【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆55 アカシックレコード
改造人間と聞いて、のどかさんの顔は盛大に引きつった。
さすがに人体改造は引くよなぁ、とは内心思いつつも、私はどうにか彼女に話を聞いてもらえるよう説得した。
実はこの改造人間案、私が考えたわけではない。
実はのどかさんが『いどのえにっき』を手に入れて自衛の手段を手に入れる必要が出てくることは、前々から私達の議題にあがっていた。スマホの中の住人達にも『LINE』を通じて、何かよい強化方法がないか宿題を出していたわけだが……あがってきたのがこの改造人間案である。
私の案ではないので、のどかさんの説得も、案を出した人にしてもらおう。
そう思った私は、スマホから一人のキャラクターを呼び出した。
「こちら、並行宇宙の惑星航行船団であるオラクル船団の研究機関、アークス研究部よりお越しの研究員『ルーサー』です」
「やあ」
呼び出したのは銀髪長身の美男子。『ファンタシースターオンライン2』に登場する悪の科学者、ルーサーである。
彼はフォトナーと呼ばれる、オラクル船団を作り出した古代人の一人。アークスという戦闘集団の活躍の陰で、様々なあくどい研究を繰り返してきた悪役だ。
しかも、ダークファルスと呼ばれるオラクル船団の敵に憑依されており、『PSO2』前半における悪事の黒幕である。『PSO2』のストーリー上では、主人公であるプレイヤーに撃退された後、他のダークファルスに食われて死亡した。
なお、『ファンタシースターオンライン2 es』では直接登場はしない。『PSO2es』で起きる事件の原因となった違法研究。それを行なった
私のスマホに入っているゲームは、『PSO2』ではなく『PSO2es』だ。なのに、なんで『PSO2es』のストーリー上で登場するはずのないルーサーを呼び出せたのかというと……ガチャでルーサーのキャラクターチップが出るからである。なお、チップに付随する外伝ストーリーは存在しない。
ガチャで引いたキャラは、私のスマホの中の住人となる。『PSO2es』も例外ではなく……『PSO2es』に登場しないはず、そして『PSO2』で死亡したはずのルーサーが、ガチャで出たというだけで時系列を無視してスマホに住み着く。本当にどうなっているんだこれって感じだ。
そんな違法研究どんとこいな悪役ルーサーだが、このルーサーは原作ゲームほど悪辣な存在ではない。
ダークファルスに憑依されていないようだし、そもそもスマホ内に住み着いているダーカー(ダークファルスの眷属のことだね)は、凶暴性を失っている。だから、このルーサーは綺麗なルーサーで、原作ゲームみたいなひどい研究は進めていないのだ。
「さて、宮崎のどかくん。僕からプレゼンをさせてもらうよ」
そう言って、ルーサーは私達に紙の資料を配りだした。
「いまどき紙媒体なんて時代遅れ
紙の資料の1ページ目に書かれていたのは、表題だ。
『宮崎のどかのアークス化および人工アカシックレコード司書化計画』。そう書かれていた。
「アカシックレコードって……」
飛び出したトンデモワードを見て、のどかさんが絶句する。
アカシックレコード。この世の始まりから終わりまでの事象が全て記録されている概念的な場所という、オカルト分野のワードである。ファンタジー小説やSF小説を読むとまれに登場する。
「ふむ。気になるかね? 宮崎のどかくん。しかし、そこに触れるには、前提から話していかなければならない。まずは、アークスとは何か、から説明をしていくよ」
「は、はい……」
うーん、こう、人当たりのいい綺麗なルーサーはちょっと違和感あるよね。
ダークファルスに侵食されているよりはマシとはいえ……。
さて、アークスだ。
アークスとは、ダーカーと呼ばれる並行宇宙に存在する宇宙の敵と戦うために組織された、戦闘集団および戦闘員のことである。
その特徴は、フォトンと呼ばれる粒子を使い、超人的な強さを発揮すること。
フォトンを使ったフォトンアーツと呼ばれる技を使い近接戦、銃撃戦をこなし、テクニックと呼ばれる魔法じみた技をも扱うことができる。
アークスを構成するのは、四つの種族。
地球人類に類似した見た目のヒューマン。そのヒューマンの見た目に尖った耳をつけた見た目のニューマン。ヒューマンをオッドアイにし、頭に角をつけた見た目のデューマン。機械の身体を持つキャストの四つだ。
その四種族、元々はいずれも改造人間である。
とある惑星に住む原生種族を古代人フォトナーが誘拐、改造し、フォトンを自在に扱える種族に生まれ変わらせたものがヒューマンだ。
