【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■21 宮崎のどかに必要なもの

◆53 運命の選択

 

「宮崎のどか。この世には、魔法と呼ばれる不可思議な力があり、それを使う魔法使いという存在がいる。お前はそれをなんとなくだが把握しているな?」

 

 そんなキティちゃんの言葉から、宮崎さんとの話が始まった。

 

「は、はいー。確かに、なんとなくですがー……」

 

「そして、お前は先日、ぼーやと魔法の仮契約を果たして、カードを手に入れたはずだ」

 

「はい……」

 

 恥ずかしそうに、持参したバッグからパクティオーカードを取り出す宮崎さん。

 カードの宮崎さんの絵には、くだんの『いどのえにっき』がしっかりと描かれていた。

 

「そう、それだ。話を聞くに、お前が所持しているアーティファクトは、『いどのえにっき』と呼ばれる、読心能力を持つ魔法具だな?」

 

「そ、そうですー。名前を言うと、本にその相手の心の中が浮かんできてー……」

 

「うむ。その思考が浮かぶというのが厄介でな……宮崎のどか。読心の魔法のことをどう思う? 超能力……テレパシーでの読心でもいい」

 

 そう、それが今回の本題の一つだ。

 心を覗かれた者がそこに何を思い、何をなすのか……なんかダメなネット小説のあらすじみたいになったな。

 

「えーと、便利だなーって」

 

 だが、宮崎さんは深く考えてはいなかったようで、ほわほわとした答えを返してきた。

 

「自分が心を読まれる側になってもか?」

 

「あっ! えっと……あまりよくない、ですぅ」

 

「うむ。さて、ここで魔法の世界における読心について話しておこう。そもそも、魔法には読心の術が普通に存在している。ぼーやも使ったことがあるな?」

 

 キティちゃんは、横で話を聞いていたネギくんに話を振る。

 

「はい、あります」

 

 ネギくんが教師に就任した初日に、神楽坂さんの頼みで高畑先生に使っていたね。

 神楽坂さんがそれを思い出したのだろう。微妙な表情でネギくんから視線をそらしていた。

 

「だが、それらはしょせん魔法。精神干渉の術へ対抗する魔法を使うなど、防ぎようはある。魔法使いの社会では、読まれる方がマヌケとも言えるな」

 

 そう斬って捨てるキティちゃん。

 原作のエヴァンジェリンも、桜通りの吸血鬼編の最中、ネギ先生に夢見の魔法で過去の記憶を読まれているが……学園結界で弱体化しているから仕方ないのかな。

 

「読心魔法に抵抗する方法はいくつもあるが……しかし、お前の『いどのえにっき』への抵抗手段は、人である限り存在しない」

 

「えっ」

 

 今度こそ、宮崎さんが驚きを露わにした。

 

「それほど強力なアーティファクトなのだ。そして、抵抗不可能な読心能力を前にしたとき、人は何を考えるか……想像できるか?」

 

 キティちゃんのその言葉に、宮崎さんの顔が青くなっていく。

 

「心のうちを読まれて秘密を知られるわけにはいかないと、命を狙われるかもしれない。読心能力に利用価値を見いだした者達に、身柄を狙われるかもしれない。ただそのアーティファクトを持っているというだけで」

 

 キティちゃんの追い打ちの言葉に、宮崎さんは涙目になった。

 

「ちなみに、私にもお前に読まれるわけにはいかない秘密が、頭の中に存在するぞ。どうするかな。二度とアーティファクトを使えないようにしてやろうか」

 

「ひっ!」

 

 キティちゃんが冗談でまとった悪の魔法使いとしての雰囲気に、宮崎さんが引きつった悲鳴をあげた。

 

師匠(マスター)!」

 

「そういきり立つな、ぼーや。軽い冗談だ」

 

 ネギくんの叱咤するような声を受けて雰囲気を収め、くつくつと笑うキティちゃん。そして、彼女はあらためて話を続ける。

 

「二度とアーティファクトを使えなくする、というのは半分冗談ではなくてな。アーティファクトカードを封印してしまう、というのも手だ」

 

「このカードを封印、ですかー……」

 

 宮崎さんはカードに描かれた自分の絵を見ながら、悲しそうな顔をする。

 アーティファクトカードの封印と聞いて文句を言いそうなカモさんは、空気を読んで黙っているようだ。彼、キティちゃんには反抗しようとしないしね。

 

