【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■58 彼女達の夏

◆136 神の愛

 

 ダーナ様の修行二日目。別荘の城前にて『吸血鬼ラキュア』の力で蘇生を繰り返す訓練を続けていると、ふとキティちゃんがこちらに近づいてきた。魂で知覚できる視界には、彼女の後ろに茶髪の少女が映っている。はて、誰だろうか。

 

「リンネ、少しいいか?」

 

「はい、なんでしょうか。あ、死にながらで失礼しますね」

 

 死に慣れた私は、潰されながらも空気を震わせて声を出すことが可能になっていた。嫌な慣れだよね。

 その死にっぷりをキティちゃんは気にもとめず、私に向けて言う。

 

「こいつは結城夏凜だ。今は変装して結城ミカンと名乗らせている」

 

 おおう、その少女、カリンなのか。なるほど、変装ね。真祖バアルにバレないようにしているわけだ。

 カリン→柑橘類→ミカンというネーミングなのだろうが、結城美柑だとラッキースケベな兄貴がいそうな名前になっているぞ。ジャンプではまだ『To LOVEる』の連載は始まっていないからセーフだが。

 

「初めまして。刻詠リンネと申します。エヴァンジェリン先生の魔法の生徒をしています」

 

「……ええと、よろしく。すごい光景ね」

 

 結城さんが、神聖魔法の光で滅されて灰になり続ける私をドン引きした目で見ている。

 私は灰から身体を再構成しながら、結城さんに言葉を返す。

 

「不死者としての蘇生時間を早める修行中です。結城さんもやります?」

 

「そもそも私は傷つかないから、その修行は無意味ね」

 

 結城さんも不死者の一人で、その不死の力の源泉は『神の呪い』もしくは『神の愛』。

 イスカリオテのユダである彼女は、尊敬する師を裏切った結果、神から不死の呪いを受けた。その呪いにより、彼女は刃を差し込まれようが火で炙られようが瞬時に回復し、いかなる傷も受けない不変の存在となっている。

 たとえダーナ様が潰そうとしても、潰されない。そんな絶対的な不死の能力だ。

 

「過信はいけないよ」

 

 と、そのダーナ様が突然、私達の前に現れる。

 

「あんたがカリンだね?」

 

 そう結城さんに問いかけるダーナ様。

 

「ええ、そうよ。この姿のときはミカンと呼んでちょうだい。ところで、過信とは?」

 

「自分の不死をずいぶんと信用しているのだと思ってね。それだけ神の力を信じているんだろうけど……」

 

「……!」

 

「ただ盲信するだけではいけないね。不死者は、自分の不死を深く理解しなきゃやっていけないよ」

 

 ダーナ様はそう言うと、その場で指を振った。

 すると、空間中に光が瞬き……結城さんの右腕がポトリとその場に落ちた。

 

「!?」

 

 結城さんは、反射的に左腕で右腕の断面に触れる。血が吹き出る様子はない。

 そんな結城さんに、ダーナ様が告げる。

 

「神の力だって、断てる者は世の中にいるのさ。たとえば、あんたの知り合いの十蔵とかね。ほら、そこからどうするんだい? ぼんやりしていても腕は生えてこないよ」

 

「くっ!」

 

 結城さんは、腕を拾って右腕の断面に切れた右腕をくっつけた。

 そして、しばらくしてから腕がつながり、結城さんはホッと息を吐いた。

 

「そこは、くっつけるんじゃなくて腕を生やしてほしかったね」

 

「そんなこと私はできないわ。私は別に再生能力があるわけでは……」

 

「あるさ。別にアンタは、刃を弾く鋼鉄の肉体を持っているわけじゃないだろう? 刃を入れられた先から、復元していっているんだ。それなら、斬られた腕くらい、復元できるはずだよ」

 

「それは……そんなこと、考えたこともなかったわ。私は傷つかないから」

 

「アンタがこれまで腕を落とされたことがなかったのは、単純にそれだけ強い相手と出会わなかっただけのことさ。運が良かったんだね」

 

 いや、神の力を断てる人とか、そうそういないから。神代じゃないんだから。

 しかし、結城さんは本気にしたようで、じっと黙り込む。

 

「どうだい? ミカンもせっかくだから、この子達と一緒に不死者として鍛えていくかい?」

 

「あー、ダーナ。それもいいんだがな……」

 

 と、それまで黙って話の行方を見守っていたキティちゃんが、横から口出しをする。

 

「ミカンは戦闘術の訓練を希望している。リンネに適当な師を見つくろってもらおうと思って来たのだが」

 

 ん? 結城さんがここで修行をするって?

