【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■64 メガロメセンブリア拳闘大会

◆153 努力・友情・勝利

 

 夏のメガロメセンブリア拳闘大会。またの名をナギ・スプリングフィールド杯メガロメセンブリア予選。

 メガロメセンブリアにある競技場を使って行なわれるその戦いで、ネギくんと小太郎くんは快進撃を続けていた。

 

「はっはっは! 強えじゃねえか! 本当にお前ら十歳か?」

 

 戦いを終えてバトルステージから下がったネギくんの肩をリカード元老院議員が勢いよく叩く。

 今回の戦いは無傷の勝利だった。むしろゴリマッチョのリカード元老院議員の手で初めてダメージを負ったんじゃないかというくらい、順調に勝ち進んでいる。

 

 拳闘試合は武器の使用が可能で、四人の選手が同時に入り乱れて戦う。『まほら武道会』のように呪文詠唱の禁止などということもなく、大魔法がバンバン飛び交う激しい戦いだ。

 試合は相手チーム全員の死亡、戦闘不能、ギブアップで決着が付く。気絶、ダウン状態になった選手はカウント20で戦闘不能扱いだ。

 

 武器使用可となると、刃物を持った方が有利に見えるが、気や魔力が絡むとそうとは言い切れなくなる。そもそもが気をまとって思いっきり素手で殴れば、岩が砕けるのだ。武器の有無はリーチの差でしかないし、リーチの差は気弾を飛ばせば簡単に埋まる。

 ただし、ネギくんのように一級品の魔剣を持っているとかだと話は変わるが。

 しかもネギくん、風王結界(インビジブル・エア)で魔剣の姿を隠しているので、相手はそのヤバさに気づけない。姿が見えない魔剣で魔法障壁をバターのように切って、そこに峰打ちをしてダウン&20カウントというのが一番最初の試合の終わり方だったね。

 さすがに勝利を重ねた今では相手も見えない魔剣を警戒しているが、距離を取ったら今度はネギくんの強力な魔力による魔法の餌食となる。近づいてもダメ、離れてもダメ。相手が可哀想になる強さだね。

 

「なんや、魔法世界言うてもそこまで怖ないな。てっきり十蔵兄ちゃんみたいなのが待ち受けている思うていたわ」

 

 そう余裕そうに話すのは、小太郎くんだ。

 うん、獅子巳さんみたいなのがそうゴロゴロ転がっていたら困るけどね。あれは、魔法世界と地球両方合わせてもトップ層の達人だよ。魔法世界にも武を極めた達人はいるだろうけど、そうそう拳闘大会みたいな見世物には出ないんじゃないかなぁ。

 

「十蔵が誰かは知らんが、お前達に匹敵する強さで拳闘大会に出られるような自由人は、少なくともメガロメセンブリアにはいねえな。オスティアの予選大会への出場は確実だろうよ」

 

 リカード元老院議員が、ネギくんの肩を叩くのをやめ、満足そうにそう言った。うん、メガロメセンブリアで力を示すという目論見は成功しそうだね。

 

「今となっちゃあ、面会を拒むどころか向こうから会わせてくれって希望が殺到する始末だ。ネギ、リンネ、今日はこれから計画の説明に向かってもらうぞ」

 

「本当ですか? 頑張りますね!」

 

 ネギくんが嬉しそうに顔をほころばせながら言った。

 私も、計画書の説明手順を頭の中で再確認しながら、リカード元老院議員にうなずいた。

 

 ネギくんは拳闘に面会にと忙しいこと極まりないが、彼はまだ十歳の子供。過労にならないよう、気を付けてあげないとね。

 

 

 

◆154 カゲタロウ

 

 そして、地方予選の開始から約半月後。ネギくんと小太郎くんは、とうとう予選決勝に勝ち進んだ。

 現在、ネギま部全員で試合を観戦中だ。

 

『強い、ネギ選手強い! 相手選手の岩石魔法を物ともせず、圧倒的剣技でダウンを奪ったー! いや、そもそもネギ選手の武器は、本当に剣なのか!? その全容は最後まで明かされませんでした! カウント20! 夏のメガロメセンブリア拳闘大会は、ナギ・スプリングフィールドの息子ネギ選手と謎の犬耳少年小太郎選手が、栄冠を手にすることとなりました!』

 

 ネギくん達の勝利に、ネギま部一同が一斉に歓声をあげた。

 競技場も大盛り上がりとなり、割れんばかりの歓声と拍手は地響きすら感じる。

 

 ネギくんと小太郎くんは、観客席に手を振りながらバトルステージの中央から退出していく。

 だが、そのとき思いもよらぬ事態が起きた。

 競技場の上空から、闇が降りてきたのだ。

 

 それは、黒い影でできた槍の雨。影魔法による攻撃だ。

 だが、ネギくんと小太郎くんはそれに動じず、それぞれの得物で影の槍を打ち払った。

 

『な、なんだー!? いったい何が起きたんだー!』

 

 競技場の中央に、何物かが空から舞い降りてくる。

 黒衣に包まれた、仮面の人物。

 え、いやいや。ちょっと待て。もしかしてアレか。これカゲタロウか!?

