【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆43 シネマ村の戦い
シネマ村にある木橋へと到着した私達。そこには、神鳴流剣士の月詠と、フェイト・アーウェルンクスの姿があった。
「ぎょーさん連れてきてはって、おおきにー。楽しくなりそうですなー」
うん、本当にぎょーさん連れてきてしまったぞ。
1班と4班からは全員。2班からは、神楽坂さんと宮崎さん以外の全員だ。合計で、十五人プラス幽霊一体である。
橋の中央に、進み出る古さん。チャイナドレスを身にまとい、手には『莫邪の両剣』を構えている。
ちなみにこのチャイナドレスは古さんの私服ではない。
一般の観光客相手にお芝居を装うなら、普通の私服姿では誤魔化しきれなくなる、と雪広さんが言いだして、1班も全員貸し衣装でコスプレをしたのだ。戦闘で服が破損するかもしれないと言ったのだが、そこは名だたる大財閥の次女。衣装を破損・紛失させた場合は、全額弁償すると、施設運営側を説き伏せてしまった。
施設運営側はスケジュールにないお芝居イベントについていぶかしんでいたが、そこは私が魔術で暗示をかけて曖昧にしておいた。
ちなみに、私は貸し衣装を借りていない。自前の服装でコスプレしている。
桜色の和装。スマホから力を引き出した、桜セイバーこと沖田総司衣装である。腰に差している刀も真剣だ。
「なんや一般人も混ざっておるようですが……その方達には、私の可愛いペットがお相手しますー」
月詠が、周囲に呪符をばらまくと、煙と共に和風の妖魔の姿をした式神が大量に姿を現す。
「ひゃっきやこぉー! さあ、武術のお姉さん、尋常に勝負ぅー」
「行くアルヨ!」
月詠と古さんが、橋の中央で激突する。
そして、私達は大量の式神の対処に移った。
「おおー、スゴイCGだー!」
「さすがシネマ村のアトラクション!」
周囲で見守る観光客が、そう言って盛り上がる。暗示も認識阻害も使っていないのに全部CGで納得するとか、さすがコメディ漫画世界の住人達である。
「あれがCGだっていうなら、これもCGよね。アリエル・ファルエル・ベルベット。闇火の精霊29柱。集い来たりて敵を焼け――」
江戸時代の町娘風衣装を身にまとった水無瀬さんが、大胆にも呪文詠唱を始めた。
「――『
魔法の矢が、百鬼夜行をなぎ払う。その隙を突いて、横から式神が水無瀬さんにまとわりつこうとするが、私はそれに割り込むように刀で式神へと斬りつけた。
「ありがとう、リンネさん」
「いえ、前は守りますので、バンバン魔法使ってください」
「あら素敵。パートナーに欲しいわね」
「お友達からでお願いします」
「私のキスは子供先生すら堕とした特別製よ」
「よしてくださいお姉様。マリア様が見ています」
「リンネさんもマリみて読者? でも、そんな百合百合しいやりとりは出てこないわよ」
そんなバカなやりとりをしつつ、式神をほふっていく。水無瀬さん、無詠唱呪文上手いなー。
と、式神に混じって、フェイトと着ぐるみを着こんだお弁当女がこちらに近づいてくる。
お弁当女が近衛さんを守る桜咲さんを抑え込み、その隙をつこうとするフェイトの魔の手が、近衛さんに迫る。
「おっと、貴様の相手は私だ」
影の中に沈んで事前に姿をくらましていたキティちゃんが、不意打ちでフェイトを上空に向けて殴り飛ばした。
「くっ!」
かなり高くまで吹き飛ばされた後、なんとか空中で姿勢を整えるフェイト。そこへ、キティちゃんも飛んでいって、二人は空中戦に入った。
二人ともホウキや杖なしで空飛べるから、すごいよね。
「すげー!」
「ワイヤーアクションだ!」
別の意味ですごさを感じたらしい観光客が、全力で盛り上がっている。
そこから激しい戦いが続く。
妖魔の式神の数が減ってくると、お弁当女が符を追加して、猿や熊といった動物の式神が暴れ回る。
桜咲さんはお弁当女とのタイマンで忙しく、近衛さんの守りは一人だけコスプレをしていないエミヤさん(赤原礼装)が完璧にこなしていた。近衛さんは長身の大人の男に守ってもらえるのが嬉しいのか、キャーキャーと叫んで嬉しがっていた。
近衛さんはエミヤさんに任せて、私は際限なく増え続ける式神を処理していった。私が沖田パワーで縦横無尽に駆け回ると、追加分の式神もどんどん数を減らしていった。
