【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆40 パクティオーカード
ラブラブキッス大作戦から一夜明け、朝食後の休憩時間。私は水無瀬さんをともない、ネギくんのもとへとやってきていた。正確には、ネギくんのペットであるカモさんのもとだ。
用事は、水無瀬さんのパクティオーカードの確認である。私達は他の生徒達から離れ、こっそりと言葉を交換する。
パクティオーカード。
ネギくんは水無瀬さんのパクティオーカードを手に取って眺めており、水無瀬さんもカモさんに作ってもらった複製品のパクティオーカードをマジマジと見つめている。
「これは、ローブかな?」
パクティオーカードに描かれている自分の絵姿を見て、水無瀬さんが言う。
カードの彼女は、前の学校の制服ではなく麻帆良学園女子中等部の制服を着て、その上に、前が開いた黒いローブを羽織っていた。
絵の中の彼女は他には何も持っておらず、彼女のアーティファクトは服の上に羽織るローブの可能性が高いように見えた。
「アーティファクトを呼び出してみな。カードを持った状態で、『
カモさんの説明を聞き、水無瀬さんが「アデアット」とつぶやく。
すると、彼女が着ていた制服の上に、黒いローブが羽織った状態で現れた。
「どうやら、『
カモさんが、アーティファクトの名前を説明してくれる。
「どんなアーティファクトかな……」
水無瀬さんはその場でくるくると回るが、特に変わったことは起きない。
「うーん、普通のローブということはないでしょうが……」
そう言いながら、私は水無瀬さんのローブに触れようとするが、手が、なぜかすり抜けた。
「え?」
「うん?」
水無瀬さんの身体を貫いて、肘から先が彼女に埋まっている状態になっている私。
「ええー!? 大丈夫なんですか、それ!?」
ネギくんが慌てたように言うが、私は特に彼女に触れている感覚はない。
水無瀬さんも、私に腕を身体に突っ込まれているという感触はないようで、不思議そうに私の二の腕を見つめている。
そして、私は腕を上下に振ってみると、まるで水無瀬さんの居る場所に何もないかのように、腕がすり抜けていった。
「これは……透過能力?」
ネギくんがそんなことを言った。なるほど、身体を他者に触れられないようにする透過能力ね。壁抜けとか床抜けとかできるのかな?
『あ、ちょっと待ってくださーい』
と、水無瀬さんのローブの中から声が聞こえた。
水無瀬さんがローブの前部分を開けて、中の制服を外に見せると、腰のポーチに入っているぬいぐるみが声をあげる。
『これ、透過じゃなくて幽霊化だと思いますー。感覚的に分かるんです』
「ええっ、人形がしゃべってる?」
ネギくんが、ぬいぐるみの相坂さんに驚いている。
ネギくんに相坂さんを見られた水無瀬さんの反応はと言うと……。
「しゃべるぬいぐるみよ。可愛いでしょう?」
「えっ、あっ、はい……」
水無瀬さんが誤魔化したので、私も適当に言っておこうか。
「私達のお友達です。優しくしてあげてくださいね」
「えっと、はい……」
何か腑に落ちないような顔をして、ネギくんはうなずく。
そして、話題はアーティファクトへと戻る。
「幽霊化……幽体化ね。それなら、他にも能力はありそう」
水無瀬さんのその言葉に、私は『UQ HOLDER!』に登場した
「透過、念動力、飛行、憑依の力でしょうか」
試してみたところ、いずれの力も備えていることが分かった。
「すごいアーティファクトですね……」
ネギくんが感心したようにつぶやく。すると、相坂さんが『幽霊ってすごいんです』と誇らしげに言った。
「でも、退魔の力に弱いかもしれない。そのへんは、注意した方がよさそうね」
一通りの検証を終えた水無瀬さんが、地面に降り立ちながらそう言った。
「で、あとは解除だけど……」
「アーティファクトを消すときは、『
「アベアット」
カモくんの解説を聞いて、水無瀬さんはアーティファクトを解除した。
というわけで、アーティファクトカードの説明を受け終えた私達は、ネギくんとカモさんにお礼を言ってから部屋に戻っていった。
「宮崎さんが覗いていたけれど、いいの?」
水無瀬さんがそう言うが、私は手をヒラヒラとさせて答える。
「どうせ、修学旅行の後で魔法について説明することになるだろうし、いいんですよ」
「こんなに何人にも魔法がバレて、オコジョ刑は大丈夫なのかな……」