 

「我が名はカゲタロウ! ナギ・スプリングフィールドの遺児とお見受けする! いざ尋常に勝負せよ!」

 

 やっぱカゲタロウだー! 大戦期『紅き翼(アラルブラ)』と戦ったという歴戦の猛者だ。まあ、『紅き翼』には負けたらしいけど。

 もしかして、ネギくんの噂を聞いてメガロメセンブリアまでやってきたのか!?

 

『おおっとー! 乱入者、乱入者です! ネギ選手、いったいどうするー!? その挑戦を受けるのかー!』

 

 アナウンサーが戦いをあおる! まさかの事態に、観客席はさらに盛り上がった。

 いったいどうするのかと見守っていたら、ネギくんの周囲に風が集まり、腰の鞘に収めていた魔剣を抜剣した。風王結界(インビジブル・エア)で隠された魔剣をネギくんは両手で構える。

 そして、小太郎くんもすぐに臨戦態勢に入った。

 

『ネギ選手は挑戦を受けるようだ! カゲタロウ選手、その実力やいかにー!?』

 

 そこから、激しいバトルが始まった。

 今までの予選とは比べ物にならないほど、高度な戦いが繰り広げられる。

 

 カゲタロウの使う影。それは、かつて『まほら武道会』で高音さんが披露していたものと同系統の術。

 だが、練度は大違いだ。無詠唱で繰り出される変幻自在な影が二人を襲い、遠距離から二人を串刺しにしようとする。

 

 ネギくんと小太郎くんはこれを的確に武器で打ち払っていくが、弾幕は厚く、なかなか近づけない。

 数分間、その激しい攻撃は続き、完全に膠着状態に陥る。そこで不意に、小太郎くんが前へと突っ込んだ。

 影が嵐のように小太郎くんを襲うが、彼は余裕の笑みを浮かべてその影を回避していく。小太郎くんは、修行の結果、驚くべきほどの直感を身につけているのだ。

 

 そして、カゲタロウに肉薄した小太郎くんは、至近距離からの連打を浴びせる。

 しかし、カゲタロウは影を身にまといそれを防いでいき、逆に影をまとった巨大な腕で小太郎くんを殴り飛ばしてしまった。

 後方へと吹き飛んでいく小太郎くん。だが、それは彼の狙い通りだった。小太郎くんが時間を稼いでいる間に、ネギくんの呪文詠唱が完了していたのだ。

 

「『千の雷(キーリプル・アストラペー)』!」

 

 雷系最大の魔法が、競技場を白く染める。

 

『こ、これは、ナギ・スプリングフィールドの代名詞、『千の雷』だー! やはり英雄の息子は、父と同じく雷の申し子だった! というか、カゲタロウ選手は無事なのか! 消し飛んでしまっていないかー!?』

 

 膨大な雷の嵐が去ると、そこには……影をドームのように展開して、『千の雷』を耐えたカゲタロウの姿があった。

 驚きに包まれる観客席。だが、驚いていたのは観客だけで、ネギくんは相手の実力から耐えることを想定していたのだろう。魔法の雷の中に突っ込んで、さりげなくカゲタロウに近づいていた。

 

 周囲の状況を確認するためか、カゲタロウが影のドームを解きにかかった、その瞬間。ネギくんが魔剣を大上段に構えた。すると、魔力の奔流(ほんりゅう)風王結界(インビジブル・エア)が解かれ、その刀身が露わになる。

 魔剣が『雷公竜の心臓』の魔力を受けて、白く強く輝く。

 

とくと見よ(Behold)! 『白き翼(ALA ALBA)』!」

 

 魔剣の力が解放され、白い光が競技場を埋め尽くす。

 

『ネギ選手の剣から何かが炸裂したー! まさかこれは彼のアーティファクトなのかー!? 今度こそ、カゲタロウ選手、消し飛んだか!?』

 

 光が収まり、舞い散っていた土煙が晴れる。剣を振り下ろした格好のネギくんがまず見えた。

 そして、カゲタロウの姿はというと……地面に膝を突いており、その彼の前になぜか褐色長身の男が仁王立ちしていた。

 

 いやいやいや。まさか。まさかあの男は……。

 

『な、なんとー! あれは、あのお方はー! まさかのまさか、伝説の英雄ジャック・ラカンだー!』

 

 大戦争でのナギ・スプリングフィールドの仲間、『紅き翼(アラルブラ)』の一人がそこにいた。

 というか、何? え? 魔剣解放の一撃、肉体で受けて弾いたの?

