【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆104 お別れ会
超さんや茶々丸さんと別れた後、私は超さんの退学届をネギくんに届けにいった。
そして、その後に行なわれたネギくんと超さんの会合は、超さんが自らの企みを話しネギくんに「止めてみせろ」と宣言することで、戦いの場へと変わったようだ。
その戦いで、ネギくんは超さんの謎の瞬間移動によって完封され、水無瀬さんと桜咲さんの二人によって救出された。
その二人も超さんの瞬間移動の前には歯が立たず……こっそりバックアップとして待機していた長瀬さんが集めていた、3年A組一同による超さんとのお別れ大宴会に巻き込むことで、戦いをうやむやにした。
そのまま野外で大宴会が開始され、プレゼント攻勢があったり、無理やり超さんを笑わせたりと騒がしい時が続いた。
そして現在、古さんと超さんが、周囲の見守る中、二人で向かい合って話している。
「超が何を思って、世間にバラそうとしているかは分からないアル。でも、私は超を止めるアルヨ」
「そうカ。大会では騙す形になって、申し訳なかたと思っているヨ」
騙すか。大会の説明では記録に残らないようにすると言ったのに、ネットに動画を流したことを言っているのだろう。
二人の友情は確かだが、敵対する関係となった以上、『魔法先生ネギま!』の原作のように餞別を渡して涙の別れとはいかないようだ。
そして、古さんが超さんと離れたところで、私は超さんに近づいていき、話しかける。
「超さん」
「ああ、刻詠サン……!? なんネ、その格好は?」
「これですか? 宴会なのではっちゃけた格好をと。『rtfぎゅhklスーツ』です」
「なんて言たネ?」
「『rtfぎゅhklスーツ』です」
「……まあ、いいヨ。そんなヘンテコな格好で送り出される身にもなてほしいがネ」
明るく送り出してやろうという心意気が伝わらなかったかー。
まあ、それは別にいい。私はあらためて、超さんに言う。
「『ねこねこ文書』読んでいただけましたか?」
「ああ、あれネ。みんなで読ませていただいたヨ」
「それでは、このまま私達と敵対するか、行動を止めるか、答えをうかがっていいですか?」
「そう急かすのは、よくないヨ。エヴァンジェリン邸で待っているのダロウ? この宴会が終わった後でいいのではないかナ」
「そうですか……」
どうやら、この場で交渉の続きとはいかないようだ。
まあ、ネギくんを攻撃したり、古さんと敵対宣言したりした時点で、交渉決裂はほぼ確定なのだが。
仕方なく、私は超さんのもとを離れ、何やらザジ・レイニーデイさんが呼び出した謎生物に絡まれているちう様のところへと向かった。
「ちう様、どうかしました?」
「うおっ!? ああ、リンネか。こいつらの仲間かと思ってびっくりしたぞ」
私の姿を見て驚きの声を上げるちう様。すると、ちう様の言った「仲間」というワードに謎生物たちが反応する。
そして、謎生物たちはちう様に「ナカマ?」「トモダチ?」「イッショ?」と口々に言い始めた。
「あー、なんだこいつら。おい、ザジどーなってんだ」
サーカスのピエロの格好をしたレイニーデイさんに、ちう様が尋ねる。
すると、レイニーデイさんはじっとちう様の顔を眺めて、言った。
「長谷川さん、魔族?」
「は? ……ああー、そういうことか……」
ちう様は、頭をガリガリと掻いて地面をしばし眺めると、周囲を見回して近くに他のクラスメートがいないことを確認し、小声で説明を始めた。
「私は元々人間だが、魔法で魔界から力を引き出しているんだよ。だから、肉体が魔族化してる。つまり、仲間だけど仲間じゃねえ」
ちう様のその言葉に、謎生物たちは一斉に「ナカマ」とつぶやき始めた。
どうやら、魔族的にちう様は仲間判定を受けるらしい。
やったね、いつでも魔界に移住できるよ、ちう様。
そんなやりとりをクラスメート達から離れた場所でしていると、遠くの超さんの近くでは何やらみんなが盛り上がっていた。
「私は未来からやってきた、ネギ坊主の子孫ネ」
ここで超さん、子孫カミングアウトである。
