【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆31 帝国プレミアム召喚
麻帆良学園全域の電力機器メンテナンスを行なう大停電、その当日。
キティちゃんとネギくんの果たし合いの日だが、茶々丸さんが学園結界の予備システムへハッキングすることにより、キティちゃんの魔力は完全な状態へと戻る。
つまり、ネギくんは全盛期のキティちゃんを相手する必要がある。
だが、それよりも大事なことがある。
ガチャである。帝国プレミアム召喚の『冥界の魔術師ヘカティエ』出現確率アップの日が、今日なのである。
これは、引かねば!
「お、ネギ坊主、マジック・アイテムを大量に抱えているアル」
「武装解除の魔法を防げなかったら、一発でおじゃんだな」
そもそも、なぜ私はヘカティエ様を引こうとしているのか。
私の『千年戦争アイギス』の所持キャラクターの中には、『ちびヘカティエ』という子がいる。
『ちびヘカティエ』は、『冥界の魔術師ヘカティエ』が不思議なパワーで二頭身に縮んでしまった存在。
スマホの中の世界でも、ヘカティエ様はちびの状態で生活している。
ちなみに、ちびキャラは他にも何人か所持している。たとえば、私は『ちびラピス』というキャラを所持しているが、これの大本の存在となる『大悪魔召喚士ラピス』も所持している。
この状態だと、ラピス様はスマホの世界の中で、ちびの状態と本来の姿である大悪魔召喚士の状態を好きに行ったり来たりできるのだ。
「おー、本当にアスナといいんちょがいるアル。ネギ坊主とチューしたアルね!」
「いいんちょがパートナーになるとは、意外だったなぁ」
「そうアルか? むしろ納得しかないアルが」
「いや、それはそうなんだが……」
では、ちびしか所持していない状態のヘカティエ様はどうなるか?
私がガチャで『冥界の魔術師ヘカティエ』を引くまで、スマホの世界の中では、ずーっとちびキャラのまま元の姿に戻れないのだ。
つまりだ。私は、元の姿に戻りたいというヘカティエ様の要求に応えるため、今回のガチャを回そうとしているのだ!
……ヘカティエ様が元に戻れたら、その対価として冥界の魔術を教えてもらうという約束なので、これだけ必死になっているわけだが。
ヘカティエ様は冥界の管理者にして、亜神。その秘技を伝授してもらえるとなると、引く以外の選択肢はない。
「エヴァにゃんの従者は茶々丸だけカ」
「さすがにチャチャゼロは出せねえだろ?」
「素人相手に出したら大惨事アルね」
ガチャ石こと神聖結晶の数は、無料で集めた分で約一五〇個。
あと二十八回召喚することで、最高レアリティであるブラックのキャラクターが確定で引ける。
十連召喚に必要な神聖結晶は、50個。
つまり、この結晶一五〇個があれば、十連を三回回すうちにブラックが確定で一人召喚できる。ちなみにヘカティエ様はレアリティブラックだ。
「お、アスナは茶々丸が押さえたアルか」
「妥当だな。いいんちょは……うわ、エヴァンジェリン先生が直接押さえるのか。合気柔術対決じゃねえか」
「ネギ坊主が手すきになるヨ」
「そんなん、エヴァンジェリン先生なら片手間で相手できるだろ……ほら、武装解除決まった」
では、行くぞー!
十連召喚……レアリティプラチナが二人、ブラックなし。
十連召喚……プラチナ一人、ブラックなし。
十連召喚……確定分のブラックは……。
「はー、ジークリンデですかぁ、うーん。……あ、本人にこれ聞かれたら殺されそうですね。まあダブりですが」
「アスナ完全に負けているアルなー。というか、ハリセンて……」
「アーティファクトだから、何か特殊効果があるんだろう」
「少なくとも、茶々丸にはなんの効果もないみたいネ」
はー、仕方ない。徳に手を出すか。
耐えてくれ、私の現世において半年分貯めた徳よ……! うなれ、『Goddess Play Points』!
うおおおおお!
