【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■23 アタナシア名人の図書館島

◆56 私を島に連れていって

 

 一日の平日をはさんでやってきた、みどりの日の朝。図書館島の地下へ向かうメンバーとして、キティちゃん、ちう様、古さん、茶々丸さん、私、そしてのどかさんのエヴァンジェリン軍団が集まった。

 そして、そこに合流する面々がいた。ネギくん、神楽坂さん、雪広さん、近衛さん、桜咲さんだ。

 なんでも、図書館島の地下にナギ・スプリングフィールドの手掛かりがあると、ネギくんが京都のアトリエから持ち帰った資料に書かれていたとのこと。そこで、図書館島に用事がある私達に、彼らも付いてくることになったのだ。

 なお、ネギくんのパートナーの一人である水無瀬さんは、魔法の指導員である魔法先生のもとへと向かっているので、今回のメンバーの中にはいない。

 

 そして、私達は図書館探検部である近衛さんとのどかさんの指示で、昨日の間に集めていた探索用の道具をリュックに入れ、女子寮から出陣となった。

 女子寮から図書館へと向かう、その道中のこと。

 

「なんですってえー! リンネさんが、ネギ先生と二人っきりでイギリス旅行ですって!」

 

 石化解除の旅の予定を聞いた雪広さんが、突如、荒ぶりだした。

 

「二人っきりで二泊三日! リンネさん、裏切りましたわね!」

 

「いや、何を裏切ったというんですか」

 

「私をです! そもそも、リンネさんからは、少年好きの気配を常々感じていたのです! それが正体を現して、私のネギ先生を狙うなど!」

 

「いや、私はショタコンだけど、二次元限定ですからね? リアルの少年には興味ないです」

 

「二次元をとっかかりとして、三次元に目覚めるのでしょう!」

 

 うわあ、この学級委員長、めんどくせえ。

 私は仕方なしに、妥協案を口にする。

 

「それだけ文句言うなら、雪広さんもついてきたらいいでしょうに」

 

「はっ、その手がありましたわ!」

 

「ただし、私達は遊びにいくのではないんです。だから、どうしても付いてくるというなら、雪広さんの方で飛行機の手配と現地の移動手段、そして宿泊先を私とネギくんの分も手配しておいてください」

 

「それくらいのこと、当然させていただきますわ!」

 

「はいはい。今週の土曜に出発ですから、手配は急いでくださいね」

 

「任せてくださいまし!」

 

 よし、なんか知らんが旅費が浮いた。

 イギリス旅行の話を聞いて神楽坂さんも地味に行きたそうな顔をしているが、彼女はアルバイト生だからね。真面目にゴールデンウィークも新聞配達をしていてもらおうか。

 

 と、女子寮から麻帆良内を走る列車の駅に着いたところで、私達は思わぬ人物に待ち構えられていた。

 

「木乃香! のどか! 図書館島へ行くというのに、私達を置いていくとは何事か!」

 

 げえっ! 早乙女ハルナ!

 

「同じ図書館探検部だというのに、なぜ置いていくです」

 

 綾瀬夕映もいる。

 早乙女さんと綾瀬さんは、近衛さんとのどかさんの二人と同じ部活で、図書館島の地下を探索する図書館探検部の所属だ。

 

「ハルナ……ユエ……」

 

 のどかさんは、二人に行動がバレていたと想像していなかったようだ。二人を見ながらオロオロとしている。

 一方で、近衛さんはというと。

 

「すまんなあ、二人とも。今日は部活動やなくて、ネギ君の個人的な事情でなぁ?」

 

「ふん、ネギ先生のお父さんの手掛かりが、図書館島の地下にあるっていうんでしょ」

 

「な、なしてそのことを」

 

 ズバリ目的を言い当てた早乙女さんに、近衛さんが驚く。

 

「いやだって、私もネギ先生が持ち帰った資料のコピー見たけど、思いっきり『オレノテガカリ』って書いてあったでしょーが」

 

