【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■19 旅の終わりに

◆48 関西呪術協会本山

 

 ネギくんと聖剣エクスカリバーでたわむれてから、私はネギくん、桜咲さん、そして完全に目を覚ました近衛さんと一緒に、後方戦闘組と合流した。

 そして話を聞くに、どうやらフェイトは一発目の『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』が炸裂した時点で、月詠を連れてキティちゃんから逃げ出したとのこと。フェイトは造物主(ライフメイカー)を切り崩す一手となる存在のため、キティちゃんは殺したり捕まえたりする気は元々なかったようだ。

 ちなみに月詠は、古さんの仙術と宝貝で、ズタボロにされていたらしい。

 

 ネギくんが封印の祭壇へ行く途中にバトルになった犬上小太郎は、ネギくんと互角のバトルを繰り広げたようだ。しかし、オーガスタさんが『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を強化する際に使ったスキルで、ネギくんが急に回復&強化。そこからネギくんは犬上小太郎を圧倒して、相手の無力化に成功したとのこと。

 

 事件の主犯であるお弁当女こと千草は、ちゃんと捕らえてある。犬上小太郎と一緒に、関西呪術協会へ引き渡すこととなるだろう。

 召喚された妖魔と戦ったメンバーに、これといって怪我らしい怪我はなし。というか、オーガスタさんのスキルで治ったようだ。チョコカレーの力すげー。

 

 さて、次にやるべきことがある。私達は湖のすぐ近くにある山、関西呪術協会の本山を登り、頂上部分に設けられた屋敷へと向かった。

 鳥居が多数連なり、季節でもないというのに桜が舞い散っている巨大な屋敷だ。だが……。

 

「な、なんやのこれ……!」

 

 完全に目を覚ました近衛さんが、自分の実家の惨状を見て、驚きの声をあげた。

 建物に被害があるわけではない。ただ、屋敷に住む住人、使用人が全員石化してしまっているのだ。

 詠唱ができないよう口を布でおおわれている主犯と、犬上小太郎もこの光景には絶句してしまっていた。

 ここまでやれとは言っていないのに。そう言いたげな二人だった。

 

「お父様……」

 

 ネギくんをかばって石化されてしまったという近衛詠春さんを見て、近衛さんが涙を流した。そして、それを見たネギくんが、悲痛な顔をする。

 ネギくんのその表情は、詠春さんが自分をかばったという事実からくるものだけではないだろう。ネギくんは、故郷を襲撃されて、住人を皆、石にされてしまったという過去を持っているのだ。

 

「エヴァンジェリンさん、魔法でなんとかなりますか……?」

 

 不安げに、ネギくんがキティちゃんにすがるように言う。キティちゃんは六百年を生きる大魔法使い。すがりたくもなるだろう。

 

「いや、私は不死者だからな。治療系の魔法は苦手なんだ」

 

「そんな……」

 

「そう気を落とすな。治す手段が思い当たらないわけじゃーない。そうだな、一つの手段としては、ぼーや、近衛木乃香と仮契約(パクティオー)するか? 潜在能力が覚醒して治癒の力が使えるかもしれんし、治癒のアーティファクトが手に入るかもしれん」

 

 キティちゃんのその言葉に、近衛さんへと視線が集まる。

 すると、皆に見られた近衛さんは、涙をシネマ村のコスプレ衣装の袖で拭いて、覚悟を決めた顔になる。

 

「ウチ、やるよ。仮契約って、前にネギ君が言うてた、カードが出るチューのことやんな? ウチ、ネギくんとチューする!」

 

 そんな、シリアスなんだか、ギャグなんだかよく分からない台詞を近衛さんは言った。

 なるほど。原作漫画通りの出来事が修学旅行前に起きていたのなら、近衛さんはネギくんのほっぺにキスをして、スカのパクティオーカードを目にしていたはずだ。

 

「うぎぎぎ……」

 

「委員長、今そーいう場面じゃないから、大人しくしなさい」

 

 嫉妬の心に支配されそうになっている雪広さんを神楽坂さんが押さえる。

 そして、カモさんが仮契約の魔法陣を床に描き、その魔法陣の中に近衛さんとネギくんが入って向かい合う。

 

「それじゃあ、いくで」

 

「はい……」

 

「ロマンチックなシチュエーションじゃなくてごめんなあ、ネギ君」

 