 剣が刺さらないとか言われているバグキャラとして有名な彼だが、村正お爺ちゃんの魔剣を防ぐとか……。

 

「くっくっく……」

 

 ジャック・ラカンが仁王立ちしながら不敵に笑う。

 そして……。

 

「くはあっ!」

 

 盛大に血を吐いた。

 え、ええー。魔剣効いていたのかい!

 

「痛えな、こんちくしょう!」

 

 そして、血を口から垂れ流しながら、ネギくんを思いっきり殴り飛ばした。

 ええー、何この状況。

 

「あー、クソ。ナギの息子の野郎。良い一撃放ちやがって。おいコラ、ネギとか言ったな!」

 

 ジャック・ラカンに怒鳴られ、吹き飛んでいたネギくんが起き上がる。

 

「はい、ネギですが……」

 

「この勝負、俺、ジャック・ラカンが預かった!」

 

 ジャック・ラカンは自分を親指で指差し、そんな宣言をした。

 

「これほどの強者同士の戦い、こんな乱入戦で決着を付けるのは勿体ねえと思わねえか? 勝負はオスティアの本戦で付けろ!」

 

 その言葉に、観客がどよめく。

 さらに、ジャック・ラカンは言葉を続けた。

 

「そして、ネギ。周囲に自分の実力を示すだの、息巻いているそーだな。ならば、お前の力、俺様が見極めてやる。だから俺は……こいつと組んで、オスティアの大会に出る!」

 

 その宣言に、観客席が沸いた。最強の拳闘士、伝説の英雄、無敵の傭兵が、数年ぶりに表舞台で戦いを見せるというのだ。競技場に戦いを見に来ている拳闘ファンが沸かないはずがなかった。

 ラカンコールが観客席から巻き起こり、ジャック・ラカンは軽く観客に手を挙げ、カゲタロウと一緒にバトルステージから去っていった。

 それを呆然と見送るネギくんと小太郎くん。

 

 そして、最後にアナウンサーが叫んだ。

 

『王者と英雄の戦いの舞台は、オスティアへ! さあ、今すぐオスティア行きのチケットを確保しよう!』

 

 これ、大会運営側の仕込みじゃないよね?

 

 

 

◆155 千の刃

 

 戦いが終わり、ネギま部一同はホテルへと戻った。

 そして、リカード元老院議員もやってきて、豪快に笑う。

 

「いやー、ヤベえことになったな! あそこでラカンの野郎とか、反則だろ!」

 

 そんな彼の様子に、私は呆れてしまう。

 

「笑っている場合ですか。優勝が一気に難しくなりましたよ。というか、このままでは優勝不可能です」

 

 私のその言葉に、ネギま部の面々は困惑する。

 

「あのオジサマ、そんなに強いです?」

 

 夕映さんの疑問の言葉を受け、『紅き翼(アラルブラ)』に詳しい明日菜さんが答える。

 

「今のネギと小太郎じゃ無理ね。あの人、ナギと同じくらい強いわよ」

 

「そんなにですか……」

 

 図書館島地下での再生ナギの圧倒的な強さを思い出しているのか、夕映さんが額にシワを寄せた。

 そして、リカード元老院議員も同じ意見のようで、うなずいてから言った。

 

「今のネギ達じゃ、どうあがいても勝てん。こうなったら、優勝は諦めるしかねえな。だが、計画のことを考えると、せめて善戦はしてほしい。つまり、修行が必要だな!」

 

「ちょっとやそっとの修行じゃ、追いつけない差だと思うけれど……」

 

 明日菜さんがそうつぶやいて、顔を曇らせる。

 

「そうだな。やつがどれくらいすごいか、記録映像でも見てみるか」

 

 リカード元老院議員はそう言って、懐から魔法の携帯端末を取り出した。

 そして、十数秒ほど操作すると、空中に映像が投影される。

 

 それは、大戦期の記録映像。

 軍艦が宙に浮かび、鬼神兵が前進する。

 それに向かって突っ込む者が一人。若きジャック・ラカンだ。

 