そのヒューマンをベースに、ニューマンとデューマンが生まれた。キャストは、フォトンの扱いに身体が耐えられない者が自らを機械化した、全身サイボーグとでも呼ぶべき存在だ。
「そう、つまり、僕の提案は、フォトンを扱うために地球人類から種族を変えてみないか、というものさ」
「なるほどー……ヒューマンの見た目は人間と変わらないんですよね?」
「そうなる。フォトンを扱う存在、アークスとなることで、宮崎のどかくんは簡単にフォトンを扱う戦闘技術を身につけることができる。魔法のように何百時間も練習に時を費やすことなく、すぐにフォトンアーツやテクニックの行使が可能となる」
「それは……ちょっと魅力を感じちゃいますー……」
ルーサーが、空間投影画面を開いてアークスの戦闘シーンをのどかさんに見せる。
VRでの訓練風景だろうか。フォトンアーツやテクニックを仮想のダーカーに叩きつけ、縦横無尽に戦っているのがこちらからでも見えた。というか戦っているの、『PSO2es』の主人公じゃん。いつの間にこんな映像を……。
「しかし、ここで問題が一つある。この宇宙にはフォトンが存在しない」
「えっ、それって……アークスになっても意味ない気がしますー」
「問題ない。簡単なことだよ。無い物は、作ってしまえばいい。このフォトンのない宇宙をフォトンのある宇宙に変えてしまえばいい」
「作る……よく分からないですけど、フォトンって作れるものなんですね」
「では、フォトンとは何かを説明しよう。資料をめくってくれたまえ」
ルーサーに促され、素直に資料を見ていくのどかさん。
中学生の子供向けに図解が多い資料を手に、ルーサーが説明を続ける。
「フォトンとはそもそも何か? それは、全知存在であるアカシックレコードが宇宙を観測するための、粒子の形をした中継器さ。あらゆる場所に存在するフォトンを通じて、アカシックレコードは万物を観測している」
このネギま宇宙のアカシックレコードは、そのような仕組みではないだろう。だが、少なくともオラクル船団が存在した宇宙でのアカシックレコードは、そういう仕組みを持っていた。
「アークスが使うフォトンアーツやテクニックは、フォトンを通じてアカシックレコードにアクセスし、アカシックレコードから情報を引き出すことで効力を発揮する」
「アカシックレコードから引き出せるんですねー」
「そうだとも。アカシックレコードがこちらの情報を収集するのと同じように、こちら側もフォトンへの素養があればアカシックレコードから情報を簡易ながら引き出せるわけだ」
そんな小難しい話が続く。
のどかさん以外は何をしているかというと、ちう様は真面目に資料を見ているし、キティちゃんは話が頭に入ってこないのか眠たそうな顔をしている。
「宮崎のどかくんが、この宇宙でアークスとして力を発揮するには、フォトン、そしてアカシックレコードが必要となるわけだ。ここまでは分かるかい?」
「はい。あっ、だから人工アカシックレコードって表題に……」
「そのとおりだとも。つまり、宮崎のどかくんをアークスにするということは、我々の出身宇宙に存在するアカシックレコードと同じ物をこの宇宙に作り出すという工程が必要となる」
「そんなこと、できるのですか? 大変そうー……」
「できるとも。作り出す物は、未来と過去全てを記録する本物のアカシックレコードではないからね」
のどかさんの合いの手に、心底楽しそうな声でルーサーが説明を続ける。
「僕達が作る物は、フォトンを通じて現在の情報をひたすら収集、観測し続ける、アカシックレコードの小さなまがい物だ。そうだね、物理的な形が存在しない、巨大な情報図書館を作ると思ってくれていい」
「それでも、スケールが大きい話です……」
のどかさんが、ほわほわとそんなことを言った。
まあ、すごいよね。アカシックレコードを作るとか、最初ルーサーから聞いたとき、マジかこいつって思ったもの。
そんなルーサーが、のどかさんに問いかける。
「宮崎のどかくん。君は、本が好きだと聞いたが、本当かい?」
「えっと、はい。本は大好きですけど……」
「それならば、司書に興味はあるかい?」
「将来なれたら素敵だなーって思います」
「それならば、なってみる気はないかい? 情報図書館の司書に」
「えっ、えーと……」
情報図書館アカシックレコードの司書。それはすなわち……。
「僕達の出身宇宙には、アカシックレコードの司書というべき存在がいる。考える海……意志を持つ水の惑星シオン。オラクル船団のマザーシップでもある」
資料をめくり、惑星シオンについて説明されているページを見るのどかさん。