 

「なんでまたそんなことに」

 

 私がそう言うと、キティちゃんは渋い顔で答える。

 

()()が魔法世界に行くと言ったら、付いてくると言って聞かなくてな」

 

「当然です。雪姫様にとって、魔法世界は敵地。そのような場所に一人で向かわせられません」

 

「と、この調子だ。だから、何があってもいいように、強くなってもらわねばならん」

 

 なるほどなるほど。私の中での結城さんは、実力はあるのにいつも負けているイメージだ。もちろんこの本人ではなく、『UQ HOLDER!』においての彼女であるが。あ、でも麻帆良祭で龍宮さんに負けていたな、この人。

 

 しかし、この人の師匠役か……。

 

「聖女『マルタ』……いえ、下手に並行世界の同宗教を呼ぶと、微妙な差異で衝突がありそうですね。ここは思い切って、完全な異教の神官戦士を呼びますか」

 

「リンネ、ちょっと待ちな。この子は私が預かるよ」

 

 神聖魔法に貫かれながらスマホを呼び出そうとした私をダーナ様が止める。

 ふむ、ダーナ様直々の戦闘訓練を受けるのか。それはまた、一気に強くなりそうだな。

 

「ミカン、今のアンタに必要なのは肉体的な強さじゃなくて、精神的な強さだよ。でも、精神(こころ)の問題は私にゃどうにもできない。だから……」

 

 ダーナ様は、結城さんに告げながら指を振る。すると、結城さんの背後に突然、扉が出現した。

 

「どうにかしてもらってきな」

 

「え?」

 

 結城さんがそんな言葉をもらすと同時に背後の扉が開き、結城さんは中へと吸い込まれていった。

 そして、すぐさま扉が閉じる。いったいどこに通じていたのだろう。

 

「ダーナ、ミカンをどこへやったのだ?」

 

 キティちゃんが、私の気になっていたことを代わりに聞いてくれた。

 すると、ダーナ様は不敵に笑って言った。

 

「あの子を愛している神の御許(みもと)にさ。今頃、愛しの師に懺悔でもしているだろうね。帰ってくる頃には、最上級の神聖魔法だろうが軽々と使いこなしてみせるようになるよ。もっとも、帰ってくるかは分からないけれどね」

 

 うわあ、それは……。

 

「帰ってこないんじゃありません?」

 

 私がそう言うと、ダーナ様は軽く笑い、キティちゃんは複雑な表情を浮かべた。

 キティちゃん的には、結城さんが昇天するのは彼女の幸せ的にありなんだろうけど、それでも自分じゃなくて師を選ばれることは色々思うところがあるだろうね。

 しかし、結城さんの不死の源になっている神様って、やっぱりこの世界では実在していたんだねぇ。

 

 

 

◆137 メディカルチェック

 

 ダーナ様の蘇生修行が無事終了した。

 私は複数の蘇生手段をスマホから引き出すことなく行使できるようになり、ちう様は蘇生時間が五秒まで縮まった。

 さらにちう様は、情報生命体として存在がより強固になったようで、そのパワーに引っ張られて金星から引き出せる力もより強くなったと言っていた。なんでも、上級悪魔相当の肉体を構築できるのだとか。相変わらず変な進化しているな、ちう様……。

 

 そして現在、死亡と蘇生を繰り返した私は自分がおかしくなっていないか、念のためメディカルチェックを受けることにした。

 デモンルーンの再構築訓練では、自分で自分を組み直したからね。不具合がないかチェックは必要だろう。

 

 アークス特製の機材を別荘に取り出し、ルーサーを筆頭にした医療班に身体スキャンを受ける。

 検査結果はすぐに出て、私は城の一室でルーサーに説明を受ける。

 

 その冒頭で、言われた一言がこちら。

 

「もはや地球人類の肉体ではないね」

 

 ……どういうことだってばよ!

 いや待って、私、マナヒューマンの改造手術とか受けた覚えはないんだけど。

 

「オーナーは、おかしいとは思わなかったのかい? スマートフォンから能力を引き出して使い続けていれば、その能力が身についていくという事実に」

 

「ん? それと肉体の変容に何か関係が?」

 

「明らかに、地球人の肉体を凌駕(りょうが)する能力も、身につけたことがあるだろう? それで、なぜ普通の人類のままでいられると思ったんだい?」

 

 ……ぐうの音も出ないや。

 

「今やオーナーは、力を引き出すことなくフォトンを自在に操ることができるだろうし、そもそも肉の身体に縛られない精神的な存在にもなっている。それだけ、能力を酷使し続けてきたということだね」

 

