少年☆歌劇 レヴューソードロード~オレ 再生産~ 作:キッコ
A.聖翔。入学出来た時点で15歳男子としては圧倒的芸能エリート。
ただし歴史伝統の面では聖翔音楽学園に圧倒的に劣る。
ちなみに学費とかもそれなりにお高い。制服もお高い。
割り当てられた寮の一室で俺はまだ布団に包まっている同室の奴を横目に見つつ、ブレザーの制服に着替えていた。
パジャマ代わりのTシャツ短パンから着替えて、最後に左手首にスポーツブランドの白地に黒いロゴが入ったリストバンドを着ける。
スラックスは薄いグレーで、ブレザーはクリーム色をメインに各所に緑のアクセント。左にある胸ポケットには御剣学園の校章が入っているが、これ、実はコースによって意匠が異なるらしい。
……クリーム色は汚れが目立つのでやめて欲しい。カレーうどんで被害者続出だろコレ。
入学式が4月9日で、その後の4月17日にレヴューへの招待のメールが来た。
招待主の正体は正確には分からないが、イギリスの王立演劇学院にいたひかりの舞台にまでちょっかいを出したアイツのことだ。おそらく十中八九あの偶蹄類だろうなぁ。
てかメールにおもっくそキリンのアイコン出てたし。これで別固体だったらびっくりだ。
「てか一日目がいつか書いてねーし……」
たしか原作での聖翔のレヴューの一日目はひかりが転入して来た日だから5月14日。ちなみに今日はメールが来てから三日経った4月20日だ。まだ余裕があると思いたい。
こちとら前世で考察サイトとか読んでたから覚えてる。主にばなな関係。なおそれでもにわかだった模様。
「よ! おはよーさん」
「おはよう、勇太ちゃん」
スマホでメールアプリとカレンダーアプリを交互に眺めていると、後ろから声をかけられる。振り向けば、そこには十日ほど前からクラスメイトになった二人が並んで歩いていた。
10日もあれば高校生の男だけのクラスだ、そこまで多くないクラスメイトの中でそろそろ仲の良いグループが出来あがってきている。
「よ、紅也に秋。おっはー」
俺と同じクリーム色のブレザーを着ているちっこいのとデカいのに、片手を上げて挨拶を返した。
ちっこい方は相沢紅也(あいざわ こうや)、デカい方は藤野秋(ふじの しゅう)。
「やだ、勇太ちゃん! アキちゃん、って呼んでって言ったでしょ!」
「いやいや、てめぇはシュウだろうが。親に謝れよ」
「もう。紅ちゃんはそのままでも小さくてかわいいけど、アタシはそうじゃないのよ?」
「ぶっ殺すぞ! このクソ野郎!」
朝っぱらからちっこいのとデカいのが漫才を繰り広げ始めた。
名前の通りに逆立てた短い髪を真っ赤染めた紅也が頭上にある秋の顔を見上げながら、目つきを鋭くしてツッコミを入れる。秋は俺と同じで180近くあるから、165くらいの紅也は秋を見上げる形になる。
秋はシュウと読むのだが、「シュウよりカワイイからアキって呼んでね♪」と入学式の自己紹介で言った猛者で、長い髪を茶色に染めているいわゆるオネエだ。……タッパがあるのでたくましいオネエだ。
「めんどくさいと藤野って呼ぶぞ」
ため息を付き、左手首につけたリストバンドを何とはなく擦りながらそう言ってやると、秋がわざとらしく苦虫を噛んだような表情を浮かべた。
「何よ何よ、勇太ちゃんったら! もう勇太ちゃんなんて知らない! いきましょ! 紅ちゃん!」
「毎度毎度俺を巻き込むんじゃねえ! 腕! 腕上がってっから!」
キーッ!とおおげさに叫んで紅也の腕を強引に組んで引っ張って去っていくが、アレは楽しんでやってるから放置でオーケーなのだ。
ちなみに紅也が赤髪で秋が茶髪なのは、特にうちの学校の校則としては問題は無い。うちは大手事務所の傘下だが、見た目に関してはそんな感じの緩い校則だ。俺は染めていない黒髪だけど、染髪と制服のアレンジはある程度OK。高校生でありながら事務所預かりでもある俺らは大事な商品なのでピアスやタトゥーは未成年の内は許可は出ないけどな。
ピアスはともかくタトゥーなんてやった日にはどんな有望株でも退学になる。まあ普通の高校でも一緒か?