そして、すぐに戦いは終わりに近づく。
古さんの激しい攻撃で急速に体力を削られたのか、橋の上で月詠が肩で息をしている。
お弁当女は桜咲さんに着ぐるみを破壊され、雪広さんに投げられて地面を転がっていた。
上空のフェイトは……。
「『
キティちゃんの魔法が決まり、フェイトが地面に落ちてくる。
その先は、近衛さんのいる場所のすぐそば。一瞬ひやりとするが、エミヤさんが倒れたフェイトの首元に双剣を突きつけることで、それ以上の動きを防いだ。
そして、古さんが月詠を蹴り飛ばし、月詠は
「そちらの負けです。投降してください」
桜咲さんが、勝利を宣言するようにそう告げた。
「いや、こちらの勝ちだ。絶好の場所だね」
フェイトがそう言った瞬間、彼の身体から魔法陣が一瞬で展開する。
その魔法陣は、エミヤさんを避け、近衛さんにまとわりつく。
「お嬢様ッ!」
とっさに桜咲さんが近衛さんに手を伸ばすが、すでに遅く、魔法が発動した。
それは、転移魔法。近衛さんは、縮んでいく魔法陣に飲みこまれ、この場から姿を消してしまった。
「近衛木乃香は貰ったよ」
「くっ、
エミヤさんがとっさに魔力封じの剣を投影してフェイトに突き刺すが、遅延魔法かマジック・アイテムによるものか、刺さった魔力封じの剣ごとどこかに転移していった。
さらに、お弁当女も懐から札を取り出して、転移で逃亡。
川の中の月詠も、いつの間にか姿を消していた。
まさかのどんでんがえしの結果に、桜咲さんは膝を突いてうなだれる。
そこへ、空からキティちゃんが降りてくる。
「まさか転移魔法を準備してあったとはな」
「すまない。詰めが甘かった」
エミヤさんが、眉間にシワをよせながらそう謝ってきた。
だが、エミヤさんだけの責任ではない。転移魔法の使用を想定していなかった、私の落ち度でもある。
『UQ HOLDER!』で、敵側の切り札として〝相手を転送することによる無力化〟が使われる光景を見たというのに、この時点で使ってくる敵がいると予測していなかったのだ。
「お嬢様……」
「こら、桜咲刹那。何を腑抜けている。助けにいかんのか」
「でも、どこに行ったのか……」
「私が、近衛木乃香に影を忍ばせている。場所は追跡できているぞ」
「本当ですか!?」
キティちゃんの言葉で、この世の終わりのような顔をしていた桜咲さんの顔に、活力が戻ってくる。
「ふむ。どこかの湖か。これは、封印解除の儀式をしているな。リョウメンスクナの封印解除が目的か」
「リョウメンスクナ!? かつて長が封印したという、大鬼神です!」
「それなら、場所は分かるな? ふむ、近衛木乃香の魔力を使って、守りに妖怪を大量召喚しているな……。こうなったら、全面戦争だ。桜咲刹那、関西呪術協会に連絡を取って、戦力を動員しろ」
「えっ、それは……」
「四の五の言っている場合か!」
キティちゃんに叱られ、桜咲さんは携帯電話を取りだし、どこかに電話を始める。
しかし、しばらく待っても相手が電話を取る様子がない。
「おかしいですね……」
桜咲さんがひたすらにコールを続ける。
と、そこで私のスマホに着信が入った。相手は……神楽坂さんだ。
「はい、もしもし」
『リンネちゃん、助けて!』
神楽坂さんの叫び声が、スマホのスピーカーから響いてくる。
私はただ事ではないと思い、ハンズフリー通話に変えてキティちゃんと桜咲さんにも神楽坂さんの声が聞こえるようにする。
「いったいどうしました?」
『みんなが、石になって、木乃香の実家で、もうリンネちゃんとエヴァちゃんに頼るしかないの!』
「順を追って説明してください。今居るのはどこですか?」
『このかの実家! えっと、呪術協会ってとこの本山』
「石になるとは?」
『一昨日の白髪の男の子が急に現れて、魔法でみんなを石像に変えだしたの!』
「えっ!? 本山には結界の守りがあるはずです!」
桜咲さんが驚いたように叫ぶ。
『あれっ、刹那さん。刹那さんも居るの? 木乃香は無事?』
「お嬢様は……さらわれてしまいました」
『えーっ! 一大事じゃない! いや、こっちも一大事よ!』
ふむ、しかし、なんでフェイトはわざわざ関西呪術協会の本山を襲った? 近衛さんの身柄は手元にあるというのに。親書をネギくんが本山に渡したからか?
