【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■43 まほら武道会決勝戦

◆100 槍気解放

 

 衣装ヨシ、武装ヨシ、さあ、行こう。

 どこで着替えてきたのか、チャイナドレスに身を包んだちう様と並び、バトルステージへと向かう。

 

『さあ、とうとうやってきました決勝戦。相まみえるのは、若き中学生二人。長谷川千雨選手と、刻詠リンネ選手だ!』

 

 歓声が会場をゆるがさんばかりに響きわたり、私は観客席へと軽く手を振って応える。

 

『示し合わせたのでしょうか、チャイナドレスを着こなす千雨選手に、カンフー服で男装するリンネ選手。どうやら、二人とも長物を手にしているようです。千雨選手の武器は、貫禄のある古木の杖とでも言うのでしょうか。古菲選手との戦いで千雨選手は、これを槍として用いました。その槍さばきは達人級!』

 

 魔法発動体でもあるちう様の杖は、ネギくんの木剣と同じく世界樹の枝を削り出した一品だ。

 

『対するリンネ選手。予選から一貫してふざけた武器ばかり披露してきた彼女ですが、今回もふざけている。なんとデッキブラシです。やる気があるのかと問いたくなりますが、リンネ選手はこれまでそのふざけた武器で数々の強豪を下してきました』

 

 いや、別にいいでしょデッキブラシ。『魔法先生ネギま!』でも桜咲さんが大太刀の代わりにまほら武道会で使っていた武器だぞ。

 まあ、私のはアンドーの武器コレクションから拝借した『ブルーブラシ』で、清掃用具ではなく清掃用具を武器として使えるよう加工した物だから、結構ガチの一品なのだが。

 

「なあ、リンネ」

 

「はい、なんでしょう」

 

 向かい合った状態で、ちう様が尋ねてくる。

 

「そのデッキブラシは、剣か? それとも槍か?」

 

「槍ですね」

 

「そうか……」

 

『おおっと、リンネ選手、デッキブラシを槍として使うそうです! これは、中国武術研究会所属の槍の達人である千雨選手に、槍術で戦いを挑む宣言か!?』

 

 ふふふ、その通りだよ。私が引き出している力も、ランサーのサーヴァントのものだしね。

 私が不敵に笑うと、ちう様は目を細め、杖を構えた。

 対する私も、『ブルーブラシ』を構えて腰を落とす。

 

『両者、闘志は十分です! それでは、皆様お待たせしました! いよいよこれが最後の試合です! まほら武道会決勝戦――ファイト!』

 

 合図と共に、ちう様が突っ込んでくる。それに対し、私は冷静に『ブルーブラシ』を振るい、いなし、反撃する。

 ちう様は冷静に反撃をさばき、後方へと飛び退いた。

 そして、息を吐いて、小さく言った。

 

「やっぱり、師匠の力を引き出していやがったか」

 

「ええ、李書文先生の全盛期の頃の力をお借りしています。普段、ちう様達に教えているのが老先生だとしたら、私のこれは若先生ですね」

 

「そうか……それじゃあ、胸を借りるとするかな!」

 

 そこから、槍の応酬が始まった。

 サーヴァントとしてのステータスだけでなく、技術までも引き出している私。若先生の力量は、かの影の女王スカサハと槍で打ち合えるほど。二つ名の『神槍』に相応しく、その技は神域にあった。

 

 その力に、劣勢ながらも対処していくちう様は、この数年でずいぶんと強くなったのだなと感慨深くなる。

 私のように下駄を履くでもなく、武に関してはただ純粋に修練を重ねてきたのだ。

 

 だが、その力量は神域には未だ至らず。次第に私の槍は彼女を追い詰めていき、やがて『ブルーブラシ』が彼女の胸の中心を強く突いた。

 魔法障壁を砕かれ、場外へと吹き飛ぶちう様。湖に着水し、水の中に沈んでいく。

 

