【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■25 世界樹の根元で

◆61 ヨルダへの一手

 

「最後の一撃には光るものがありましたけれど、全体を通してみるとまだまだですね。キティ、ちゃんと教えているのですか?」

 

 再び場は塔の屋上へと戻り、お茶会が再開する。

 そこで、キティちゃんの隣に座ったアルビレオ・イマは、ネギくんとの戦いの評価をそう下した。

 

「ぼーやが私に弟子入りしてからまだ三日目だ。まだ何も教えておらんわ」

 

「それは意外ですね。まだそれだけしか経っていないのに、ここへ連れてきたのですか」

 

「別に連れてきたわけではない。私はここに別の用事があって、そこへぼーや達が勝手に付いてきたんだ」

 

「そうでしたか。用事とは、私に? それともこの図書館島に?」

 

「お前に用事なのだが、お前個人にではない。『アカシャの図書迷宮』の司書に許可を得たいことがあって、ここまでやって来た」

 

「おや……キティが私の役職を知っているとは。あなたがこの図書迷宮の利用者だった記憶はないのですが」

 

「とある筋からここの話を聞いてな。それは別にいいだろう。それより、ぼーや達に知られたくない司書サマへの用事だ。場所を用意できるか?」

 

「ええ、できますが……」

 

 と、そんな会話をしたところで、早乙女さんが反応した。

 

「エヴァちん、他に用事あんの? こんな地の奥底に、ネギ君と関係ない用事が?」

 

 すると、それにのどかさんが答える。

 

「うん、私達はこの場所自体に用事があってー」

 

「えっ、のどか、ネギ君側じゃなくてエヴァちん側なの!?」

 

「う、うん……」

 

「なになに? どんな事情があるの?」

 

「そ、それは話せないかなー……」

 

「えー、ここに来て秘密はないでしょー」

 

「そ、それでも無理ー……ハルナにも、ユエにも話せないの」

 

 すると、のどかさんの言葉に綾瀬さんも反応する。

 

「私にも秘密にするとは、よっぽど重大な秘密のようですね?」

 

「これは、尋問が必要ですなぁー」

 

「ひ、ひえっ……」

 

 おっと、のどかさんが困っているな。助け船を出してあげよう。

 

「早乙女さん、綾瀬さん。そこらへんで勘弁してあげてください。のどかさんが抱える秘密は、他人の進退や生死に関わる重大な秘密なんです」

 

「むー、そこまで言うなら引くけどさー」

 

「正直、気になって眠れそうにないです」

 

 早乙女さんと綾瀬さんが、未練がましい視線をのどかさんに向ける。

 

「なお、お二人がのどかさんの秘密を無理に聞き出した場合、情報漏洩防止のため、お二人には改造手術なりなんなりを施すことになります」

 

「改造手術だと……!」

 

「それは……魔法の存在を知った今だと、冗談と流せないですね」

 

「もちろん冗談ではありませんよ」

 

 余計なことをしでかさないよう絶対令(アビス)を埋め込んで、機械の身体(キャスト)にでも改造してやろうか。

 と、そんな無駄話の裏で話は付いたのか、キティちゃんとアルビレオ・イマが立ち上がる。

 それを追うように、私とのどかさんが立ち上がった。ちう様はこの件には関わるつもりはないのか、立ち上がらず茶菓子をつまんでいる。古さんと茶々丸さんはそもそも何も知らされていないので、キティちゃんに待っているよう言われた。

 

 そして、屋上から部屋を移し、塔の一室へ。

 テーブル席についた私は、用意していた紙資料をアルビレオ・イマに渡した。

 

「その資料、部外秘ですので、読み終わったら返してくださいね。複製も不可です」

 

「分かりました。ふむ……人工アカシックレコードの設置、ですか……アカシックレコードとでもいうべきこの図書迷宮に、そのようなものを設置したいとは、なんとも……」

 

 それからアルビレオ・イマは資料を読み始める。

 ときおり質問が来るが、それに応答するのは私だ。キティちゃんは、魔法が関係しない学術的なことには答えられないからね。

 

 もちろん、アルビレオ・イマに渡した資料には、余計な情報は書いていない。

 

 たとえば、のどかさんが人工アカシックレコードの司書になることなどはトップシークレットなので、一言も記載していない。

 このことが知れ渡ってしまえば、『いどのえにっき』以上のヤバさなので彼女の命が危ない。

 

 他にも、アカシックレコードが情報収集に使う中継器のことを資料上ではフォトンと呼んでいない。

 のちに地球へ公開するフォトン技術が、アカシックレコードと関わりがあることを第三者に知られることのないようにしているのだ。

 

