【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■44 宇宙人な未来人と異世界人な超能力者

◆102 乙女の季節

 

 神楽坂さんの所持している服を二人であれこれ話し合い、精一杯の可愛い乙女を作り出した。

 

 髪型を少しだけ変え、全体的に清楚なコーデで神楽坂さんが持つ魅力であるアグレッシブさをあえて抑え込んだ。ギャップ萌えを狙ってのことだね。普段の明るい印象のコーデだと、麻帆良祭の騒がしさに埋没してしまうとの判断である。

 コーデの最中に私が脳裏に思い浮かべていたのは『刻詠の風水士リンネ』の清楚さだが、だいぶそれとは印象が変わってしまったなぁ。まあ、可愛いからヨシ。

 

 そして、待ち合わせ場所の近くまで向かった私達。明らかに動揺する神楽坂さんの背中を私はそっと物理的に押した。

 

「困ったことがあったら、いつでも電話してきてくださいね」

 

「う、うん。頑張ってくる……」

 

 そう言って私は神楽坂さんと別れ、次の予定のために動く。

 デートを出歯亀したい気持ちがあふれるが、さすがにしない。後は若い人に任せておきましょう。

 

 さて、次の行動に移る前に、少し変装しておこう。『まほら武道会』優勝者へのインタビューを狙うマスコミが、そこらをうろついているかもしれないからね。

 私はスマホから衣装を取りだし、『PSO2es』のコスチューム変更能力を使って一瞬でそれに着替える。

 そして、その衣装で街中を練り歩き、次の予定の待ち合わせ場所へと向かった。

 うむ、誰も私だと思っていないようだな。

 

 やがて、辿り着いた待ち合わせ場所では、アルトリア陛下とココロちゃんが楽しく談笑しているのが見えた。

 

「お待たせしました」

 

「お、おおー? もしかして、オーナー?」

 

「はい、刻詠リンネですよ」

 

「あはは、何その格好。ウケるー」

 

 ココロちゃんに笑われる私。

 私の今の衣装は、アンドーから借りた『ラッピースーツ』だ。簡単に言うと、黄色い鳥の着ぐるみ。

 

「カラーバリエーションが豊富ですので、ココロちゃんと陛下もいかがですか?」

 

「いやー、遠慮しておくかな」

 

「私も顔を隠す必要性を感じませんので、遠慮しておきます」

 

 残念だ。仲間ができると思ったのに。

 そして、そこから私達は三人で麻帆良祭を練り歩き始める。

 

「そうそう、報告。午後一時ごろ、誰かが六時間先の未来に飛んでいたよ。動作は正常。飛んだのはネギではないから、多分超鈴音じゃないかなぁ」

 

 ココロちゃんの報告を聞き、ネギくんの電話が繋がらなかったのはこれか、と納得する。

 念のため、あとで超さんを見かけたら『カレイドスコープ』で並行世界がおかしくなっていないか確認しておくとしよう。

 

「それと、ネギが午後二時に二度、未来から戻ってきてるね。同行者はいないよ」

 

「おや。和泉亜子さんの同行はなしですか?」

 

「うん、単独移動」

 

 なるほどなるほど。これは、和泉さんの背中の傷痕を目撃してしまう事件が起きなかった可能性があるな。

 和泉さんの傷痕なぁ……。オラクル船団のエステ技術なら、完全に消すことも可能なんだけど、和泉さんは一般人だからね。魔法が世間に公開された後なら、治してあげられるんだけど。

 

「それでは、ネギくんを見つけて、それを基点に並行世界を観測しにいくとしましょう」

 

「はいはーい、こっちだよー」

 

 そう言って、ココロちゃんが私達をネギくんの居る場所に案内し始めた。ネギくんのカシオペアには、私が時の魔術でマーキングをしてあるから、いつでも位置の追跡が可能だ。

 街中のアトラクションをキャッキャウフフと三人で楽しみながら、私達は目的地へと向かう。

 そしてやってきたのは、ベストカップルコンテストの会場だ。

 

 はて、ここは原作漫画ならば和泉さんとネギくんが一緒に出場する場所のはずだ。しかし、ネギくんは和泉さんと時間逆行はしていないはず。では、ネギくんはいったい何用でこんな場所に?

