【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆133 ネギま部夏合宿
さて、本格的に始まったネギま部の別荘での夏合宿。乙女の青春を前借りするという哀しい修行であるが、キティちゃんから「魔法世界では、世界の終わりを企む秘密結社が暗躍している」と言われ、無事に麻帆良に帰ってくるために皆、気合いを入れて取り組んだ。
先日、スマホの中の宇宙から呼び出せる人員枠を大量に増やしたため、多数のキャラクターを呼び出して彼女達の修行に当てている。スマホ内の宇宙のトップ層になんとか頼み込んで、この期間中は全面的な協力体制を取ってもらうことにしている。
では、あらためて各々が何をしているかを見ていこう。
まずはネギくん。
魔剣を手に入れた彼だが、それを使いこなすためにアルトリア陛下が円卓の騎士を指導員として召集。入れ替わり立ち替わり円卓の騎士達がやってきて、彼に己の技術を伝授している。
さらに、キティちゃんが教本を用意した風・雷系の攻撃魔法をひたすらに詰め込まれ、魔法を使いこなすための精神力の鍛錬も剣の修行と並行して行なわれている。
ちなみに斬鉄はすぐにできるようになった。
小太郎くん。
手甲を手に入れて、それを使った戦い方を編み出すために、ひたすら模擬戦を繰り返している。
理論立てた格闘術よりも、獣の本能に根ざした荒々しい戦い方こそが彼の真の力を引き出すとのスカサハ師匠の言により、サーヴァントのバーサーカーを次々と呼び出して地獄の稽古を実施している。シミュレータールームの外でも戦い始めて生傷が絶えないので、木乃香さんの魔法の練習台として活躍しているね。
明日菜さん。
魔法無効化能力を完全に使いこなすために、魔法練習組からの攻撃魔法を受け続けている。さらには課題だった体力作りと咸卦法の持続時間延長のために、小太郎くんと一緒になっての地獄の模擬戦も組まれている。
彼女のアーティファクトは大剣なので、それに見合った師匠も用意した。『剣士グローリア』。ソードマスターの一人で、その奥義の『岩砕滅隆剣』は大地を隆起させ敵を串刺しにするというむちゃくちゃな技。だが、真骨頂はそちらではなく、彼女の流派は高い体力を保ち、秘奥義は剣気をその身にまとわせ鉄のごとき頑強さとなる。
魔法を無効化して、本人もカチカチ。タンクとして頼もしい存在となるだろう。メイン盾きた! これで勝つる!
あやかさん。
合気柔術をキティちゃんから叩き込まれ中だ。キティちゃんが魔法で分身を作りだして、あやかさんに専属教師として割り当てている。合気柔術の訓練のはずなのに魔法が飛び交っているのはどういうことだろうか。
厳しすぎる鍛錬で、最近ようやく『気』に覚醒。明日菜さんに負けじと武の頂を目指している。
木乃香さん。
正統派の治療魔術師として、ひたすらに勉強と魔法訓練の日々である。他の者達と違って完全にゼロからのスタートだったため、置いていかれている現状にくすぶるような思いがあるようだが、嫉妬を表に出すこともなく、ひたすら魔法の修練にはげんでいる。
潜在能力で見ると、キティちゃんやネギくんを超えて随一の魔力量を誇っているので、今後の成長が待たれる。
刹那さん。
剣士としてはすでに一流の域にある彼女。だが、彼女は神鳴流本家の者ではないため、弐の太刀と呼ばれる悪霊斬りの技を使えない。
そこで彼女の指導に当たったのが、獅子巳十蔵さんだ。彼は神鳴流の使い手ではないが、おおよそいかなるものも切り裂くことができる。刹那さんはその彼に、様々なものを斬るための剣を学ぶことになった。
水無瀬さん。ちなみに相坂さよさんと名前がややこしいので、小夜子さんとは呼んでいない。
魔法使いとしてはそれなり、ネクロマンサーとしては凄腕。そんな彼女は、ネクロマンサーとしてさらなる能力向上を希望した。私もそれに応じて、『反魂の死霊術師メトゥス』を彼女に付けた。
メトゥスは、かつて五百体のアンデッドを率いて王国に攻め入った元不死者のネクロマンサー。今は反魂の至宝で人間として蘇ったという濃すぎる経歴を持つキャラクターだが、その濃さに見合った実力はある。水無瀬さんを最凶のネクロマンサーに仕立て上げてくれることだろう。
のどかさん。
いくつかのクラスに習熟した彼女は、とうとうファントムのクラスに就いた。そこで、教官としてアークスの『キョクヤ』を呼び出したのだが、彼の独特の世界観を持つ言い回しに、のどかさんは困惑気味。だが、キョクヤの指導は熱心で、活を入れられながらひたすらシミュレータールームで訓練を重ねている。
夕映さん。
