【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆95 右ブロックは燃えている
二回戦第一試合、村上小太郎(偽名)と長谷川千雨の戦い。その激闘は、ちう様の『闇の魔法』発動から始まった。
律儀にも、試合開始してから無詠唱で『
『あれは『
悪魔の姿に堕ちているのに、暴走の兆候を見せないちう様に、解説のアルビレオ・イマは少し困惑している。
「オイオイ、いきなり無茶しよんな」
呆れたように言う小太郎くんだが、ちう様はなんてことない風に言った。
「なに、せっかくの祭りなんだ。コスプレくらいいいだろう?」
「ははは、コスプレか。なら、俺も本気でコスプレさせてもらうわ」
そう言うや否や、小太郎くんの髪の色が抜け落ち、四肢が獣に近づいていく。
『獣化ですね。獣に関わる妖魔の血が、彼の系譜に混じっているのでしょう』
ノリノリのアルビレオ・イマの解説に、完全にエンターテインメントの一種だと観客達は誤解したのだろう。歓声が一気に大きくなった。
「よし、学園結界に抑え込まれないギリギリの力を引き出せたな。そっちは大丈夫か?」
「俺は人とのハーフやからな。元々そんな高等な存在じゃあないわ」
互いにそう確認し合い、二人はあらためて向かい合って構えを取った。
そして、そこから始まったのは壮絶な殴り合いだ。
八極拳と悪魔の尻尾を駆使して戦うちう様に、磨きぬいた我流の技を獣の本能に乗せて戦う小太郎くん。
荒々しい打撃の応酬が続き、互いに体力を削り合っていく。
そして、五分にも及ぶ殴り合いを制したのは、小太郎くんだ。
「へへ、俺の勝ちや!」
小太郎くんの前で膝を突き、ゆっくりと前のめりに倒れていくちう様。
誰もが小太郎くんの勝利を確信した、その時だ。
ちう様が、突然爆発した。
「!?」
『な、何が起きたー!? 千雨選手、これは、自爆か!? ……い、いません。千雨選手、どこにもいません! まさか、自爆で消し飛んだのかー!』
「な、なんや今のは……」
ちう様から発生した爆発を受けて、動けなくなっている小太郎くん。そこに、ちう様の声が響いた。
「いいや、私の勝ちだ」
小太郎くんの前の空間にノイズが走り、無数のルーン文字が集まって一人の人間を構築していく。それは、まるでルーン文字で構成されたプログラムを錯覚させるような、電子的でCG的な演出。
やがて、膝を突いた小太郎くんの前に、小悪魔ちう様が出現した。
「武力では負けていたよーだが、総合力ではまだ私が上みてーだな」
「くそっ、何がどうなってるんや……」
「小太郎はまだ『デモンルーン』の方々と別荘で会ったことはないか? 簡単に言うと私は、相手に倒されたら強くなって復活する」
「ふ、復活やて。ズルっこや……」
「ああ、知らなかったか?」
ちう様は、そう言ってここまで使っていなかった『闇の魔法』の力の一つ、無詠唱での連続魔法を行使する。
「私は、ハッカーでプログラマーなんだ。
氷の魔法が、膝を突く小太郎くんに炸裂した。
『ダウーン! 犬上選手、謎の復活をはたした千雨選手の反撃を受け、ダウンです!』
小太郎くんは獣化が解除され、起き上がることもなく10カウントが過ぎた。
そして、悪魔化を解除したちう様が、観客席のネギま部メンバーに手を振りながらこちらに戻ってきた。
「はい、これ」
「ん、サンキュ」
私は、試合前にこっそり預かっていたアークス特製端末をちう様へと返した。
ちう様のコアは私のスマホにあるけど、今の肉体を構築している基点は今返した端末だからね。戦闘中は離れたところに置いておかないと、壊れてしまう危険性があった。アークスが厳しい環境で携帯するための端末だから、壊そうと思っても壊れないんだけど。
