【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■56 ネギの剣

◆130 打ち上げにはカラオケで

 

 とうとう終業式の日がやってきた。

 中学最後の夏休み。エスカレーター式の学校であるため受験の心配もない夏。クラスメート達は弾けに弾け、上がったテンションのぶつけどころとしてカラオケに行くことになった。

 

 さすがにクラスメート三十三名+ネギくんを一室に詰め込むことはできないので、五、六人程度に分かれることになった。

 私は、キティちゃんの美声を聴きたいので彼女に付いていく。

 と、同じくキティちゃんの歌の上手さを聞きつけた運動部四人組、明石さん、和泉さん、大河内さん、佐々木さんと同室になった。

 

 私とはあまり交流がなかった四人組だ。とは言っても、同じ寮に住んでいる関係上、それなりに会話はしているけれども。

 早速とばかりにキティちゃんにマイクを渡し、彼女の歌声を聞きながら雑談に興じる四人組。

 

「あーあ、夏で部活は終わりかぁ」

 

 明石さんが名残惜しそうな声でそう言った。

 すると、佐々木さんが横からツッコミを入れる。

 

「何言ってるの。麻帆良高に繰り上がって継続でしょ?」

 

「まあ、そー言われるとそーなんだけど。気分というのがあるでしょ」

 

 明石さんがぼやくようにそう言い返した。

 さらに、大河内さんも明石さんに言う。

 

「しかも、高等部に上がったら今度は一番下っ端からで、前と同じ先輩達が上にいる」

 

「うへぇー」

 

「運動部は大変やなぁ」

 

 関西弁で他人事のように言う和泉さんは、外部のサッカー部のマネージャーだ。マネージャーは選手ほどは上下関係に厳しくないのだろうか。

 しかし、麻帆良学園本校の運動部って、小学校時代からエスカレーター式に繰り上がっていって、高校まで一緒とか……ちょっと人間関係が熟成されすぎていそうだよね。

 

「ここで外部から入学したすごい生徒が現れて、部の内部をかき乱していくのが部活漫画の王道ですよね」

 

 私がそう話を振ると、四人がそれに乗っかってきて好きなスポーツ漫画は何かで盛り上がった。

 私が好きなスポーツ漫画は『おおきく振りかぶって』と『ダイヤのA』だが、どちらも2003年現在では連載開始していない。いつ始まるのか知らないけど、久しぶりに読み返したいなぁ。

 

 やがて、キティちゃんのめちゃうまソングは終わり、次に和泉さんが曲を入力していたようで、マイクを取って歌い始めた。

 

「ところで、ネギま部は海外に行くそうだけど、いつ出発か決まったの?」

 

 曲を入力し終わった明石さんが、私にそう尋ねてくる。

 

「ええ、八月五日出発ですね。八月下旬までがっつり遠征しますよ」

 

「八月五日かぁ。順調に県大会を勝ち進んだら関東大会の途中かな。やっぱりついていけそうにないかー」

 

 明石さんは、バスケットボール部だったね。

 彼女達運動部四人組は、原作漫画だと魔法世界までついてくるんだよね。でも、移動手段を提供していたあやかさんはネギま部に入ったし、そもそも日程を原作漫画よりも早めているので、この世界では私達についてくるのは困難だろう。

 原作漫画における彼女達の幾人かは魔法世界で奴隷落ちするという不幸な目にあっているので、どうにかついてこないよう気を付けなければならないね。

 

「おっ、次歌うのリンネちゃん?」

 

 和泉さんが歌い終わり、マイクを手に取った私に、明石さんが問いかけてくる。

 

「ええ、エヴァンジェリンさんほどではないですが、結構自信ありますよ」

 

「言うねえー」

 

 しかし、あれだね。

 転生するときは、アニメ版じゃないから『ハッピーマテリアル』を歌わずに済むなんて冗談を言ったものだけど、いざ3年A組のクラスメート達と交流すると、一度くらいでいいから一緒に『ハッピーマテリアル』を歌いたくなるものだね。

 まあ、彼女達の声は、前世の声優とは違う声質なんだけどね。

 そりゃそうだよね。世界が現実化して生身の人間になっているわけで、前世の声優と同じ声が出るはずがないんだから。

 

 なので、『FGO』と『PSO2es』で同じ担当声優のキャラクターの声を現実で聞き比べてみても、全然違う声がするのである。

 ちなみに私の声は、ちょっと高めのささやき声って感じかな。

 

「おー、リンネちゃんそこそこ上手いじゃん」

 

 ふふーん、どうよ?

