【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■69 オスティアの激闘

◆169 決勝トーナメント一回戦

 

 終戦記念祭で新オスティアは大盛り上がり。市街地では拳闘の野良試合が行なわれる始末で、治安も悪化している。

 お祭りの人出に加えて、各国が牽制しあっているせいで警備がガタガタで、街中に怪しい人間が入り放題。

 

 だからか、ネギま部一同は祭りを楽しみつつも警戒はゆるめない。

 オスティア市街地には以前フェイト・アーウェルンクスが姿を見せたことだし、いつまた『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』がやってくるか分からない。そのため、特に明日菜さんには絶対に一人で行動しないよう注意を払ってもらっていた。

 

 その警戒態勢が功を奏したのかは分からないが、『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』が現れることなく、ナギ・スプリングフィールド杯の決勝トーナメント当日がやってきた。

 決勝トーナメントは、三日にわたって行なわれる。

 四回勝てば優勝で、一日目は一回戦のみ、二日目は二回戦と三回戦、そして三日目に決勝戦が行なわれる。

 

 トーナメント表は、一回戦第一試合がジャック・ラカンで、一回戦最終試合がネギくん達の出番だ。

 出だしとラストを盛り上げようという運営側の魂胆が透けて見えるが、正直、決勝までジャック・ラカンと当たらないのはありがたい。

 

 ちなみにチケットは、ネギくんが出場者枠でネギま部全員の席を確保してくれた。招待者席になるようで、VIP扱いだね。

 その席で、私達は一回戦を観戦した。

 第一試合、ジャック・ラカンは観客の声援に応え、派手な行動に出た。

 開幕と同時に相手に踏みこんだ彼は、足を踏みしめて地面をゆらす。そして、足を取られた相手二人を上空に殴り飛ばし、気弾を撃って激しく吹き飛ばしたのだ。

 会場に張られた障壁に激突した相手選手は、仲良く戦闘不能に。

 まさしく瞬殺で、会場のボルテージは一気に高まった。

 

 その勢いのまま第二試合が始まり、見応えのある戦いが繰り広げられていった。

 そして、とうとうやってきた第八試合。

 

『もはや、彼を疑う者はいないでしょう。英雄の息子は、英雄たる器であると。わずか十歳にして、武の頂に手を伸ばした彼は、この戦いで何を見せてくれるのでしょうか! ネギ・スプリングフィールドの入場です!』

 

 完全に暖まった会場が、大きく震える。真剣な顔をしたネギくんが、闘技場の土を踏む。

 

『旧世界は辺境の国、日本。その(いにしえ)から存在する種族、狗族と人の混血児。ミステリアスなその経歴に違わず、圧倒的強さをこれまで見せつけてくれました! ビーストウォーリア、犬上小太郎の入場です!』

 

 鳴り止まぬ歓声に、手を振りながら小太郎くんが登場した。戦い続けて、彼もファンサービスが上手くなったな。

 

『本大会は古代拳闘士の時代からの伝統作法に従い、相手チーム全員の死亡・戦闘不能・ギブアップで勝利。気絶・ダウン状態となった選手はカウント20で戦闘不能とみなされます!』

 

 実況アナウンサーのそんなルール説明がはさまれ、闘技場で両チームが相対する。

 

『それでは、本日の最終試合……開始(インキピテ)!』

 

 合図と共に、相手選手の一人が、黒い魔法弾を放ってくる。

 ネギくんと小太郎くんは、それを難なくかわし、互いに前方に詰める。魔法戦には付き合うつもりはないようだ。

 そして、二人が相手に迫った瞬間、相手は周囲に巨大な黒い球をまき散らした。

 

『出たー! 得意の重力魔法! ネギ選手を寄せ付けません!』

 

 ああ、あれはアルビレオ・イマが得意とする重力魔法と同じものか。

 ネギくんがアルビレオ・イマと戦ったことはないため、対処法も身につけてはいないんだよねぇ。どうするのかな。

 そう思っていたら、ネギくんは風王結界(インビジブル・エア)をまとった魔剣で、進行を阻む黒球を斬りつけた。すると、黒球はその場でかき消える。

 ふむ?