「彼女は、アカシックレコードから得られる情報をもとに、宇宙の始まりから終わりまでを演算している全知の存在さ」
シオンもルーサーと同じく、『PSO2』のストーリー中に死亡するが、『PSO2es』ではキャラクターチップとして登場する。前世で『PSO2es』をプレイしていたときに、ガチャで引いていた。なので、私のスマホの中でオラクル船団の旧マザーシップとして普通に生きている。
「僕からの提案だ。まずはアカシックレコードの極々縮小版をこの宇宙に作り出す。次に、君をその司書であるシオンの極々縮小版として改造する。さらに君には、人工アカシックレコードの情報収集中継器であるフォトンを周囲に散布する能力をつける。こうすることで、フォトンがないこの宇宙に、フォトンが生まれる」
この話を初めて聞いたとき、私はルーサーに当然のようにツッコミを入れ、次のような会話をした。
『おいおい、それってヤバくないですか。フォトナーのあなたが、シオンみたいな存在を作り出すって、失敗フラグが見えているんですけど。フォトナーって、シオン複製体を何個も作ろうとして、一個も作成に成功していないじゃないですか』
『僕を他のフォトナーと一緒にするな……! 僕は、シオン複製体の作成と失敗に関わったことはない』
『あー、そういえば、当時は究極の器とかいうのを造っていたんでしたっけ。それで生まれたのがハリエットさんで、それを勝手にフォトナーが利用して生まれたのが大ボスの深遠なる闇、だったかな?』
『そうだね。僕は他のフォトナー達が言う、シオン複製体がもたらす便利な生活というものに興味はなかったからね』
『でも、今回はそれに手を出そうとしている』
『規模は小さい。それに、この計画にはシオンも演算担当として参加する』
『えっ、シオンが?』
『ああ、彼女はどうやら、現世の宇宙にフォトンを拡散させたいらしい』
『そりゃまた、なんでですか』
『オラクル船団を現世の宇宙に進出できるようにするためだよ』
『なんでそんなことを。地球侵略でもするつもりですか?』
『侵略なんてしないさ。オーナー、君のためだよ。オラクル船団、そしてアークスは、フォトン技術が前提の文明だ。つまり、君が助けを必要としたとき、この宇宙にフォトンがないと我々は助けに行けないのさ』
そうきたかぁー……ってなったね。
確かに、オラクル船団がいつでもこちらの世界に出てこられて、私の助けになってくれるというのは正直心強い。
まあ、そんな話は置いておいて。今は、のどかさんが人工アカシックレコードの司書役を選択するかどうかだ。
ルーサーが言う。
「フォトンという粒子が宇宙に存在するメリットを話そう。フォトンアーツやテクニックという超常の力をアークスとなる君が使えるようになる。さらに、アークスでなくても、人類誰もが、フォトンを使った科学技術を扱うことができるようになる」
「なるほどー……人工アカシックレコードを作って……私が司書になったら……宇宙に、フォトンが生まれる。そうするとー、人類の科学が進む。……こういう解釈でいいですかー、ルーサーさん」
「うむ、それでいいとも。よく理解しているじゃないか。ちなみに、この宇宙にフォトンが生まれたら、オーナー……刻詠リンネ君が持つスマートフォンの中にある宇宙からオラクル船団が出張できるようになる」
「惑星航行船団、でしたよね……? 宇宙船がケータイから出てくる……?」
「その通り。オーナーの携帯端末の中には、宇宙船が何百隻と詰まっていると考えてくれていい」
「ふわー、話が壮大です……」
のどかさんが感嘆したところで、私は横から口をはさんだ。
「でも、スマホから宇宙船が出てくることは、私にとってのメリットなんですよね。宮崎さんにとってのメリットはありますか?」
「あるとも。この宇宙におけるフォトンの発生源は、司書である宮崎のどかくんの身体からになる。ゆえに宮崎のどかくんは膨大なフォトンの力を行使できる。フォトンアーツもテクニックも思いのままさ」
「強さ、ってわけですね。他には?」
私がさらにそう問いを投げると、ルーサーは愉快そうに言葉を放つ。
「アカシックレコードの司書になるのだ。フォトンが散布されている範囲の情報は、なんでも閲覧し放題になるね」
「一個人が持つには過ぎた力ではありません? それ」
私はのどかさんの理解を深める目的で、ルーサーへ質問を重ねていく。
「強制読心装置の所持者が、いまさらアカシックレコードを閲覧できるようになったところで、なんだというのかね?」
そこまでルーサーと言葉を交わしたところで、のどかさんが再び言葉を口にする。