この事実に、あやかさんが大興奮して超さんを問い詰めようとし始めた。あやかさんはタイムマシンのことをネギくんから聞いているだろうから、超さん未来人説も信じるだろうし、ネギくんの子孫説も信じるだろうなぁ。
そして、場は混沌としたまま騒ぎは午前二時過ぎまで続き、クラスメート達は大発光を始めた世界樹に照らされながら、見事に寝落ちしていたのだった。
私も正直眠いが、超さんから答えを聞くまで眠れない。
「それでは、エヴァンジェリン邸でお待ちしています」
私は超さんにそう言い、ネギま部のメンバーを引き連れてエヴァンジェリン邸へと向かったのだった。
◆105 タイムトラップ
今にも寝落ちしそうなネギま部メンバーをダイオラマ魔法球になんとか押しやり、私は一人エヴァンジェリン邸で待機した。大人数でいると、捕縛を警戒した超さんが来てくれないかもしれないからね。
そして、深夜三時。エヴァンジェリン邸に、チャイムもなく侵入してくる者が。
超さんだ。どうやら一人でやってきたらしい。
「一人ですか。てっきり、何人かボディーガードを連れてくると思ったのですが」
私がそう言うと、ボディーアーマー姿の超さんが答える。
「今回の行動は私の独断だからネ。一人で来たヨ。刻詠サンも、一人のようダガ」
「皆さんは、ダイオラマ魔法球の中でぐっすりお休み中です」
私がそう言うと、超さんは私の背後をチラリと見る。そこには、キティちゃんの別荘のダイオラマ魔法球が設置されている。
「そうカ。ところで、今回はまともな格好のようネ」
「ええ、今回のコンセプトは時を駆ける魔女です。可愛いでしょう。でも、可愛いだけじゃないんですよ」
私は手に持った魔女の杖を構えて、超さんの前でポーズを取ってみせた。
「刻詠サンなら、本当に魔法が飛んできそうネ」
超さんは、自分の台詞に「オオ怖い怖い」とわざとらしく身震いし、あらためて私の顔を真っ直ぐと見てきた。
「『ねこねこ文書』、見てきたヨ」
「いかがでしたか? 私なりの、裏火星の救済案だったのですが」
ネギくんに先んじて予言の書の知識をもとに作り上げた、火星の緑化テラフォーミング計画。それが、『ねこねこ文書』の正体だ。
その計画に対する、超さんの答えは……。
「ダメネ。刻詠サンの存在が怪しすぎて、とても信用できないネ」
……やっぱりダメか。でも、理由が私のせいというのが悲しいね。
「計画案も正直、荒唐無稽すぎるヨ」
「そこは、じっくり話し合いをしてですね……」
「残念ながら、私達にそんな時間はないヨ。世界樹の大発光はすでに始まている……もはや止まるには遅すぎる」
「そうですか。交渉は決裂ですね。残念ですが、お帰りください」
「そうするネ。ああ、その前に……置き土産でも残していくとするヨ!」
そんな言葉と共に、超さんがボディーアーマーの背中に仕込んでいたカシオペアを起動。超さんが私のもとへと駆けてくる。手にはライフルの弾丸がにぎられており、止まった時の中でそれを私に突きつけようとしてくる。
ライフルの弾丸は、おそらく時間跳躍弾。私が飛ばされるのは、数時間後か、数日後か。
飛ばされるわけにはいかないので、私は魔女の杖で超さんの手を払った。
すると、超さんの手から弾かれて床に転がった弾丸が、黒い球形の渦に飲まれる。
「!? バカナ!」
超さんが驚愕の表情を浮かべる。
「停止した時間の中で動ける……ネギ坊主からカシオペアを借りたか!」
今、超さんはカシオペアを連続使用して、擬似的な時間停止を行なっていた。だが、その方法では今の私には効かない。
「借りていませんよ。しかし困りますね、超さん。その弾、おそらくは相手を未来に飛ばしてしまう、時間操作魔法具か何かですね?」
「!? なぜそれを……」
「さて、どこかから情報が漏れていたのかもしれませんね。それで、置き土産とは、なんですか?」
「……さて、なんだろうネ?」
「そうですね。ダイオラマ魔法球をずいぶんと気にしていたようですから、先ほどの弾丸で魔法球ごとネギくん達を未来に飛ばしてしまう、とかでしょうか? ネギくんがタイムマシンで戻ってこられなくなるくらい、未来に。三日も飛ばせば確実でしょうか」
「尋ねなくても分かているではないカ。既知の情報をわざわざ尋ねるとか、性格悪いヨ」
「いやあ、確証はなかったので鎌をかけてみました」
「性格悪いヨ!」
