【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■32 結成! ネギま部!

◆79 2003年記憶の旅

 

 犬上小太郎くんは、結局あの後、麻帆良への滞在を勝ち取ったらしい。封印されていた術も解除され、西と関わり合いのある魔法先生の監督下で小学生をやるようだ。住む場所も、その先生の家に下宿するのだとか。

 ネギくんに負けるものかと毎日のように別荘へ修行しにやってくるので、成長が早くなって寿命も早く尽きると忠告はしたのだが、本人は特に気にした様子は見せなかった。狗族と人間のハーフらしいけど、狗族って長寿命な種族なんだろうか……。

 

 そして、小太郎くんに触発されたのか、エヴァンジェリン門下の者達も、ちらほらと平日に別荘で姿を見ることが増えた。

 土日となると別荘の中で数日間修行に明け暮れるようになり……本当にみんな、余計に歳取るのを気にしないでいいのかな、と心配になってくるほどだ。でも、家主のキティちゃん的には、夏休みの魔法世界行きまでに強くなるのは喜ばしいことだと思っているみたいだね。

 

 そして、私も皆の修行の助けになるようにと、スマホの中の人達に注文していた設備を別荘に導入した。

 アークスとカルデア共同開発の、シミュレータールームだ。

 いわゆるVRを使った訓練設備というやつで、実際に身体を動かして仮想の戦闘を行なえる。

 

 ここならば、本気の殺し合いも生身の肉体に影響を与えずに行なうことが可能であり、人間同士の仮想対戦だけでなく、現世には存在しない魔物やダークファルスの眷属ダーカーとも戦える。

 この設備に一番喜んだのは、門下メンバーでもなく、家主のキティちゃんでもなく、キティちゃんの人形の一人であるチャチャゼロさんだった。遠慮無く門下メンバーを皆殺しにできる、とか言いだして、そして実際に神楽坂さんやネギくんをなます切りにしていた。

 

 さて、そんな感じで別荘がフル稼働して、やがて訪れた五月二十五日日曜日。明日は中間テストということで、別荘を使ってテスト勉強をみんなですることになった。

 いやー、時間加速して勉強会とか、本当にズルいよね。

 

 勉強会のメンバーにはバカレンジャーが三人もいるので、ネギくんだけでは手が回らないだろうということになって、私も教える側に回った。成績優秀なあやかさんも教師役だ。

 バカレンジャーのうち、綾瀬さんはやる気がないだけで頭は悪くないし、古さんは修行のしすぎで頭から知識が抜け落ちているだけ。真なるバカは神楽坂さんだけなので、そこまで手こずることなく勉強会は進んだ。

 そして、休憩時間。だらだらとお菓子を食べながら雑談タイムだ。みんなの話題は、先日ネギくんを襲った悪魔について。

 

「結局、あいつらは何しに来たわけ?」

 

 私がスマホの中から取りだした、タマモキャット特製謎芋チップスを食べながら、早乙女さんが疑問を呈する。

 するとネギくんが、悪魔のしていた発言をピックアップして述べていく。

 

 それによると、召喚主の命令での麻帆良の調査と、神楽坂明日菜の調査、そして悪魔個人によるネギくんへのちょっかいという三つの目的がうかがえた。

 

「私の調査って、いったいなんなのよー」

 

 神楽坂さんがそう言うが、皆の意見は「魔法無効化能力の調査」で一致した。

 京都の関西呪術協会本山で神楽坂さんは、フェイト・アーウェルンクスの石化魔法を食らっても服を石にされるだけでピンピンしていたそうで……その力の調査をしにきたというのではという意見に、彼女も納得した。

 

 原作漫画を見るに、実際その通りなのだろう。これで黄昏の姫御子である神楽坂さんの存在は、フェイト・アーウェルンクス並びに秘密結社『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』に知られたと言ってよいだろう。夏休みに魔法世界(ムンドゥス・マギクス)で秘密結社と私達が衝突するのは、ほぼ確実だ。

 もし仮にネギま部が結成されずに神楽坂さんが魔法世界に行かなかった場合、その時は麻帆良が『完全なる世界』に襲撃されて、神楽坂さんがさらわれるという事態となるだろうね。そのための悪魔による調査だったと推測ができる。

 