「うーん……原作的にやっぱあいつらも舞台少年なんかね? 何人でレヴューやんのか分かんねえけど」
舞台少年、って言葉がむずがゆ過ぎるのは心の片隅に放り捨てて、だ。
今年の御剣の俳優育成コース一年生は二十一人だ。定員制ではないから毎年入学者数はバラバラ。一つ上の先輩は入学時点で十七人いたのが今は十四人だとか。そう考えると俺らは多い方なんだなって思う。
で、そこで問題になるのが誰がレヴューの参加者なのか。聖翔のレヴューでは全員が同じ学年、つまり同じクラスだった。
これは俺の考えなんだけど、聖翔のA組はぶっちゃけ全員がエリートだ。A組に入学出来ている時点である意味、全員が広義での舞台少女なはずだ。努力しないで聖翔の俳優育成科に合格できるわけがない。原作でキリンの目に留まったメンバーはその上澄みだっただけに過ぎないんだろう。
「キリンに選ばれなかっただけでA組にはあのメンバーに次ぐ十人目だって当然いたはずだしなぁ」
それに関してはうち(御剣学園俳優育成コース)だって同じことが言える。「顔とタッパで受かったのか!?」なんて冗談混じりで言ってた俺だって、せっかく受けるなら、とダンスや筋トレにボイトレはしていたんだ。御剣にいる他の連中だって何もしてなけりゃ、入試で落ちているはずだ。
となると、クラスメイトの誰が参加者でもおかしくはない。二十一人中の何人がレヴューの参加者なのか?それとも他の学年、センパイ達も含めて開催されるのか。
「レヴューって好きな武器選べんのかな……再生産で勝手に作られる? 純那みたいに弓渡されても困るんだけど俺」
聖翔のレヴューではスタァライトの劇中と同じ武器が割り振られてた気がする。たしか。
俺は弓なんか使い方さえわかんねえ。実は実家が剣道道場、的な転生チートもないし、どうすりゃいいんだろうこれ。
「とりあえずどんな武器でもいいようにTubeで剣道?じゃない剣術?の動画でも見てみっかねー」
剣術は多分武器を扱う上での基本だ。もし槍とか弓とか棍棒とか斧とか渡されたら……知らんわ。
そんなこんなで体育や殺陣、アクションの授業に力を入れて日々を過ごしていたら5月に突入していた。メール送るだけ送っておいて放置しすぎだろキリン。
「ゆーうーたー!昼飯食おー!」
「……うおっ! 首っ! 首ぃ! 晴樹、お前それやっていいの、もっとちっこいヤツだかんな!?」
昼休みに椅子の後ろから飛び掛って来たのは、クラスの似非ショタこと東晴樹(あずま はるき)。回された腕で首を絞められそうになって、こいつの腕をバンバンと強めに叩く。170cmの男にやられることじゃねえ。首から上だけを見れば中2か下手すれば中1に見えなくもないというのが似非ショタたる所以だ。
「おい勇太てめえ、そこでこっち見んなや」
おーおー、怖い顔で紅也さんが怒ってらっしゃる。紅也はクラスでも前から数えた方が早いってか、前から三番目くらいだからしょうがない。……二番目だっけ?
