【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆148 メガロメセンブリア元老院議員
桃源神鳴流の方々との握手が終わり、ネギま部のメンバーも受付を終えてこちらへと戻ってきた。
さて、とりあえず部屋に行って荷物を仕舞ってこようか。と思ったところで、エントランスの方からどよめきが聞こえてきた。
はて、なんだろうか。ネギくんを超える有名人でもやってきたのかな。
そう思っていると、ラウンジに甲冑姿の騎士が入場してきた。
本当になんなんだ、と思ったら、騎士が高らかに告げた。
「リカード元老院議員のご来場です」
すると、スーツ姿の長身の男が、ラウンジに入ってきた。アゴヒゲを生やし独特の髪型をした黒髪の中年だ。
「おーう、英雄の息子はどこだー、っと失礼、桃源の方々がいらっしゃったとは」
スーツの男が自然体で進み出てきたかと思うと、途中で桃源神鳴流の男達を目に留めて急に姿勢を正した。
すると、雪姫先生の横にいた桃源神鳴流の方々も姿勢を正し、男に挨拶をする。
「これはこれは、リカード殿。ご無沙汰しております」
「まさかここにご滞在とは。先の魔獣退治では大変お世話になりました。あそこはウチの管轄外で微妙な空白地帯でしてな。艦隊を出せなくて困っていたのですよ」
「なんのなんの。人に
「いやはや、本当に頼もしい限りですな!」
そんないかにもなやりとりを目の前で繰り広げられて、若干ネギくんが困惑している。
そんなネギくんに、私は小声で教えてあげる。
「あの方は、おそらくメガロメセンブリアの元老院議員の方です。主席外交官のはずですよ」
「外交官、なるほど、だから桃源神鳴流の方と親しげなんですね」
「ええ、桃源神鳴流は北方に桃源という国を持っていますからね」
そんな外交官と国の代表者達の挨拶は終わり、あらためて男性がこちらに振り向く。
「赤毛の少年……お前がネギか!」
外交官らしい姿勢から一転、男が豪快な笑みでネギくんに言った。
「はい、ネギ・スプリングフィールドです。よろしくお願いします」
「おう、俺様はケチな政治屋やってるリカードってもんよ。よろしくな!」
ネギくんとリカード元老院議員は、笑顔で握手を交わした。今度の握手は、ファンへのサービスじゃなくて友好の握手だね。
そして、腰をかがめて握手をしていたリカード元老院議員は、手を離すと腰に手を当てて話し始めた。
「さて、俺がわざわざ訪ねてきて驚いていることだろうが、これには訳があってな……お前達、『
その問いに、ネギくんが答える。
「はい、今日の午後からの面会予定です」
「それなんだが実は……予定をすっぽかされた! こちらに向かっていないよーだな!」
「え、ええー!」
やっぱり。
魔法世界入り初日の今日は、『ねこねこ計画書』の方はお休みして、ナギ・スプリングフィールドの行方を捜すために行動するはずだった。高畑先生が『
だが、ジャック・ラカンは自由すぎる男。わざわざこんな都会までやってくるはずがなかった。
「ハッハッハ! あいつは昔からそんな奴だ! そんで、魔法世界と麻帆良の間で外交問題になるかもしれんって言われて、俺が代わりにやってきたわけだ。俺は『紅き翼』のメンバーじゃないが、それなりにラカンの奴とは親しいからな」
「なるほど、そういうことでしたか。外交問題にするつもりはないので、安心してください」
「おう、ありがとな! それで、来たついでに例の計画の話を聞きてえ。どこか落ち着ける場所で話さねえか?」
落ち着ける場所か。さすがに不特定多数がいるラウンジで、魔法世界の崩壊について話すわけにもいくまい。
ホテルに場所を借りられるかな、と思ったら、大人しくしていたマクギネスさんが近づいてきて、ネギくんに耳打ちした。そして、ホテルの鍵らしきカードを渡す。
「あの、僕の泊まる部屋が、ロイヤルスイートらしいので、そちらに移動しませんか?」
「なにい!? このホテルのロイヤルスイートだと! 俺の給料でもそんなに気軽には泊まれんぞ!」
ネギくんの言葉に、驚きの声を上げるリカード元老院議員。
高級宿のロイヤルスイートと来たか……雪広コンツェルン、本気出したなぁ。
◆149 悪の魔法使い
宿の最上階にある部屋に移動し、用意されているソファや椅子にそれぞれが座る。ちなみに、桃源神鳴流の方々は着いてきていない。彼らはあくまでネギくんと顔通しをしたかっただけみたいだからね。
部屋につくなり茶々丸さんが率先して動き、皆にお茶を淹れ始める。
私はコーヒーが飲みたいので自分で淹れると言ったら、リカード元老院議員とネギくんもコーヒーを要求してきた。ネギくん、最近コーヒーにはまっているな?