ヒーローを目指してハンターとガンナー、フォースのクラスを訓練中。こちらも教官としてアークスの『ヒューイ』と『ストラトス』を呼び出したのだが、彼らの熱血過ぎる指導に夕映さんは困惑気味。しかし、腕は確かな教官達なので、夕映さんはメキメキと実力を上げていっている。ヒーローになる日も近いだろう。
ハルナさん。
自身のアーティファクト『落書帝国』を極めるために、ひたすら絵を描いている。絵の上手さ、速さが戦力にそのまま結びつくとあってとにかく描くしかないのだが、どのシチュエーションでどの絵を描くかの判断能力も求められるため、シミュレータールームで様々な状況を『ダ・ヴィンチちゃん』に体験させられている。なお、『ゴッホちゃん』や『葛飾北斎』はフォーリナーなので、こちらの宇宙に何かあったら困るため、呼び出していない。
ちなみに、魔法の訓練は継続して受け続けている。
古さん。
武は一日にしてならず。李書文先生の修行を継続するも、目立った成果は見られない。王国のランスマスターでも呼んで必殺技でも伝授してもらうかと聞いたのだが、そういうのは自分で編み出してみせると言われた。
仙人の修行に関しては、術ではなく思想について学んでいる最中らしく、道士として大成してバカレンジャーの名を完全に返上する日が来るかもしれない。
ちう様。
私のスマホの『LINE』を経由して、スマホの中の『シオン』教授から怪しげな技術を学んでいるようだ。私のスマホは他人にタップできないが、ちう様はすでに私のスマホの一部だ。インストールされている『LINE』での他者とのやりとりも、私を中継せずとも可能になっている。
姿を見せないので正直何をやっているのか怪しい限りなのだが、就寝時間に話を聞くと、思考を分割した分身を作ってそれぞれに自爆をさせたらハメ技になるんじゃね? とか言っていた。また変な進化してる……。
楓さん。
甲賀の忍者としては最高位の中忍に位置する彼女。彼女が新たに学ぶべきなのは忍者の技よりも、身軽さを活かした戦闘能力ということになり『天狗コノハ』と『鬼一法眼』の指導を受けている。
原作漫画最終話で彼女のその後は『修行の結果、生身で宇宙を渡れるようになった』と語られている。アークスでもないのにそんな無茶が可能な楓さんのポテンシャルは、非常に高い。
茶々丸さん。
茶々丸は私が置いてきた。修行はしたがハッキリ言ってこの戦いにはついてこれそうもない。などとキティちゃんに言われる危機にある茶々丸さん。スペック不足をどうにかすべく、私はこっそり葉加瀬聡美さんのもとにアークス研究部と研究部所属の子猫達を派遣。超さんの未来技術を超える超科学で、茶々丸さんの新ボディが生まれようとしている。
相坂さん。
彼女はすでに戦闘者としては完成している。スマホの中の宇宙では、麻帆良祭での戦闘データから戦闘プログラムの修正を入れているらしいが、相坂さんが何かをするというわけではない。なので、彼女は楽しそうに皆のサポートに回っている。
私。
あっちへ人を呼び、こっちで人を帰しと、人員の調整で大忙し。正直、自分の修行に専念している暇がないが、みんなが強くなるならそれでもいいかと思っていた。
そう、ダーナ様が来るまでは……。
◆134 仙人の試練
「来たよ」
そう言って別荘の城に姿を見せたダーナ様。初めて見る謎の女性の姿に、皆が修行をしながら横目で様子をうかがってくる。
大方、私のスマホの住人だと思っているのだろうが……とんでもない。こんな、なんでもできそうな超人、スマホ内にもいないよ。
「はい、皆さん。この方は、エヴァンジェリン先生の師匠というとんでもなく偉い方なので、失礼のないようお願いしますねー」
とりあえず、城の外にいた面々に大声で情報を伝える私。いや、本当に失礼のないよう頼みます。
「うら若い乙女達が、せっかくの休みにこんなところに籠もって修行とは、哀しいねえ」
ダーナ様が、私達も気にしている事実をズバッと言ってくる。
いや、ちゃんと定期的に外に出て遊びには行っているよ。ただ、スケジュール的に遊び1:修行9くらいなだけで。
「とりあえず、各々がどんなことしているか見せてもらっていいかい?」
「ええ、構いませんが……」
ダーナ様にアドバイスでも貰えるんだろうか。そう思って、一通り見せて回ったのだが……。
「よくもまあ、モチベーションが持つもんだねぇ。あの子達、自分が何を相手するのかすら知らないんだろう?」
「ええ、まあ。さすがに今から
「悪の秘密結社を倒す、くらいは言っていいんじゃないかい?」
「『
明確に敵とまでは言っていないが、魔法世界の救済という点で目的が被って、戦闘になる可能性はしっかりと教えてある。
「さて、一通り見せてもらったけど……追加で修行が必要な子が一人いるね」
「どなたでしょうか?」
不死者であり現世にあまり口だししないダーナ様が、わざわざ指摘するような子か。誰だろうか。