背の小ささを気にしているのはクラスメイトのほぼ全員が知っている。
「今日も平和ねー」
「星崎、あまり身長で相沢をからかうな」
ぷりぷりと怒っている紅也を秋が自分の席から眺めて面白そうに笑顔を浮かべていると、クラスでも一際大きい男が一言述べてから紙パックの牛乳を飲みながら廊下へと出て行った。
俺より幾分デカい気がする藤堂正人(とうどう まさと)だ。同い年とは思えないほど落ち着いているが、いつも牛乳を飲んでいて、腹を壊さないか心配になるレベルでマジで飲んでいる。
こいつは俺たちの学年、第一年生における主席。つまり原作で言う天堂真矢ポジションなわけだが主席という自負はやはりあるらしく口数は少ないが己に対して非常にストイックだ。
俺達と別段仲が悪いということはないものの、どこか一定の距離を保っている。ただし先ほどのように話しかけてくるし、話しかければ普通に返してくれる。でも演技以外ではちょっと無表情気味。
「うっし、飯行くかー。晴樹、紅也と秋も一緒でいいよな」
「良いに決まってるじゃん!」
「ええ、もちろんいいわよ」
「俺今日カツ丼にするわー」
そんなことを言いながら席から立ち上がり、食堂へと向けて皆してぞろぞろと歩き出す。
大手事務所傘下の高倍率の入試を抜けてきた俺たちはシビアなもんで、こうして俺がほぼ同じ顔ぶれとつるんでいるのにはワケがある。
そう、実力だ。華恋達がいつも一緒にいたように。飯を食うシーンなどでモブ女子生徒が混ざっていなかったように。
いわゆるクラスカーストとは違うが、お互いにお互いを実力者だと入学翌日からの数日で本能のように実力を見極め、興味を持ったからこそ声を掛け合い、ダチとなった。
「うーん、僕はたぬき蕎麦大盛りにしようかな」
食堂の券売機を前に晴樹が顎に指を当てて首を傾げている。あざといかよ。
紅也は宣言通り迷わずカツ丼のボタンを押していた。俺は今日のA定食のハンバーグ定食だ。各々食いたい物を選んでカウンターのおばちゃんから受け取ると、適当に全員で座れるテーブル席を確保する。
お行儀よく「いただきます」なんてするのは今居る俺、紅也、秋、晴樹の中では秋だけだ。
全員が席に着いたのを確認すると皆それぞれ箸やスプーンを持って早速飯を口に運び始める。
「大演劇祭は来年だってのに今月に主要どころは決めちゃうのよねぇ……」
「とっくに一年切ってるわけだし? 時間は言うほどねえんだろよ」
ふとしたタイミングで秋がカレーのスプーンを止め、話を切り出すとカツ丼を飲み込んだ紅也が割り箸で秋の顔を差してから、また次の一口を運ぶ。
「僕は狙うならカーティスかなぁ。オズワルドをやるには身長はともかく顔が足りないや」
晴樹が小さくため息をつきつつ、そう呟く。
舞台『ソードロード』においてオズワルドは命からがら難を逃れた亡国の王子で、その相棒となるカーティスは農民出身という設定だ。
ありがちと言ってしまえばそれまでだが、貴種流離譚の面もある『ソードロード』は元王子であるオズワルドが流浪の果てに出会うカーティスと身分を超えた友情を築く。
脚本の細部は調整されるので実は身長差などはけっこう融通がきく。今まで世界中で上演された中ではオズワルドより小さいカーティスもいれば、オズワルドより大きいカーティスもいた。これこそが男女の恋愛がメインではない物語の強みと言えるのだろう。
ただ晴樹が気にしているのは自分の童顔だ。慎重はともかく童顔はいかんともしがたい。ショタ顔のオズワルドは『ソードロード』的にはかなーりNGだ。残念ながらオズワルドはショタ王子ではないのだ。
「俺はやっぱオズワルドだな、ライバルがちっと多いけど」
「あら勇太ちゃんがオズワルドならアタシカーティス狙おうかしら? 逆でもいいわよ?」
「そこはお前もオズワルド狙えよ」
俺がそう言ってハンバーグの最後の一口を放り込むと、秋がウインクして冗談めかして便乗してくる。様になっているのがムカつく。……まあ俺も顔では負けちゃいねえけどな!