「い、いえ……」

 

「じゃあ……」

 

 皆に見守られながら、という恥ずかしすぎるシチュエーションで、近衛さんがネギくんに口づけし、近衛さんの身体からパクティオーカードが出現する。

 しかし、想像していたような強い魔法の光は発せられていない。

 

 周囲を見回しても、石化が解除されているという様子は見られなかった。

 

「どうですか、このかさん。治癒能力の類は使えそうですか?」

 

 仮契約を終えたネギくんが、近衛さんに尋ねる。

 しかし……。

 

「うーん、特に何もできそうにはないなぁ」

 

 パクティオーカードを手に持ちながら、首をかしげる近衛さん。

 それを見たちう様が、キティちゃんへ尋ねた。

 

「どういうことだ? 潜在能力の解放、どうなった?」

 

「むう、おそらくだが……妖魔の召喚とリョウメンスクナの封印解除で、魔力を吸われすぎたのだろう。仮契約時に漏れ出す余剰魔力すら、使い切っていたわけだな」

 

「つまり、あいつのせいなわけか」

 

 ちう様が、エミヤさん作の拘束布でグルグル巻きにされて、床に転がされている主犯の千草をにらむ。

 

 と、そこで仮契約を見守って床にいたカモさんが、ぴょんとネギくんの肩に飛び乗って、言った。

 

「まだだ、まだだぜ、このか姉さん! アーティファクトがまだある! パクティオーカードを持って、『来たれ(アデアット)』と言えば、魔法の道具が召喚される! それが治癒の魔法具(マジック・アイテム)かもしれねー!」

 

 カモさんのその言葉を聞き、近衛さんはパクティオーカードを指先で強くつかみながら「アデアット!」と宣言した。

 すると、近衛さんは昔の公家が着ていたような狩衣(かりぎぬ)に身を包み、右手に木の薄板を束ねた扇子、左手に紙が張られた扇子を携えた姿に変わった。

 

「キター! アーティファクトは東風ノ檜扇(コチノヒオウギ)南風ノ末廣(ハエノスエヒロ)のセットだ! 東風ノ檜扇が一日一回、三分以内の怪我ならどんな怪我でも完治させる効果。南風ノ末廣が一日一回、三十分以内に発症したあらゆる状態異常を完治させる効果だ! キタぜー!」

 

 そのカモくんの言葉に、神楽坂さんが「おおっ」と感嘆を漏らす。

 しかし……。

 

「駄目でしたか……」

 

 近衛さんから視線を下に外して、気を落とすネギくん。

 それを見て、近衛さんが疑問の声をあげる。

 

「どしたん? 私のこれがあれば、治せるとちゃうん?」

 

 扇子をヒラヒラとさせながら、近衛さんが言う。

 だが、ネギくんは首を横に振ってその言葉を否定した。

 

「長さん達が石化させられてから、もう三十分以上経っているんです」

 

「あっ」

 

 そのことに気づかなかったであろう神楽坂さんが、そんな声をあげた。

 一方、術で眠らされていて時間の経過が曖昧だった近衛さんは、意気消沈して肩を落とした。

 

「お父様は、助けられないん……?」

 

 石になっている長の詠春さんを見ながら、目に涙をにじませる近衛さん。

 しかし、重い空気を吹き飛ばすように、キティちゃんが横から口を出す。

 

「私は、治す手段が一つしかないなどとは、言っていないぞ」

 

 うん、そうなんだよね。相手に石化を得意とするフェイトが居ると知っていたキティちゃんは、ちゃんと対策をいくつも用意していた。

 周囲の目が集まるのも気にせず、キティちゃんは言葉を続ける。

 

「何も、近衛木乃香だけが、治癒の力を身に宿しているわけではない。リンネ」

 

「はいはい」

 

 キティちゃんに呼ばれたので、返事をしておく。

 

「解除できるか?」

 

「お任せあれ」

 

 私は引き出していた『アルトリア・ペンドラゴン』の力をスマホに戻し、別の力を汲み上げる。

 それは、『千年戦争アイギス』の仲間キャラクター『至宝の使い手リアナ』の力。

 

 私の服装が変化していき、青服の騎士鎧から、赤いフードマントに白のローブ姿へと変わる。さらに、手には巨大な宝玉が先端に備え付けられた、一本の長杖が出現する。

 そして、どこからともなく白いミミズクが舞い降りてきて、私の肩の上に停まった。

 