 

 

 

◆131 剣聖

 

 とうとう始まった夏休み。ネギま部メンバーは、早速別荘に集まっていた。別荘は改装され、複数のダイオラマ魔法球が接続されていた。

 中に入ると、キティちゃんがかつて所持していたという城が内部に建ち、その下に熱帯雨林が広がっていた。

 その熱帯雨林に降り立った私達は、まず始めに家主であるキティちゃんのお言葉を聞く。

 

「これまで皆は、リンネの能力で異世界の名だたる英雄、英傑の力に触れ、武の頂を垣間見てきたことだろう」

 

 そう語るキティちゃんの後ろには、見慣れない一人の男性が立っている。

 

「だが、強者は異世界だけに存在するわけではない。当然、私達が住む世界にも強者は数多く存在し、名だたる達人達が己の技を磨いている。今日は、その達人の一人に来てもらった」

 

 キティちゃんがそう言うと、男性を皆の前に立たせる。

 

「私が知る中で、一番の剣の達人だ。名を獅子巳(ししみ)十蔵(じゅうぞう)。若く見えるかもしれないが、これで私よりも年上だ。失礼のないように」

 

「獅子巳だ。剣しか知らない凡人だが、よろしく頼む」

 

 獅子巳さんの挨拶に、皆がバラバラに「よろしくお願いします」と言葉を返した。

 獅子巳十蔵。『UQ HOLDER!』の登場人物で、不死者の一人だ。

 

 キティちゃんの紹介にあったとおり剣の達人であり、歳は七百を越えているはずだ。

 そして、その強さは随一で、私のスマホの宇宙でも彼に勝てる存在はおそらくだいぶ限られてしまうだろう。

 

 彼の技量を示すデモンストレーションとして、キティちゃんは鉄のプレートアーマーを用意した。

 それを獅子巳さんが斬ってみせるという。斬鉄だ。ただし、使う武器は、新聞紙を丸めた棒。

 

 いくらなんでも無茶だろう、という顔をする神鳴流剣士の刹那さんだが、次の瞬間、彼女の顔は面白いように変わった。

 獅子巳さんが軽く新聞紙の棒を振っただけで、プレートアーマーが縦に真っ二つになったのだ。

 当然、驚いたのは刹那さんだけではない。ネギま部の誰もが驚いている。予言の書で彼のことを知っている、ちう様やのどかさんもだ。

 いや、こんなの実際に見せられたら驚くしかないよね。『気』をまとった棒で〝叩き潰す〟のなら、できる人もこのメンバーにはそれなりにいるだろう。でも、彼は〝斬った〟のだ。

 

 このデモンストレーションで彼は皆の尊敬を集め、気難しい女子中学生に受け入れられた。そのおかげで、剣術組の指導がスムーズに始まった。

 刹那さんも、獅子巳さんが説く剣の術理を真面目な顔をして聞き入っている。獅子巳さんは凡才を自称しているからか、指導に関して天性の感覚に頼らないため、分かりやすいのだ。

 

 やがて、私の方への指導も始まったのだが。

 

「お前が刻詠リンネか」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「時に、相談があるんだが」

 

 ふむん? 相談?

 

「この間の祭りで、不思議な剣技を披露したそうだな。なんでも、同時三箇所に斬りつけるだとかいう」

 

「ああ、はい。『燕返し』ですか」

 

「その剣技、俺に見せてほしい。可能なら、俺も覚えてみたい」

 

「なるほど?」

 

 確かに、獅子巳さんなら『燕返し』にも興味を抱くか……。

 彼はただでさえアホみたいな剣速で斬りつけるというのに、そこに同時攻撃が加わったら、すごいことになりそうだね。

 まあ、協力を惜しむ理由もない。

 

「では、私達への指導が終わりましたら、『燕返し』本来の使い手を呼びましょう。向こうも、凄腕の剣士がいると言えば、来てくれるでしょうから」

 

「『燕返し』の使い手か。お前は異世界の英雄を呼ぶ力を持っていると聞いたが、そいつは佐々木小次郎か?」

 

「佐々木小次郎は複数の武人の逸話が集まった架空の存在で、私が呼び出せるのは、そんな逸話に一番近い経歴を持つ名もなき武人の亡霊です。まあ、みんな佐々木小次郎って呼んでいますけどね」

 

「つまり、佐々木小次郎のもとになった存在と戦えるということか。面白い」

 

 呼ぶって言っただけなのに、完全に戦うことになっているこの獅子巳さんクオリティよ……。

 面白いでしょうけど、今は私の指導をお願いしまっす!