『いやあ、長谷川千雨選手が何をどうやったのか、まったく分かりませんね。何やら精神生命体特有の魔力は感じたのですが』
アルビレオ・イマが、解説しきれずにお手上げ状態になっている。
てっきり茶々丸さんがちう様の肉体のカラクリを喋るかと思ったのだが、口を閉じたままだ。ちう様にとって自身のプログラム化は秘中の秘なので、不特定多数に公開することは
さて、ちう様が爆発して傷ついた床板も直され、二回戦第二試合。
『昨年度の『ウルティマホラ』決勝戦が、ここに再現される! チャイニーズケンポーガール古菲バーサス、ジャパニーズニンジャガール長瀬楓の激突だー!』
麻帆良の格闘通なら当然知っている好カードに、観客席が沸く。
一回戦同様、棍を携えている古さん。一方の長瀬さんは、木刀を手にしている。
「ニンジャソードアルか?」
ワクワクした顔で、長瀬さんに尋ねる古さん。
「そもそも拙者は、素手よりも武器や暗器を扱う方が得意でござるからな」
「奇遇アルネ! 私も素手よりも槍の方が得意アル!」
そうバトルステージの中央で言い合い、自然と構えを取り合う二人。
『それでは、皆様お待たせしました。二回戦第二試合、ファイト!』
合図と共に、長瀬さんは分身を九体出した。そして、四方に散り、『気』を込めた木製の手裏剣投げをする。武器を隠し持っているのか、はたまた武器格納魔法のような忍術があるのか、様々なサイズの木製手裏剣が古さんを襲う。
古さんは、それを棍でいなしながら、バトルステージの上を縦横無尽に駆け回り始める。仙術の陣を敷いているのだ。
その狙いに気づいた長瀬さんは、距離を取らせていた分身達で一斉に古さんへと近接戦闘を挑む。
「私が分身を見破れること、忘れたアルか?」
「もちろん、覚えているでござるよ。だから、こう使わせてもらうでござる。ニン!」
長瀬さんの分身の一体が古さんに肉薄して両手で印を結ぶと、分身はその場で爆発した。
『おおっとー! 長瀬選手、爆発したー! 二試合続けての自爆攻撃!』
「くっ、なかなかやるアルネ!」
そこから立て続けに分身爆破が決まるが、それでも古さんはくじけずにバトルステージに陣を敷き続け……やがて古さん特製金光陣が完成した。
そして、陣から出現する五体の古さんの分身。
「何かと思ったら、ただの分身の術でござるか」
「ただの分身と侮ったら、痛い目見るアルヨ。さあ、行くネ!」
古さんの号令と共に分身達は宙を飛び、それぞれが仙術による攻撃を放ち始めた。とっさに長瀬さんは『気』を込めた手裏剣を古さんの分身に放つが、手裏剣を受けても分身は消し飛ばない。
耐久性のある分身に、長瀬さんは苦い顔。もはや長瀬さんは本体の位置を隠そうともしなかった。
そこから始まる武器と武器、仙術と忍術の応酬。めまぐるしく動く壮絶な戦いに、観客席のボルテージが上がる。
やがて、最後に立っていたのは……。
「私の勝ちアル!」
ウルティマホラに引き続き、勝利をその手につかんだのは古さんであった。
そして、勝利を宣言した後、見事に古さんもぶっ倒れ、二人仲良く担架で運ばれていった。
◆96 出席番号21番長瀬楓
二人が医務室送りになったのなら、回復させてあげようかな。そう思い、またもや床板の張り替えをしている間に、私は選手待機席を抜け出した。
医務室に到着すると、何やら古さんに長瀬さんがまとわりついて、すがっている姿が見えた。
「頼むでござるよー。古、この通りでござるー」
「ええい、私にはその権限がないアルヨ!」
「そこをなんとか頼むでござるー」
「むきー!」
……なんだこれ。