「えーと、つまり私は、常に自分の能力に改造を受け続けているような状態と……?」

 

「その通りだ。改造手術の手間が省けるね」

 

 おおう、ルーサーの改造手術を遠慮していたら、そもそも改造を受ける前から改造済みだったとは。

 あれ、でもちょっと待てよ……。

 

「引き出している種族の弱点とかまで継承していないですよね?」

 

「そこは問題ないよ。日の光にも神聖な力にも弱くないし、悪魔払いの力も効かない。オーナーの能力は、ずいぶんと融通が利くと見える」

 

 よかった。種族の力が身につくたび、新しい弱点追加とか、大変なことになるところだった。

 しかし、地球人類ではないか……。

 

「私、ちゃんと地球人の子供産めるんですかね」

 

「安心したまえ。オラクルでは、試験管ベビーの技術が完全に確立しているよ」

 

 いや、そうじゃないから。

 まあ、子供の心配をするにも、相手がいないんじゃ意味がないんだけどね!

 

 

 

◆138 ねこねこ動画

 

 修行ばかりでは息も詰まるということで、本日ネギま部は早乙女さんに連れられて、東京ビッグサイトで開かれているお祭りに向かっている。

 私もそれに同行……はしていなかった。

 私がいるのは東京にある、とあるデータセンター。同行者は、ちう様、葉加瀬聡美さん、朝倉和美さん、そして麻帆良大学の有志数名。

 

「いやあ、まさか学生ベンチャー起業とは思ってもいませんでした」

 

 ラックに取り付けられたサーバマシンを見ながら、葉加瀬さんがしみじみと言う。

 すると、朝倉さんもその話に乗ってきた。

 

「そうだよ。まさか、『まほら武道会』の優勝賞金で起業とか、びっくりだね」

 

 学生ベンチャー。起業。データセンター。

 そう、私は『まほら武道会』の優勝賞金一千万円を使って、ウェブサービスのベンチャーを立ち上げていた。

 巻き込んだのは、ここにいる葉加瀬さんと朝倉さん、そしてちう様だ。

 

「動画サイトとは、思い切ったことをしますね。確かに、麻帆良祭のときにそんなサイトがあったら、動画の拡散がもっと楽だったとは思いますが」

 

 私が立ち上げたウェブサービスは、動画共有サービス『ねこねこ動画』。簡単に言うと、一足早い『YouTube』だ。

 名前の由来になったモンスタースペックの子猫製サーバを見ながら、私は言う。

 

「例の開拓事業では、人々への情報発信が必要になります。その時、細かいことまでいちいち世界各国の報道機関なんて通していられません。ですから、ネットで情報発信ができる場を最初から作っておくわけです」

 

 麻帆良祭で超さんがネット工作をした際、私は2003年時点ではネットで動画を見る人が少ないことを述べた。その原因は『YouTube』が存在しないことなのだが、それならば自分達で作ってしまえばいいという発想である。

 ちなみに『ねこねこ動画』は『ニコニコ動画』のもじりだが、日本一国だけのサービスではないので視聴者コメントの字幕機能はつけていない。視聴者の使用言語がバラバラだからね。

 

「話のスケールが違うわー。それで学生ベンチャーを起こす行動力も驚きだよ」

 

 呆れているのか感心しているのか、朝倉さんがそんなことを言った。

 

「麻帆良の学生ベンチャーには、『超包子』という先人がいますので」

 

「それで私を誘ったわけなんですねー」

 

 先ほどまでのサーバのマウント作業を楽しそうな目で見ていた葉加瀬さんが、そう言った。彼女は料理屋台『超包子』の一員でもある、クラスメートだ。

 この動画共有サービスを立ち上げるにあたって、裏の事情をよく知る幹部として葉加瀬さんのことを迎え入れた。ついでに彼女は、超さんの計画が潰えて余っていた資金の運用先にしたいということで、事業への投資までしてくれた。

 

 サーバマシンの用意やサイト監視用AIの開発等は、スマホの中の宇宙で済ませているので、こちらの世界における開発費用は限りなくゼロに近い。でも、ウェブサービスである以上、ランニングコストはかかるからね。

 運営も子猫製のAIが行なうので人件費もそれほどかからないのだが、それでも現実で動く人達の給料は必要だ。今日同行してくれた麻帆良大学の人達の給金とかね。動画系サイトには必須であろう法務部も設立したし。

 

 他にも、サービスが始まったばかりの今は、ネット経由ではなく足で広告主を探す必要も出てくる。

 そこで役立つのが……。

 

「いやー、私も、ネギま部に入れてもらえないからハブられたのかと思っていたけど、まさか広報室長とはねー」

 