 

 

 

◆132 白き魔剣

 

 ネギま部夏休み最初の修行が終わった。開始時と同じように、皆が城の前に集合する。

 キティちゃんのありがたいお言葉をいただき、年寄りは話が長いなと思いつつ胸に言葉を刻んだ。要約するとこれからも頑張れ、だった。

 

 そして、初日の修行終了、となったところで、私はネギくんを呼び止めた。

 

「ネギくん、おめでとうございます」

 

「はい? 何がですか?」

 

「先ほど、ネギくんの魔剣が納品されました。持ってきましたので、お渡ししますよ」

 

 私がそう言うと、解散しかけていたネギま部メンバーが再度私の近くに寄ってきた。

 

「できたんだ! ムラマサブレード!」

 

 当事者のネギくん以上に興奮したハルナさんが、スケッチブック片手に待機する。

 

「村正だと?」

 

 おおっと、呼び出した小次郎さんと話し込んでいた獅子巳さんも、興味を示したぞ。

 さらに、刹那さんや楓さんも興味津々という顔で、私とネギくんを囲んでいる。

 

「ええと、とうとう完成したんですか?」

 

 そう尋ねてくるネギくんに、私は自信満々に言った。

 

「はい、渾身の一作だそうです」

 

 現世の素材を要求されたので、だいぶ資金はかかってしまったが。

 私は、武器格納魔法を起動して品を取り出す。

 

 それは、世界樹が刺繍された布袋。当然、中には剣が納められている。

 布袋から慎重に中身を取り出すと、綺麗な黒鞘に入った一本の剣が姿を見せた。

 この鞘も、立派な魔法の鞘だ。麻帆良に立つ世界樹の枝から削り出して、漆を塗った物を金属で補強してある。

 

 その鞘に収められた剣を私はネギくんに手渡す。

 

「どうぞ。抜いてみてください」

 

 私がそう言うと、ネギくんは恐る恐る剣を鞘から抜いた。

 それは、片刃の剣だった。直刀とでもいうべきか、反りのない真っ直ぐな刃だ。刀と言うにはいささか肉厚な刀身だが。

 

 両刃のロングソードが出てくると思っていたのか、ネギくんが面食らった顔になる。

 そんな彼に、私は解説を入れる。

 

「ネギくんが普段使っている木剣は世界樹の枝製と言えども、所詮は木剣。金属製の剣と打ち合うことは困難です。ゆえに、この剣を片刃にすることによって、峰打ちができるようにしたとのことです」

 

「なるほど、それは非常に助かります」

 

 別荘の擬似的な陽光を受けて、光り輝く刀身をネギくんは見つめる。

 いや、そもそも刃自体が発光しているな、これ。

 その原因に思い当たり、私は説明を続ける。

 

「刀身は、世界樹の枝葉を練り込んだ魔法の鋼で作られています。鋼の素材は全てこちらの地球産で、世界樹の枝から作った木炭を燃やした炉で鍛えました。それにより、この剣は世界樹と共鳴して、力を発揮することができます」

 

「世界樹と共鳴……」

 

 ネギくんは共鳴に心当たりがあるのか、剣をじっと見つめた。

 うん、麻帆良祭では世界樹の木剣がすごく輝いていたもんね。

 

「世界樹は地球を守護する樹です。麻帆良から見えるあの大木が全てではありません。ネギくんがその剣を持って地球の敵と戦うことがあったら、きっと世界樹はネギくんに力を貸してくれることでしょう」

 

 いやあ、世界樹の力を込めたいとか言い出した鍛冶師達にはまいるね。

 現世の素材を使う制約上スマホの中で鍛冶をしてもらうわけにもいかず、わざわざ私の所持するダイオラマ魔法球に鍛冶場と炭焼き小屋を建てるはめになった。

 

 木炭なんて私の『Minecraft』の能力で簡単に作れるのに、それじゃあ力のこもった炭にならないっていうんで、小屋を建てた後は二十四倍速に時間経過を変えたダイオラマ魔法球で二週間、炭作りに付き合わされた。

 まあ確かに、『Minecraft』だとどの木材を使っても同じ木炭ができるので、世界樹の力は宿らないだろうけど……。

 