「本山が狙われたのは、おそらく封印解除の儀式を邪魔されたくないからだろうな。石化の術を使ったのは、白髪の少年の独断かもしれんが」
キティちゃんが、そう推測を口にした。なるほど、私達から連絡がいって邪魔出しされるのを恐れたか。
「神楽坂明日菜。ぼーやはいるか? それと、近衛詠春だ」
『詠春さんは、ネギをかばって石化させられて……ネギはなんとか無事。私が男の子を追い払ったから』
「よし、分かった。ぼーやを連れてこれから言う場所へ向かえ。私達も向かう。ただし、合流するまで先走るなよ。場所は――」
キティちゃんが、桜咲さんに聞きながら近衛さんの居場所を神楽坂さんに告げる。
そして、キティちゃんは、橋の上で観光客達に手を振っていた古さんの方へと向いて、言った。
「古菲。雲を呼び出せ」
「アイヨー」
そして次に、キティちゃんは私の方へと向く。
「リンネ。貴様の任を解く。桜咲刹那への協力は止めだ」
「エヴァンジェリンさん!?」
桜咲さんが、キティちゃんの言葉に驚く。
だが、キティちゃんは気にも留めずに言葉を続けた。
「これからは、さらわれたクラスメートの自主的な救出行動となる。リンネ、もはや誰これの成長が、などと言ってられん。向こうには巻き込む一般人などおらんから、全力を出していいぞ」
「はい、先生」
それからキティちゃんは、先ほどの戦いの中でひたすら一般人枠のクラスメート達を守り続けていたちう様を見る。
「千雨。お前も全ての術の使用を解禁する」
「マジか。そこまでか」
「そこまでだ。やつらが呼び出した悪鬼羅刹どもは見物だぞ。よほどなりふりかまっていないらしい」
そんなやりとりをしている間に、古さんは仙術を行使していた。
周囲に霧が立ちこめ、それが古さんの足元にどんどんと集まってきていた。
やがて、霧は雲状に変わり、やがて雲はまるで入道雲のように濃くなっていった。
「できたアル」
古さんはそう私達に告げた。古さんの足元には、いかにも人が乗れそうですよという感じの大きな雲ができあがっていた。
すると、キティちゃんは、橋の方へと駆けだし、ぴょんと雲の上に飛び乗る。それを追って、茶々丸さんが乗る。続けて、ちう様も飛び乗り、私も遅れまいと雲の上に飛び乗った。
足に返ってくるのは、弾力のある物を踏みしめる独特の感触。
「桜咲刹那。助けに行きたいならば、乗れ。空飛ぶ雲だ」
キティちゃんの言葉に、桜咲さんが疑うこともせず雲に飛び乗った。
続けて、エミヤさんが乗りこむ。
「私も行きます!」
横から話を聞いていて事情を察したのであろう雪広さんが、こちらに近づいてくる。
「死ぬ覚悟があるなら乗るがいい。これから向かうのは戦場だ」
キティちゃんがそう言うが、雪広さんはなんてことないように答える。
「生き延びる覚悟は決めましたわ!」
そうして雪広さんも乗り込み、遅れて水無瀬さんまで乗りこんできた。
「じゃあ、行くアルヨ!」
そう言って、古さんは雲を宙に浮かせ始める。
すると、事態を見守っていた観光客達が、大いに盛り上がり、「頑張れー!」だとか「第二部はどこでやるんだー!?」とか叫ぶ。うーん、あそこだけギャグ漫画の空気。
そして、私達は雲に乗って、空へと飛び立った。目指すは、大鬼神リョウメンスクナノカミ封印の地だ。