 そして、ある程度資料を読み進めたところで、アルビレオ・イマが言う。

 

「もし許可は出せない、と言ったときはどうしますか?」

 

 それに答えたのは、私ではなくキティちゃんだった。

 

「その時は、人の手の届きにくい場所、そうだな、月にでも設置しに行くかな」

 

 キティちゃんには以前、雑談時にムーンセル・オートマトンの話をしたことがあったね。『Fate/EXTRA』の世界の月に存在する、地球の全てを観察・記録する遺物のことだ。役割がとても人工アカシックレコードと似通っている。それで月とか言っているんだろう。

 まあ、人工アカシックレコードは近場にあった方がいいし、地球から離れすぎない月というのも設置場所候補の一つではある。

 

「しかし、このようなものを設置して、どうしようというのです? 世界をその手に掌握でもしようと?」

 

 さらにアルビレオ・イマがそんなことを言った。それに答えるのもキティちゃんだ。

 

「そんなつまらんこと誰がするか。これは、ナギを救い出すための一手だ」

 

「ほう?」

 

「資料の最後の項目を見ろ」

 

 資料の最後には、人工アカシックレコードを設置する真の目的が書かれている。

 それは、ヨルダへの対応策。作戦名『大いなる光』。

 概要は、こうだ。

 

 造物主(ライフメーカー)ヨルダは、『共鳴り』という固有能力を持っている。

 それは、範囲無制限、人数無限定の強力無比な共感能力。この能力によって、彼女は全人類の苦痛や怨嗟(えんさ)の念……負の感情を常時受信している。

 ヨルダに憑依された者はその全人類の負の感情を受け、精神が摩耗していき、ヨルダに身体の主導権をにぎられてしまう。

 

 そこで、『共鳴り』へ対抗するために人工アカシックレコードを利用する。

 人工アカシックレコードに集まってくる全人類の情報。そこから人類の喜び、楽しみ、希望などの正の感情を引きだし、ナギ=ヨルダに注入するのだ。

 そうすることで、負の感情によって押しつぶされているナギ・スプリングフィールドの精神を正常に戻し、ナギ・スプリングフィールドに身体の主導権を取り戻させる、という応急処置案である。

 

「身体の主導権をナギが取り戻せば、その間に執れる手段はいくつかあるだろう?」

 

「なるほど……分かりました」

 

 アルビレオ・イマはそう言い、再び資料を読み始める。

 そして、彼は最後まで資料を読み切ってから、真剣な顔をして言う。

 

「設置を許可しましょう」

 

 司書の許可が、無事に出た。

 

 

 

◆62 世界の器

 

 アルビレオ・イマが用意した場所で、人工アカシックレコードの設置作業が進められる。

 スマホから呼び出したルーサーに言われるまま、私はスマホから人員や機材を次々と取り出していく。

 図書館迷宮の一角では、アークス研究部の研究員やオラクル船団所属になった子猫達が、なにやら器材をガチャガチャといじっている。

 

「ふうむ、あなたの人生、とても気になりますね……」

 

 監視役としてこの場に立つアルビレオ・イマが、私に近寄ってきて、言う。

 

「私の趣味は他人の人生の収集なのですが……先ほどの模擬戦でのナギのように、私のアーティファクトで他者の人生を記録できるのです。どうです、記録していきませんか?」

 

「そんなRPGのセーブポイントのようなことを言われましても……まあ、あなたへの協力はやぶさかではないのですが、今は時期ではないですね」

 

 アルビレオ・イマの誘いの言葉に、私は素直にそう答えた。

 

「おや、今でなければいいと?」

 

「ええ、ヨルダへの対処が終わった後ならば。もしかしたら、あなたがヨルダに取り込まれてしまう未来もあるかもしれない。そのとき、あなたが私の記憶を呼び出せる状況にいるのは……」

 

「ほう……、つまり、あなたはナギに取り憑いている存在にとって、都合の悪い事実を知っていると?」

 

「さて、どうでしょう」

 

「その答えすら、かの存在に与えたくないと。分かりました。引き下がりましょう」

 

 そんな会話をしているうちに、ルーサー達の準備が終わったようだ。

 ルーサーが器材から目を離してから言う。

 

「器材の配置に問題はなしだ。マナリアクターの感度も良好。シオンとシャオの事前の演算でも、成功は確実と出ている。では、あとは頼むよ」

 