「で、その置き土産ですけど……正直、困るんですよね。魔法が世界にバラされた時間に飛ばされたネギくんは、全てをなかったことにするためタイムマシンを使わざるを得なくなる」
「刻詠サンが最初に言ったとおり、使えないほど未来に送るつもりヨ。強制時間跳躍弾ではなく、カシオペアを使って送るからネ」
「いえ、それでもネギくんは時間逆行を成功させます。世界樹の地下で魔力溜まりを見つけ出すなり、アーティファクトで魔力を供給するなり、方法はいくらでもあります」
「……武道会でネギ坊主が見せていた無限の魔力供給カナ。そういうのもあったネ」
「未来から過去にネギくんは戻ってくるでしょう。そうなると、非常に困ります。……ネギくん達が過去に飛んだままいなくなった並行世界が成立してしまう危険性がありますから」
「……ハ? 並行世界?」
「超さんにより魔法が世界にバラされて、ネギくんとその仲間達が世界から消えた、そんな並行世界が生まれてしまうかもしれない。超さんは、考えたことありますか? 過去に誰かがタイムスリップしていったその後の世界を。過去からその人物が戻ってこない限り、その世界からはその人物が消え去っているんですよ」
「………」
「ちなみに、ネギ先生が麻帆良祭中に繰り返していた数時間の時間逆行は、未来そのものをなかったことにする上書き系でした。なので消え去る心配は無用です。しかし、数日間の大規模時間跳躍は、どうでしょうね? 世界をすべて上書きしてなかったことにするのか、並行世界として世界が分かたれてネギくんがいなくなる世界が残されるのか」
ちなみに、『魔法先生ネギま!』を読む限りだと、この数日を戻る大規模時間跳躍では世界の上書きが行なわれない。
世界樹の地下でネギくん達が時間跳躍を実行した後、ワイバーンがネギくん達を見失うシーンが描写されているからだ。
さすがに、その予言の書の知識を超さんに言うわけにはいかないが。
と、そんなことを考えていると、超さんが私の疑問に答えた。
「……そうネ。並行世界の観測は私もしていないから、定かではないヨ」
「そうですか。そのいなくなる未来の世界、発生すると困るんですよね。世界からネギくんとその仲間達が消えていなくなる。残された人達はどうすればいいんですか?」
私がそう言うと、超さんは考え込む姿勢になる。
「フム……では……未来に飛ばした後のネギ坊主から、あらためてカシオペアを奪うことにするヨ!」
そう言って、超さんは再びカシオペアを起動。時間停止をしてくる。正確には、同時間・同空間への超高速連続時間跳躍をすることでの擬似時間停止だ。
そして、超さんのボディーアーマーにくっついていた機械が分離し、その機械が弾丸を吐き出した。狙いは私の足元。
時間跳躍弾が発動し、私を飲みこもうとする。
「させませんよ」
だが、そこで私はスマホから引き出していた力を発動。カシオペアの動作を止め、超さんの時間の流れを正常なものへと戻した。
時間跳躍弾の発動も止まり、効力を失った弾丸が床の上を転がる。
「む……何をしたネ、刻詠サン」
「残念ながら、それは私に効きませんよ」
私は超さんに杖を突きつける。
「フム……」
と、そこで再度カシオペアが動きを見せる。その動きは、未来への超短時間タイムスリップ。
「タイムスリップも不可です」
その発動も、私が制止させた。
「……いったいどうなっているネ」
「今回の私は、不思議な時の魔女さんです。時の支配者たる力、お見せしましょう」
「時の支配者……マサカ、刻詠サンの正体は……タイムパトロール?」
「ふふふ、違いますよ。『ドラえもん』の読み過ぎです。この時の支配者の力は、最近身につけたばかりなんです」
前々から、一度くらいは超さんと対決する機会が巡ってくるかもしれないって、思っていたんだよね。
だから、私はここのところずっと時の魔術を特訓してきた。
そんな時の魔術に慣れてきた今の私がさらに、スマホの世界に住むクロノウィッチ達の力を複数同時に引き出している。
『千年戦争アイギス』には、時の魔術を自在に操るクロノウィッチが、複数人登場する。時の亜神なんて神様すら存在する。そんな彼女達の力を束ね、超さんのカシオペアの時間操作を封じ込めているというのが、今回のカラクリである。力を十全に発揮できるようになるまで、ずいぶんと別荘に籠もったものだ。