 朝倉さんの存在だ。裏の事情をよく知っていて、人脈があって、動画も撮り慣れている。まさにドンピシャな人材だった。それに、朝倉さんを夏休みの間、地球に釘付けにしておく必要がある。というのも……。

 

「ネギま部は危険な遠征がありますから、朝倉さんはメンバー入りさせられないんですよ」

 

 彼女を敵が待つ魔法世界には、連れていきたくなかった。

 

「確かに、私じゃ切った張ったはできないわね。大人しく、夏休みは広告主探しを頑張りますか」

 

「配信業の方もよろしくおねがいしますよ。世界初の『CatCaster』さん」

 

『CatCaster』。『ねこねこ動画』における『YouTuber』のことだ。この呼称は正直定着しない気がするが、公式ではとりあえずその呼称でまずは様子を見る。つまり朝倉さんには、自ら動画を撮って配信者として頑張ってもらう。

 ライブ配信機能も付けたが、こちらはまだブロードバンド回線が世間に広まりきっていないのでそれほど人気は出ないだろう。

 だが、通常の動画の方はスマホの中の宇宙でインターネットを満喫している子猫達がノウハウを蓄積しており、朝倉さんに余すことなく伝えていた。朝倉さんが人気配信者になる日も近いかもしれない。

 

「よし、AI達も居心地は悪くないそーだ」

 

 先ほどから黙ってサーバを見つめていたちう様が、突然そんな言葉を発した。

 彼女は、電子情報生命体としての力を使い、サーバマシンの中に組み込まれている管理AIとやりとりをしていたのだ。

 

「便利な能力ですねー。情報生命体ですか。私も、サイボーグの研究しようかなー」

 

 葉加瀬さんが、目を輝かせてちう様のことを見た。

 ふーむ、サイボーグか。

 

「私の宇宙に、キャストという機械化した人達が存在しますが、改造手術受けます?」

 

 私がそう葉加瀬さんに問いかけるが、葉加瀬は「分かってないですね」と返してきた。

 

「自分で技術を確立するのがいいんですよ。まあ、今回の子猫達の技術は、あますことなく吸収させてもらいますけどね」

 

「そこは、存分に。別に、未来に生まれるはずの技術を先取りして潰しているというわけでもないので、大いに参考にしてください」

 

「うんうん。茶々丸のニューボディもすごいことになるから、期待していてくださいね」

 

 葉加瀬さんのところには、茶々丸さん強化のためにアークス研究部を派遣しているんだよね。

 フォトン関連技術も当然見せていて、葉加瀬さんは地球で初めてのフォトン研究者ということになる。

『ねこねこ計画書』が魔法世界で通って開拓を始めたとき、葉加瀬さんはフォトンの第一人者として扱われることになりそうだ。事業への投資の見返りとしては十分だろう。もちろん、配当金も出すけどね。

 

「茶々丸さんはあっちに連れていきますが、技術者は残していくので『ねこねこ動画』の方はよろしくお願いしますね。私にメールをすれば、あっちがどんな状況だろうが届きますので」

 

「刻詠さんのあの携帯端末が一番ふざけた存在ですよねー……科学ガジェットに見せかけて、神秘の塊という」

 

 葉加瀬さんがジト目でこちらを見てくるが、そこはまあ、諦めてもらおうか。

 世の中には、不思議や神秘が確かに存在するのだ。

 

 そうして、サーバマシンの設置作業は無事に終わり、麻帆良に戻ってリモートで『ねこねこ動画』のサービスを開始した。

 

 事前の口コミと、ちう様のネット工作により、日本からのアクセスは順調に増えていった。

 そして、予想通り映画丸ごとやR-18のエロ動画等のイリーガルなアップロード地獄になりかけたが……AIによって全て阻止され、健全な動画のみが残された。

 

 ネギま部のみんなもこのサービスを知り、部員の間でも動画を撮ろうという話になった。そこで、別荘の外に出かけてちう様による八極拳の演舞を撮影したり、私が寄付をしている保護猫センターで猫動画を撮らせてもらったりした。

 可愛らしい拳法女子中学生や猫の姿は、ネット民のハートをわしづかみにしたようで、再生回数は上々。事業は順調な滑り出しを見せたのだった。

 

 ところであやかさん、火星開拓事業が終わった後、役目を終えたこのサービスを雪広グループで買い取るつもりありませんか?

 




※2003年の夏コミは8月15日~8月17日の開催。原作でネギ先生達が魔法世界のためにイギリスへ旅立ったのは8月12日。つまり原作でネギ先生達が行った東京ビッグサイトのお祭りは、夏コミではない……?
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