「その姿は……」

 

 誰が言ったのか、そんなつぶやきが私の耳に聞こえてくる。

 その声に答えるように、私は今の自分に付いて説明を始めた。

 

「今の私は職業(クラス)ヒーラーの上位、オラクルの力を身に宿しています。癒やしの力ですね。そして、そのオラクルに就いているリアナさんという方の秘宝をお借りしています。この杖です」

 

 私は、杖を皆に見せつけるよう掲げた。

 

「先ほどのエクスカリバーもすごかったですが……その杖からも強大な魔力を感じます」

 

 ネギくんが、真剣な顔をして私の持つ杖を見つめている。

 ふふふ、気になるだろうね。まあ、ちゃんと力を見せるから落ち着いてほしい。

 

「この杖は、癒やしの至宝といいます。様々な状態異常を治す、アーティファクトみたいなものと思ってくださいな。ただし例外はあって、膂力や守りの力を引き下げるいわゆるデバフや、神の邪眼のような途方もない力などは、癒やせませんけれどね」

 

「そんな物が……!」

 

 ネギくんだけでなく、キティちゃん組以外の全員が驚きの表情を浮かべている。

 そして、近衛さんが複雑な表情を浮かべながら言う。

 

「なんや、ウチの扇子の上位互換ちゃうん?」

 

 だが、待ってほしい。近衛さんのアーティファクトは制約があまりにも強い点に注目してほしい。制約がある分、効果が強力になって、制限時間以内なら神の呪いすら無効化できる可能性を秘めているよ。

 三分以内や三十分以内という時間制限は、時間逆行系の治癒能力を連想させる制約だ。もしかしたら、時間をさかのぼってあらゆる状態変化をなかったことにするという動作を見せてくれるかもしれない。かもしれない、だけれども。

 

 一方で、癒やしの至宝というか『千年戦争アイギス』における状態異常無効の力では、石化の力を持つ不死の亜神ゴルゴーンが使う『蛇亜神の毒呪縛』と、その配下が使う『蛇眷属の毒』を防ぐことはできなかった。王国の癒やしの力は、神の呪いの前には無力なのだ。

 

 さて、そんな無駄話は後にして、治療の準備を進めよう。

 私はまず、使い魔である白いミミズクを飛ばして、屋敷を探らせる。そして、石化した人がどこにいるか、屋敷の広さはどれくらいかを把握していく。

 

「ふむ、とりあえずは、本屋敷から始めましょうか。癒やしの至宝の効果範囲は広いですが、さすがにこの広い敷地全てを一度には範囲に入れられませんからね」

 

「一日何回までみたいな制限はないのですか?」

 

 桜咲さんが、そのような質問を投げかけてくる。

 

「回数制限はありません。一度発動し終わると、再度発動するまで三十秒の冷却期間が必要ですが」

 

「それは……」

 

「ウチの上位互換すぎるわぁ……」

 

 近衛さんが乾いた笑いをし始めたので、桜咲さんがなぐさめるように近衛さんの肩に優しく触れた。近衛さんのことは桜咲さんに任せておこう。

 では、治療を始めるとしようか。

 

「発動せよ。『癒やしの至宝』」

 

 杖の宝玉が光り、魔力の波動が周囲に伝播する。

 次の瞬間、石になっていた長や戦巫女達の表面に、色が戻っていく。そして、皆一斉に石化が解けて、それぞれ動きを再開させた。

 

「うっ……むう、これは……」

 

「お父様!」

 

 誰かを庇うような姿勢を取っていた、関西呪術協会の長、近衛詠春さんが元に戻り、そこへ近衛木乃香さんが抱きついた。

 

「お父様、よかった……」

 

「このか……そうか、誰かが石化を解いてくれたのか」

 

 どうやら、石化は無事に解けたようだ。よかったよかった。

 いやまあ、麻帆良で事前にキティちゃんと地の魔法による石化の解除が可能か、実験はしてあったんだけどね。

 

 それから私はスキル『癒やしの至宝』の効果時間である四十秒間、しっかりスキルを使い続けた。

 そして効果時間が終わり、魔力の波動を鎮めた杖の先端を私は優しく撫でた。サンキュー、リアナさん。あなたの力のおかげで、ハッピーエンドだ。

 