 

『お、おお!? 重力魔法が消し飛んだ! ネギ選手何をしたー!』

 

『こちら解説席です。ネギ選手の公開情報が届いています』

 

『ネギ選手の!? 解説席、お願いします!』

 

『はい。ネギ選手が所持する剣は魔剣で、なんとあの『紅き翼(アラルブラ)』のアルビレオ・イマが重力魔法の付与を行なっているそうです』

 

『なんと、重力魔剣! つまり、重力魔法に重力魔法をぶつけて、相殺したということかー! やはり英雄の息子、装備も一級品だ!』

 

 なるほど、そういうカラクリね。アルビレオ・イマは本気で付与をしていたし、そこらの選手の重力魔法じゃ突破は難しいだろうね。

 そして、ネギくんが次々と重力魔法を破壊していき、できた隙間から小太郎くんが突っ込む。

 相手選手の前衛の魔法剣士がそこに立ちはだかり、小太郎くんが攻撃を開始する。

 剣による攻撃は手甲で弾き、お返しに正拳を相手に突きこむ。とっさに相手は防御魔法を無詠唱で唱えるが……そんなのじゃウチの小太郎くんの攻撃は防げないぞ。

 小太郎くんの突きが防御魔法を突破して相手の鎧に命中し、装甲をひしゃげさせる。魔力で強化された鋼の鎧も、気で強化されたアンオブタニウムには敵わない。

 

 胸元への突きで見事にひるんだ相手に、小太郎くんはラッシュをかける。一発、二発、三発と当たっていき、鎧が見るも無惨な形になっていく。

 そして、下段蹴りで体勢を崩したところで、小太郎くんはトドメとばかりに強烈な突きを見舞い、魔法剣士はダウンした。

 

『ダウーン! 同時にダウンです! カウント、1! 2! 3!』

 

 と、その間にネギくんも重力魔法使いを追い詰め、峰打ちで相手を殴りつけてダウンを奪っていた。

 カウントは無情にも進み、やがて20が告げられ、勝利が決まる。

 

『決着! 強い、このお子様達、とても強い! 決勝トーナメントでも、見せつけてくれました!』

 

 うん、強い。着実に修行を重ねた二人は、とても強い。

 これでまだ獣化も竜化も見せていないんだから、決勝戦までは心配しなくてもよさそうだ。

 

 そんな私の考えは、見事的中し……二日目の二回戦、三回戦も、特に苦戦らしい苦戦をすることなく、順調に勝ち進むことができたのだった。

 

 

 

◆170 千の顔を持つ英雄

 

 そして、とうとうやってきた決勝戦。

 私達がいる大闘技場が変形していき、模擬合戦開催形態へと移行する。収容人数十二万人。会場の直径は三百メートルにもなり、遠距離からの極大魔法の撃ち合いも可能となる。

 

『さあぁ、いよいよ決勝戦です! ネギか!? ラカンか!? 凄まじい激闘が予想されますが、最強クラスの戦いを前に、観客席は大丈夫なのでしょうか!?』

 

 ステージの中に立つ実況アナウンサーが、そんなあおりを入れる。

 

『ですが、ご安心を! 『紅き焔(フラグランティア・ルビカンス)』!』

 

 実況が突然観客席に向けて、火魔法を放つ。だが、それは客の手前で見えない壁に防がれた。

 

『この通り! 連合艦艦載砲すら防ぐ魔法障壁によって、お客様の安全は完璧に保障されています!』

 

 まあ、どこまでその障壁も信用できるかは分からないけどね。

 念のためネギくんには、本気で魔剣を放つときは水平に撃つなとは言ってある。

 

『勝敗予想は、街頭アンケートでは七対三でラカンチームが勝つと出ており、やはり十歳で勝つのは無理ではなどと言われているようです。しかし、専門家によると、ネギ選手はここまでまだまだ本気を見せておらず、隠し持った力次第では、ラカン選手相手に一矢報いるのではとのことです』

 

 ちなみに、賭けではラカンチームが圧倒的人気で、やはり心情では応援したくても、本心では英雄に勝てないと見る者が多いようだ。

 なお、私はこれまでネギくん達に賭けて得た儲けの九割をネギくん達の勝ちに賭けてきた。残り一割はこっちでの生活費。

 

 そんな実況アナウンサーのトークを挟み、いよいよ試合時間がやってくる。

 

 大歓声の中、両チームが入場し、距離を挟んで向かい合う。

 ネギくんはすでに風王結界を発動した魔剣を構えており、ジャック・ラカンもアーティファクトの『千の顔を(ホ・ヘーロース・メタ・)持つ英雄(キーリオーン・プロソーポーン)』をすでに展開しているのか、巨大な両手剣を携えている。

 その両者がどうやら言葉を交わすようだ。試合会場に仕組まれた魔法が音声を拾う。

 

「ラカンさん。なぜあなたが僕の前に立ちふさがったのか、未だに理解しきれませんが……僕の目的のために、勝たせていただきます」

 

「フ……ならば、俺を超えてゆけ! だが、俺は強いぜ?」

 

「では、全力全開! あらゆる手を使って勝たせてもらいます!」

 

「よく言った。せいぜいあがきな!」

 