 ルーサーが頼むと告げた相手は、私ではない。私の仕事は、スマホから人と物を出すところまでだ。

 人工アカシックレコードを作り出すためのキーとなる人物。それは、一人の女性だ。

 

 名前は『アンドー・ユー』。種族はヒューマン。見た目の年齢は十八歳くらい。

 その正体は、アークスの戦闘部隊ダーカーバスターズのリーダー。『ファンタシースターオンライン2 es』のプレイヤーキャラクターだ。

 そして、彼女は守護輝士(ガーディアン)と呼ばれる『ファンタシースターオンライン2』のプレイヤーキャラクターでもある。

 

 彼女の名前と種族は、私が前世に設定したものだ。私が『PSO2es』をプレイするときは、彼女を操作して戦うことになる。

 

 彼女がなぜ人工アカシックレコードを作るためのキーかというと……彼女が『PSO2』宇宙のアカシックレコードを作り出した人物だからだ。

 彼女は世界の器と呼ばれる存在だ。彼女は『PSO2』のラストで、宇宙の始まりの時代へとタイムスリップする。その時代で、彼女はアカシックレコードを作り出し、宇宙を創造して消滅する宿命だった。まあ、いろいろあって最終的に消滅はまぬがれたわけだが。

 

 とにかく彼女は、アカシックレコードを作り出せるだけの素養を持っている。

 その特性を今回利用して、ルーサー達が器材を使い彼女に人工アカシックレコードを作り出させるというわけだ。

 

 どういう仕組みで人工アカシックレコードを作り出すのかは知らないが、そもそもそれに関して私が知っている必要はない。

 実行役であるルーサーが知ってさえいれば十分であり、最終的に問題なく作成に成功すればそれでいい。

 

 ちなみに、アンドーの役割を私が代わることはできない。天界で女神様に願ったおかげで『PSO2es』に登場する力を自由自在に扱える私だが、『PSO2』のストーリー中にしか登場しない彼女の力は管轄外なのだ。

 アンドーは『PSO2』の世界の器としての力を『PSO2es』作中では発揮していないから、私はその力を引き出せない、というわけだ。ややこしいね。

 

「始めてくれたまえ」

 

 ルーサーの合図で、アンドーは無言でうなずき、用意されたスペースに立つ。

 すると、子猫達が「にゃー」と一斉に鳴き、アンドーの周囲が光に包まれる。

 

 この光は、フォトンによるものではない。未だこの空間中にはフォトンは存在しておらず、アンドーやルーサーの体内にあるのみだ。

 光っているのは、魔力だ。この図書館島地下は世界樹の根元であり、空気中に魔力が大量に存在する。その魔力を人工アカシックレコード作成のためのエネルギーとして利用している、とかだったはず。多分だけど。

 そして、光は五分ほど輝き続け、やがて何事もなかったかのように収まった。

 

「成功だね。人工アカシックレコード、ここに完成だ」

 

 ルーサーがそう宣言すると、子猫達が「にゃー!」と歓喜の鳴き声をあげた。

 アンドーも、無言でガッツポーズをしている。

 

 その様子を見ていたアルビレオ・イマが、ぽつりとつぶやいた。

 

「ふむ……何も見えないですし、何も感じませんね」

 

 それを聞いていたのか、ルーサーが答える。

 

「アカシックレコードは物質的な存在ではないからね。もちろん、魔力的な存在でもない。ここに存在しているが、見える形では存在していないよ」

 

「そうなのですか……」

 

「そもそも、近隣世界をふくめたあらゆる場所から本を集めるという、目に見える形を取っているこの世界のアカシックレコードの方が、僕にとっては驚きだね」

 

 ルーサーの言葉は、この場所、『アカシャの図書迷宮』のことを指しているのだろう。

 まあ、この図書館も不思議すぎる場所だよね。『魔法先生ネギま!』でも『UQ HOLDER!』でも、なぜ図書館島の地下に存在するかは不明だし。世界樹と何か関係あるのかな?

 

「さて、人工アカシックレコードは安定しているようだし、撤収しようか。オーナー、仕事だよ」

 

 ルーサーに呼ばれて、私はスマホを手元に呼び出す。

 

「はいはい。スマホにしまっていけばいいんですよね?」

 

「順番があるので、適当にしまわないように」

 

 というわけで、当初の予定通り、人工アカシックレコードが完成した。これでのどかさんの改造も行なえるね。

 早乙女さんと綾瀬さんへの魔法バレという事件もあったが、そちらの対処は他の人達に任せるとして……後腐れなくイギリス旅行に向かえるってものだね。

 

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