「お二人とも、元気そうですね。回復魔法の出張は不要でしたか?」
「おお、リンネ殿、いいところに」
「リンネ、いいところ来たアル!」
「……お二人そろって、どうしましたか?」
同時に私へと向き直った二人に、私はそう尋ねた。
「うむ、拙者もネギま部に入れてもらいたいでござる。のどか殿のあの躍進、皆で楽しく修行しているとにらんでいるでござるよ」
「私が一年生の時から急速に強くなった秘訣が、リンネと一緒に修行したからってバレたアル」
あー、そういうことね。ネギま部加入希望か。
「構いませんよ。ようこそ、ネギま部へ。あとで、名誉顧問のエヴァンジェリン先生に許可を取っておきますね」
「あれ? ずいぶんとあっさりでござるな」
何か条件でも突きつけられるか拒否させるかと予想していたのか、長瀬さんが意外そうな顔をする。
そんな長瀬さんに、私は言葉を返す。
「ああ、条件を厳しくしているのは、一般人相手にだけですね。ネギま部の今後は、魔法に関わる危険な旅路が予想されるので。なので、最初からこれだけ戦える長瀬さんを拒否する理由はありません」
「そうでござったか。ちなみに、ふーかとふみかの姉妹をネギま部に入れるのは……」
「鳴滝姉妹は一般人枠なので、不可ですね。無理に入ろうとした場合は、長瀬さんが門番になって止めてください」
「それはまた、友情崩壊の危機でござるなぁ……」
そんなことを言いつつも、ネギま部に加入できたことが嬉しいのか、口元をニヤニヤとさせている長瀬さん。
まあ、実際に楽しいからね、ネギま部の活動。詳しくは、古さんから聞いてほしい。
「で、二人の傷を治しに来たんですけど、思ったよりも元気そうですね」
私のヒールは魔力も精神力も何も消費しない術なので、試合前でも使って問題はなかったのだが。
すると、長瀬さんが腕をさすって答えた。
「古に仙丹をもらったでござるよ。味は微妙でござったが、たちどころに傷が治って不思議でござったなあ」
「材料は聞かない方がいいアル」
「そうですね。忍者の兵糧丸なんかは、栄養が取れる美味しい食材でできているなんて聞きますが」
私がちょっと興味本位で忍者の秘伝、兵糧丸について話題に出す。
「兵糧丸なんて今時、誰も作らないでござる。栄養とカロリーを取りたかったら、携帯できる栄養食が安く市販されているでござるよ」
「うわあ、カロリーメイトは現代の兵糧丸ですか」
夢がない話だなぁ。
と、そんな話をしている間に、医務室に大きな歓声が聞こえてきた。決着でもついたかな?
「では、そろそろ試合なので、戻りますね」
「拙者も傷は治ったでござるから、観戦しに行くでござる」
「私も決勝の相手を見にいかないとアルね」
いや、まだ準決勝すら始まっていないけどね。
そして、選手待機席へと戻ってきた私が見たものは、高音さんを裸に剥いているネギくんの姿であった。
……まあ、裸の上に魔法で防具をまとっていたら、負けた場合こうなるに決まっているよね。
◆97 二天一流
『一昨年のウルティマホラ王者が再びの登場! 衣装は先ほどの際どすぎるビキニアーマーとは一転、和装で攻めてきた。しかし、胸元を見せつけるようなセクシーアピールは健在です。マニアックなロリ巨乳が、彼女の人気の秘訣かー?』
今回の私は、セイバーのサーヴァント『新免武蔵守藤原玄信』、すなわち宮本武蔵の力を引き出している。
この宮本武蔵のサーヴァント、実は女性で、その力を引き出した私は華やかな和風ドレスとでもいうべき衣装を身にまとっていた。
手に持つ武器は、水着武蔵ちゃんことバーサーカーの宮本武蔵が持っている、スポーツチャンバラ用の剣。宮本武蔵の名に相応しい、打刀と脇差しサイズのエアーソフト剣だ。