「正直なところ、純粋な頑丈さでは先に渡したアンオブタニウムの剣の方が上でしょう。しかし、その剣は魔剣です。魔力を込めることで、真の力を発揮します」

 

 私がそう言うと、ネギくんは鞘を地面に置き、柄を両手でしっかりと握って魔力を込めた。

 すると、剣はさらに輝き出した。何物にも染まっていない、純粋な白い光だ。

 

「魔力を込めることで、あらゆる物を切り裂く力が宿ります。さらに剣で増幅した破壊の魔力を相手に放つことができます」

 

 要は剣ビームである。

 それを聞いたネギくんが、ワクワクした顔で剣を大上段に構えようとするが……。

 

「ぼーや、待て! 結界も張っていないのに、別荘内でそんな物騒な技を放とうとするんじゃない!」

 

 キティちゃんに止められて、ネギくんはしょんぼりと肩を落とした。

 そして、しぶしぶと剣を鞘に収めるネギくん。

 

「ちなみに、この剣に銘はあるのですか?」

 

 刹那さんが、自身の剣である『夕凪』を両手に持ちながら尋ねてくる。

 

「銘ですか。千子(せんじ)村正(むらまさ)の作なので――」

 

「なにっ!? 千子だと!」

 

 おおっと、ここで獅子巳さんが食いついてきた。私は声を被せられて中断した言葉を再度言い放つ。

 

「千子村正の霊が打った剣なので村正と銘打ちたいところですが、魔剣として仕上げたのは魔剣鍛冶師のミスリアさんで、お二人とも自分の名を刻むことは拒否し合いまして……私が名付けさせていただきました」

 

 剣に向かっていた皆の視線が、私に集まる。

 その期待に応えるように、私は言った。

 

「『白き翼』。アラアルバです。ネギくんのお父上の『紅き翼(アラルブラ)』にちなんだ命名ですね」

 

 すると、「おおー」と周囲から感心の声が上がった。

 ま、名前のネタは原作漫画に出てくる同名組織からだけど。ネギま部のことだね。

 

「フン、ちょうどいい。ネギま部などというマヌケな俗称はあらためて、対外的には『異文化研究倶楽部』は『白き翼(アラアルバ)』と名乗れ」

 

 と、ここでキティちゃんが便乗。別にいいけどね。そもそもこのネーミングだって、原作漫画のエヴァンジェリンが考えたものだし。

 キティちゃんの指令に、ネギま部メンバーは肯定的だ。うん、格好良いよね『白き翼』。思春期の心にストライクである。

 

 こうして、ネギくんの新しい魔剣のお披露目は終わった。片刃の直刀だから使い勝手が今までとは変わるかもしれないが、そこはこれからの修行で慣れてもらおうか。

 ネギくんが武器格納魔法で魔剣を仕舞ったところで、私も武器格納魔法を起動する。

 そして、またまた一本の剣を取り出した。

 それは、ごく普通のロングソード。

 

「こちらは鍛冶場の炉の試運転で打った、ごく普通の鉄剣です。あえてすごい品には仕立てていません。こちらもどうぞ」

 

「えっと、はい……」

 

 ネギくんは、今更なぜ普通の剣を渡されるのかと、不思議そうにしている。

 そんな彼に、私は言う。

 

「その剣で、ネギくんには斬鉄を練習してもらいましょうか。鉄を斬ってください」

 

「えっ……鉄をですか」

 

「はい。獅子巳さんのように紙で鉄を斬れとは言いません。ですが、斬鉄は神鳴流の剣士なら十歳でできるようになるといいます。刹那さん、そうですよね?」

 

「あ、はい。そうですね。だいたいそれくらいが標準かと」

 

 私に話を振られた刹那さんがそう答える。まあ、多分、才能あふれる刹那さんならもっと早く斬れるようになっていたんだろうけど。

 じっとロングソードを見つめるネギくんに向けて、私は再度言葉を投げかける。

 

「もちろん、鉄なら私でも斬れます。なので、そこまで難しいわけではありません」

 

「俺は三十八年かかったがな……」

 

 哀愁ただよう感じで獅子巳さんが言った。うん、獅子巳さんって剣の達人だけど、不死者としての膨大な時間を使って、膨大な練習を積むという努力型の人だからね……。

 

「……まあ、頑張ってくださいね。指導はしますので。では、私からは以上です」

 