「仙人の修行をしている子だよ」
「ああ、古さんですか」
「そうそう。あの子はちょっとテコ入れが必要だね。どれ、ちょっとアドバイスしに行こうか」
ダーナ様がそう言って、古さんの方へと向かう。
すると、古さんは建物の中で、『太公望』さんに仙人の教えを受けていた。
「ちょっと失礼するよ」
「む、先ほどのエヴァにゃんの師匠アルか」
古さんが資料を読む手を休めて、こちらに振り返る。すると、ダーナ様はズカズカと室内を進んでいき、彼女が見ている資料を覗き込んだ。
「やっぱりね。あんた、異世界の仙道を学ぶのはいいけど、自分の世界にある仙道を先に学ばないでどうするんだい」
「むむ、どういうことアルか」
古さんは、完全にダーナ様の方へと身体を向けて、ダーナ様の言葉を待った。
「あんたは隣の大陸の出身だろう? この世界の仙道っていうのは、大陸人であるあんた向きに最適化されているんだよ。だから、これを学ぶ前にそっちを学んできな」
「もしかして、仙人の住処に連れていってくれるアルか?」
「ああ、特別サービスだよ。山の麓まで送ってあげよう」
「やったアル! あっ、それって
「そうだよ。知っているのかい?」
「こちらの太公老師が、崑崙行きを希望しているアルヨ」
古さんに紹介され、太公望さんがダーナ様に挨拶する。
「どうも。太公望と申します。地球にいる同名の方とは別人ですけどー」
「確かに、あの坊やとはずいぶんと違うね。それで、崑崙に何か用事があるのかい?」
「この種を植えて、育つか試したいのですよ」
太公望さんが懐から包みを取り出し中を開くと、大きな桃の種が出てきた。
どこか、清涼な気を感じる、そんな種だ。
「こちら、私の出身地神仙郷でしか育たない美味しい桃でして。しかし、今、私達が住んでいる宇宙には、神仙郷に似た土地が存在しておらず、この桃を育てられないのですよ」
「フム、仙桃の仲間かねぇ。その桃が育ったら、私にも融通してくれるというなら連れていってあげるよ」
「本当ですか? ありがとうございます」
神聖な崑崙を侵食する外来植物……。まあ、『UQ HOLDER!』でも仙桃は最後の一個しか残っていなかったっぽいし、新たに生やすくらいは許されるだろうか。
「それじゃ、早速送るよ」
ダーナ様がそう言うと、空中に突然扉が出現した。扉が開くと、その向こう側には山林の風景が。
呪文も唱えないでさらっとこういうことするから、本物の真祖は怖い。
「ちょ、ちょっと待つアル。今からアルか?」
「そうだよ。リンネ、魔法世界への出発はいつだい?」
ダーナ様に尋ねられ、私は素直に答える。
「八月五日の早朝ですね」
「じゃあ、八月四日になったら送り返してあげるよ」
ダーナ様はそう言って、扉の向こうに古さんを放り込んだ。
その後を追うように、太公望さんが部屋のすみで座りこんでいたおとも動物のスープーちゃんにまたがって扉に飛びこむ。
そして、数秒経ってから扉が閉じ、そのままスッと消えてなくなった。
「さて、あの子は何年修行を積んでくるかね」
「え? どういうことですか?」
ダーナ様が妙なことをつぶやいたので、思わず聞き返してしまう。
「内部の時間を圧縮した空間は、なにもダイオラマ魔法球だけじゃないってことさ。老人しかいない仙境に仙術を身につけた有望な若者が来た。でも、一週間ちょっとしか居られない。そうなったら、老人どもは意地でも時間を引き延ばしにかかるよ」
うへえ、古さん、いったいどんな魔改造を受けて帰ってくるのだろうか。
しかし、崑崙に仙人がまだいるとはねえ。『UQ HOLDER!』で桜雨キリヱは崑崙で仙人を見つけたとは言っていなかったが、彼女は仙術を身につけていないからスルーされたとかなんだろうか。
桃の木は三年で育つというし、お土産の桃に期待しよう。
◆135 不死は力、不死は愛、不死は美
あらためて、私はダーナ様の修行を受けることになった。
ちう様もスマホの中から呼び出して、二人で別荘の砂浜に立つ。
「よろしくお願いします、ダーナ様」
「よろしくお願いします」
ちう様と二人でそう挨拶を交わし、修行に入る。
「千雨、無理に敬語を使う必要はないよ。同じ化け物同士だ。上だの下だのバカらしいだろう?」
「……アンタがそういうなら、それでいく。よろしく」
「よろしい」
さて、挨拶は済んだ。どんな修行をするのだろうか。ダーナ様の修行はスパルタ全開のイメージがあるが……。
「武術や魔法の修行は間に合っているようだから、不死者としての修行だけつけるよ。そうだね……」
ダーナ様は、その場でぐるりと右手の人差し指を回した。
「千回くらい死んでみるかい?」
次の瞬間、私の身体は粉々になった。
お、おお?