「3年A組は、そのへん例外的なところありますからね」
やっぱり、クラスメート全員ネギくんのパートナー候補説は、信憑性がそれなりにありそうだなぁ。
◆41 戦いの陰で
修学旅行三日目は完全自由行動日。私服姿で、好きな場所で活動してよい日となっている。
麻帆良で中華料理屋台『
我々1班はと言うと、昨日に引き続き2班と合同で活動……とはならなかった。2班の綾瀬さんと早乙女さんが、二日続けて十二人での大人数で自由行動するのもどうかと、苦言を呈したのだ。
なので、近衛さんの護衛は桜咲さんに任せ、親書の輸送をネギくんと神楽坂さんに任せるという、原作漫画通りの展開になってしまった。
雪広さん? 彼女は頑張ったけど、私達ですら2班への同行が無理なのに、彼女が自分の班員すら説き伏せて同行できるはずがなかったよ……。
というわけで、私はサーヴァントのエミヤさんを霊体化させて、見えない状態で護衛にやることにした。
「しかし、心配ですね。日付が空いたので敵も傷を癒やしたでしょうし」
キティちゃんの先導で京都の寺社を巡る観光の最中、私はそんなことをぼやいた。
だが、キティちゃんはそんな私を鼻で笑った。
「元々、近衛木乃香は桜咲刹那が護衛についていたのだ。専属が居るならそちらに任せればいい。それに、ここは近衛木乃香の本拠地だ。親書とは直接の関わり合いがないのだから、関西呪術協会の本部から護衛を呼べばよいのだ」
「あー、桜咲さんはそれをしないでしょうね。彼女は、協会の誰が敵に回っているか分からないでしょうから」
「そんなもの、近衛木乃香の父親の詠春に、直接護衛を選んでもらえばいいだけではないか」
「桜咲さん、自分は下っ端だと思っていますから、組織のトップには掛け合えないでしょう……」
「ふん、あやつは自分が、組織のトップの娘を護衛しているという自覚が足りん」
「中学生に無理を言いなさる」
そんなやりとりをキティちゃんとしつつ、時間は過ぎる。
エミヤさんとのパスを通じての情報だと、どうやらネギくんは神楽坂さんと一緒に班から抜け出すことができたようだ。それを宮崎さんが追ったと。うーむ、そっちも気になるけど、エミヤさんは引き続き近衛さんの護衛をよろしく。
「むっ」
と、キティちゃんが何かに反応する。それと同時に、エミヤさんから念話だ。
『刻詠リンネ、敵が来たようだ。姿を現して守りに入る』
ふむ、これは……。
「エヴァンジェリン先生、近衛さんの監視してました?」
「ああ、念のため影の魔法でマーキングをな」
「お優しいことで。それで、どうします? 桜咲さんに、こっちに合流してもらいます?」
「ふむ……」
キティちゃんが周囲を見回す。私達が今いるのは、京都の太秦シネマ村。原作漫画で、敵に襲われた桜咲さんが逃げ込んだスポットだ。
「相手が、一般人に力を振るうことを
「大丈夫じゃないですか? 主犯は魔法の暴露を本気でして世界中に狙われる覚悟なんてないでしょうし、他は雇われの身です」
「ふむ、ならば、合流だな」
『エミヤさん。桜咲さんに、シネマ村に逃げてくるよう言ってくれませんか?』
『了解した……ふむ、無理だな。どうやら私も何者か怪しまれているらしい』
『あっ、面通ししてなかった……ええと、桜咲さんに、自分は刻詠リンネのスマホの使い魔だと説明してください』
『それならいけるか……?』
そんな念話をし終わると、少ししてからスマホに電話の着信が入った。
桜咲さんからだ。
「はい、もしもし」
『刻詠さん、シネマ村で合流というのは本当ですか?』
「うん、本当本当。そこにいるお兄さんは、私の部下というか知り合いというかそんな感じ」
『了解しました。すぐに向かいます』
そこで電話が切れる。うーむ、なるほど、エミヤさんが守っているから、電話する余裕があったんだね。
そして、そのエミヤさんから追加で念話が入った。
『合流を急がせる。相手に一人、手練れの者がいて、最後まで守りきれるか怪しい』
『え、襲撃犯って一人じゃないんですか』
『ああ、二刀流のそれなりの剣士が一人と、西洋魔術師が一人。例のフェイトという者だったか』
うっそお。フェイト・アーウェルンクスが襲撃に加わっているの?
いやまあ、確かに敵のメンバーの一人なんだから、ぼんやり待機しているはずがないんだけど。
「エヴァンジェリン先生、敵に……」
「ああ、アーウェルンクスがいるようだな。仕方ないので、私が対処する」
先生、お願いしやす!