「まあ、アスナが変な能力持ってて狙われたっていうのは、分かった。でも、ネギ君が悪魔にピンポイントで狙われたのは、どーいうこと?」

 

 早乙女さんが、再び皆を代表して疑問を口にする。

 皆の注目を浴びたネギくんは、真面目な顔をしてその疑問に答えた。

 

「僕の過去が関係しています。そうですね、いい機会ですし、皆さんには僕の過去を知らせておきます。僕に関わると、今回のような事件に巻き込まれる危険性があるので、事情をしっかり認識していただきたいです」

 

 そう言って、ネギくんは場所を移動して別荘内にある砂浜へとやってきた。

 そして、砂地に大きな魔法陣を描き、その中に全員入るように指示する。

 

「では、魔法で僕の記憶を見せます」

 

 そこから始まったのは、以前プライベートジェットの中で見せてもらったネギくんの過去の記憶だった。

 幼い頃の暮らし、村への悪魔の襲撃、魔法学校での学び。さらに今回は、先日の石化解除の旅も含まれていた。

 

 全ての記憶の再生が終わり、私達の意識は砂浜へと戻ってくる。

 そして、ネギくんは皆に言う。

 

「これが、今回悪魔に狙われた理由です。村を襲撃された原因がもしも僕にあるなら、今後も危険はついてまわるでしょう。僕と行動を共にする場合、それを覚悟していただく必要があります」

 

「危険が何よ! その危険に対処するために、私達は修行をしているんだからね!」

 

「あれ? そうなん? てっきり、ネギ君のお父さんを探す手伝いをするためやと思うてたけど……」

 

 神楽坂さんの強気の発言を聞いて、近衛さんがそんな疑問の声をもらした。

 

「あ、あれ? そうね、クウネル・サンダースって人から、ネギのお父さんの居場所を聞き出すためだったわ!」

 

 神楽坂さんのそんな言葉を聞いて、ネギくんがさらに言う。

 

「クウネルさんが僕に力を示せと言ったのは、おそらく父さんの行方を捜すには、危険がともなうからなのだと思います。僕を手伝ってくれるのはとても嬉しいです。僕一人ではきっと成し遂げられないことなのだと思います。でも……」

 

 そこまで言って、ネギくんは目を伏せる。

 そんなネギくんに、神楽坂さんは言った。

 

「危険かもしれない、ね……。そんなの気にしないわよ。子供が遠慮なんてしないの!」

 

 すると、あやかさんも一歩前に出て、宣言する。

 

「私の想いは、旅行の帰りに伝えたときと変わっていませんわ! パートナーとして、ネギ先生の支えとなります!」

 

 さらに、のどかさんも遠慮がちに前に出る。

 

「ネギ先生について行きます……私の力が助けになるなら……!」

 

 そこから他の皆も、手伝うとか助けるとかネギくんに向けて口々に言い始めた。

 

「皆さん……ありがとうございます!」

 

 その様子をキティちゃんは満足そうに後ろから眺めている。今の状況は、まさしく一年生の入学式の日から、キティちゃんが待ち望んでいた未来ではないだろうか。

 

「これはもう、クウネル・サンダース撃破を狙う、一つの立派な軍団だねー。共通の目的を持つ軍団……ネギ魔法軍団?」

 

 早乙女さんがそう言うと、キティちゃんが鼻で笑う。

 

「はっ、素人だらけで軍団などと言えるか。精々、放課後に集まる部活動レベルだろうさ」

 

「おっ、部活動、いいねー。みんなで倶楽部結成しちゃう?」

 

「そうね! ネギのお父さんの大魔法使いを捜し出すための部活動。略してネギま部!」

 

 キティちゃんの言葉を受けて、早乙女さんと神楽坂さんがそんなことを言い出す。

 すると、近衛さんが即座に賛同し、あやかさんが部長として立候補。小太郎くんが、自分は中等部ではないが学外からでも入れるのかと言い、ネギくんが部の名前を恥ずかしがった。

 部員はこの場にいる全員と早乙女さんが言い出したが、キティちゃんは名誉顧問の立場なら協力してやると居丈高(いたけだか)に告げた。

 

「それと、ネギま部や魔法使いを捜し出す部などという名称で、学園に申請するつもりか? 表向きの名前を考えておけ」

 