先ほど語ったものの、あくまで傾向としてだがオズワルドはそこそこ身長がある方が有利なのは間違いない。W主演だが比重が大きいのはオズワルドだ。
俺は入学式翌日の測定で180cmジャスト、秋は俺よりちょい低いくらい。どっちもオズワルドは狙える。まあオズワルドをやるなら秋は自慢の髪を切らなきゃいけないだろうが。
レッスンをして、昼飯を食いながらクラスのダチとだべって、疲れ果てながらも寮に帰る。
そして日々は過ぎ、今日は…………5月14日だ。
ピロリロリロリロリン。ピロリロリロリロリン。
お持ちなさい
あなたの望んだその剣を
「あぁああああああ!! 来やがった! 今日じゃなきゃいつだよ、とはそりゃ思ったわ!」
でも本当に、それは今日だった。
キリンのアイコンが表示されたメールで呼び出され、指定されたのは学園本部棟の吹き抜けのエスカレーターだった。校舎のどっかに現れる謎エレベーターじゃねえの……?
「つーか、どう見ても普通のエスカレーターなんだけど……乗れってか?」
御剣学園の校舎は中央に背の吹き抜けの高い本部棟があり、その左右に繋がる西棟と東棟がある。本部棟は職員室や学園運営に関する施設、応接室、その他諸々、まあ教師が働く場所で西棟や東棟に各学年の教室やレッスン室、レコーディング施設など俺たち生徒用の設備が設けられている。
ちなみに普通の高校と一緒で生徒指導室や生徒会室に図書室なんかもあるし、体育館やグラウンド、屋内プールも校舎外にあるぞ。
本部棟の吹き抜けになっている二階へと続く、極めて普通のエスカレーター。
乗るために俺が一歩、足を踏み出すと突如としてギュィイイインと音を立てて唸り始めた。
「うおわああああああああああ!?」
そのまま高速で稼動をし始めたエスカレーターに俺は降りることも出来ず、ただ慌てて手すりに捕まるだけだ。
気がつけば手すりに添えていた手も空しく、エスカレーターから宙高く放り出されるという世界でもそうそう体験した奴がいてたまるか!な現象に見舞われ、腹の奥底がヒュンとする浮遊感が俺を襲った。
本来であれば学園本部棟の吹き抜けのエスカレーターから放り出されても、上の階か下の階に叩きつけられるだけのはずなのに、いつまで経っても浮遊感が終わらない。
むしろ反転する視界の中は校舎ではなかった。
やべえ……意識が飛ぶ、と思ったが飛ぶことはなく。
――――次の瞬間にはリストバンドが俺で、俺がリストバンドだった。
オレ 再生産
アルファコンプレックスのエスカレーターかな?
○相沢 紅也(あいざわ こうや)
十五歳165cm
髪を真っ赤に染めていて目つきが悪く不良っぽい
入学式直後の身体測定で165cmだったのだが167cmだと言い張っている
なお周囲にはバレている 芸能系の学校だけあって周囲がデカいのが悪い
○藤野 秋(ふじの しゅう)
十五歳178cm
茶髪のオネエさん
自称アキちゃん 人をからかう(線引きは見極めている)のが好き
○東 晴樹(あずま はるき)
十五歳170cm
童顔ショタ顔 170cmあるけど
ふわふわ系 自分がそこそこデカいことをを分かってない大型犬感がある
○藤堂 正人(とうどう まさと)
十五歳183cm
第一学年主席 「This is 藤堂正人」……とは言わない
でかい、物静かな男前 いつも気がつけば牛乳飲んでる
どこまでデカくなる気だ
ちなみに主人公(でかい黒髪イケメン)、紅也(ちっこい不良風味赤髪イケメン)、秋(でかいオネエ茶髪イケメン)、晴樹(普通の身長のショタ顔黒髪イケメン)で仲良し四人組。いわゆるダチ公。
キャラを一気に出しすぎた感。
とりあえず、主人公、ちっこいの、オネエ、ショタ、とだけ覚えるといいと思います。
今回出てないだけで他にもこのグループと仲の良いメンツはいます。
モチベに繋がりますのでよろしければ感想お待ちしています。