 そう思ってコンテストを見て行ったら、幻術で十五歳くらいの姿になったネギくんと、あやかさんがカップルとして出場していた。

 うわあ、綾瀬さんと一緒に何やら話し合いをしていたはずが、いつの間にこんなことに。

 

 綾瀬さんの姿は……見えないな。この時間は図書館探検部の催し物があるはずなので、そちらに向かったか。

 

 そして、ベストカップルコンテストで、あやかさんといい雰囲気を見せるネギくん。

 

「大人になった子供先生ねぇ。オーナー的にはどうなの? 結構格好いいでしょ。王子には敵わないけどね!」

 

 ココロちゃんの言葉に、私は考え込む。

 

「ふうむ、大人のネギくんですか……かなりありですね」

 

「えー、そうなんだ! なになに? 子供先生にラブなの?」

 

「いやあ、私の好きな男性のタイプって『優しいイケメンエリート』なので、ネギくんが大人になったら私の好みにバッチリ合うなーって気づいちゃいましたね。あの幻術で成長した少年から抜け出せないくらいの年齢は、まだまだ好みではないですけど」

 

「へー。ふうーん」

 

「ココロちゃん、なにか?」

 

「いやー、ねえ? アルトリアちゃん、後でみんなに言いふらしてあげようね!」

 

 私の問いに答えないココロちゃんは、私越しにアルトリア陛下にそう話を振った。

 

「ふふっ、そうですね」

 

 陛下も、何を言いふらすつもりだ。別に、今のネギくんは好みではないんだぞ。

 もうっ、二人とも『ラッピースーツ』でもふもふしてやる。そーれ、もふもふ。

 

「キャー、ふかふかー!」

 

「これはよい毛並ですね」

 

 ふふふ、いいだろう。ゲームテキストに『毛並に異常なまでの拘りが見える』とまで書かれた逸品じゃぜ。

 そして、コンテストはネギくん達の準優勝で終わった。優勝は小学生のカップルで、観客達の温かい拍手が二人に送られた。

 

「さて、『カレイドスコープ』でも、おかしな点は見つかりませんでした。しばらくは遊んでいて大丈夫ですよ」

 

「やった! 見にいきたいアトラクションがあったんだ!」

 

「お土産を買って帰れないのが残念ですね」

 

 ココロちゃんとアルトリア陛下のそんな言葉を聞きながら、私達はコンテストの会場を後にする。

 と、そこで私の身体の奥底がブルブルと震える感覚になった。スマホへ着信だ。

 私はスマホを呼び出すと、『ラッピースーツ』の右の翼の先でにぎってスーツの側面に当てた。

 

「もしもし」

 

『リンネさんです? 綾瀬です』

 

「はいはい。なんでしょうか」

 

『実は、相談というかお願いがあるです』

 

「はい、相談でもお願いでもなんでも受け付けておりますよ」

 

 徳が積めるので、向こうから頼み事があるなら大歓迎だ。

 

『リンネさん。私にも改造手術を施してください』

 

「……それはまた、何があってそうなったんですか?」

 

 私は予想もしていなかった綾瀬さんの言葉に、何事かと問うた。

 

『以前、リンネさんは言ってたですよね。『いどのえにっき』が危険なアーティファクトなので、のどかはフォトンという粒子を扱えるよう改造手術を受けたと。そこを詳しくのどかに聞きました。なんでも、人類の技術発展のために、宇宙へフォトンをばらまく(いしずえ)となったとか』

 

 ああ、聞いちゃったか。そのあたりは仲間に公開して良い情報だと、のどかさんには言ってあった。

 本当は全てを話してしまいたいとのどかさんは言っていたが、さすがに予言の書のことは話すわけにはいかないし、人工アカシックレコードもトップシークレット。なので、公開できるのはフォトンという新粒子が存在することと、それの散布者がのどかさんということまでだ。

 