「……マルゴットはさぁ。なんで前世で来てくれなかったのに今、来るんです?」
「いいんちょはなんというか、見てて悲しくなるな」
「完全に遊ばれているアル」
「あっあっあっ、わらわはお呼びじゃないのじゃ」
「ネギ先生も完全に遊ばれているぞ」
「エヴァにゃん、障壁展開するだけで、ネギ坊主の方を見もしていないアルな」
「ああー、もう、いるから! 魔神団長は、もういるから! 興奮度1000%じゃないから!」
「はー、これで二対一だな。ネギ先生は頑張ったよ」
「おっ、茶々丸は、もう手を出さないみたいアルヨ」
「空中戦か。こうなると、もう完全に神楽坂といいんちょじゃ手を出せないな」
「あああああああああー!」
「……うるせえッ!」
「リンネ、ちょっと黙るアル」
「出ましたよ! ヘカティエ様、出ましたよッ!」
「分かったから。観戦しないなら寮の部屋戻ってろ」
「え、一人ぼっちでガチャして叫び声あげるとか、ただの狂人になっちゃうじゃないですか」
あああああーとか、一人でガチャして実際に言う人居たら、見てみたいですよ。
「今のお前も十分狂人だよ。いいから、一人で部屋に戻りたくないなら黙ってろ」
「あい……」
とにかく、ヘカティエ様は引けた。使用した神聖結晶の数は無料分含めて六〇〇個と、被害甚大だが、死ななきゃ安い。
ほら、神聖結晶六〇〇個とか、日本円に換算したらたったの四万円分だからね。積んだ徳で換算したら、有料分の神聖結晶四五〇個で五、六ヶ月分は確実にポイント消費したから、ちょっと吐きそうだけど。
「おー、エヴァンジェリン先生、だいぶ力、抑えているなぁ」
「ネギ坊主と同じ威力になるよう、絶妙な加減アルネ」
む、『LINE』の通知が来てる……ヘカティエ様からかぁ。なになに。『最速で育成すること』とな。
ええー、レベルアップはいいけど、好感度上げがなぁ……。
このスマホで好感度を0%から150%まで一気に上げるのはねぇ。「頭がおかしくなりそうだから他の人には絶対しないであげて」ってラーワルちゃんに言われているんだよなぁ……。
「ムッ!」
「突然威力を増した……クシャミかな?」
「でも、それに一瞬で対応したエヴァにゃんすごいアルネ」
「と、電力復旧か」
「これ、どっちの勝ちアル?」
「引き分け……といいたいけど、電力復旧したら終了とは一言も言っていないはずだからな」
「となるとエヴァにゃんの負けカ……?」
「いや待て。ネギ先生油断してる。ああまで無防備で近づいたら……ああー、出た、糸術」
「これは、ネギ坊主の負けネ」
よし、好感度MAX、と。ヘカティエ様の場合、ちびの状態でずっとスマホの王国で過ごしていたのだから、急激に好感度を上げても問題はないだろう。
それじゃあ、次はレベル上げっと。
「お、エヴァンジェリン先生は撤退か。賢いな」
「何がアルか?」
「拘束はしたが、いつ魔法で反撃されてもおかしくなかった。だから、今のうちに勝利宣言して去ったんだよ」
「なるほど! エヴァにゃんズルいね!」
「ネギ先生は、ポカーンとしてるな。急展開についていけてない」
「負けて悔しがらないアルかね」
「それよりも、負けたら、父親への恨みを血であがなうはずだったんだ。それが、相手は何もしないで勝利宣言だけして帰宅だぞ?」
「ああ、血を吸われて殺される思てたノカ」
「殺されるまではいかないまでも、ある程度の怪我は覚悟していただろうな」
「確かに、あんな顔にもなるカ」
「消化不良だろーな。こりゃ、明日はネギ先生とエヴァンジェリン先生で話し合いだろうな」
「私達、呼ばれると思うカ?」
「どーだろうな。今の段階ではまだ私達の存在はバラさないんじゃないか? 魔法関連で問題が起きたときに、助けてもらえる存在を下手に知ったら、甘え癖がつく」
「エヴァにゃんも、ちうも、ネギ坊主に厳しいアル」
「相手を一人前の大人と見なしたら、こんなもんだろ。大人と同じ立場で教師やっているんだ」
「本当に厳しいアルネ」
「よし、ネギ先生達は寮に戻ったな。それじゃあ、私達も戻るか」
「そうするネ。さすがにこの時間は眠たいアルネ」
「おーい、リンネ、帰るぞ……ダメだこりゃ。放って置いて帰ろうか」
よし、育成完了。
これで、ヘカティエ様から術を教えてもらえる。
楽しみだなぁ、『トリウィアの道』。これで私も、戦闘用の即時発動転移魔法持ちだ。まあ、冥界の魔術の初歩を勉強するところからだけどね!