 それから、本屋敷の全員が石化解除されたか調べるために、私は再度ミミズクを飛ばした。

 

「ふう……」

 

 魔力の消費はないので疲れてはいないが、一仕事終えて思わず息が漏れる。

 そんな私に、近づく者が一人。ネギくんだ。

 

「どうかしましたか?」

 

 私から話しかけると、ネギくんは真剣な顔で言った。

 

「その癒やしの至宝という魔法具ですが……悪魔による石化は、治せますか?」

 

 その質問に、カモさんがハッとした顔で「兄貴……」とつぶやく。

 ふーむ。悪魔による石化か。ネギくんの故郷の村を襲撃したのは、悪魔。すなわち金星の異界にある魔界に住む、魔族だったね。

 主人公に悲しき過去……。定番だね。世界の異物であるオリ主の私に、悲しい過去は微塵もないけど。

 

「その悪魔が、神に匹敵する強大な悪魔ではないなら、いけるはずですよ。つまり、邪神の呪いだった場合は、おそらく無理です」

 

「なるほど、分かりました……。あの、刻詠さん、僕にできることならなんでもします。ですから、石化の解除を依頼したいです」

 

「あいあい。ゴールデンウィークにでも予定を合わせましょうか」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

「お礼は石化が解けてからでいいですよー」

 

 そんなやりとりをしていると、ひっそりとこの場を立ち去ろうとする者が一人いた。

 それは、桜咲さんだ。

 

 私は、彼女の事情を知る仲間である、ちう様に呼びかける。

 

「ちう様ー。桜咲さん確保してー」

 

「ん? ああ。おいっ、桜咲! 逃げるな!」

 

「あっ!」

 

 ちう様が瞬動で近づき、桜咲さんを確保する。

 

「と、止めないでください!」

 

「うるせえ! 何も言わずに消えようとしているんじゃねえ! 大方、真の姿を見られたから去るとか考えているんだろうが……」

 

「分かっているなら、行かせてください! 一族の掟で、あの姿を見られてはいけないんです!」

 

「知るか! どうせ、黒い羽の一族が、白い羽のお前を忌み子として扱ったとか、そんなんだろ!」

 

「なぜそれを……!」

 

「そんなの漫画でも見ていればいくらでも転がっている事例だからな」

 

「漫画って……」

 

 その漫画、『魔法先生ネギま!』とかいうんですね、分かります。

 

「お前を忌み子扱いした一族に、いまさら果たす義理なんてねえだろ。多分、烏族の一族なんだろうが……。いいか、桜咲。お前はもう、烏族の世界で半妖として生きているんじゃない。お前が今いるのは人間の世界で、お前は一人の人間として生きているんだ。烏族として生きる必要は無いんだから、掟に律儀に従う必要も義理もねえ」

 

 出たー! ちう様の説教フェイズだー!

 

「うう、しかし……」

 

「桜咲。お前はどちらを選ぶ? 近衛の居る人間の世界か、忌み子としてさげすまれる烏族の世界か」

 

「私は……」

 

 桜咲さんは、手に携えた大太刀の鞘をぎゅっとにぎり、視線を迷わせる。

 やがてその視線が辿り着いたのは、父親へ抱きつくのを止め、じっと桜咲さんを見つめている近衛さんだった。

 

「せっちゃん……」

 

 狩衣姿の近衛さんが、胸の前で二つのアーティファクトをかきいだく。

 

「私は……このちゃんが……」

 

「分かっているじゃねーか。ほれ、近衛が心配しているぜ? 行ってやれ」

 

「このちゃん……!」

 

 桜咲さんが近衛さんの方に歩いていくと、それを待ちきれないとばかりにアーティファクトを放り投げて、近衛さんが桜咲さんの胸に飛びこんだ。

 

「せっちゃん、いなくなったらあかんー!」

 

「うん、ウチもこのちゃんと一緒に居るから……」

 

 よしよし、今度こそハッピーエンドだな。

 私は、無事に元の鞘に収まった二人を眺めながら、自分のスマホの力がもたらした完全無欠のハッピーエンドを内心で誇るのであった。

 

 

 

◆49 ナギのアトリエ

 