 ああ、うん。カタカナで普通に書いてあったんだよね。ネギくんは資料を複雑な暗号だと思い、京都でアトリエに同行した全員に資料のコピーを配っていた。二人はそれを見たのだろう。

 

「ともかく、個人的な事情だと言うなら、その個人的な事情に私とユエも一口乗らせなさい!」

 

「え、ええー……」

 

 近衛さんが困ったように、ネギくんを見る。ネギくんも困ったようにキティちゃんを見る。

 すると、キティちゃんは、やれやれといった様子で、二人に言った。

 

「ついてくるのは構わん。だが、そこで見たものを外で話したり、噂として拡散したりすることは許さんぞ。もし話したら……」

 

「記憶を消されるー、とかかな?」

 

 早乙女さんが、おちゃらけた感じで言った。

 すると、キティちゃんは口元を釣り上げて答える。

 

「なかなかするどいではないか」

 

「げっ、マジなの? やっぱりあったか、ファンタジックワールド!」

 

「私の想像では、みなさんは陰陽師か魔法使いです」

 

 魔法使いとドンピシャ言い当てる綾瀬さん。うーん、よく分かったなぁ。別に、綾瀬さんは原作漫画みたいに、関西呪術協会の本山には行っていないのに。

 

「ほう、なぜそう思った?」

 

 キティちゃんも気になったのか、そう尋ねる。

 

「修学旅行のシネマ村です」

 

「そう、それよ! 敵が妖怪を召喚して、それを魔法でバッタバッタ倒す! あれでファンタジーが存在すると気づかないって思われていた方が、心外だわ!」

 

「観光客は、CGとかワイヤーアクションとか言っていたです。でも、あれはCGなんかじゃなかったです」

 

「だって、妖怪みたいなヤツにつかみかかられて、普通に痛かったしねー」

 

 そんな証言を綾瀬さんと早乙女さんがしていった。

 うーん、シネマ村の戦いかぁ。やっぱりあれだけやって、誤魔化すのには無理があったね!

 

 そして、彼女達の主張が面白かったのか、キティちゃんはくつくつと笑うと、彼女達に向けて言った。

 

「確かに、私達は魔法使いだ。それを知って、お前達はどうしたい?」

 

「もち、仲間に入れてもらう! まずは、一緒に図書館島を探検だね!」

 

「私も魔法を覚えたいです」

 

「よかろう。周囲に魔法の存在を一切バラさないと誓うなら、連れていってやろう」

 

「よっしゃー! マジックパワーゲットー!」

 

「ふふん、のどか。もう私に秘密はなしですよ」

 

 こうしてまた二人、エヴァンジェリン門下に生徒が新しく加わるのだった。

 あ、往来で話していたけど、ちゃんと魔法で誤魔化してあるから、この会話が一般人に聞かれたと言うことはないよ。

 

 

 

◆57 ドラゴンバスターズ

 

 図書館島の冒険は、なかなかにスリリングだった。

 とにかく罠が豊富で、飛行魔法によるスキップを活用しても、思うようには進めなかった。

 坂を転がる大岩とか、リアルで初めて見たよ。もう、途中で十フィート棒が欲しくなったくらいだ。

 

 そして、着てきた服が蜘蛛の巣と埃で汚れてきたころ、私達は大きな扉の前に辿り着いた。

 

「ふむ、鍵がかかっているな」

 

「魔法的なロックでしょうか?」

 

「おそらくな。ぼーや、解けそうか?」

 

「うーん、ちょっと試してみますね」

 

 扉を前に、キティちゃんとネギくんが話し込み始める。

 だが、ちょっとその作業は待ってほしい。

 

「話の途中ですみませんが、ワイバーンです」

 

「えっ?」

 

 私の言葉に、ネギくんが振り返る。

 扉の横にある大樹の森から、のっそりと姿を現した巨大な影。それは……。

 

「ド、ドラゴン!?」

 

 突然現れた体高四メートルを超える竜種に、周囲の皆が騒然となる。

 私は、話の途中で割り込んでくる竜種という存在に、一種の感動を覚えながら言った。

 

