【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■29 さわやかA組

◆72 出席番号1番相坂さよ

 

「相坂さよです。みなさん、仲良くしてくださいねー」

 

 そんな挨拶で、とうとう相坂さんの存在が我がクラスに認識された。

 転校生ならぬ復学生であり、クラスの在籍者の一覧を見て名前だけは知っていた、という生徒もそれなりにいたようで。

 当然、彼女へ向けられた最初の質問は、なぜ休学していたかというものになった。

 

「ちょっと人前に出られない事情がありましてー」

 

「もしかして、重い病気?」

 

「はい。とはいっても、病院で過ごしていたわけじゃなくて、家にずっといた感じです」

 

「なんていう病気か聞いていい?」

 

「それはちょっと……」

 

 報道部の朝倉さんに尋ねられ、あらかじめ用意していた嘘の事情を答えていく相坂さん。

 この言い方だと、重度の鬱病あたりにかかっていたとでも勘違いするんじゃないかな。

 

 2003年のこの時代だと、まだ心の病気への偏見が強いが、相坂さんは病名を明言しないので明確にどうこう言ってくる人はいないだろう。

 彼女がこうして話をぼかすのも、なってもいない疾病を偽ってボロが出るくらいなら、ふわふわした感じで誤魔化した方がマシ、という方針によるものだった。

 

「では、さよさんは、朝倉さんの隣の席に座ってください」

 

 ネギくんがそう告げると、クラスがどよめいた。

 

「ちょ、先生、その席はー……」

 

「どうかしました?」

 

 朝倉さんの言いよどむ声に、ネギくんが問い返す。

 

「いや、この席、座ると寒気がするというか、(たた)られているというか……」

 

「あはは、大丈夫ですよ」

 

「いや、本当だってば先生。何十年も前から地縛霊に祟られている席って、麻帆良中学に長く伝わっているんだって」

 

「いえ、疑っているわけではなく……その席は学園長先生がなんとかしたらしくてー」

 

「ええっ!」

 

 ネギくんは相坂さんの正体が幽霊であることを知っているが、さすがにそれをクラスメート一同の前で言うわけにもいかない。

 若干棒読みで、ネギくんは朝倉さんに説明を続ける。

 

「もう幽霊の心配はしなくていいらしーです」

 

「霊媒師でも呼んだのかな……」

 

 魔法の存在を知っている朝倉さんが、そう納得して素直に引き下がる。

 そして、席に相坂さんが座ると、朝倉さんは心配そうに相坂さんの体調を確認していた。

 相坂さんがなんともないことが分かると、朝倉さんは「学園長に突撃インタビューしないと!」と別の方向に張り切り出す。

 まあ、学園長が真実を話すことはないと思うので、無駄に終わりそうだが……。

 

 その後、相坂さんはすんなりクラスに馴染み、体育の授業でも人形の過剰スペックを出すこともなくごく普通の生徒を装うことができていた。

 

 クラスメート達との会話で、すでにクラスメート達のことを知っていたような言葉を漏らすうっかりも見られた。彼女は二年間このクラスで地縛霊をやっていたので、クラスメートのことを一方的に知っているんだよね。

 そこは事前に予想していたので「リンネさんや水無瀬さんから前もってクラスのことを聞いていました」という言葉で誤魔化してもらった。

 

 そして昼休み。学食で昼食を食べ終わり自由時間になると、クラスメートの龍宮さんが私を手招きしているのが見えた。

 私は素直に彼女の方へと向かうと、「ちょっと内緒の話がある」と、ひとけのない場所へ案内された。

 

 なんだろうか、と首をかしげていると、龍宮さんが私に尋ねてきた。

 

「相坂さよのことについて詳しく知っておきたい。彼女の言葉を聞くに、リンネが詳しそうだからな。それで、巧妙に隠してはいるが、あの身体、生身ではないな?」

 

「おー、よく分かりましたね」

 

 あの出来の人形を人じゃないと見破るとは……すごくない?

