ、私は……」

 

「この場でスグに返事をしろとは言いません。そうですわね……明日。今と同じ時間、この部屋にてお待ちしておりますのでその時にお返事を頂けると」

 

 

 …………………

 ……………

 ………

 

 

 冬華と四葉が部屋を出て行った後、真琴が話し出す。

 

「あの子、来ると思う?」

 

「さあ?ですが来て頂かないと少々厳しいですわ。何しろあの子以外に経験者など居ないのですから」

 

「でも確か『凡人の妹』だっけ?大した事ないんでしょ?」

 

「それでも素人に比べればかなりマシでしょう。万が一にもサードまで試合がもつれ込んだ場合に素人では話になりませんもの」

 

「それならまだ凡人でも経験者の方がマシってことか」

 

「そういうことです。それに基本的にBattle Dollsはファーストとセカンドに主力選手を置きます。サードに主力が来るなんてあり得ない。そう考えれば凡人だろうが素人よりは勝率が高そうでしょう?」

 

「確かに」

 

「それに先ほど言ったように今年は全国大会出場が目的。実績を作って来年に勧誘活動をしやすくすることが大事ですからね。そして来年に実力者が揃えば―――」

 

「凡人ちゃんも無理して出す必要もないってか。……何だか本当に利用してるだけって感じで少し可哀想な感じもするよ」

 

「その対価はしっかりと払うのですから、これは正当な取引です。こちらが負い目を感じることなどありません」

 

「流石は早乙女のお嬢様」

 

「その分、鹿島さんには期待していますわよ?」

 

「心配しなくても全勝で全国出場決めてやるよ」

 

 

 …………………

 ……………

 ………

 

 

 その後、色々考え過ぎていたせいか何をどうして自室まで帰ったのか解らなかった。

 ただ制服のままベッドに倒れ込むと今までのBattle Dollsでの出来事ばかりを思い出す。

 

「私は……」

 

 

 

 

 

 

 そしてあっという間に次の日。

 未だ明確な答えが出ないまま部室棟へとやってきた。

 ただ、約束の時間の1時間も前だ。

 扉を開けても当然ながら誰も居ない……はずだった。

 奥の方からガチャガチャという音が聞こえてくる。

 

「……誰かいますか?」

 

「ふぇ?」

 

 声をかけるとメガネをかけた少女がVR装置から出てきた。

 

「えっと……」

 

「……ああ、私達はここで早乙女さんと待ち合わせをしてるの」

 

「ああ、そうでしたか。私は1年の『緒方(おがた) (すず)』と言います」

 

 相手が名乗ってきたので私と四葉も挨拶をする。

 

「ところでどうしてVR装置から?」

 

「私、早乙女さんからBattle Dollsに誘われたんですよ。で未経験でも構わないって言われて思い切って入部しちゃいました」

 

「どうしてBattle Dollsをする気になったんですか?」

 

「……私、自分から何かをやるのって苦手で。それでクラスにも馴染めなかったり友達も出来なかったり。だからいつも図書室で本を読んでるだけでした。だからそんな自分を何とかしたくて……」

 

 苦笑しながらもそう語る彼女が少し羨ましいなと感じた。

 私がBattle Dollsを始めたのは劣等感からだ。

 とても彼女のような純粋な理由ではない。

 

「ねぇ~?これどうやって動かすの~?」

 

 気づけば四葉が勝手にVR装置の中に入ってあれこれと弄っていた。

 

「ちょっと四葉。勝手に動かしたら怒られるわよ」

 

「……別に大丈夫だと思います。興味がある人が居たら使って貰って構わないと早乙女さんが言ってましたので」

 

 彼女の言葉を聞いた瞬間、四葉がこちらをキラキラした目で見てくる。

 

「……はぁ」

 

 ため息を吐くと四葉のVR装置内に入って起動準備を始める。

 座席を少しズラすと奥側にもう1つの座席が出てくる。

 そこに座ると四葉をメイン席に座らせて設定を操作。

 ロボットデータの入ったデータキーも無いので内部に元から入っているレンタル用データを呼び出す。

 

「初めてだから第二世代機の中でも特にバランスが良いこの子にしてっと」

 

 単純に動かすだけだからと武器関係は全て無しに設定。

 そして全ての設定が終わるとVR装置が本格的に起動する。

 するとスグに仮想世界へとダイブ。

 一瞬にして周囲がロボットのコックピットみたいな感じで表示され、そこから見える景色もロボットの格納庫だ。

 

 目の前の信号機のようなカウントが進む。

 そして赤から緑になった瞬間、カタパルトから強制的に発進させられた。

 

「にゃぁぁぁぁぁ!!なになになにぃぃぃぃ!!!」

 

 いきなり乗っているロボットが勢い良く撃ち出され、かかる圧力と目まぐるしく変わる景色に四葉がパニックになる。

 本来なら大地に立った状態からでも始めることが出来る。

 しかし最近私のことを振り回してばかりのこの子にちょっとした悪戯がしたくなってカタパルト発進という経験者の中でも操作に慣れた人しかしない出撃方法を選択した。

 

 大空からの落下。

 しかもロボットの性能なども知らない彼女からすれば単なる恐怖でしかない。

 操作など不可能だろうことも解っていたのでスグに機体コントロールを自分側にもってくる。

 久々に感じる疑似的な重力とロボットを操作しているという感覚。

 そしてVR世界とはいえ綺麗な青空。

 何もかもが懐かしく、そして気分が高揚してくる。

 

 ある程度高度が下がったあたりで唯一装備させていた降下強襲用パラシュートを展開する。

 最後にはバーニアによる姿勢制御で地面に降り立った。

 

「これ、地味に慣れないと結構難しいんだよね」

 

 自然と声が出た。

 Battle Dollsをやり始めた当初、この輸送機からのカタパルト発進に憧れて散々練習したのを思い出す。

 カッコイイ登場ではあるのだが下手をすると機体にダメージが入ってしまう。

 だからこそよほどでないとやらない出撃方法ではあるが、それ故に人気も高い。

 

「とうかぁぁぁぁ!!こわかったよぉぉぉぉ!!!」

 

 狭いコックピットの中だというのに無理やり私の所まできて抱きつきながら泣く姿に、少しやり過ぎたかなと思った時だった。

 

「……アナタ達、一体何をしてますの?」

 

 指導者用の設備を使用してこちらに通信を送ってきた早乙女さんの呆れ顔が表示される。

 それを見てスグにVR装置を停止して装置から降りる。

 四葉はずっと私にくっついたままだ。

 時間を確認すると30分ほど早い。

 

「予想よりも早く用事が終わったので早めに来させて頂きました」

 

「そうでしたか」

 

「それで、答えは決まりましたか?」

 

 その言葉に一度大きく深呼吸をする。

 そして―――

 

「ぜひ、やらせて下さい」

 

 確かにBattle Dollsを始めた理由は劣等感からだ。

 だけどそれだけではなかったことを思い出した。

 

 広大な草原を、雲一つない青空を、ボロボロの廃墟街を、何も無い砂漠を、高低差が激しい山岳を。

 様々な世界を相棒であるロボットと共に駆ける。

 それらに魅せられたからこそBattle Dollsというゲームをやってきたのだ。

 

 もう一度、正面から夏美と向き合うためにも。

 私はここで逃げる訳には行かない。

 

 

 

 

 

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