『のどかとは、これからも二人一緒と約束しました。だから、私ものどかと同じく、フォトンを扱える体質に変えて欲しいです』

 

「なるほど。その二人の間には、ネギくんがいるというわけですね」

 

『なぜそれを! あ、いや、違うです!』

 

「いやー、妻妾同衾(さいしょうどうきん)ですか。男の共有、大変結構」

 

『ぐっ……』

 

 私の鎌かけに見事引っかかった綾瀬さんをからかう。

 綾瀬さんも、いつの間にかネギくんのことを好きになっていたんだねぇ。

 

「とりあえず、フォトンの件は了解しました。のどかさんのようにフォトンを生み出す体質にはしてあげられませんが、改造手術はお約束します。麻帆良祭後に話し合いましょう」

 

『ありがとうです』

 

 そうして私は綾瀬さんとの通話をやめ、『LINE』でルーサーに追加の改造手術の要請を出した。

 すると、『もう二、三人、地球人を改造してデータを蓄積したかったところだよ。ちょうどいい』と返ってきた。ルーサー、綺麗になっても、マジルーサー。

 

 さて、それじゃあ麻帆良祭巡りを再開するか、と思っていたところで、またもや着信。

 相手は、神楽坂さんだ。

 電話に出ると、神楽坂さんの声が響いてくる。

 

『どうしよう、リンネちゃん! 全部思い出しちゃった!』

 

「あー、はい。順を追って説明してください」

 

『それどころじゃないの!』

 

「それどころですので、落ち着いてください」

 

 それから私はなんとか神楽坂さんをなだめすかせ、詳しい話を聞いた。

 高畑先生とは、最初楽しくデートをしていたらしい。清楚な乙女コーデは高畑先生も褒めてくれたらしくて、舞い上がってしばらくどんな会話をしたかも覚えていないようだ。

 

 それで、ある程度街中を巡った後、大事な話があるといってひとけのない場所に誘導された。

 

 これはもしや愛の告白、と思ったが、高畑先生は神楽坂さんの過去について話し出した。

魔法世界(ムンドゥス・マギクス)』、『黄昏の姫御子』、『紅き翼(アラルブラ)』、『ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ』。そんなワードが飛びだしてきて、神楽坂さんの中で何かが弾けた、と。

 そして、神楽坂さんは、ネギくんの父が所属するチーム『紅き翼(アラルブラ)』のメンバーによって封印された記憶を全部思い出してしまった。

 

 その過去を思い出したショックで、神楽坂さんはとっさに高畑先生のもとから逃げ出してしまったらしい。

 

『そう、デートから逃げちゃったのよ。せっかく良い雰囲気だったのにー。どうしよう、リンネちゃん!』

 

「えーと、過去を思い出してどうしようって相談ではなかったのですか?」

 

『あれ? そうだっけ? いや、それよりもデートよ、デート。せっかく私から告白できそうだなって思ったのに……これ、今から戻って大丈夫かな?』

 

「ふむ……」

 

 告白、告白かぁ。フラれるだろうなぁ。

 過去を思い出してショックを受けているのに、そこにフラれるショックを重ねるとか、神楽坂さんのメンタルヤバくならない?

 

「神楽坂さん。告白は待った方がいいですよ」

 

『えっ、どうして。今回がやっと巡ってきたチャンスなのに』

 

「神楽坂さんにアドバイスです。目指せ、中等部卒業!」

 

『うん? どういうこと』

 

「神楽坂さん。一般論で考えてください。教え子に手を出す教師、どう思いますか? 社会的に抹殺される道しかないですよね?」

 

『うっ、それは……』

 

「そう、もし高畑先生が神楽坂さんを受け入れるつもりがあっても、高畑先生が中学校教諭で、神楽坂さんが中学生であるうちはどうしようもありません。相手の事情を何も考慮しない告白など、一方的な好意の押しつけでしかありませんよ。つまり、告白するなら卒業式! OK?」

 

『お、おーけー』

 

「はい、よくできました。高畑先生には、謝罪と、また会ってもらえるかを電話かメールで連絡しましょう」

 