 

「私は特別、目がよくてな。それで、事情は聞いていいか? 話せる範囲で構わないが」

 

「そうですね。クラスメートにフォローできる人が増えるとありがたいので、お話しします」

 

 龍宮さんは魔法関係者だ。魔族のハーフで、魔法使いの元パートナーだ。彼女になら、話してしまっても支障はないだろう。

 

「相坂さんは、元地縛霊です。3年A組の朝倉さんの隣の席に憑いていた、六十年物の幽霊ですね」

 

「何? そのようなもの、視えてはいなかったが……」

 

「相坂さん曰く、自分は幽霊の才能があまりなくて、イマイチ存在感がない、だそうです」

 

「なんだそれは……」

 

 龍宮さんが呆れるのも分かるよ。幽霊の才能ってなんだよってなるよね。

 苦笑いしつつ、私は話をそのまま続ける。

 

「水無瀬さんがいますよね? 彼女、凄腕のネクロマンサーでして。それで、水無瀬さんの助けを借りて、用意した触媒に相坂さんを憑依させたんです」

 

「なるほど。水無瀬も魔法生徒のようだが、専門はそちらだったのか」

 

「はい。それで、私の伝手で性能のいい人形を用意しまして、触媒を人形の中に収めて、人として活動してもらうことになったわけです」

 

「分かった。学園側もそれを承知しているんだよな?」

 

「ええ、学園長先生のお墨付きです」

 

「元地縛霊とのことだが、クラスメートへの悪影響はないな?」

 

「はい、悪霊ではないですからね。人畜無害な幽霊さんですよ」

 

 そこまで質疑応答を重ねると、龍宮さんは安心したように息を吐いた。

 

「事情は分かった。問題はないようだな。しかし、地縛霊か。クラス名簿に載っていたってことは、学園側も前々から存在を認識していたのだろうが……」

 

「六十年間地縛霊をしていたらしいですからね。しかも、生前は学園長先生の知り合いだったそうで」

 

「六十年物の幽霊か。そこまで現世に残り続けたとなると、なんらかの強い力を宿していそうだが……」

 

「精々ポルターガイストを起こして、テーブルを持ち上げられる程度ですよ。あ、いや、これ結構すごいですね」

 

「悪霊じゃなくてよかったよ」

 

 まったくだね。

 人にも取り憑けるし、人への害意があったら『UQ HOLDER!』の水無瀬小夜子みたいに人を取り殺せたんじゃなかろうか。学園側は相坂さんの存在を認識しても見ることはかなわなかったわけだし、一方的にされるがままだ。

 

「今は人形の中に収まっていますから、ポルターガイストも使えないのでしょうが……ん? それはどうなのかな? 聞いていなかったですね」

 

「人形か。ずいぶんと精巧な物だな。私はてっきり、帝国移民計画実験体かと思ったよ」

 

「あー、ヘラス帝国の移民用の実験でしたっけ。よくご存じですね」

 

「お前こそ、生粋の魔法生徒じゃないのによく知っている」

 

「実験体の人、麻帆良にいますからね。それで漏れてきた噂話を聞いたのですよ」

 

 クラスメートの春日美空さん。

 彼女が教会でよく一緒に行動を共にしている、ココネという少女がいる。彼女がその帝国移民計画実験体の十八号だ。

 実験は、火星の裏世界である魔法世界(ムンドゥス・マギクス)にあるヘラス帝国の人々が、地球に避難するために行なっているものと推測される。

 

 魔法世界は世界を構成する魔力の不足で、存亡の危機にある。魔法世界人が生き残るには、魔法世界を出て地球に避難するしかない。

 しかし、純正の魔法世界人は物質的な存在ではなく、魔力で構成された仮初めの生命。同じく魔力で作られた空間である魔法世界から出ることができない。

 そこでヘラス帝国は、物質的な肉体を造り魔法世界人を宿らせて、地球に進出する実験をしているのだろう。

 

 原作漫画ではココネ以外にも『紅き翼(アラルブラ)』のジャック・ラカンが、人形の身体で地球に出てきているシーンが描写されていた。

 