「……刻詠サン。未来に飛ばしたネギ坊主を過去に戻さないようにする。そう約束しても、私の邪魔をやめないカ?」
「そうなると、だまし討ちで全部終わってしまうネギくん達が、あまりにもかわいそうではないですか。それに、ネギくんをオコジョ刑にされるのは困ります」
「なるほど、交渉決裂ネ」
「ええ、残念です。では、せっかくなのでクロノウィッチの秘術を味わってみますか?」
私の宣言に、超さんがとっさに拳法の構えを取る。
だが、これは構えてどうにかなるような術ではない。
クロノウィッチの一人、『時の魔女リゼット』。彼女が持つ覚醒スキル――
「――『タイムストップ!』」
次の瞬間、超さんを含む私の周囲半径十数メートルの時間が、停止した。
カシオペアは、常時発動型の魔法具ではない。ゆえに、他者に時間を止められたとき、対抗して自らを停止した時間に留めようとする機能は存在しない。
『タイムストップ』の効果時間は五秒間。その間に、私は打てる手を速やかに打つ。
「アプリ・テリオリ・アプリオリ――」
それは、時の秘術でもなんでもない、ごく普通の魔法。
だがそれは、『魔法先生ネギま!』を代表する凶悪な魔法だ。
「――『
暴風が停止する超さんにぶち当たり、彼女が身に纏っていたボディーアーマーを吹き飛ばして、彼女を丸裸にした。
そして、停止していた周囲の時間が動き出す。
「――ッ!?」
主観では一瞬で全裸にさせられた形の超さんが、驚愕の表情を浮かべる。
「武装解除させていただきました。これ以上の抵抗は無意味です」
「くっ、マサカ、時間停止……!」
「とりあえず、このまま拘束させてもらいます――」
「それは待ってもらおうか」
と、超さんを倒して全部解決だと思ったところで、響きわたる第三者の声。
その声に振り返ると、いつの間にエヴァンジェリン邸に侵入していたのか、龍宮さんがごっつい銃を別荘のダイオラマ魔法球に突きつけていた。
「魔法徹甲弾だ。これを破壊されたくなかったら、超を逃がせ。いいな?」
「うわおう。そこで時間跳躍弾ではなく、実弾を持ち出してきますかー」
私はとりあえず抵抗の意志なしと示すために、杖を持った手をバンザイした。『タイムストップ』のクールタイムは二十二秒。再発動には微妙に時間が足りなかった。
すると、超さんがそそくさと動き、床に落ちたボディーアーマーの破片からカシオペアを回収し、そのままダッシュで部屋から逃げ出した。
「うーん、惚れ惚れする逃げ足ですね」
「ここであいつが捕まったら、何もかもが台無しだからな。そりゃあ逃げるさ」
龍宮さんがダイオラマ魔法球から銃を離して、肩をすくめた。
「こうなっては仕方ないですね。今夜は痛み分けということで」
私もバンザイをやめ、龍宮さんと向かい合う。
「龍宮さんの攻撃方法は正直、室内では大迷惑なので、そのままお帰り願えますか……?」
私がそう言うと、龍宮さんは「そうさせてもらうよ」と言って銃をしまった。
そして、龍宮さんはそのまま部屋を去ろうとする。その背中に、私は再度話しかけた。
「『ねこねこ文書』は読みました?」
「ああ、読ませてもらったよ」
「超さんから手を引いて、こちらに付くつもりはありますか?」
「ないな。私にとっては、魔法世界の存続よりも、確実に魔法の存在が人々に認知されるかどうかの方が重要だからな」
「そうですか。では、敵対ということで、皆さんにはお伝えしておきます」
「ああ」
そうして今度こそ、龍宮さんは部屋を去り、そのままエヴァンジェリン邸を出ていった。
それからしばし、別荘のダイオラマ魔法球の前で待機し、再侵入してこないことを確かめてから、私は別荘の安置部屋を出て、キッチンへ向かった。
キッチンに入ると、そこにはアルトリア陛下とココロちゃんが待機しており、ココロちゃんが眠そうにあくびをしていた。
「終わったー?」
ココロちゃんがそう尋ねてきたので、私は首を縦に振ってうなずく。
すると、ココロちゃんはずっと座っていた木箱の上から降り、木箱を持ち上げた。木箱は下の部分が開いており、何かの上に被さる形になっていた。そして、木箱に隠されていた物体が姿を現す。