『電話……は、ちょっと勇気が持てないから、メールにする……』

 

「文面に悩んだら、また私に連絡してください」

 

『そこは、自分の言葉でどうにかするわ。リンネちゃん、ありがとね』

 

「いえいえ。楽しいデートが再開できるといいですね」

 

 そうして私は神楽坂さんとの通話を終えた。

 

「青春だねー」

 

「そうですね。オーナーも見習っては?」

 

 横で話を聞いていたココロちゃんとアルトリア陛下が、そんなことを言ってくる。

 いいんだよ、私は。永遠を生きるんだから、良い相手はそのうち勝手に生えてくるでしょ。

 

 

 

◆103 超包子

 

 その後、神楽坂さんは高畑先生とのデートを再開できなかったらしい。

 拒絶されたとかではなく、高畑先生に臨時の職員会議が入ったからとのこと。おそらく、魔法先生で集まって超さんへの対策会議を行なうのだろう。

 

 そして、私はココロちゃんとアルトリア陛下の三人でのんきに麻帆良祭を見て回った後、ナイトパレードを見にいくという二人と別れた。

 夜が近づいてきたため、私は一人、料理屋台『超包子』の本店へと向かった。

 

 約束していたとおり茶々丸さんが待っていて、『ラッピースーツ』姿のまま彼女に屋台の裏へと案内してもらった。

 用紙に銀行口座を書き、茶々丸さんに渡す。振り込みは麻帆良祭明けの月曜日にされるだろうと言われて、私はそれを了承した。

 

 さて、まほら武道会に関してはこれで終わりだ。後は、茶々丸さんに一つ言っておかなければならないことがある。

 

「茶々丸さん。エヴァンジェリン先生は、超さんのことを止めると決めたようですよ」

 

「……そうですか」

 

「茶々丸さんは、ドール契約をしているマスターと、生みの親の科学者達。どちらに付きますか?」

 

「私は……私は……」

 

「繊細なAIをいじめるのは、やめてあげてほしいネ」

 

 と、ここで横から第三者の声がかかった。超さんだ。

 まほら武道会の閉会式で着ていた衣装のままで、おそらく数時間前からタイムスリップしてきてそんなに経っていないのだろう。

 

「でも、白黒つけなきゃいけないことでしょう?」

 

「そこは、私から諭しておくヨ」

 

「そうですか。茶々丸さんのことをよろしくお願いします」

 

「敵に回るというのに、余裕ネ」

 

「超さんならば、不当な扱いをしないでしょうから」

 

 私がそう言うと、超さんは目を伏せ、ぽつりと言った。

 

「刻詠サン。前々から思ていたこと、聞いていいカ?」

 

「なんでしょうか」

 

「刻詠リンネ、あなた何者ネ? 刻詠サンが持っている携帯端末は、明らかに現代の代物じゃないヨ。それに、茶々丸から聞いているヨ。過去に生きた英雄の霊を呼び出して、使役しているト」

 

 ふむ、やはりそこを聞いてきたか。超さんにとって、私は怪しすぎる人物だからね。

 私は『魔法先生ネギま!』の世界にピンポイントで生まれた。つまり、超さんが生まれた本来の歴史の中には、私は存在していない可能性が高い。とびきりのイレギュラーだ。

 だが、歴史のイレギュラーは私だけではない。

 

「それを言うなら、超さん、あなたは何者ですか? あなたが持つ科学技術は、明らかに現代の水準を超えています。なんですか、タイムマシンって」

 

「ふふ、そうね。確かに相手が何者か尋ねるなら、自分のことから言うべきだたネ」

 

 超さんは私の目をじっと見つめて、そして言った。

 

「私の正体は……そう、未来の世界からやってきた火星人ネ!」

 

 手をウネウネとタコ型火星人っぽく動かして、ギャグっぽく宣言する超さん。

 ふむふむ、なるほど? 正直に言ってきたか。そんな超さんに私は言う。

 

「未来の火星人と言うことは、火星の魔法世界が崩壊して、大変なことになっているであろう時代からやってきたのですかね」

 

「……!」

 