 正直なところ、私が手を貸せば、ヘラス帝国の全国民に肉の身体を与えることはできる。『PSO2es』に『イノセントブルー』というそのものずばりな技術が登場するのだ。

 だが、彼らを魔法世界から地球に移住させるにも、何者の所有物でもない土地が地球にあまっているわけではない。

 根本的な問題の解決には、原作漫画のように、火星の緑化テラフォーミングによる魔法世界の魔力不足解消が必要になるわけだが……その前に、造物主(ライフメイカー)の配下の秘密結社を潰す必要がある。

 それには、今年の夏休み終了までに魔法世界へ向かう必要があるわけで……結局、私は原作漫画の道行きからは逃れられないわけか。

 

 魔法世界が消滅しようが存続しようがどちらでも構わない、と言いたいところだが……魔法世界にはメガロメセンブリアの人々という、物質的な肉体を持つ存在が六七〇〇万人いる。魔法世界が消滅した場合、メガロメセンブリアの避難民が地球へ大量に押し寄せて土地の奪い合いになるか、火星に直接メガロメセンブリア人が投げ出されて最終的に火星・地球間での宇宙戦争が勃発(ぼっぱつ)するかして、社会がめちゃくちゃになってしまう。

 なので、人の社会で生きる私は、原作漫画を攻略本にして魔法世界に挑まないといけないわけだ。ネギくんに全て投げたいなぁ。

 

 魔法世界を救えばさぞや徳が積めるだろうなどと、ほくそ笑みたいところだ。でも、事態の解決に必要な労力を考えると、今から憂鬱だね。

 

「相坂が魔法関係者じゃないなら、出す話題も気を付けるとするよ」

 

 と、龍宮さんがそう言って、話を切り上げようとする。

 だが、彼女の発言はちょっと勘違いが入っている。

 

「相坂さんは六十年も麻帆良で幽霊をしていたわけですから、魔法の存在も知っていますよ。それに、水無瀬さんも私も魔法生徒なので、自然と相坂さんも魔法関係者です。エヴァンジェリン先生の門下ですね」

 

「『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』の門下ね……勢力拡大し過ぎて、私に討伐依頼が来ないことを祈っているよ」

 

「その依頼、受けない方がいいですよ。私達門下の者が邪魔しますし、何より相手は強大な力を持つ本物の『闇の福音』なんですから」

 

 私がそう言うと、龍宮さんはフッと笑って、この場から去っていった。

 

 うーん、今の去り方、格好良かったな……。

 クールさの演出を取り入れたい場合は、彼女に学ぶべき点がいっぱいあるかもしれないね。

 

 

 

◆73 全力バカンス

 

 週末、旅行帰りしてから毎日の修行を続けるネギくんを心配して、あやかさんがネギくんを遊びに誘った。

 ただの遊びではない。南国のリゾート島を貸し切りにした、土日を使った泊まりがけの旅行である。

 

 南国リゾートと聞いて、3年A組のメンバーは黙っていなかった。

 あやかさんに便乗して、クラスメートの半数がリゾート島に押し掛けたのだ。

 

 文句を言いながらもクラスメートの移動手段をしっかりと用意してくれるあやかさんは、正直「女神かな?」と思った。

 私はあやかさんに負担をかけないよう付いていかないつもりだったが、「一人二人欠けたところで負担は変わらないですから、あなたもイギリス旅行の疲れを癒やすといいですわ」と言われ、結局付いていくことにした。女神かな?

 

 そして、現在、南国ビーチなう(死語)。

 

 私は砂浜にビーチチェアを置いて、パラソルを立て、ドリンクを片手にビーチチェアに寝転がっていた。

 せっかくの南国なので『全力バカンス』をしているのだ。

 

「リンネちゃん、ビーチボール貸してー」

 

 と、タンキニ姿の早乙女さんが私のところへやってきた。ビーチチェアの足元には、私のビーチボールが転がしてあったのだ。

 

「はい、構いませんよ」

 

「リンネちゃん、全力で南国満喫しているね……」

 

「はい、『全力バカンス』です」

 

 このくつろぎ方、実はスマホにいるキャラクターの力である。

『政務官アンナ』というキャラクターの水着バージョン、『水着の政務官アンナ』。彼女が持つスキル『全力バカンス』を使って、早乙女さんの言葉通り南国を満喫しているのだ。