 キティちゃんにそう言われて、みんなで部活の名前を考えることとなった。

 原作漫画ならば、『英国文化研究倶楽部』として発足するはずのネギま部だが、現段階ではまだ英国に行くという目標がないので、この名前は挙げられない。

 と、そこであやかさんから、ネギくんの父親が海外を飛び回っていたという調査報告がなされた。それをもとに部の名前を決めてはどうかと彼女は言う。

 

「それなら、いずれ海外に私達も足跡を辿りに行くかもしれないので……魔法世界のことも合わせて……『異文化研究倶楽部』というのはどうでしょうかー……?」

 

「おっ、のどか、ナイスネーミング!」

 

 のどかさんの原作漫画知識を流用したであろう名前案に、いいねとサムズアップする早乙女さん。

 その後、反対意見も出ることはなく、異文化研究倶楽部、通称ネギま部はここに発足したのであった。

 

 それは別に構わないのだが……みんな、テスト勉強放り出して来たけど、続きしなくていいのかな?

 

 

 

◆80 そして麻帆良祭へ

 

 ネギま部の発足から一夜明け、中間テストが始まった。

 クラスメート達の悲鳴を聞きながら、テストの時間は過ぎていく。期末試験と違って教科数が少ないので、余裕顔の生徒も多かったが。

 私はまあ、それなりの高得点を取れたと思う。前世で大学をしっかり出た身としては、中学生レベルの内容で落第したらさすがに恥ずかしいので。高校レベルになると怪しくなってくるが。

 

 そして、テストが無事終わった。打ち上げでカラオケに行き、キティちゃんの上手すぎる歌声に夢心地になったり、最新曲ばかり歌う六十年物の幽霊である相坂さんの選曲に困惑したりしながら、クラスメート達との親睦を深めていった。

 その後日、麻帆良学園名物、クラス平均点の順位発表会が行なわれた。

 この順位発表会では食券を賭けるトトカルチョが行なわれており、私は椎名(しいな)桜子(さくらこ)大明神が賭ける内容に便乗して食券を三十枚賭けた。

 

 私達ネギま部は、学内の大型プロジェクターが設置されている場所に集まって、発表会の様子を眺める。

 

『三年生の第一位は、3年A組ですー!』

 

 その発表結果に、私は歓喜した。食券長者やー!

 いや、もうこれまでの様々な賭けで、大学卒業までに必要な食券は稼げているんだけど、椎名大明神がいるとついつい増やしてしまうよね。これは、積極的にみんなへ食事をおごっていくべきだろうねぇ。麻帆良内にある料理店って、食券で食べられるところ結構あるし。

 

「やりましたね、みなさん!」

 

 昨年度末の期末試験に引き続き一位を取った担任のネギくんは、とても嬉しげにしている。だが、先生として誇らしげなのではなく、あくまで生徒達の頑張りを嬉しがっているようだ。

 

「まっ、バカレンジャーのうち三人が勉強会に参加していたからねー」

 

 平均点が84点となかなかの好成績だった早乙女さんが、今回がっつり成績を上げてきた綾瀬さんの頬をうりうりと指先でいじりながら、そう言った。

 

「実はあまり成績のよくなかった桜咲さんも、近衛さんの直接指導で成績を上げていましたね」

 

 私がそう言うと、桜咲さんが恥ずかしそうに目を伏せる。

 原作漫画と違って一年生の段階で近衛さんと仲が改善していた桜咲さんだが、意外なことに、一緒に勉強会をするということはあまりしていなかったようだった。

 

「新しく来た水無瀬さんと相坂さんが、二人とも成績優秀だったのも大きいと思いますー」

 

 のどかさんの指摘に、みんなは確かに、と納得する。

 

「中学の勉強範囲なら大得意なんですー」

 

 嬉しそうにそう言うのは、相坂さんだ。彼女は、六十年間中等部で地縛霊をやっていたからね。そりゃあ、成績優秀にもなるだろう。

 同じ条件のキティちゃんは、今回ちゃんとやる気を出してテストに臨んだようだ。最後の三年生なので、テストで手抜きをする気はない、とか以前言っていた。

 

 そんな感じで3年A組の一位を喜んでいると、私達に誰かが近づいてくる。

 