◆42 宣戦布告
シネマ村に到着し、無事に桜咲さんと合流ができたのはいいのだが……。
「桜咲さん、なぜコスプレをしているんです……?」
「ええと、このかお嬢様に請われて……」
新撰組の服装をした桜咲さんが恥ずかしそうに顔を赤くしている。
そんな桜咲さんの腕に、満足そうにしながら腕を絡ませる舞妓さん衣装の近衛さん。
「やれやれ、緊張感のないことだ」
呆れたように言うエミヤさん。しかし……。
「正義の味方エミヤマン・アーチャー。入場料は?」
サーヴァントの彼に、私はお金を持たせた記憶はない。
「……サーヴァントは人ではないからな。大人一人判定は受けない」
「はあ……まあ、入場口から堂々と無銭入場したのを見られたとかでないなら、とやかく言いませんけれどね。ここに来るよう指示したのは私ですし」
私は、心の中で運営スタッフさんに謝っておく。
そして、問題は桜咲さんだ。
「その格好で、近衛さんの護衛をするつもりですか?」
「ええと、はい……新撰組なのでセーフになりませんか?」
「衣装を汚したり破いたりした場合、弁償する覚悟があるならセーフでよいのではないでしょうか」
「うっ……」
桜咲さんは、麻帆良でもなにやら龍宮さんと裏の仕事をしているみたいだから、依頼料で稼いでいるから大丈夫かもしれないけれど。……いや、護衛の経費として学園長にでも請求すればいいのか。
「とりあえず、敵の攻撃はシネマ村に入ってから止んだようですが……」
閑話休題とばかりに、桜咲さんがそう報告をしてくる。
すると、私達に近づく影が。
「どうもー。神鳴流どすえー」
やってきたのは、明治期の洋風ドレスを身にまとった、二刀流剣士の月詠だ。
「じゃなかったです。……そこの東の洋館のお金持ちの貴婦人にございますー。今日こそ借金のカタにお姫さまをもらい受けに来ましたえー」
うーん、どうやら、敵は一芝居打ってこちらに喧嘩を売ってくるようだ。
これで、魔法の無闇な漏洩をお芝居という形で防ぐ姿勢が見てとれるため、一般市民への被害も抑えてくれると期待していいだろう。
そして、月詠に「お嬢様は渡さない」と
「そーおすかー。ほな仕方ありまへんなー」
そう言って、月詠は手にはめていた白い手袋を脱ぎ、顔に向けて投げつけてきた。
桜咲さんにではなく、古さんの顔に。
「このか様を賭けて、決闘を申し込ませていただきますー。逃げたらあきまへんえ、中国武術のお姉さん」
「は?」
「へ? 私アルか?」
そこは桜咲さんに投げつける流れだったろうという思いは、私以外にもあっただろう。周囲で見ている観光客も突っ込みたいはずだ。
「そこな中国お姉さんが、おそらくこのか四天王にて最強。挑ませてもらいますえ」
いや、それ、古さんとリベンジマッチしたいだけですよね?
「決闘は三十分後、場所はシネマ村正門横『日本橋』にてー。ウチの顔を焼いた恨み、晴らさせていただきますえ」
言うだけ言って、月詠は古めかしいオープンタイプの馬車に乗り込み、この場から去っていった。
ちなみに、フェイト・アーウェルンクスは小姓の格好をして馬車の御者席に乗っていた。馬車操れるんだぁ。いや、大抵のことは知識をインストールすることで、できるようになるんだったかな。
「桜咲さん!」
と、そこで、私達に近づく集団が。
それは、雪広さんを先頭にした4班の面々。
「敵が来たのですね?」
雪広さんが、真面目な顔で桜咲さんに問いかけている。
「はい。先日、古が戦った、神鳴流の剣士です。ネギ先生の方ではなく、このかお嬢様の誘拐が目的のようで……」
「なるほど。先日の少年の姿もありましたわね。となれば、私も共に戦わせていただきますわ」
「ありがとうございます。でも……」
「拒否するのは、なしですわよ」
「いえ、そうではなく、その格好で戦うのは厳しいかと」
桜咲さんの視線の先。雪広さんは、
「あ、これは……き、着替えて来ますわ!」
恥ずかしそうにする雪広さんだが、いいことをしてくれた。
いやー、戦力が追加されるとか、嬉しい限りだね。
私は、ひっそりとフェードアウトしようとしていた、一人の生徒に近づき、肩を叩く。
「どこへ行こうというのかね?」
「いやー、ちょっと見て回りたい映画セットが……」
「クラスメート誘拐の危機、手伝ってくれるのが筋だよね。
「戦闘とか私、向いていないというかー」
私は、麻帆良の魔法生徒である
「ぐえー、力強すぎッス!」
「大丈夫大丈夫。ちょっとだけ、相手の呼び出す式神を潰してくれるだけでいいですから」
そして、皆のところに戻ったところで、私は春日さんから離れて、別の生徒のもとへと近づく。
それは、明治期の書生さん風の衣装に身を包んだ、ザジ・レイニーデイさん。
「レイニーデイさん。一般市民に被害がいかないよう、見守ってもらえますか?」
私がそう問いかけると、彼女は無言でこくりとうなずいた。
彼女は、異界出身の魔族の王族。その力は計り知れないが、協力を承諾してくれた。よし、安心して戦いにのぞむことにしよう。