 槍に関しては勝負有りだ。だが、彼女はこれで終わらないだろう。

 予想通り、ちう様は湖を凍り付かせながら『闇の魔法(マギア・エレベア)』を発動。その身を悪魔に変えながら、バトルステージにゆっくりと上がってくる。

 

 そして、距離を詰めずに氷の矢を無詠唱で飛ばしてきた。その数は、準決勝でネギくんが使ってきた『魔法の射手(サギタ・マギカ)』の数よりも多い。そりゃあそうか。『闇の魔法』って、そういう技だもんね。

 

 私はその矢を全て『ブルーブラシ』で撃ち落としながら、ちう様に突撃する。

 氷の矢が嵐のように襲ってくるが、多少の被弾は気にせず、私はちう様に迫った。

 

 とっさにちう様が杖で払ってくるが、逆に私は『ブルーブラシ』でそれを払う。そして、ちう様の身体が開いたところで、私は今撃てる最高の一撃を放つ。

 

 神槍と謳われた彼の槍に一切の矛盾なし!

 宝具解放――『神槍无二打(しんそうにのうちいらず)』!

 

『ブルーブラシ』の先端が、悪魔化したちう様の胸元に吸い込まれる。そして、ちう様は……爆発した。

 とっさに私は『風楯(デフレクシオ)』の魔法で防壁を張るが、その衝撃は魔法を伝わって私の身体を震わせた。

 そして、しばしの間、身動きができなくなる。

 その間に、ちう様はバトルステージの遠い場所に身体を再構築し始めた。

 

 さあ、ここからが厄介だぞ。ちう様は『千年戦争アイギス』のデモンルーンのメスガキどもに学んだ術で、復活するたび強くなっていく。今のちう様なら、五回で最大強化になるはずだ。

 私は意を決し、復活して氷の矢を多数浮かべるちう様に飛びこんでいった。

 

 そして……。

 

『なんと激しいバトル! わたくし、とてもじゃないですが舞台の上には戻れません! 試合の残り時間、五分を切りました! さあ、どうなる!?』

 

 しばし戦いを続けていたら、朝倉さんが残り時間を教えてくれた。

 まほら武道会の試合時間は十五分までだ。そこまで戦って決着が付かなかった場合、メール投票になるが、そうなると勝敗の行方は全く分からなくなる。

 観客は派手な戦いに沸いているが、戦っている側からすると、正直なところ泥仕合と化していた。

 

「くそ、何発も当てているのに、効いてねえのかよ! てめー、なんかしているな!」

 

 四回目の復活となるちう様が、悪態をつく。

 

「さて、どうでしょうか?」

 

 私は不敵に笑ってちう様を(あお)る。すると、ちう様は小悪魔顔でガルルと吠えた。おお、怖い怖い。

 

『クウネルさん、倒されてもなぜか復活する千雨選手はさておき、リンネ選手があれだけの戦いなのにピンピンしているようですが……』

 

 茶々丸さんが、そんな話題を振った。おっと、ネタばらしされるか。

 

『はい。あれは、治療の術を自身に使っていますね。どの系統の術かはこちらからはうかがえませんが……』

 

 アルビレオ・イマのその言葉を聞いて、ちう様は唖然とした顔になる。

 

「て、てめえ……試合中にそれはなしだろ!」

 

「知りません。やられても復活するよりずっとありですよ」

 

 さて、私が何をやっているかというと、セットした『PSO2es』のチップ効果でHPを回復しているのだ。

 まず一つ、『ギャラクシー・ヒロインズ[SSアニバーサリー]』。様々な効果のあるチップだが、それの一つに『与えたダメージの一部を自身のHPとして回復する』というものがある。

 もう一つ、『アークス管理官 セラフィ』。『定期的にHPをわずかに回復する』効果。これにより五秒毎に身体が癒えていく。

 

 なので、私は攻撃を受けても即座に傷が治り、試合開始前の万全な状態に戻るのだ。

 やられても復活するちう様と、やられても傷が治る私の戦い。まさしく、泥仕合である。

 