それは、ダイオラマ魔法球。キティちゃんの別荘ではない、以前キャスターのサーヴァントであるメディア様が作った私の私物だ。
「はい、これ。返すね」
ココロちゃんはそう言って服の中からカシオペアを取り出して、私に渡してきた。
「じゃあ、呼んでくるねー。あ、私は中で寝てくるからー」
さらにココロちゃんはそう言い放ち、ダイオラマ魔法球の中へと入っていく。
そして、五分と経たずにネギま部メンバーが中から出てきた。
そう、ネギま部メンバーは別荘ではなく、この私のダイオラマ魔法球の中で隠れてもらっていたのだ。
超さんと交渉がしたい私、しかし、他のネギま部メンバーが複数いれば、捕縛されるのを警戒した超さんがやってこないかもしれない。
しかし、彼らに別荘の中で待機してもらうと、超さんによって手動で未来へ飛ばされる危険性が付きまとう。なので、カシオペアを外のココロちゃんに預けた状態で、ネギま部メンバーには別のダイオラマ魔法球へ避難してもらっていたのだ。
私が個人所持しているこのダイオラマ魔法球は、茶々丸さんも存在を知っている。だが、割と自由に動かせる一品のため、どこに設置してあるかは茶々丸さんも知らない。今回は、アルトリア陛下とココロちゃんに警戒してもらった状態で、キッチンに配置した。
超さんもココロちゃんの存在には気づいていたかもしれないが、私があからさまに別荘を守る位置に付いていたので、ネギくん達がそちらにいると思ってくれただろう。
仮に超さんの天才的頭脳でその事実に気づいたとしても、アルトリア陛下とクロノウィッチの一人であるココロちゃんを相手に出し抜くことは難しいはずだ。
さて、実は超さん、置き土産を残すという言葉で私を騙そうとしていた。
超さんが自ら動いて別荘のダイオラマ魔法球に細工をしてネギくん達を未来に飛ばす。そう思い込ませようとしてきた。
だが、実際に超さんが用意した置き土産は、始めからカシオペアの中に入っていた。
カシオペアには罠がセットされていた。それは、カシオペアを持って別荘から出ようとしたときに発動して、未来へ飛ぶ罠だ。
その罠がなかなか狡猾だ。今回のように、超さんが私に「置き土産を残す」と言ってそれを阻止させたとする。そうすると、阻止に成功したと思った私が油断している間に、本当の置き土産であるカシオペアの罠が発動するのだ。
先ほどの会話で、超さんがカシオペアをネギくんから借りているか私に確認を取ったのも、その罠が成功するかの確認だろう。
だが、私にはこの罠に対する情報があった。『魔法先生ネギま!』という攻略本の情報が。
それを読んだ私は、カシオペアに罠が仕掛けられていて、別荘を出る瞬間に罠が発動することをあらかじめ知ることができた。
なので、ダイオラマ魔法球に入る前のネギくんからカシオペアを借り、時を操れるココロちゃんに預けて罠の解除を試してもらった。
さらに、別荘自体に私が知らない罠が設置されていたときのために、別のダイオラマ魔法球へと皆を避難させた、というわけだ。
結果、こうして私達ネギま部一同は、麻帆良祭最終日を無事に迎えることができたのだ。
「皆さん、よく眠れましたか?」
キッチンからリビングに移動した後、私はみんなにそう尋ねる。
「寝て起きてすぐ出てきたから、なんだか休めた気がしないわねー」
寝起き顔といった感じの神楽坂さんが、ぼんやりとした口調でそう言った。私のダイオラマ魔法球の時間加速は現在、現実の八倍に設定してある。なので、別荘ほど短時間でぐっすり休めるというわけではない。
「リンネさん、超さんは……」
寝癖が頭についたネギくんが、そわそわとしながら私に尋ねてくる。
「残念ながら、交渉決裂ですね」
「そうですか……」
いよいよもって、ネギくんが覚悟を決めた顔になる。
麻帆良の魔法使い達が超さんに敗北するIFの未来をネギま部メンバーが知ることはなかったが、超さんが何をしようとしているのかの情報は割と集まっている。
頭脳明晰なネギくんがいて、予言の書の知識を持つメンバーも混ざっているのだ。後は、作戦を練るだけ。
このままいけば、事は予言の書に似た流れで進むだろう。
ゆえに、私は……。
「それじゃあ、徹夜したので、仮眠取りますね。エヴァンジェリン先生、ソファ借ります」
全てを皆に任せ、寝ることにした。