「フォフォフォ、頑張っているようでなによりじゃの」

 

 麻帆良学園の学園長先生だ。学園長室はこの麻帆良学園本校に存在するので、こうしてときおり女子中等部の食堂に姿を見せに来ることがある。

 なぜわざわざ女子中等部に来るのか……私が推測するに、多分、有事の際に孫の近衛木乃香さんや、魔法世界のやんごとない姫君である神楽坂さんを守るため、普段から中等部に寄るようにしているのだろうね。

 

「じいちゃん!」

 

「うむ、このかよ。今回もよい成績を残したようで、大変結構」

 

 自らの白ひげをなでながら、孫とのやりとりを楽しむ学園長先生。

 近衛さんといくつか言葉を交わした後、学園長先生はネギくんの方を見た。

 

「『異文化研究倶楽部』。ワシの方で許可を出しておいたぞい」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 ネギくんの礼の言葉に、学園長先生は「フォフォフォ」と笑った。

 

「それでの。部員の面々を見て、ただの異文化研究を行なうとは思えなくてのうー。真意を聞きに来たんじゃ」

 

 学園長先生がそう言うと、それと同時に周囲の騒がしい声が急に聞こえなくなる。

 無詠唱魔法でこの場と外を結界で仕切ったのだろう。さすがは学園で一、二を争う凄腕の大魔法使いである。

 

「それなんですけど、僕の父を捜し出すために、集まってくれたみんなで作った倶楽部でして……」

 

「ほう、ナギのやつをな。てっきり、魔法生徒同士で集まって、部活動感覚で魔法の研鑽をするだけかと思うておったが……なるほどなるほど」

 

 学園長先生は、そう言いながらキティちゃんの方をちらりと見た。キティちゃんは、「ふん」と鼻を鳴らしてそれを流す。

 

「じゃが、その道は険しいぞい?」

 

「学園長は、父のことを何か知っているんですか……?」

 

 ネギくんに問われ、学園長は「フォフォフォ」と笑ってから答える。

 

「図書館島の司書からは、まだ何も聞けておらんのじゃろう? それならば、ワシから語ることは何もないのう」

 

「そうですか……」

 

「フォフォフォ、若者よ、はげむがよいぞ」

 

 学園長先生は、そう言ってネギくんの肩を軽く叩いた。

 そして、学園長先生はキティちゃんの方を見る。

 

「何も聞いてこないのじゃな?」

 

「私にもそれなりの情報源はある。今は、このぼーやを鍛えるさ」

 

「そうかそうか」

 

 すると、今度は私の方へと目線を向けてくる学園長先生。

 

「彼女のことをよろしく頼むぞい、刻詠リンネくん、長谷川千雨くん」

 

 私とちう様が、名指しで呼ばれた。

 おそらく……私達が小学五年生の頃から、キティちゃんのところで学園公認でお世話になっていることからの台詞だろう。

 

「ええ、私達の先生ですから。最後まで先生の面倒を見ます」

 

「待てリンネ。面倒を見てやっているのは私の方だろう」

 

 私の言葉に反論してくるキティちゃん。んー、まあ、どっちがお世話してどっちがお世話されているかは、保留にしておくとして。

 キティちゃんは、ちう様や古さんと一緒に、永遠の時を生きる仲間だ。言われなくてもずっと付き合っていくさ。

 

 そんな私の決意が伝わったのか、学園長先生は満足そうにうなずき、結界の魔法を解除して学食を去っていった。

 

 こうして、中間テストに関するあれこれは無事に終わった。私達は、学業と修行を両立する日々に戻る。

 しかし、学業面では、学園が少しあわただしくなっていく。一ヶ月後に控えた麻帆良学園都市全体を使った学園祭である、麻帆良祭の準備が少しずつ始まりだしたのだ。

 

 私はネギま部以外の部活に入っていないので、特にあわただしく準備すべきことはない。

 だが、麻帆良祭では、一部のクラスメート達が冗談では済まない事件を起こす。それに対処できる力をつけるため、私は修行を本格的に進めていった。

 




※麻帆良学園本校女子中等部って、四葉五月が給食委員なので給食制なのかと思っていましたが、原作漫画を読み直すと学食や食券が描写されているんですよね……。じゃあ給食委員ってなに!?

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