 

 ちなみに、『全力バカンス』は本来、九十秒間しか使えないスキル。

 だが、同じく南国のリゾートであるキティちゃんの別荘にて、冗談で何度も使用した結果……自分自身の力として使いこなせるようになってしまった。今では時間制限なしで使用できる。

 

 なお、スキルの効果は攻撃力と防御力が激減するのみで、このスキル自体にはプラスの効果がない。

 同じく水着キャラクターの『誘惑の陽射しディアナ』の覚醒スキル『騎士団式戦場休暇術』は、永続的に防御力が上昇し攻撃対象が一人増える効果があるというのに、『全力バカンス』は単品ではいいところなしである。

 

 でもいいのだ。南国でビーチチェアに寝転がってぐだぐだ休むのは、前世では体験できなかった贅沢なのだから。

 と、そんな感じで一足早い夏を満喫していたところ、海からクラスメート達が戻ってきた。

 

「お腹空いたー」

 

「委員長、お昼食べよー!」

 

 腹ぺこ少女達が、昼食コールをし始めた。

 すると、ネギくんを構っていたあやかさんが言う。

 

「そうですね。昼食はどうしましょうか。島のホテルでランチにしますか?」

 

「せっかくの海なんだから、バーベキューが良い!」

 

「私はカレーの気分かなー」

 

「バーベキュー!」

 

 クラスメート達が口々に勝手なことを言い出す。

 

「バーベキューにカレーですか。用意してあるかしら……」

 

 あやかさんがちょっと困り顔だ。予定ではホテルで食べるつもりだったのだろう。

 ふむ、ここは手助けをするところだろう。

 

「あやかさん、バーベキューとカレー、私の方で準備しますよ」

 

 私は、スマホを手に呼び出し、あやかさんに言った。

 すると、あやかさんは私の手元のスマホを見て何かを察したのか、「お願いいたします」と言ってきた。

 

 ならば、やろうか。私は、大至急『LINE』でスマホの中の住人に連絡を入れた。

 そして、十五分後……。

 

「こちら、キャンプ大好きお兄さんに、カレー上手のお姉さんです」

 

 スマホの中から呼び出した、アーチャーのサーヴァント『エミヤ(霊衣サマー・カジュアル)』さんと、料理人の『天界のシェフオーガスタ』さんだ。

 

「あー、なんか修学旅行で見たことある人!」

 

「旅館でリンネと親しそうにしていた人じゃない?」

 

「あの眼鏡のお兄さん、かっこよくない?」

 

「まさかの大人の男追加! 一夏の過ち来ちゃう!」

 

「どこの国の人だろうね」

 

 二人を見て盛り上がるクラスメート一同。

 いや、一夏の過ちとか騒いでいるチアリーディング部の三人組。さすがにエミヤさんは、十五歳の中学三年生に手を出すほど節操なしではないと思うよ。……アルトリア陛下が、十五歳で見た目が止まっているということは忘れておこう。

 

「やれやれ、急に呼ばれたと思ったら、ただの料理人役とは」

 

 エミヤさんが呆れながら言う。でも、十五分で十数人分の食材をスマホの中で選別してくれたほどには、やる気はあるらしい。『Fate/Grand Order』のキャンプイベントでは主人公一行の保護者役を見事にこなしていたし、今日もみんなの料理番兼保護者として活躍が期待できる。

 

「私が普段、戦場で作っている料理はカレーじゃないんですけどね。でも、以前オーナーから受け取ったレシピは練習済みなので、任せてください」

 

 オーガスタさんの『千年戦争アイギス』プレイヤーからの愛称は『カレー』だ。しかし、彼女のゲーム内イラストで描かれている料理は、よく見るとカレーとは思えない具材の大きさである。そんな彼女には以前『LINE』で話したときにカレーのレシピを伝えてあるが、どうやらスマホ内の惑星Cathの食材で、カレーを作ることに成功していたようだ。

 