 本山での治療の際、私は石化させられていた宮崎さんを発見した。宮崎さんにはもう完全に魔法の存在がバレてしまったと見てよいだろう。

 そして、全ての治療を終えた後、シネマ村から飛んできた面々は、詠春さんが呼んでくれたタクシーでシネマ村に戻った。

 当然ながらみんなの借り衣装は戦いでボロボロになっており、弁償は確定。だが、当初の雪広さんの負担ではなく、関西呪術協会が全額支払ってくれることになった。

 

 そして、預けていた私服に着替え、今度はタクシーで旅館へと帰還。詠春さんから連絡が行っていたようで、夜中の帰還となっても生活指導の新田先生が叱りに来るということはなかった。

 

 その後は何事もなく、翌日の朝になる。

 今日は、ネギくんが京都にあるナギ・スプリングフィールドの別邸を訊ねる予定だ。

 キティちゃんもそこに訪れたいとのことで、1班も行く予定だし、パートナーである神楽坂さんの2班も付いていく。同じくパートナーである雪広さんも今度こそはと班員の説得に成功し、4班から一人抜け出すことになった。二つの班プラス一人とか大人数すぎる……。

 

 で、予定は昼からなので、朝の自由行動は京都で遊ぶ時間だ。

 昼までに何をするかはすでに決まっている。京都名物の食べ歩きだ。

 

 実は、昨日スマホから呼んだエミヤさんとオーガスタさんは、スマホの中に帰っていない。

 オーガスタさんが、このまま現世の料理を食べに行きたいと言い、エミヤさんも久しぶりに現代の日本料理を食べたくなったと言いだした。

 そして、そのまま私達が泊まっている旅館に泊まった。予約なしでよく部屋が取れたものだ。

 

 で、本日の自由時間は、そのエミヤさんとオーガスタさんに付き合って、京都の美味しいもの食べ歩きツアーに出ることとなったのだ。

 

「ふむ、私も京都は、学生時代に修学旅行で訪れたきりだ。しかも、観光主体で、食事は主眼においていなかった」

 

「楽しみですねー、異世界の料理!」

 

 そんな感じで気合いの入ったエミヤさんとオーガスタさんをともない、キティちゃん達と一緒に京都をぐるりと巡った。

 なお、二人の宿泊代や食事代は私持ちだ。いいんだけどね。スマホ産の貴金属横流しで儲けているから、小金はあるし。

 

 やがて、昼。京都の町にエミヤさんとオーガスタさんを放流し、その後、待ち合わせていた場所で、詠春さんと合流する。

 

「すみません、長さん。大人数になってしまって」

 

 ネギくんが、申し訳なさそうに詠春さんに言う

 

「いえ、かまいませんよ。ただ、そこまで広い建物ではないので、手狭になってしまいますが」

 

 個人のアトリエだっていうしね。

 そして、詠春さんの案内で、私達は洋風の建物へと案内された。

 建物の中は、本でびっちり。ナギ・スプリングフィールドは魔法学校中退のバカというイメージがあったが、後年は魔法世界の崩壊をどうにかするため、学術面にも通じていたということをうかがわせるアトリエであった。

 

 さて、魔法に関わり合いのない早乙女ハルナさんがはしゃいでいるが、魔法を知る1班の私達は、それっぽい手掛かりがないか一応見ておくとしよう。

 ナギ・スプリングフィールドの行方とかは、いまさら調べる必要はないが、対造物主(ライフメイカー)でなにか役立つ情報があるかもしれないからね。

 

 皆がアトリエに散らばると、詠春さんがキティちゃんに近づいて、小さな声で話し出した。

 

「リョウメンスクナの討滅を確認しました。遠くから戦いの様子を目撃した者がいましたが、あなたの魔法でやったのではないのですね?」

 

「ああ、私ではない。私の教え子がやった」

 

「『紅き翼(アラルブラ)』でも、封印がやっとだったのですが……」

 

「復活したばかりで動かないところを狙い撃っただけのようだからな。単純な火力だけなら、ナギよりも上だったということだろう」

 

 うーん、私がやりましたとか言うと、面倒臭いことになりそう。関わり合いにならないでおこう。

 と、アトリエ内をうろうろしていると、一枚の写真が壁に飾られているのを見つけた。

 

「エヴァンジェリン先生、こっちこっち」

 

「ん? なんだ?」

 

「若きナギ・スプリングフィールドの写真がありましたよ。『紅き翼』の集合写真です」

 

「むっ!」

 

 私がキティちゃんを呼ぶと、他の人達もぞろぞろと集まってくる。

 