「前足がなく、後ろ足だけで立っていますから、私としてはワイバーン説を推したいですねー」

 

「そんなこと言っている場合ですかー!? 逃げなくちゃ!」

 

 扉から離れて、杖で飛び立つ姿勢に入ったネギくんが、私の言葉にそう返してくる。

 しかしだ。

 

「逃げるんですか? この面子で?」

 

「えっ、あっ!」

 

 古さん、ちう様、桜咲さんはすでに臨戦態勢で、キティちゃんはその後ろで腕を組んで動向を見守っている。茶々丸さんはその他のメンバーをかばう位置取り。その他のメンバーは、前に出ることなく一塊になって茶々丸さんの背後で大人しくしていた。

 

 そして、古さん達が推定ワイバーンへと飛びこんでいった。

 そんな彼女達に向けて、私は言う。

 

「殺さないようにしてくださいねー。そのワイバーン、多分、野良じゃなくて、図書館島側のペットだと思いますので」

 

「任せるアル!」

 

「分かりました、峰打ちですね」

 

「凍らせておきゃ大丈夫だろ」

 

 うーん、オーバーキルにならないといいけど。

 

 そして、そこから始まったのは人間側による一方的な蹂躙(じゅうりん)だった。

 いくらワイバーンが巨体といえど、実力者数人に囲んで殴られれば、なすすべもない。

 

 途中で空を飛んだり火を吹いたりしたものの、それでも彼女達には通用しなかった。

 いやー、強いね、三人とも。古さんとちう様が強いのは分かっていたけど、桜咲さんもめちゃつよである。この子本当に、若い中学三年生なの? ってくらい強い。

 

 やがて、ボコボコになったワイバーンは、三人から逃げようとし始めた。

 その向かう先は、一人でぼんやり戦いを見守っていた私の方角。

 

「リンネちゃん、危ない!」

 

 神楽坂さんの叫び声がこちらに届く。

 しかし、大丈夫だ。私だって、ちょっとでかいくらいのワイバーンには負けないさ。

 

 私は、スマホから竜殺しの力を引き出す。それは、竜を退治した不死身の伝説を持つサーヴァントの力。

 この身に宿った者の名は、『ジークフリート』。

 

 私が姿を変え、名高い聖剣を手に携えると、竜殺しの覇気が伝わったのか、ワイバーンが突進の勢いをゆるめる。

 だが、全力で三人から逃げ出していたワイバーンの巨体は止まりきらない。

 

 だから私は、聖剣を天に掲げ、秘奥義を繰り出す。

 

「吠えよ聖剣! バルムンク――」

 

 私はその場で跳び、ワイバーンの頭部へと自ら飛びこみ、勢いよく一撃を放った。

 

「――キック!」

 

 轟音を立てて、ワイバーンは仰向けに倒れた。

 

「蹴ったー!? 剣持ってるのになぜか蹴ったー!?」

 

 ツッコミありがとうございます、早乙女さん。

 私は、聖剣バルムンクを天に掲げたまま、今の技の解説を入れた。

 

「今のは私が編み出した秘奥義、バルムンクキックと言いまして……」

 

「いやいや、バルムンクってその剣でしょ。竜殺しの剣でしょ。なんで使わないの」

 

「使ったら、ワイバーンさんが即死してしまいかねませんから」

 

「そうだけどさ! めっちゃ格好いい剣が出てきたら期待するじゃん! 期待を返して!」

 

「なるほど。早乙女さんはワイバーンを殺して、ワイバーンステーキを食べたいとおっしゃる」

 

「そこまで言ってない!」

 

 と、そんな会話をしている間に、仰向けになっていたワイバーンは起き上がり、その場に伏せた。完全に降伏の構えである。

 すると、先ほどネギくんとキティちゃんが開けようとしていた扉が、ゆっくりと開いていく。

 

「番人さんのOKが出たようですね。進みましょうか」

 