「だから、選べ、宮崎のどか。アーティファクトカードを封印し、ただの一般人として生きるか。アーティファクトを武器の一つにして、全ての障害をはねのける力を手にするか」

 

「あっ、そういう意味で、人生の分岐点、ですかー……」

 

 自分の前に突如用意された選択肢に、宮崎さんは目を白黒させる。

 そこへさらに、キティちゃんは言葉を足して情報量を増やす。

 

「一般人として生きる場合、魔法に関する記憶を全て忘れて生きることも可能だ。そして、力を手にする場合、我が弟子ネギ・スプリングフィールドのパートナーの一人として、私の門下に入ることになる」

 

「ネギ先生のパートナー……」

 

 おっと、さすがネギくんラブ勢筆頭。後者の選択肢に一瞬で傾いたぞ。

 

「そうそう、私の自己紹介をしておこう。私は六百年の時を生きる吸血鬼だ。悪の魔法使いとして賞金首になっている。賞金は六百万ドルだな」

 

「え、ええー……!?」

 

 宮崎さんが情報量の多さに頭がパンクしているぞ。

 だが、私も情報を付け加えないといけない。

 

「あくまで賞金首については元ですよ。ネギくんのお父さんに討伐されて麻帆良に封じられたので、今は賞金がストップしています」

 

 私のその言葉を聞いて、宮崎さんは怯えるのをやめてくれた。

 封印というべき登校地獄の呪いは解除されているのだが、そこまで情報を追加してさらに頭をパンクさせることもないだろう。

 

「というわけだ。さあ、選べ。表の平和な道か、裏の茨の道か」

 

 キティちゃんが、宮崎さんへと選択をせまる。

 すると、宮崎さんは覚悟を決めた顔をして、キティちゃんに言った。

 

「私は……ネギ先生のパートナーに、なります!」

 

「ほう、これまた早い回答だな。平和な道は不服か」

 

「ネギ先生の、隣に、立ちたいから……!」

 

「そうか。その覚悟があるなら、魔法の世界の先達として、新たな一歩を歓迎しよう」

 

 半ば告白とも言える宮崎さんの言葉に、キティちゃんは満足げにそう言った。

 ああ、そうだ。これは言っておかないと。

 

「ちなみに、ネギくんの仮契約のパートナーは、現在、そこにいる神楽坂さんと、他には雪広さんと水無瀬さん、近衛さんがいます。宮崎さんは五人目ですね?」

 

 正確には、仮契約を結んだ順だと宮崎さんは四人目だけれども。

 

「えっ……」

 

 宮崎さんが、神楽坂さんの方へと顔を向ける。

 

「ちょっと待ってよ。本屋ちゃん、パートナーっていうのは、恋人のことじゃないからね! 魔法使いの従者として、一緒に戦う人のことをいうのよ」

 

「あっ、そうですか……戦い……」

 

 戦う人と聞いて、自分がそうなれるか自信がないのか……、キティちゃんへの返答時にあった気迫が、みるみるうちにしぼんでいったのが分かる。

 それを見たキティちゃんが、面白そうに笑いながら、宮崎さんに言葉を放った。

 

「安心しろ。私の門下に入った以上は、強制的に戦うだけの力を身につけてもらう」

 

「だ、大丈夫かなー……」

 

「お前が『いどのえにっき』を堂々と使い、ぼーやのためにその力を役立てたいなら、全ての障害をはねのけ、強くなるしかないぞ?」

 

「頑張ります……!」

 

 こちらで立てた宮崎さんの強化計画的には、『意気込み』よりも『覚悟』が必要なんだけどね。

 まあ、こちらの世界に足を踏み入れた以上は、彼女もいろいろ覚悟を決めただろう。それなら、あとはなるようになるだろう。

 

「さて、宮崎のどかの未来の選択は終わった。まだ話は続くが、ぼーやと神楽坂明日菜は帰れ」

 

「えっ」

 

 突然退出命令を出された神楽坂さんが、思わずといった様子でそんな声をあげた。

 そんな彼女に、キティちゃんは言う。

 

「これから宮崎のどかには、私が抱える重大な秘密を教える。だから、お前達は邪魔だ」

 

「ちょっとエヴァちゃん、いまさら仲間外れはないんじゃないの」

 

「仲間外れにしているのではない。仲間にした上で、それでもなお明かせない秘密があるのだ」

 

「それをなんで、本屋ちゃんには教えるのよ」

 