 ジャック・ラカンは巨大な剣を肩に担ぎ、鬼神兵を両断。さらに、巨大な戦艦に向けて跳躍し、軍艦サイズの剣を手に呼び出して戦艦を串刺しにした。

 さらにそこから剣を横に振るい、複数の軍艦をまとめてなぎ払った。

 

「このように、ラカンの野郎は軍隊を相手にしても余裕で勝てるくらい強い」

 

 そのスケールの大きさに、ネギま部一同はポカーンとした顔を浮かべている。いやー、私も、漫画ならともかくこういうリアルの映像として見せられると、驚くしかないね。

 やがて、映像は終わり、宿の部屋は暗い雰囲気に包まれる。勝てないんじゃね、これ、という雰囲気だ。

 

 すると、部屋の隅で大人しく話の行方を見守っていた雪姫先生が、ネギくんの前に進み出てきた。

 彼女は、ネギくんを見下ろして、冷たい声で言う。

 

「ネギ。勝ちたいか?」

 

「僕は……」

 

 言いよどむネギくんの横で、小太郎くんが叫ぶ。

 

「当然勝つで! 厳しい修行、なんぼでもこいや!」

 

「……うん、勝ちたい。父さんと同じくらい強いとしても、僕は勝ちたいです」

 

 小太郎くんの言葉に触発されて、ネギくんが力強くそう言った。

 すると、雪姫先生はニタリと笑った。

 

「そうか。ところで、私はこのような技が使えてな」

 

 雪姫先生は、その場で無詠唱の魔法を発動する。突然のことに部屋にいた護衛の騎士が反応するが、リカード元老院議員はそれを手で制した。

 発動したのは、『魔法の射手(サギタ・マギカ)』。だが、それを雪姫先生は手でにぎりつぶした。そして、その魔力が雪姫先生の身体に取り込まれる。

 

「それは!?」

 

 ネギくんが、驚き顔で雪姫先生を見上げる。

 それに対し、雪姫先生は口元を弧に描きながら言う。

 

「私はエヴァンジェリンの知り合いだと言っただろう。『闇の魔法(マギア・エレベア)』は、私も使える。当然、教えることもできる。だから、ネギ。進むべき道を選べ」

 

 うーん、キティちゃんは以前、ネギくんには率先して『闇の魔法』を教える気はないと言っていたのに、ここで誘いをかけるか。

 弟子として愛着でも湧いたのかと私が微笑ましい目で見ていると、雪姫先生がネギくんの前で告げる。

 

「ナギ・スプリングフィールドが歩んだ光の道、エヴァンジェリンが歩んだ闇の道。その二つの道が、貴様の前にある。光の道は、仲間と一緒にコツコツ強さを積み上げていく道だ。ジャック・ラカンに今すぐ勝つことは難しいだろうが、その先には栄光が待っていることだろう。そして――」

 

 雪姫先生は『闇の魔法』で白く染まった腕で、ネギくんのアゴをくいっとすくい上げた。

 アダルティな動作に、ネギま部メンバーが色めき立つ。

 

「闇の道は、外法に染まり一人強くなる道。ジャック・ラカンに対抗する力を得られるが、その先に待つのは破滅かもしれない。さあ、どちらを選ぶ?」

 

 すると、ネギくんはアゴに添えられた手をゆっくりと払い、答える。

 

「闇の道は選びません」

 

「そうか、ならば――」

 

「光の道も選びません」

 

「なに?」

 

 まさかの両方を否定する言葉に、雪姫先生が驚きの表情を浮かべる。

 

「父さんの道、師匠(マスター)の道、どちらも僕は選びません。僕が選ぶのは、竜の道。アルトリア師匠の道です」

 

 ネギくんはそう言って、その場で武装格納魔法を使って、一つの荷物を取り出した。

 それの封を解き、テーブルの上に中身を広げる。

 

「それは?」

 

 雪姫先生が、ネギくんの広げた道具……いや、素材を見てネギ君に尋ねた。

 

「ファイトマネーで購入した、雷竜の血と革です」

 

「ドラゴン素材で防具でも作るつもりか? 王道だな。だが、その程度でジャック・ラカンの攻撃が防げるとは、到底思えないが」

 

「もちろん、そのようなことはしません。……リンネさん」

 

 と、いきなりネギくんに名前を呼ばれ、私は「へあ?」と変な声で返事をしてしまう。ここで私が呼ばれる要素あった?

 すると、ネギくんが真面目な顔でこちらを見つめて、言う。

 

「ルーサーさんを呼んでください。僕は……竜の力をこの身に取り込みます」

 

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