「ちなみに私は異世界人です。私が呼び出している英雄達も異世界に住む人達なんですよ。ああ、魔法世界とか魔界とかの異界のことではなく、平行宇宙とか別宇宙とかそっちの意味での異世界ですよ」

 

 私も正直に自分の情報を開示する。でも、この程度は超さんも予想していたんじゃないかな? 彼女は頭脳明晰な天才少女なので、私のこともいろいろと予想して正解を導きだしているだろう。

 

「……刻詠リンネ、あなた何者ネ」

 

 と、思ったら問い返された。

 

「えっ、正直に言ったのですけれど」

 

「未来人の私が言うのもなんだガ、異世界とかそんなの信じられないヨ」

 

「そうですか。信じてくださいとしか言えないですねー。そうそう、超さんには確認を取っておかなければならないことが、一つあります」

 

「なんネ?」

 

「超さんが未来の火星人となると、世界に魔法の存在をバラそうとしているのは、未来の火星をどうにかするためと見ていいですね?」

 

「……そうネ。確かにその通りヨ」

 

「そのこころざし、大変尊いものです。……と言いたいのですが、超さん。魔法を世間にバラすのは、今このタイミングでなくてはいけませんか?」

 

「そうヨ。今年の麻帆良祭でなければならない」

 

「世界樹大発光というわけですか。ですが、それをなんとか、ずらせませんか? 私達エヴァンジェリン一門には、裏火星、魔法世界を救済する独自の案があります」

 

 私がそう伝えると、超さんは黙って私の話の続きをうながした。

 

「余計な人が周りにいない状態で、茶々丸さんの右肩に手を触れ、『ねこねこ文書を見せてほしい』と言ってみてください。そこに、私達の火星救済案が載っています」

 

 超さんが茶々丸さんへ目を向けるが、茶々丸さんは「そのような文書は知りませんが」と答える。

 知らないだろうね。ちう様がこっそり仕組んだファイルだから。

 いぶかしげな表情になる超さんに、私は続けて言葉を投げかける。

 

「私達は協力し合えると思うんです。あなたが私達の手を取るか……今夜、エヴァンジェリン邸にて答えをお待ちしています」

 

 そう言って、私は超さんの前を去ろうとする。

 とりあえず、交渉の第一段階はクリアー。後は、私とちう様、キティちゃんの三人で作った裏火星救済案『ねこねこ文書』を超さんがどこまで信じてくれるかだ。

 

「ちょと待つネ」

 

 と、超さんが私を呼び止めてくる。

 

「これ、ネギ坊主に提出しておいてくれないカ?」

 

 そう言って超さんが私に渡してきたものは……退学届だ。

 それを私は『ラッピースーツ』の右の翼で受け取る。

 

「こういうのは、ネギくんに直接渡していただきたいものですが」

 

「ネギ坊主とは、もう会うことはないヨ。明日には麻帆良を去るからネ」

 

 会うことはない、か……。最終日でネギくんと対決することなく、ネギくんを未来に飛ばしてしまおうと考えているのだろうな。

 

「そうでもないですよ。ケータイのメール、確認しました?」

 

「む?」

 

 超さんは懐からケータイを取り出すと、ネギくんからのメールを確認したのか、渋い顔をした。

 まあ、存分にネギくんとバトってほしい。そしてネギくんに、カシオペアを利用した瞬間移動を見せるがよいぞよ。

 

「この退学届は、私からネギくんに渡しておきますね。それでは」

 

 そう言って、今度こそ去ろうとする私。

 

「ちょと待つネ」

 

 そして、再び超さんが私を呼び止めた。

 

「なんでしょうか?」

 

 今度はなんだろうか?

 

「その、ネ……その格好は、なんとかならなかったノカ?」

 

 超さんの指摘を受けて、私は己の姿を再確認する。

 

「可愛いでしょう、『ラッピースーツ』」

 

「その可愛い姿を見ながら、真面目な話をしていた私の気持ちを少し考えてほしかたネ」

 

 仕方ないよ。大会優勝者のマスコミ対策をしていなかったのは、超さんなんだからね!

 


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