「お前は先ほどの話を聞いていなかったのか? 『いどのえにっき』を使われれば、どれだけ秘密にしていても簡単に知られてしまうんだ。ならば、最初から何を知られたくないかを明かして、他人には黙っていてもらう」

 

 そこまで言葉を交わして、ようやく神楽坂さんは納得がいったという顔をする。

 

「なるほどね。でも、エヴァちゃんの秘密、気になるわねー。リンネちゃんは知ってる?」

 

 私に話を振られたので、素直に答えておく。

 

「知っていますよ」

 

「千雨ちゃんは?」

 

「知っているな」

 

「何が明かせない秘密よ! 知られすぎじゃないの!」

 

 神楽坂さんのそんなツッコミに、キティちゃんは涼しい顔で答える。

 

「古菲は知らんぞ。そして、宮崎のどかに教えたら、それ以上、他人には明かすつもりはない」

 

「えっ、リンネちゃんと千雨ちゃんが知っているのに、くーふぇが知らないの?」

 

「そうだな。だが、そのことは古菲も納得している。ちなみに茶々丸にも知らせていない」

 

 その言葉に、神楽坂さんは何かが納得いっていない顔をしている。キティちゃん軍団の三人衆であるはずの古さんだけがハブられていることに、なんとも言えない感情が湧いてきているのだろう。

 でも、キティちゃん的にはそれくらい重要な秘密なのだ。

 キティちゃんが抱える秘密。そう、予言の書『魔法先生ネギま!』と『UQ HOLDER!』のことだね。

 

「まだ帰りたくないなら、私達が宮崎のどかと話している間、裏庭を使っていいから、ぼーやと一緒に剣の稽古でもしていろ。アーサー王の初授業だ。茶々丸を監視につけるから、好きなだけやっていい」

 

 超さんと繋がっている茶々丸さんにも秘密は明かせない。なので、キティちゃんは、茶々丸さんを体よく神楽坂さんの方へ追い払った形になる。

 

「剣の稽古って、私もやるのー?」

 

 神楽坂さんが、面倒臭そうにそう言った。それに対し、キティちゃんが言う。

 

「お前のアーティファクトは剣だろう。桜咲刹那ほど上手にやれとは言わんが、ある程度の剣技は必要になるだろうさ」

 

「いや、私のアレ、剣というよりハリセンなんだけど……」

 

「それは、お前がアーティファクトの力を正しく引き出せていないだけだ。あれは本来、片刃の大剣だ。アーティファクトカードにそう描かれていないか?」

 

 そう言われて、神楽坂さんは自分のアーティファクトカードを取り出す。

 

「あっ、確かに……」

 

 納得して引き下がる神楽坂さん。すると今度は、黙ってやりとりを見守っていたネギくんの肩に居座るカモさんが、横から口をはさむ。

 

「エヴァンジェリンさんよ。アスナの姐さんのアーティファクトが何か知っているのか?」

 

「本来はハリセンなどではない、ということくらいしか知らん」

 

 そう切って捨てて、キティちゃんはずっと座っていた椅子の上から立ち上がった。

 この場は終わり、ということだろう。あらためて、宮崎さんに私達の秘密を知られることになるが、その前に……。

 

「もうお昼ですから、女子寮に戻らないならご飯にしませんか?」

 

「あっ、そうね」

 

 立ち上がりかけた神楽坂さんが、椅子に座りなおす。

 

「私の家は食堂ではないんだがな……」

 

 あきれたように言うキティちゃんだが、食材は後で補充しておくので我慢してほしい。

 

「アルトリア陛下も食べていきます?」

 

「そうですね。いただけるなら」

 

 私が話を振ると、食事不要なサーヴァントであるアルトリア陛下がそう言った。

 そうして、茶々丸さんが作った食事を皆で楽しく食した。ちなみに、アルトリア陛下は生身じゃないし魔力も不足していないので、別に食いしん坊キャラじゃないことはここにしっかりと主張しておく。

 

 

 

◆54 君の目で確かめてくれ!