対する神楽坂さんは、いつの間に着替えたのか、ゴスロリドレスに身を包んでいる。手に構えるは、長い一本のハリセン。
ハリセンVS.エアーソフト剣とか、もう客は完全にエンターテインメントの興行だと思っているだろう。
だが、中の人はガチだ。
神楽坂さんは、気合い十分にハリセンを構え、開始の合図を今か今かと待っている。
『それでは、二回戦最終試合、ファイト!』
「はあっ!」
瞬時に神楽坂さんが『咸卦法』を用い、オーラを身にまとう。
これで、神楽坂さんは素手で岩を割れる超人となった。一方私も、サーヴァントが持つ人を超えた身体能力を身に宿す。
そして、そこからハリセンとエアーソフト剣での戦いが始まった。
剣を振るい、かわし、剣を突き、いなす。そんなやりとりを高速で続けること三分。休みなしで続いた攻防で、先に音を上げたのは神楽坂さんだった。
中央での戦いからバトルステージ端まで飛び退いて、激しく呼吸をする神楽坂さん。
汗だくになって、フラついている。わずか三分の戦いで、体力の限界にきたという感じだ。
「へこむわー。地力で負けているわね、これ……」
息を整えながら、神楽坂さんがそう言った。
「今の私は、スマホから力を引き出していますよ?」
対する私は、息も乱れていない。少々疲れたが、本当に少々といった程度だ。
「それを含めてのリンネちゃんの地力でしょう? 私の無効化の力みたいにね」
なるほど。よくある物語だとこういった借り物の力って悪く扱われがちだけど、神楽坂さんは私のゲームの力を認めてくれるようだ。
「ふう、休憩終わり! さあ、第二ラウンド行くわよ!」
「はい、お相手しましょう」
そしてそこからさらに五分、超高速の剣戟が続き、私の『気』で強化したエアーソフト剣が何度も当たるようになった。
神楽坂さんは体力が尽きたのか、息も絶え絶え。
やがて、体力だけでなく『咸卦法』も限界を迎えた。彼女のオーラが途絶えたのだ。
私はそこをすかさず狙い、生身で『気』の一撃を受けた神楽坂さんはダウンする。
朝倉さんがカウントを始めるが、神楽坂さんが起き上がる様子は見えない。
「ダメ……もう限界……」
身体へのダメージではなく、体力的な限界のせいで起き上がれないようで、そのまま10カウントが過ぎた。
朝倉さんの勝利のアナウンスを聞きながら、私は神楽坂さんに肩を貸して、二人でバトルステージを退場していった。
「いやー、私、体力だけは自信があったんだけど。リンネちゃん、体力お化け?」
「神楽坂さんは資質の高い天性の肉体とアルバイト生活のおかげで体力があるでしょうが、私は幼い頃からの武術鍛錬で体力を鍛えましたからね。意図的に鍛えた分、体力勝負は私に優位だったのですよ」
「あーあ、やっぱり鍛えた時間の違いかぁ。一ヶ月やそこらじゃ、簡単には追いつけないのね」
「私はただの一般市民の子ですし、追いつくだけならすぐですよ」
「なによ。まるで私が一般市民じゃないみたいに言うじゃない」
「再生されたナギ・スプリングフィールドさんが言うには、神楽坂さんは姫様らしいじゃないですか。きっと何かがあるんですよ」
「あれは、小さい子を可愛がって姫って呼ぶようなもの……とは限らないのかぁ。うーん……」
そんな会話を交わして、私達は選手待機席で別れた。
さあ、次はいよいよ準決勝だ。対戦カードは以下の通り。
・長谷川千雨VS.古菲
・ネギ・スプリングフィールドVS.刻詠リンネ
なんだかネギま部で決める麻帆良少年少女最強決定戦みたいになってしまったが、優勝目指して頑張るとしようか。
※千雨の復活には十秒以上かかるので、場外判定やダウン判定されてカウント取られたらそのまま負けます。