「おや、若い頃の写真ですね。そのときのナギは十五歳でしたか」

 

 詠春さんが、写真を懐かしそうな目で見る。

 

「お父様、若いー」

 

 詠春さんも写っており、近衛さんがそれを見てキャッキャとはしゃいでいる。

 

「私と出会うより前のナギか……」

 

 キティちゃんが感慨深げに言うが、静かなのはそこまでだった。

 

「うわー! なんか剣を持ってるでかいのが写ってる!」

 

 早乙女さんが、写真に写る剣闘士ジャック・ラカンを目ざとく見つけて、そんなことを騒ぎ出した。

 

「ナギ・スプリングフィールドといえば、二十年前の紛争地帯で活躍した知る人ぞ知る人物ですから」

 

「紛争! うわ、イランかどこかでドンパチしてたの、先生のお父さん!」

 

 私の適当なカバーストーリーを信じて、そんなことを大声で言う早乙女さん。

 そして、次に騒ぎ出したのは、我ら3-A組が誇るショタコン、雪広さんだ

 

「可愛らしい男の子が写っていますわ!」

 

「彼は、ナギの師匠のゼクトだね」

 

「ネギ先生のお父様の師匠! 見た目通りの年齢ではないということかしら……ううん、その事実をどう頭の中で処理していいか分かりませんわ!」

 

 ああ、雪広さんはサブカルチャーに馴染みがなさそうだからね。ショタジジイという概念を知って、混乱しているようだ。

 私? 私はショタジジイいけるよ。ただし、二次元に限る。なので、写真の中の子は守備範囲外だね。

 

「真ん中の人がネギ先生のお父上です? ネギ先生とはだいぶ雰囲気が違うです」

 

「父さんと似てない……」

 

 綾瀬夕映さんの言葉に、ネギくんがショックを受けたような顔になる。

 だが、待ってほしい。似ていないとは言っていない。

 私は、ネギくんにフォローを入れる。

 

「顔は似ていますよ。でも、ネギくんは、やんちゃそうな雰囲気が足りないですね」

 

「やんちゃそう、ですか……」

 

 いや、だからといって、やんちゃそうな顔つきをしようとしなくてよろしい。可愛い系ショタが好きな雪広さんが悲しそうだぞ。

 

 そして、その後も写真を話題に無駄話が続く。

 そういえば、原作漫画ではここで集合写真を撮るんだったかな。

 でも、写真を撮るはずの朝倉さんがこの場にはいない。

 

 ふむ。ここは……。

 

「せっかくですし、私達も記念撮影していきましょうか。スマホで撮りますよ」

 

 そんな私の提案は、皆に受け入れられる。スマホ用のミニ三脚をテーブルの上に置き、皆で集合写真を撮った。

 ちなみに、この三脚は自作の品である。今の時代に、スマホ用のアクセサリーとかが市販されているはずがないからね。

 

 そして、その後はネギくんが、ナギ・スプリングフィールドの手掛かりとなる資料を詠春さんから受け取り、時間もいっぱいになったので旅館に戻ることになった。

 修学旅行も、とうとう明日で終わり。明日は一日移動で終わるので、実質今日が最後の遊ぶ時間。

 だから、クラスメート達はみんな夜まで大騒ぎとなり、新田先生の雷が落ちる事態となった。

 

 ちなみに我らが1班は大人しいもので、他の班員が部屋に来ないことをいいことに、今回の戦いの反省会などを行なっていた。

 

 そして、一夜明け、旅館をチェックアウトし、昨夜も旅館に泊まり料理を楽しんだエミヤさんとオーガスタさんをスマホの中へと戻す。

 麻帆良の生徒達は京都駅に移動し、そこから新幹線に乗った。

 新幹線の中では、また行きのように騒がしくなる、と思いきや、静かな時間が訪れた。

 

 五日間の旅行で疲れに疲れたのだろう。みんな、座席に大人しく座って寝入っていた。

 キティちゃんも可愛い寝顔を見せており、私はそれをスマホで激写し、東京駅に着くまでの時間をスマホの住人達との『LINE』で過ごすのであった。

 




※千年戦争アイギスにおいて、石化能力はゴルゴーンとその眷属しか使っていないので、今後のアップデートで他の一般モンスターが石化を使ってきて状態異常無効で無効化できなかった場合、この話を修正するかもしれません。
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