 

 食後、ネギくんと神楽坂さんが、素直にアルトリア陛下と茶々丸さんを連れて外へと出ていった。ちなみにネギくんには、私の私物の竹刀を貸してある。

 そして私達は、そのまま宮崎さんを連れてダイオラマ魔法球の別荘へと入場した。

 別荘内部のあまりにも非常識な光景に、宮崎さんは驚きを露わにしていたが、内部をじっくり見せる間もなく、私達は読書タイムに入った。

 

 予言の書の閲覧。宮崎さんとスマホのオーナーである私だけ読めばそれでよいのだが、キティちゃんもちう様も再度確認したいと言いだしたので、四人で見ることになった。

 だが、そうなると、スマホでは画面が小さすぎる。

 そこで、私はスマホ内にある『Goddess Play』で『Goddess Play Points』を消費して購入した、『タブレットモード』を起動した。これは、スマホをタブレット端末にサイズを変更するという、素敵機能だ。

 これを用いて画面を大きくし、私達はタブレットを囲んで二つの漫画の読書を始めた。

 

 まずは、『魔法先生ネギま!』を全巻読み終わる。

 

「ううー……ネギ先生の本命が誰か気になりますー……」

 

「これはあくまで私達とは異なる未来を辿ったネギ先生ですから、私達のネギくんとは違いますよ」

 

「そうなんですか……」

 

「はい、ですから、のどかさんにもチャンスはありますよ」

 

「それって、この漫画の私は、先生の本命じゃなかったということではー……?」

 

 それから夕食をはさんで、『UQ HOLDER!』を読破する。

 のどかさんはいろいろ思うところがあったようだが、その中で一番気になった点をキティちゃんに尋ねるようだ。

 

「エヴァンジェリンさんは……次元の狭間で近衛(このえ)刀太(とうた)さんと会った記憶があるんですか?」

 

 ああ、あれか。

 キティちゃんは造物主(ライフメイカー)の手によって吸血鬼にされてから割とすぐに、ダーナと呼ばれる真祖の吸血鬼の居城で不死者としての修行をしていた過去を持つ。

『魔法先生ネギま!』のラストとは並行世界に当たる『UQ HOLDER!』には近衛刀太という主人公がいるのだが、その彼もダーナの居城に招かれて不死者として修行を行なった。その最中、近衛刀太は700年の時をさかのぼって、修行中の若かりしエヴァンジェリンと会い、仲を深めることになるのだが……。

 その記憶をキティちゃんは持っているか。のどかさんは、そう聞いているのだ。

 

「ないな」

 

 そして、キティちゃんの答えはそんなバッサリとしたものだった。

 さらに、彼女は言葉を続ける。

 

「魂を魔法で精査しても、チャチャゼロの記憶(メモリー)を探っても、そのような記憶は存在していなかった。……おそらく、私達が生きるこの世界線の未来では、近衛刀太は生まれないのだろう。だから、私はヤツを思い出せないのではなく、ヤツと会ってすらいないのだろうな」

 

 私達がいるこの世界線は、未来からやってくる時間移動者に歴史を改変される前だということだ。そして、この世界線の未来にて近衛刀太はどうあっても生まれないと予想されるため、歴史が改変されること自体がない。

 チャチャゼロとは、『UQ HOLDER!』でエヴァンジェリンが近衛刀太と会ったときに従えていた人形だ。現在も意志を持つ自動人形として稼働中であり、別荘の中で自由に過ごしている。

 

 ちなみに、『UQ HOLDER!』の世界線だと、若かりしエヴァンジェリンの初恋の相手は、未来からやってきた近衛刀太になる。

 しかし、この世界線においては、キティちゃんの初恋はナギ・スプリングフィールドのままだ。どうにか、造物主ヨルダから彼をすくいあげたいものだね。

 

「以上が、私達が抱える特大の秘密だ。のどか、理解したか?」

 

 キティちゃんが、のどかさんにそう話を振る。

 

「しましたー……。秘密を知る人を増やしたくない理由も分かりました。これ、もしこの漫画の知識を持つ人がヨルダに取り込まれたら……」

 

「いろいろ筒抜けになって、全部終わってしまうな」

 

「うわー、大変です……ネギ先生とアスナさんに、世界の命運がかかっているんですね……」

 

 のどかさんがしみじみとそう言う。

 未来において成長を重ねたネギくんは対ヨルダ戦の最大最強の戦力だし、神楽坂さんはヨルダを殺しても身体の乗っ取りを受けない魔法無効化能力『火星の白』の所有者だ。

 しかし、そんなのどかさんの意見に、横からちう様が口をはさんだ。

 

「別にネギ先生と神楽坂だけに、全てを押しつけるわけじゃねえ。私もリンネもネギ先生に協力するし、のどかももう仲間の一人だ。そして何より、エヴァンジェリン先生がいる。のどかはまだ知らねーが、エヴァンジェリン先生の登校地獄の呪いって、もう解けているんだ」