◆32 いくさのあとに
さて、大停電の翌日だが、なぜか私はエヴァンジェリン邸で、キティちゃんとネギくんの話し合いの場に同席させられていた。
そもそも私、昨日の戦い、よく見てなかったから、どっちが勝ったかすら知らないんだけど? 私がいて、ちう様と古さんがいないのはなぜだろう。
「エヴァンジェリンさん。果たし状ではあんなことを書いていたのに、最後、僕に危害を加えなかったのは……果たし状の内容は嘘だったのですか?」
果たし状か。貴様の父親に与えられた不名誉を貴様の血ですすぐ、だっけ?
「そうだな。私に呪いをかけてから姿をくらましたナギのせいで、私は十数年も学生生活を繰り返すはめになったが……息子をくびり殺したいほどは恨んでおらん」
「呪い……?」
「人を強制的に学校に通わせる、登校地獄の呪いだ。ヤツの呪いは強力すぎて、解呪が困難でな……」
「そんな……いえ、分かりました! もし父さんが見つからなくても、いつか僕が呪いを解いてみせます!」
「ああいや、呪い自体はもう解けているんだ」
「あっ、そーですか……」
ルールブレイカー最強説待ったなしである。
「そんなすでに存在しない呪いよりも、ナギを探す方に力を入れてくれ」
「もしかして、父さんに復讐したいという……?」
「それはないよ。私はナギのヤツとは親しくてな」
あ、キティちゃん、今の笑顔最高! スマホに撮りたかったー。
「父さんの知り合いだったんだ!」
「ああ、少しの間、一緒に旅もしたことある」
「それがなんで、登校地獄の呪いをかけることに……?」
「そうだな……。ちょっとしたすれ違いだ」
うぷぷ。すれ違いって。
一方的に迫って、拒絶されたんでしょうが。要するに、振られた。
「……リンネ。笑いが漏れているぞ。後でコロス」
ヒエッ。
「でも、エヴァンジェリンさんは、他の人みたいに父さんは死んだって言わないんですね」
と、ネギくんが嬉しそうに言った。
「ああ、やつが生きていることは知っている」
「どこに居るんですか!? あっ、探せって言うくらいなら、知らないんですよね……」
身を乗り出して、すぐに肩をすぼめて椅子に座り直すネギくん。
「京都を探せ」
「え?」
「京都のどこかに、ヤツが一時期住んでいた家がある。そこに何か手掛かりがあるかもしれん」
どうやら、キティちゃんは原作通りのルートをとらせるつもりらしい。
まあ、それが一番段階的にステップアップしていけるよね。
「京都ですかー。確か、日本の有名な町でしたっけ。困ったな、まとまった休みは取れないから……」
「おい、大丈夫か、担任教師。修学旅行の行き先は京都だぞ」
「へっ?」
「こんな重要な行事のことを知らないなど……貴様、教師をちゃんとやっていけるのか……?」
「あはは……」
いやあ、今回ばかりはキティちゃんが悪いよ。
ネギくんは果たし状の件でいっぱいいっぱいで、他のことに目を向ける余裕がなかったのだから。
「まあ、いい。京都の家探しは任せた。私は旅行を楽しむつもりなので、こちらの手をわずらわせるなよ?」
「あ、はい。なんとか探してみます……」
「そうだな、どうしても手が必要なら、私ではなくこのリンネを頼れ」
おっと、私に話を振られた。
とりあえず、ぺこりとお辞儀をしておく。
「よろしくお願いします、刻詠さん! しょーじき、京都とかよく分からなくてー」
「私も詳しくないですが……まあ、困ったときはスマホの地図アプリにでも頼ります」
私は手元にスマホを呼び出して、ネギ先生に披露してみせる。
「刻詠さんのケータイ、不思議な見た目ですねー」
私の本体疑惑があるぞ! 眼鏡が本体って言われるギャグキャラのスマホバージョンだ!
と、そんな感じで顔会わせも終わり、ネギ先生はエヴァンジェリン邸をあとにしようとする。
だが、帰り際にふと思い浮かんだという感じで、疑問を声にした。
「そういえば、エヴァンジェリンさん。もう呪いは解けているなら、なんでまだ学校に通っているんですか? あ、来なくていいって意味ではないですよ」
その言葉に、キティちゃんが眉をピクリと動かす。
そして、少しの間を置いてから、キティちゃんが答えた。
「解いた時点で入学式は終わっていてな。せっかくだから、最後に呪いのない自由な学生生活でも送ってみようという、気まぐれさ」
嘘ばっかり。ネギくんの生徒ポジションを狙っていただけなのに。
女子供を殺さない主義の、闇の魔法使いエヴァンジェリン。そして、その生徒の私。
私達は造物主の撃破という目的のために、年端もいかないネギくんを修羅の道に叩き落とそうとしている。徳が積めなさそうな罪深さだね。困った困った。