「えっと、ものすごい情報図書館の本を見放題、ってことですよね?」
「そうですね。女子寮の部屋割りから、大統領官邸の隠し部屋までなんでも見られるでしょうね」
「え、ええー……」
私の言葉に、のどかさんがちょっと引く。
「嫌なら、閲覧しなければいいだけだよ。さて、宮崎のどかくんのメリットだったね。そうだね。思考する海の惑星シオンの極々縮小版の複製体となるため、膨大な計算力を手にする。数学のどんな計算式だろうとも、一瞬で解けるようになるだろうね。学生の君にとっては、嬉しいことだろう?」
「えーと……ズルい気がしますー」
「頭がよくなるだけさ。カンニングの類をしているわけではないよ」
肩をすくめて、ルーサーがそう言った。そして、さらにルーサーが言葉を続ける。
「最後のメリットだ。フォトンが地球圏内に十分散布し終わったところで、フォトンリアクターを始めとしたフォトン技術を人類に公開する。そうすれば、宮崎のどかくんは人類全体にとって守るべき存在になる」
「えっと、どういうことですか……?」
「君から発生するフォトンを文明を支える基盤にするんだ。そうなると、フォトンの発生元である君を害するわけにはいかなくなる。君が死んだら、フォトンをエネルギーに変えるフォトンリアクターの利用で、フォトンは減るばかりとなる。フォトンが人類から失われてしまうわけさ」
すごいこと考えるよなぁ、ルーサー。
「『いどのえにっき』を理由に排除しようとする気が起きないくらい、のどかさんの価値を高めるわけですね」
私がそう言うと、のどかさんは首をかしげながら疑問を口にする。
「えっと、誰かに攻撃されることがなくなるってことですか?」
「そうだね。攻撃しようとする者は、人類全体に排除される。フォトン技術が公開されれば、君は人類の宝になるからだ。もっとも、初期の頃は、化石燃料を売っている者達が目の敵にするかもしれないけれどね。しかし、地球人類が宇宙進出を狙うなら、化石燃料などよりもフォトンの方がはるかに優秀だよ」
ルーサーの言葉に、のどかさんは考え込む。
そして、再び疑問を口にした。
「私が死ねば、フォトンがなくなる……私が寿命を迎えたら、どうなるんですか?」
「フォトンがこれ以上増えなくなり、フォトンリアクター等の利用で宇宙からフォトンが減り続けることになるね。そうならないよう、改造の際に不老処理程度は施させてもらいたいね」
「ふ、不老処理ですかー……」
「そして、万が一死亡してしまった場合は、オーナーが二代目司書を任命してフォトンの再配布を行なってもよい。しかし、僕は、宮崎のどかくんが、永遠を生きる存在となることを推奨する」
「永遠……うーん、うーん」
のどかさんが、突然突きつけられた不老という選択肢に、頭を悩ませる。そして、何かしら思いついたのか、のどかさんはぽつりと言った。
「本の中では、不老不死とかって、大抵よくないこととして扱われているので……『UQ HOLDER!』では、ちょっと素敵だなとは思いましたけど……」
そんなのどかさんの煮え切らない言葉を受け、ルーサーは背中を後押しするようなことを言う。
「ちなみに、エヴァンジェリン・マクダウェルくん以外にも、オーナーの刻詠リンネくんは不老不死だし、長谷川千雨くんと古菲くんは不老の術を使っている」
「えっ」
「存外、永遠を生きる仲間は多いのだよ」
まあ、ダークファルスに侵食されていたころのルーサーも、アークスの肉体を奪い続けて延命するという、ヨルダみたいなことしていたもんね。
そして、のどかさんは再び考え込み、声を絞り出すようにして言う。
「……ネギ先生は、不老不死になるでしょうか」
すると、不老不死の話題になってから目が覚めたらしいキティちゃんが、横から言った。
「それは、分からん。ぼーやが『
「そうですか……」
ルーサーからの提案は以上で終わり、のどかさんは提案を受けるか悩み出した。
その悩みは別荘内で丸一日続き、悩み抜いたのどかさんは答えを出した。
「私、司書になります。フォトンを頑張って散布して、リンネさん達と一緒に長生きを目指しますー……」
こうして、『宮崎のどかのアークス化および人工アカシックレコード司書化計画』は実行に移されることになった。
まずは、人工アカシックレコードの設置だ。すでにスマホ内での研究は終了していて、現地を確認して設置するだけとなっている。
設置日時は、四月二十九日火曜日、国民の祝日みどりの日。
場所は、麻帆良学園都市、図書館島地下『アカシャの図書迷宮』。このネギま宇宙における図書館の形をしたアカシックレコード的施設に、私達の人工アカシックレコードを設置する。