やがて飲み物が行き渡り、腰を落ち着けて話し合える形になる。
そこで、早速、リカード元老院議員が口を開いた。
「魔法世界救済計画、外交部の方で見せてもらったが、ちと揉めている」
ふむ、どこが不味かったのかな。
「
「ああ、なんだ。それですか……」
思わず、私はそんな声を上げていた。
それを聞きとがめたリカード元老院議員が、私に向けて言う。
「なんだ、か。まるで大した問題じゃねえように言うな」
「エヴァンジェリン先生を計画立案者として載せたのは、それなりの理由があるのですよ。そうですね、まずはこちらをご覧いただければと」
私は、荷物の中から一枚のカードを取り出して、テーブルの上に置いた。
「それは?」
「これは、そうですね、ショートフィルムです。四十分で終わりますので、軽食をいただきながら鑑賞しましょう」
私はそう言って、カードに描かれている再生マークを押した。
すると、映像が空間投影されて流れ始める。そのタイトルは……。
『ダーク・エヴァンジェル物語』
それを見た雪姫先生が、勢いよくこちらに振り返る。
「おい、リンネ!」
「まあまあ、まずは観てみましょうよ」
スマホの中からお菓子を取り出しながら、私は雪姫先生をなだめた。
そして、物語は始まる。四頭身の3DCGキャラクターで描かれたムービーだ。
時は中世。悪の魔法使いの手によって、不死者にさせられた幼い少女がいた。名をエヴァンジェリン。
彼女は、魔女狩りが横行するその時代を必死に生きた。魔法を身につけ、ヨーロッパを放浪する。
そんなあるとき、彼女は別の不死者を見つける。名をカリン。エヴァンジェリンは彼女と協力して、人々を虐げていた悪の魔法使いを退治することとなった。
だが、その魔法使いは別の世界から地球へとやってきた侵略者だった。
悪の魔法使いは侵略者の中でも大物だったらしく、異世界からやってきた人々は、侵略の邪魔になるエヴァンジェリンを目の敵にするようになった。
異世界人は組織化してエヴァンジェリンを襲撃し続ける。一方で、エヴァンジェリンも仲間を増やし、さらに人形の軍勢を操って侵略者に対抗していった。
十年、二十年と世界の裏側で戦い続け、やがてエヴァンジェリンは侵略者達を故郷の地、
魔法使いの都市に忍びこみ、侵略を行なっている首領のもとへと辿り着いたエヴァンジェリン。
首領を追い詰めるも、その黒幕である人の姿をした怪物に返り討ちにあった。
だが、エヴァンジェリンは諦めない。首領が操る魔法の兵団と戦争を繰り広げ、そのことごとくを打ち払った。
やがて、首領とエヴァンジェリンの間で講和会談が行なわれることになった。
地球に手を出さないならば、首領の命は取らない。そう約束しようとした場で、首領はエヴァンジェリンをだまし討ちにする。
しかし、それを見抜いていたエヴァンジェリンは、極大魔法で首領の兵をなぎ払った。
その事件で、魔法世界の非侵略派が盛り返し、地球への侵略は行なわれなくなったが……エヴァンジェリンは生き延びていた首領の手によって賞金首となり、懸賞金を懸けられることになった。
お尋ね者になったエヴァンジェリンは、仲間のカリンと共に逃亡生活を始める。
魔法世界と地球双方の魔法使いから狙われる二人。そして、とうとう黒幕の怪物がエヴァンジェリン達を襲撃した。
その結果、カリンは封印され、エヴァンジェリンは一人になった。
心の支えを失ったエヴァンジェリンは、襲いかかる刺客や賞金稼ぎを返り討ちにし続け、やがてその賞金額は現代の価値で六百万ドルに上るほどになった。
心は闇に沈み、ただ一人で無為に生き続ける日々。
そんな彼女に、一筋の光が差し込んだ。ナギ・スプリングフィールドと出会ったのだ。
ナギ・スプリングフィールドとしばらく旅をしたエヴァンジェリンは、彼に心惹かれるようになった。
そんなエヴァンジェリンに、ナギ・スプリングフィールドは一つの魔法をかける。
登校地獄の呪い。彼は彼女に、光に生きてみろと諭した。そうしたら、そのときは呪いを解きに迎えにいくと。
それ以来、エヴァンジェリンは一人の少女として光の中で生きている……。
THE END!