 だが、ただの泥仕合を続けて、私が優位に見えなくなるのが困ることは確か。なので、私は次の一手を打つことにした。

 

「ちう様、書文先生との戦いは満足しましたか?」

 

「ん? あー、そうだな。まだ敵わないことがよく分かった」

 

「では、満足したようなので、選手交代を」

 

「……させねえ!」

 

 ちう様が私に再び氷の矢を放ってくるが、私はそれを瞬動で回避。ちう様から十分距離を取ったところで、私は意識の中でスマホを操作する。

 引き出している力の枠から、ランサーの『李書文』を外す。そして、代わりに『千年戦争アイギス』のキャラクター、『天穿の槍士フィロ』の力をセットした。

 衣装がまたたく間に切り替わり、胸元が大きく開いたドレスアーマーになる。

 

 そして、私は観客達に姿をアピールするため、『ブルーブラシ』を構えてポーズを取った。荒ぶるガチャのポーズ!

 

『おおっとー? リンネ選手、突然服装が変わったぞー! どういう原理だー?』

 

「CGです」

 

『CGだそうです! さすがに無理があるぞ!』

 

 まあ、いいじゃん。早着替え程度、パクティオーカードにだってできるし。

 

 さて、力を切り替えたところで、私は氷の矢を再度放つちう様に飛びこんでいく。

 被弾は無視して、『ブルーブラシ』を叩きつける。

 

「ぐがっ、な、なんだ!?」

 

 それまでとは比べものにならないほど、私の攻撃を痛がるちう様。

 ふふふ、この世界の金星の悪魔が具体的にどういう存在か、よく知らないけどね……ちう様がデモンルーンのメスガキからその在り方を学んだ以上、弱点も同じだ。

 

「メスガキ一号二号達の力を参考にしたのが、徒になりましたね」

 

「ぐっ、これは、悪魔払いの技か!」

 

 そう、『天穿の槍士フィロ』は、デーモン特攻の力を持つ槍使いなのだ。

 

「はい、ただの悪魔ならともかく、うちの子のデーモン達の力を使うなら、この通り」

 

 私はそう言いながら『ブルーブラシ』を突きこもうとする。

 

「やらせるかよ!」

 

 ちう様は、バックステップの瞬動という器用すぎる技で、私から距離を取った。そして、その距離から氷の魔法を連発し始める。

 だが、残念。その距離は、私の間合いでもある。

 

「この技は初めて見せますね。行きますよ」

 

 遠くから槍を構える私を見て、ちう様があせって防御の魔法を張ろうとする。だが、もう遅い。

 秘奥義――『天昇槍連雨』!

 

 私はその場で跳び上がり……『ブルーブラシ』を天に掲げた。すると、私の手から『ブルーブラシ』が姿を消し、すぐさま空の上から『ブルーブラシ』が四つに分裂して落下してくる。

 まさか空から降ってくるとは思っていなかったのだろう。ちう様は驚きの表情のまま、『ブルーブラシ』に潰され、その場で爆発した。

 

 私が着地すると、ちう様の脳天に直撃した得物が手元に戻ってくる。

 そして、バトルフィールドの中央にルーン文字が集まっていき、ちう様が最後の復活を開始していた。

 

 私はその間に息を整え、ちう様から適正な距離を取る。

 

「くそっ、だが、これで最大強化だ!」

 

 デモンルーンは復活のたびに強くなる。最後となる五回目の今は、素の倍以上の力を身に宿しているだろう。

 

 最早、なんで学園結界に抑え込まれていないのか不思議でならないが、肉体のベースは下級悪魔(レッサーデーモン)だから、それに力を足しても高位の妖魔扱いは受けないとかだろうか。小太郎くんもめちゃくちゃ強いけど、半妖だから学園結界の対象外みたいだし。

 

 だが、その上昇した腕力を背景にした、近接での槍術合戦に付き合うつもりはない。

 

「ちう様ー、次行きますよー」

 

「は?」

 

 ちう様が復活にかかった時間は約十五秒。一方、私の秘奥義は、十八秒に一回撃てる。

 さあ、いくぞ小悪魔ちゃん――命の貯蔵は十分か?