私はすぐさま身体の再構成を始める。とりあえずは、リソース消費なしのデモンルーンの力だね。
「――ふいー、いやあ、一瞬過ぎて痛みすら感じなかったですね」
ダーナ様が来た時点で、フォトンだとかの身体の頑強さを上げる能力はオフにしてある。なので、簡単に死亡することができた。
「遅いね。目標は五秒以下での復活だよ。さ、次が来るよ」
「へ?」
そしてまた、私はミンチになった。粉々になった身体をルーン文字に分解し、並べ直す。
復活、と同時にまたミンチ。それをひたすら続ける。
砂浜で修行していたネギま部メンバーが、それを驚きの表情で見守っている。というか、顔青いな。そりゃあ、人が死ぬところを見せられているわけで、気分がいいはずもないか。
でも、今後切った張ったの世界に浸るならば、多少のグロ耐性はないとね。
しかし、頭が吹き飛んでいるのに、私、普通に思考ができているね。
これは、あれかな。私の本質は肉体ではなく、魂の方にあるとかそんな感じ。上位の世界から転生してきた私はこの世界の肉体を得たが、身につけている膨大な固有能力は肉体由来ではなく前世の魂由来。
肉体は、上位世界の魂を持つ私がこの世界で活動するための端末でしかなく、壊れたらその都度作り直せばいいだけの物。魂がある限り私は不滅であり、女神様曰く宇宙規模の願いすらも叶えることができるというこの魂は、そうそう傷付けられるものではない。
つまり、魂とは、宇宙とは、神の意思とは――! ドワオ!
じゃなくて、今は肉体を再構成することで復活しているけど、魂を基点に置いて肉体をあらかじめストックしておけば……。
「なんだい、ずいぶんと復活が速くなったじゃないか」
「なんとなぐえっ、自分の不死のぴゅ、理屈がきゃ、分かってちゅ、来ましたあぴゃ」
死と再生を繰り返しながら、私はダーナ様に言った。
どうやらこの分なら、スマホからデモンルーンの力を引き出さなくても、そのうち肉体の再構築方式での復活が可能になりそうだ。
「優秀だねえ。優秀な子には、さらなる試練を与えたくなるよ。よし、十蔵! 獅子巳十蔵、こっちに来な!」
ダーナ様が、離れた場所で刹那さんに指導を行なっていた獅子巳さんを呼ぶ。
「なんだ? 今、いいところだったんだが」
「あんた、不死斬りはできるだろう? それをこの子に使いな」
「俺の不死斬りは、半端な不死者に使ったらそのまま消滅させてしまうのだが……」
「リンネなら大丈夫だよ。千雨はまだ危ういだろうけどね」
「ふむ、それならば」
ぎゃー! 斬られたところが再構築できない! アンデッド由来の不死なら分かるけど、ルーンでの再構築方式の不死まで斬っちゃうの、この人!
治癒能力で元通りになる再生能力とかなら、不死斬りで治らなくなるのは分かる。でも、ルーンでの再構築って、その場その場で肉体を手動で建て直す方式なのに!
うごご、破壊された設計図を書き直さねば……。
「遅いよ! アンタはまだ何種類も不死の能力があるんだ。最初の一項目だけで、ちんたらやっているんじゃないよ」
ああー、やっぱり、灰になって蘇る吸血鬼由来の不死とか、超再生能力を持つホムンクルス由来の不死とか、死んだら寝たベッドで蘇る不死とか、課金アイテムで蘇る不死とかも練習しなきゃいけないよね。
課金アイテムはあまり練習したくないけど、試さないわけにもいかないよねえ……。
「フム。せっかくだ。刹那も斬っておくといい。人を斬る練習になる」
獅子巳さんが物騒なことを言い出したぞ!?
「それはいいね。せっかくだ、リンネには、ここにいる全員の巻き藁役をやってもらおうじゃないか」
巻き藁って……上半身と下半身がズンバラリンか? サンドバッグよりひでえや。
ダーナ様、繊細な子も居るので、あまり攻撃した側がトラウマにならないよう配慮をお願いします……。