「くそー。今度その魔剣、しっかり見せなさいよね」

 

 そこまで言うなら、今度、早乙女さんには宝具の発動を見せてあげることにしようか。

 

 

 

◆58 食う寝る遊ぶ

 

 開いた扉をくぐると、まず目に飛びこんできたのは遠くに見える森だった。

 扉をくぐる前にも存在した森だが、ここは地下。森があることは不思議に感じるが、地上にある麻帆良学園都市には世界樹が生えている。その世界樹の根が、おそらくこの森を形成しているのだろう。

 周囲に漂う魔力(マナ)も濃く、魔法の初心者でも魔法を楽に発動できそうな、そんな環境だった。

 

 そして、道は真っ直ぐと続いており、その先には一基の塔が建っていた。

 塔の頂上からは妙に広いバルコニーがせり出しているのが見える。

 

 塔までの道の脇は柵のない崖となっており、崖から下は霧に覆われていて見通すことができない。おそらく、下にも図書館が広がっているのだろう。

 

 私達は、脇から落ちてしまわないよう注意しながら、塔へと近寄った。

 ネギくんが塔の扉をノックすると私の頭の中に念話が届く。

 

『どうぞ、空いていますよ』

 

 念話は私以外のみんなにも届いていたようで、ネギくんはおもむろに扉を開けていく。

 それから扉をくぐり塔の内部へ入ると、そこにはここまでに見慣れた光景、本と本棚がずらりと並んでいた。

 そして、その本棚が並ぶ広い部屋の中央に、一人の美青年がたたずんでいた。

 

「いらっしゃいませ。どのような御用でしょうか」

 

「あっ、写真の人……!」

 

 ネギくんが、青年の顔を見て、そんな声をあげた。

 そう、ナギ・スプリングフィールドのアトリエにあった『紅き翼(アラルブラ)』の集合写真で見た顔。その正体は、古い魔導書が実体化した存在で、ここ『アカシャの図書迷宮』の司書を担当している。名前はアルビレオ・イマ、のはずだ。

 

「おや、私をご存じで? そちらのキティにでも聞きましたか?」

 

「誰がキティか!」

 

「あなたですが?」

 

 キティと呼ばれて(いきどお)るキティちゃんだったが、アルビレオ・イマはどこ吹く風といった様子。

 だが、そんなじゃれ合いもすぐに終わり、あらためてネギくんが一歩前に出て言った。

 

「僕はネギ・スプリングフィールドといいます。父さん……ナギ・スプリングフィールドの手掛かりを求めて、ここへ来ました」

 

「ほう、君があのナギの息子ですか。その君が、なぜここに?」

 

「京都にある父さんのアトリエで、近衛詠春さんから資料をいただきました。その資料に、父さんの手掛かりがここにあると書かれていたので、訪ねてきました」

 

「なるほどなるほど。そして、パートナー達を連れて、ここまではるばるやってきたと。ふむ……」

 

 私は別にネギくんのパートナーではないのだが、今それを言ったら話がややこしくなりそうなので、黙っておこう。

 

「分かりました。手掛かりについては、確かに心当たりがあります。しかし、立ち話もなんですね。屋上へご案内します。お茶会としましょう」

 

「そうですか! ありがとうございます! あの、なんとお呼びすれば……?」

 

 アルビレオ・イマのお茶会への招待に、お礼を言うネギくん。そして、名を訪ねるが、その答えは……。

 

「そうですね……。ああ、せっかくだから、私のことはクウネル・サンダースとお呼びください」

 

「いや、アルビレオ・イマだろ、貴様は」

 

 キティちゃんのツッコミが入るが、アルビレオ・イマは首を横に振り、再度言う。

 

「私のことはクウネル・サンダースとお呼びください」

 

 麻帆良祭の時に作った偽名だと思っていたけれど、もしかして前々から名乗っていたのだろうか、食う寝るサンダース。フライドチキンが好物とか、ないよね?

 




※なおトンファーキックのAAは、作中の日時ではまだ生まれていません。

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