 

 では、試合終了まで食らっていただきましょう。秘奥義『天昇槍連雨』!

 

 

 

◆101 超鈴音の胎動

 

 ふへー、キツい戦いだった。何度も氷の魔法を受けていたせいで、身体の芯が冷え切った感覚がある。いくらHPが回復するといっても、痛いものは痛いし、冷たいものは冷たいのだ。

 そして、お互いダウンしないという不毛な試合は終わり、メール投票の結果、私が優勝に選ばれた。終盤に秘奥義で優位に見えたのが大きかったらしい。

 

 さて、授賞式だ。

 超さんのスピーチを一通り聞いた後、表彰台に上り超さんから『\10,000,000』と書かれたテレビでよく見るパネルを渡される。

 それを受け取ろうとした瞬間、私の脳裏に光が走った。直感が閃いたのだ。私はその直感に従い『黄金律』のスキルをスマホから引き出した。

 

 そして、パネルを受け取ると……おお、『黄金律』のスキルが、かすかに私へ身についた感覚があるぞ! お金を稼いだことで、『黄金律』に対して習熟したのかー。

 

 この『黄金律』とは、人生において金銭がどれだけついて回るかの宿命を指す。

 だが、私がゲームの力を引き出し『黄金律』を訓練して身につけようとしても、そうそう簡単にはいかない。『Fate/Grand Order』における『黄金律』のスキルは『自身のNP獲得量アップ』というゲーム効果であり、これをいくら使ったところで金運が宿るわけではないのだ。

 

 どうやら、ゲーム効果ではない本来の『黄金律』を私が身につけるには、『黄金律』をセットした状態でお金を稼ぐ経験を積む必要があるみたいだね。

 

 さて、パネルは受け取ったが、このパネルが現金に代わったり、小切手になったりするわけではない。

 あとで銀行を指定して振り込んでもらえるのかな、と思っていたら、ステージの中に侵入する者達が。

 

「麻帆良スポーツです! 刻詠選手、優勝の御感想は!?」

 

「一千万円の使い道は!?」

 

「CGと言っていましたが、全部演出だったんですか!?」

 

 おおう、インタビュー攻勢か。ちょっとこれは面倒臭いぞ。

 一人二人が相手なら、適当に答えて流してしまえばいいが、ちょっとシャレにならない数だ。

 

「よし、朝倉さん、後は任せました」

 

「は? 刻詠、ちょっと」

 

「それじゃあ、三人とも、逃げますよー」

 

 そうして、私はちう様、ネギくん、古さんの三人を連れて、ステージを颯爽(さっそう)と去っていった。

 私達は脚力だけでマスコミを撒き、会場の方角に逆戻りして、ネギま部メンバー達と合流した。新メンバーの長瀬さんもいる。

 だが、そのメンバーの中には、武道会で解説者をしていた茶々丸さんの姿は無い。

 本格的に超さんサイドについてしまったか、と思っていると、その茶々丸さんからスマホにメールが届いた。

 

 なになに……賞金の受け渡しは、銀行振り込みになるので、通帳番号を伝えに今夜、『超包子』の茶々丸さんのもとを訪ねてほしいと。うん、了解。

 

 さて、私がメールを見ている間に、なにやらネギま部の一部メンバー、水無瀬さんと桜咲さんから、報告があった。

 なんでも、超さんが地下で怪しいロボットを大量に保管していると。

 何を目論んでいるのかは具体的にハッキリしないが、魔法の存在を世間に公表しようとしていることは、超さん本人の口から聞けた事実らしい。

 