 

「ええっ!? そんな、どうやって……」

 

「リンネがなんとかした」

 

「リンネさんが……あれ? そういえば、リンネさんって……」

 

 のどかさんが私の存在に疑問を持ったところで、不意にキティちゃんが語り始める。

 

「狭間の魔女ダーナ・アナンガ・ジャガンナータは、タイムマシンで神楽坂明日菜を前借りして迎えた結末をテレビゲームになぞらえて『チートを使った早解きクリア』と言っていた。近衛刀太は『裏技を使ったクリア』と称していたな」

 

『魔法先生ネギま!』の終盤、神楽坂明日菜は魔法世界を救うために人柱になり、百年の眠りについた。

 

 そこで、『魔法先生ネギま!』のラストでは、超鈴音がタイムマシンを使い、未来で目覚めた神楽坂明日菜を現代に連れ帰った。

 その結果、ネギ先生達は神楽坂明日菜の活躍によってヨルダを撃破し、ナギ・スプリングフィールドの救出に成功した。

 

『UQ HOLDER!』は、このハッピーエンドを迎える大前提である、『神楽坂明日菜の現代への帰還』が行なわれなかった並行世界の物語だ。

 魔法無効化能力を持つ神楽坂明日菜を欠いたネギ先生は、自らの手でヨルダを倒す。しかし、ネギ先生は精神生命体であるヨルダに憑依され、人類を滅ぼす世界の敵になった。近衛刀太はそんなネギ=ヨルダに、裏技を使わず挑んだのだ。

 

 実はゲーム好きであるキティちゃん。そんな彼女が、ゲームにたとえて私達の状況を問うた。

 

「では、私達が行なうクリア方法とは?」

 

 その問いかけの答えを待たずに、彼女は続ける。

 

「――『攻略本を使ったクリア』だ。だが、この攻略本を敵に見られるわけにはいかない。だから、のどか。今日お前が知り得た攻略本の情報、絶対に外へと漏らすなよ?」

 

「は、はあい……」

 

 攻略本とは、もちろん電子書籍の『魔法先生ネギま!』と『UQ HOLDER!』のことだ。予言の書と呼ぶよりも、しっくりくる言い方だね。

 

「なお、私達もチートプレイをしないとは言っていない」

 

 そんなキティちゃんの言葉に、のどかさんは微妙な顔をして言葉を返す。

 

「チート、ですか? タイムマシン(カシオペア)を使って、アスナさんを未来から……」

 

「いいや。それではない。チートを使ってゲームを改変し、新キャラクターを投入するんだ。疑問に思わなかったか? この攻略本には、一人のキャラクターが登場していないと」

 

「あっ……そう、そうなんです。リンネさんがいないんです」

 

 キティちゃん、のどかさん、そしてちう様に見つめられる私。

 私は照れながらタブレット端末をスマホに変えて、のどかさんに見せつけ、言う。

 

「超さんが未来からやってきた未来人なら、私は別の宇宙からやってきた異世界人です。本来、私はこの世界にいない存在のため、攻略本には載っていないキャラクターだったわけですね。そして、私はいろいろな力をこのスマホから取り出せます」

 

 異世界人と聞いて、のどかさんの瞳が急に爛々(らんらん)と輝いたような気がする。地球に異世界から異邦人が訪れるとか、読書好きののどかさん的には、スマッシュヒットなシチュエーションなのかもしれない。

 

「グランドエンドを目指してチートキャラクターとして頑張らせていただきますが、まず手始めに一つ。私の力で、のどかさんを強化しようと思います」

 

「私、ですか?」

 

「はい、のどかさんです。あなたには『いどのえにっき』があるため、強さを得ることは急務となっています。しかし、世界の全てから身を守るだけの力を身につけるのは、一朝一夕ではいかないことは分かりますね?」

 

「は、はい……正直、私があの漫画に描かれていた未来の私ほど強くなれるとは、とても思えないですがー……」

 

「では、簡単にその強さが手に入るとしたら、どうしますか? 手を伸ばしますか?」

 

 私がそう問いかけると、のどかさんは「えっ」と驚きの声をあげる。

 そして、私はたたみかけるように彼女へ向かって言った。

 

「のどかさん、改造人間になってみる気、ありませんか?」

 

 のどかさんが全ての障害をはねのけるために必要なもの。それは『意気込み』ではない。『覚悟』だ。

 


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