 みんなと二人の顔会わせも終わったので、早速、お昼ご飯だ。

 スマホ内から取り出した謎の獣の肉や絶妙に地球の物とは違う野菜を切っていき、カレーを仕込んでいる間にバーベキューを少しずつ食べていく。

 美味しい美味しい、とバーベキューだけでお腹いっぱい食べてしまいそうになるが、そこはエミヤさんが上手く仕切っていった。

 そして、完成するカレー。付け合わせがチャパティ的なパンで、ライスじゃないことに不満の声も上がるが、カレーを一口食べたら見事に文句は止まった。

 

「ふむ、さすがは神直々に天界へ招かれるほどの料理人だな」

 

「いえいえ、エミヤさんも場を取り仕切る能力はなかなかですよ」

 

 そのようにエミヤさんとオーガスタさんが大人同士でキャッキャウフフしている間にも、クラスメート達は一心不乱にカレーを食べていく。

 カレーを食べ終わった後、おかわりをする者が続出し、さらにバーベキューもどんどん食べていく。

 用意していた食材がなくなるほど皆が食欲を見せ、昼食は終わった。

 

「いやー、食べ過ぎたね。これはしばらく海に入れないや」

 

 男がいることも構わずお腹をポコポコ叩きながら、早乙女さんが浜辺に寝転がる。

 他の面々もお腹いっぱいのようで、午前中はあれほど騒がしかった者達が、みな休憩に入っている。

 

「とても美味でしたわ。ぜひとも雪広グループの料理部門にスカウトしたいところですが……」

 

 あやかさんがそう言うが、ちらりと私の方を見て、ため息をつく。

 

「おそらく、無理なのですね?」

 

「そうですね。私のところの住人なので、外へはやれません」

 

 あやかさんの問いに、私は素直にそう答えた。

 スマホの中の宇宙から何かを取り出す能力は、スマホゲームの中の力を自由自在に扱う能力を拡大解釈したような能力だ。

 

 私の力というよりスマホ自体に宿る力とでもいうべき挙動をする能力であり、スマホから物を出す分には無制限だが、スマホの中に現世の人や物はしまえない。そして、スマホの中からの人の呼び出しだが、呼び出しておける人数枠が存在する。

 その枠は、まるでソシャゲのキャラクター所持枠のように、課金で増やすことができる。つまり、徳を積めば増やせる。

 

 現状、戦闘で必要になる人数程度は呼び出せるが、大型宇宙船を一隻動かすほどの大人数を呼び出すほどの枠は拡張できていない。

 ガチャで出るキャラクター以外にも、モブというかゲームに登場しない一般人もスマホの中に住み着いているが、宇宙船を運用する場合、彼らの手助けも必要となってくる。そのためには、いっぱい徳を積み、いっぱい枠を拡張してやる必要があるね。

 

 ちなみにスマホ宇宙の一般人は、ガチャで出る私の魂由来のキャラクターとは違うのか、歳も取るし寿命もある。私のスマホは完全に一つの宇宙として成立しているようで、ますます宇宙を一個所持するオーナーとして気軽に死ねないな、などと思う私であった。

 

「ネギ先生、午後からは水上スキーなどいかがですか?」

 

 他の生徒達と違って、お腹具合に余裕があるのだろう。あやかさんが、砂浜に寝転がるネギくんに向けてそう言った。

 

「はい。お腹が落ち着いたら……」

 

「うふふ、やはりネギ先生も子供らしく、カレーが好きなのでしょうか……」

 

「そーですね。今日のカレーはとても美味しかったですね」

 

 そんな会話をするネギくんは、明るい感じだ。

 私は、クラスメート達の中から神楽坂さんを見つけて、その様子をうかがう。

 午前もネギくんと一緒に海で遊んでいたし、原作漫画の同時期と違って、神楽坂さんとネギくんの二人は喧嘩をしていないようだ。

 

 どうやら、人間模様は原作漫画とはずいぶんと変化しているようだ。

 原作漫画で描かれていた未来が参考にならなくなってくるのは少々不安があるが、よりよい未来に変わっていくなら喜ばしいことだな。なんてとりとめもなく考える私だった。

 


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