 ふむ、そこまで判明したか。じゃあ、私も情報追加だ。

 私はスマホをタブレットサイズに変化させ、ブラウザを起動。試合の待機時間で秘かに調べていた、『まほら武道会』の流出動画を皆に見せた。

 

「一切の記録機器を使えなくさせると言っていた超さんですが、自分が用意したカメラはばっちり動かしていたようですね。アングルからしても、大会公式で撮った映像でしょう」

 

 私が皆に見えるようにタブレットを持ちながらそう言うと、水無瀬さんが声をもらす。

 

「うわ、これはまずいわよ」

 

「そうやなぁ。これは言い訳できないんとちゃう?」

 

 近衛さんも同調して困った顔をする。

 

「いえいえ。こんなのよくできたプロモーションムービーですよ。私もこんな画像をネットに流してみました」

 

 私は、オーラをまとって戦う大相撲力士のGIFアニメをブラウザで表示して見せた。以前も述べた、前世で一時期流行っていたネタ画像をパクってちう様に作ってもらった。

 

「あはは、確かに、続けて見せられると、こういうジョーク映像と同等に見えるわね」

 

 神楽坂さんが、オーラで加速する力士に吹き出しながら言った。

 そして、私はブラウザでの画像表示を止め、次のページを皆に見せた。それは、超さんがメインで工作している匿名掲示板だ。

 

「このように、掲示板では信じる人と信じない人で半々……多分、超さんの工作と魔法先生達の工作でバチバチやっている最中ですね」

 

「ネット工作!? うわー、すごいことやってるわね」

 

 匿名掲示板に馴染みがあるのだろうか、早乙女さんがそんな反応を示した。

 さらに、私は検索エンジンで出てくる、魔法使いについての様々な情報や魔法世界についての情報などの、超さんがネットにばらまいたネタをブラウザに表示させていく。

 そこまで見せて、私はブラウザを閉じ、タブレットを手元から消す。そして、ネギま部の面々に言った。

 

「なお、ネット上で魔法の存在を信じる人が出たからといって、それイコールが、超さんの言う通りに魔法の存在が世間に公表されたというわけではありません。皆さんだって、ネットに普段からディープに触れている人は一握りでしょう?」

 

 私の言葉に、皆はうんうんとうなずく。スマホのない時代なんて、そんなものだ。

 

「ですから、超さんが使う手段は、このネット工作に留まらないと予想されます。おそらくは、地下に隠してあるというロボット兵器を使ってくるはずです」

 

「ロボットと魔法の公開に、なんの関係があるわけ?」

 

 早乙女さんのその疑問は、皆も持っていたようで、視線がこちらに集まる。

 どう話を持っていこうか、と考えて私が言いよどんだところで、横からキティちゃんが口を挟んだ。

 

「ここからは私が説明しよう。魔法に関しての話になるからな」

 

 皆の注目が私から、キティちゃんへと一斉に流れる。

 

「知っての通り、明日、世界樹は大発光を起こす。その魔力が、愛の告白等、人の精神に関わる願いを叶えようとすることは、以前説明があったな?」

 

 キティちゃんの問いに、皆がうなずく。バカレンジャーの面々も、話についてこられているようだ。長瀬さんだけは初耳だからか少しポカーンとしているが。

 

「明日、世界樹の周辺にある六カ所の魔力溜まりに魔力が満ちるわけだが、ここをロボット兵で占拠して六芒星の巨大魔法陣を作ると……全世界に対する『強制認識魔法』が完成する。それを使えば、全人類に魔法の存在を信じ込ませることが可能だ」

 

「そ、そんな大それたことを超さんが……?」

 

 ネギくんが、顔を青くしながらキティちゃんに問いかける。

 それをキティちゃんは鼻で笑って言葉を返す。

 

「すでに日本中に魔法の映像を公開しているんだ。規模が日本から全世界に変わったところで、驚くことか?」

 

 キティちゃんの台詞に、ぐっと黙り込むネギくん。

 そして、キティちゃんは綾瀬さんの方を向いて言った。

 