 そう言って、私は場を去ろうとする。

 だが、私を呼び止める者がいた。

 

「リンネの姉ちゃん、俺の方はどないや?」

 

「あー、小太郎くんの手甲ですか。どうなっていますかね」

 

 私はその場でスマホを呼び出し、『LINE』で『手甲鍛冶師フィスティア』に連絡を取った。

 

「おや、完成しているようですね。取り出しますよ」

 

「ホンマか!」

 

 私は、スマホの中から一対の手甲を取り出し、小太郎くんに渡す。

 そして、『LINE』での説明を読み上げていった。

 

「小太郎くんは成長期。まだまだ腕のサイズも大きくなっていくということで、あえて至極の逸品は作らなかったとのことです」

 

 彼が身に纏った手甲。その輝きは、見覚えのあるものだった。それは、ネギくんに以前渡したアンオブタニウムの剣と同じ。

 

「ですが、素材が素材ですからね。別宇宙の金属、アンオブタニウムです。魔剣の一撃も防ぎますよ」

 

「ほおー、これでネギの攻撃は効かないっちゅーわけやな」

 

「過信はいけないでしょうけどね」

 

「もちろんや。ありがとな! 支払いはどうする?」

 

「支払いですか。でしたら、肉体労働でどうですか? 今度、別のダイオラマ魔法球で木炭を作るので、そのお手伝いです」

 

「おう、肉体労働なら任せろや!」

 

 小太郎くんがそう言うと、ネギくんがはっとした顔になって、私のもとへと戻ってくる。

 

「すみません、リンネさん。魔剣の代金ですが――」

 

「ああ、ネギくんは、火星開拓事業の矢面に立たせることへの正当な報酬だと思ってくださっていいですよ。そもそも、クウネルさんが魔剣を作ると言ったのを、横から私がかっさらった形ですからね」

 

「えーと、いいのかなー……」

 

「いいんですよ。後日、クウネルさんのところに魔剣を持っていって、重力魔法の付与ができないか聞いてくるといいですよ」

 

「重力魔法! 分かりました、行ってみます!」

 

 そう話を締めると、ネギくんと小太郎くんが互いの武具を見せ合いながら、別荘の宿泊施設内へと向かっていった。

 あの二人のやりとりを見ていると、ほっこりするよね。

 

 さて、皆が別荘の建物内に戻ったが、この場にまだ残った者がいる。スマホ内に帰す必要がある小次郎さんと、そしてなぜか獅子巳さんだ。

 その獅子巳さんが、私に話しかけてくる。

 

「刻詠、一ついいか?」

 

「なんでしょうか」

 

「千子村正に刀を依頼したいのだが……」

 

 あー、獅子巳さん、村正が欲しいのか。そりゃあ、知名度は十分だからね。しかも、今の日本だと刀鍛冶をやっているところはとても少なくて、魔法に関わる裏の業界でも稀少になりつつある。

 さすがに、関西呪術協会なら、刀で戦う気力使いのために刀鍛冶を保護をしているだろうが、獅子巳さんは関西呪術協会の所属でもないだろうし。というか、普段何やって生活しているんだろう。賞金稼ぎとかボディガードとかかな?

 

「取り次ぎはしますが、打ってもらえるかは獅子巳さんの言葉次第ですよ。別に、私が村正お爺ちゃんの主というわけでもないので、紹介しかできません」

 

「それで構わない」

 

「ちなみに、幽霊みたいな存在なので、お金とかではそうそう動きません。対価はちょっと考える必要があると思います」

 

「そうか。ならば、蔵を開けるか……」

 

 獅子巳さんの所持する蔵とか、気になるワードが出てきたところで、私は別荘と接続中の私のダイオラマ魔法球へと移動する。

 そこで休んでいた村正お爺ちゃんに獅子巳さんを紹介したところ、二人は意気投合した。

 獅子巳さんの不死能力が、世界樹と同一視されている扶桑樹由来の薬によるものだと知ると、村正お爺ちゃんは魔剣『白き翼』に使った鋼で今度は刀を打つと言い出した。

 

 ダイオラマ魔法球の宿泊所があわただしくなり、鍛冶師が集まってくる。

 そして、資材を確認した村正お爺ちゃんが私に向けて言った。

 

「おう、世界樹の炭が足りそうにねえ。オーナー、炭焼くぞ!」

 

 私は早速、小太郎くんを生贄に捧げるため、別荘へと逆戻りするのだった。

 

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