「……おい、リンネ、どういうことだこれは」
自分の恥ずかしい過去を勝手に映像化された雪姫先生が、プルプルと震えて怒っている。
だが、待ってほしい。
「ちゃんとカリンさんの許諾は得ていますので」
「本人の許諾は得ていないだろーが!」
まあ、そう怒らない、怒らない。
で、このショートフィルムをポップコーン的なお菓子片手に観ていたリカード元老院議員は、いったいどんな反応だろうか。
「やっべえな、この映画」
「やっべえですか。どんなところがですか?」
私は、リカード元老院議員に問い返した。すると、彼は真面目な顔をして答える。
「観る者が観れば、旧世界を攻めた新世界人の正体が、メガロメセンブリアの上の人間だと理解できてしまう。もし事実だとしたら、とんでもない映像だぞ、これは」
「事実ですよ。当時を生きた不死者の方々に証言をいただいていますし、他にも情報閲覧系のアーティファクトで、事実だと裏付けが取れています」
「なんていうアーティファクトだ?」
その問いに、私は夕映さんの方を見ないようにしながら答える。
「『
「あれかー……。むう……とにかく、メガロメセンブリアとしては、この映像を無闇に流されては困る」
そう言われたので、私は映像カードをリカード元老院議員に引き渡し、さらに別のカードの束を荷物から取り出した。
「では、こちらの三十分で観られるマイルド版を使いましょう。あまり魔法世界側の描写を掘り下げずに、地球に手を伸ばす謎の魔法世界の勢力と闇の福音が戦った感じに変えてあります」
「それならいいが……そもそもこの映像を何に使うつもりだ。闇の福音は実は悪人ではなかったと、広めて回る気か? 無駄だと思うがな」
「いえ、それは無理だと私達も分かっています」
「だとしたら、狙いはなんだ?」
「
私のその言葉に、リカード元老院議員は怪訝な顔をした。
それを気にせず、私は言葉を続ける。
「火星の開拓で魔法世界を救った功績をもって、エヴァンジェリン先生の賞金首を完全に撤回してもらいたいと、私達は考えています」
「無茶を言う……確かに、メガロメセンブリアによる旧世界への侵略はあったかもしれねえ。だが、あいつは関係ない魔法使いを返り討ちにしすぎた」
「ええ、先生が悪ではないなどと主張するつもりもありません。ゆえに、恩赦と。この映像は、彼女を野に解き放っても、実害がないことを示すためのものです」
私がそう言うと、リカード元老院議員は、大きなため息を吐いた。
そして、ネギくんの方を見て言った。
「それがお前達の総意で間違いないか?」
すると、ネギくんだけでなくネギま部の面々が口々に「間違いありません」と答えていった。唯一、雪姫先生が「いや……」と否定をしかけたが、賛成多数なのでこれがネギま部の総意である。
すると、リカード元老院議員は、唐突に大声で笑い始めた。
「くははは! いいぜ、そういう目的があった方がこっちもやりやすい。旧世界人が慈善で新世界を救うってことに、懐疑的なやつも居たんだ。闇の福音の恩赦なんつーでけえ目的があるなら、そいつらも文句は言わねえだろうさ」
膝を叩いておかしそうにするリカード元老院議員。
そんな彼に、ネギくんが心配そうに言った。
「恩赦は通りますか?」
「俺が通す。世界を一個救ってもらうんだ。それくらいの見返りをやらねえと、新世界人としてお前達に恩を返しきれなくなっちまう」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「おう。じゃあ、そっちのカードも受け取っていいんだな?」
リカード元老院議員が、マイルド版の映像カードの束を見て言った。
私は、そのカードを受け渡しながら答える。
「複製も自由にどうぞ。なんなら、まほネットに流してしまっても構いませんよ」
「アホ、こういうのは出すべきタイミングってのがあるんだよ。外交のプロに任せておけ」
あー、主席外交官だもんね。そういうのは得意だろうさ。
そして、カードの束を手の中でいじりながら、リカード元老院議員は言う。
「恩赦っつー明確な目的があって動くなら、やる気も十分と見るぞ。ネギ。明日からはバンバン挨拶回りをしてもらうから、覚悟しておけよ」
「よろしくお願いします!」
ネギくんが、元気にそう返事をした。どうなることかと思ったが、元老院議員の一人に好感触を与えられたのは大きいな。
「よし、じゃあ、明日からの予定を詰めるぞ。さすがにその人数を全員連れていくわけにもいかんから、残りは観光をしてもらうことになるだろうが……」
そして、そこから始まった打ち合わせで、リカード元老院議員はこちらが持つさらなる手札に驚いていた。あやかさんが持つアーティファクト『白薔薇の先触れ』は、まさしく切り札であると。
使わないに越したことはないが、選択肢が一気に広がると喜んでいた。
無茶な使い方をしないといいが……まあ主席外交官なら大丈夫かな。
こうして私達は、魔法世界への来訪一日目にして、力強い味方を得ることができたのだった。