「『世界図絵』を出して、次の項目を調べろ」

 

 綾瀬さんはキティちゃんの言葉に従い、強制認識魔法の情報を皆の前で検索していく。

 それらの情報は確かに存在していて、キティちゃんの説に信憑性を与えた。

 

「さて、これらの情報を見て、お前達はいったいどうする?」

 

「そりゃあ……止めるしかないんじゃない?」

 

 神楽坂さんが言うが、キティちゃんはさらに問い返す。

 

「なぜだ? 魔法が世界に公開されて、お前達は何が困るのだ?」

 

「うっ、それは……」

 

 答えが思いつかないのか、押し黙る神楽坂さん。

 それをキティちゃんは鼻で笑い、逆に答えた。

 

「私は困るぞ? なにせ、世間に魔法をバラした責任を問われて、私の弟子がオコジョ刑を受けるのだからな」

 

 皆の顔が「は?」という感じに変わった。変わらないのは、私とちう様、のどかさんの三人だけだ。

 

「麻帆良で起きる魔法バレだ。魔法先生の全員が魔法本国より処分を受けるだろう。特に、ぼーやは直接の担任なので、魔法本国に強制送還を受けた上でオコジョにされるだろう。教師の職は、当然失う」

 

「それはいけませんわ! 超さんを止めませんと!」

 

 あやかさんが、一大事とでもいう風に、ハッスルし出した。

 そして、他のネギま部メンバーも事態が把握できたのか、これは大変といった顔になる。

 

「超の計画が成功すれば、私達とぼーやの縁が切れる。ゆえに、『異文化研究倶楽部』は超の計画阻止に動け。いいな?」

 

 特別顧問の宣言に、皆がうなずく。

 だが、ネギくんは少し見解が違った。

 

「超さんは本当に、そんなことをしようとしているんでしょうか……」

 

 ふむ。まあ、証拠はないからね。

 確かにそうかも、と何人かがネギくんに同調してみせる。

 

「だから僕、超さんに真意を問いただしてみようと思います」

 

「それでぼーやが納得するなら、すればいいさ」

 

 キティちゃんにそう言われ、ネギくんは早速とばかりにケータイを取りだし、超さんに電話をかけだした。

 だが、しかし……。

 

「電波の届かない場所にいるか、電源が入っていないかもって……」

 

「ああ、今の超は、魔法先生達に追われているだろうからな。ケータイを使う余裕はないだろうさ」

 

「じゃあ、メールで今夜にでも面会しましょうって連絡してみます」

 

「そうしろ。だが、もし今日中に会えなくても、明日になったら何があろうとも阻止に動くべきだ」

 

 ネギくんとキティちゃんはそう言葉を交わし、とりあえず話はまとまった。

 そして、キティちゃんが解散と言って、この場を後にする。先ほどから、遠巻きにチラリチラリと、キティちゃんを眺める女性の姿が見えていて、キティちゃんはそちらに向かうようだ。おそらくは、彼女がカリンなのだろう。

 

 他の面々は各々の予定通りの行動を取るということになり、部活の展示やクラスのお化け屋敷の手伝いなどに散っていく。

 ネギくんは、あやかさんと綾瀬さんに話があると言って、他の暇そうなメンバーと一緒にこの場に残るようだ。

 

 そして、一人そわそわし出した神楽坂さん。何事かと聞いてみると……。

 

「高畑先生と一緒に麻帆良祭をまわる約束、今日これからに変わって……どうしよう、リンネちゃん!」

 

 おー、デートは最終日って別荘では言っていたはずなのに、今日になったかぁ。

 とりあえず、私から言えることは……。

 

「こんなところでのんびりしていないで、服を急いで整えるべきでは?」

 

「はっ、そうね。リンネちゃん、服選び手伝ってもらっていい?」

 

 よし、モテカワコーデにしてあげよう。

 私は神楽坂さんを連れて、急いで女子寮へと戻っていった。

 


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