 そうして、互いに口を閉じ、闘気を高めていく。

 それに当てられた観客が段々と静まっていき、開始を今か今かと待ち続ける。

 

『お待たせしました! それでは決勝戦……開始!』

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 契約に従い、我に従え高殿の王!」

 

 開幕と同時、ネギくんが選んだのは魔法戦だった。その魔法は、雷系最大の攻撃魔法『千の雷』。ナギ・スプリングフィールドが得意とした極大魔法だ。

 それを妨害せんと、カゲタロウが影の槍を雨のように放つが、間に入った小太郎くんが軽々と防ぐ。

 

「来れ巨神を滅ぼす、燃え立つ雷霆! 百重千重と重なりて、走れよ稲妻! 『千の雷(キーリプル・アストラペー)』!」

 

 小細工もなしに放たれた極大魔法が、ラカンチームを襲う。しかし、ジャック・ラカンも黙って見てはいなかった。

 宙に飛んだジャック・ラカンが己のアーティファクトを槍に変え、気のこもった槍投げを放ったのだ。

 

 アーティファクト『千の顔を持つ英雄』は、あらゆる武器に姿を変える変幻自在のアーティファクト。剣だろうが槍だろうが、なんにでも変化する伝説級の品だ。

 その槍が、闘技場の中央で『千の雷』に激しくぶつかり合う。わずかに拮抗し、そして槍が打ち勝って突き抜けた。

 大爆発が競技場を揺るがす。土煙が舞い上がり、戦いの行方を覆い隠す。

 

 そんな激しい戦いに、固唾を飲んで見守っていた観客達が、一瞬でボルテージを上げた。

 

『開幕から大技の大激突ー! 正直、私がフィールド上にいるのは危険なのではないかと、本気で後悔しています! というか、ネギ選手達は無事なのか!? 消し飛んでいないかー!』

 

 実況のそんな声と共に、土煙が晴れていく。

 すると、そこにいたのは、槍の直撃地点からわずかにずれた二人。しかも、両者は大きくその姿を変えていた。全身から竜の鱗を生やした竜化ネギくんと、手足を獣に変えた獣化小太郎くんだ。

 

『お、おおー!? 二人とも、変身をしているぞー! 狗族である小太郎選手の獣化はともかく、ネギ選手はまさか、竜化か!? やはりネギ選手は竜族の子だったのかー!?』

 

『こちら解説席。ここで、ネギ選手の情報公開です。ネギ選手は、魔法儀式で竜の因子をその身に取り込んでいるそうです。竜族の血筋ではありません』

 

『竜の因子を取り込む! そのようなことが可能なのでしょうか!?』

 

『目の前のネギ選手が、これまでの試合で強烈なドラゴンブレスを撃ってきたことからも、それは明らかでしょう。そして、ネギ選手の母親ですが、新オスティア総督府のクルト・ゲーデル総督によりますと、旧ウェスペルタティア王国のやんごとない血筋であるとのことです。総督は、『母君の名誉回復のためにも、ぜひとも実力を示してもらいたい』と試合前に述べておりました』

 

『やんごとない血筋……まさか、まさかまさか、ネギ選手の母親の正体はー!』

 

 と、実況が盛り上がっているところで、試合が動く。ネギくんが、アーティファクトカードを取り出したのだ。

 

「『来たれ(アデアット)』!」

 

 ネギくんの竜と化した手に出現する『雷公竜の心臓』。それをネギくんは己の胸に押し当て、その身に取り込んだ。

 ちなみに、ネギくんの衣装は竜の素材で作った鎧であり、竜化の際に自身と同化している。

 

『おおっと、母親の正体は気になりますが、今は試合です! ネギ選手、アーティファクトを呼び出しました。意外! ネギ選手のアーティファクトは魔剣ではなかったのか!』

 

 実況のそんな叫びに、再び解説席が答える。

 

『ネギ選手のアーティファクトは、情報によると『雷公竜の心臓』。無限の魔力を所有者に与える伝説級の品です。仮契約(パクティオー)の相手は、かの闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)だそうです』

 

『先ほどから濃い情報が多すぎる! しかも、ここで特大の新情報! ネギ選手は、伝説の闇の福音のミニステル・マギだった! もう、どうなっているんだネギ選手! 試合後のインタビュー、覚悟しておけよ!』

 

 実況アナウンサーが、悪魔の尻尾をフリフリさせながら、そんなことを叫んだ。なお、アナウンサーは可愛い悪魔ッ娘である。

 

 さて、アーティファクトの呼び出しを大人しく見守っていたラカンチーム。

 ジャック・ラカンは投げたアーティファクトを呼び出し直し、手元に剣を構える。カゲタロウは、周囲に無数の影を束ね、今にも攻撃を開始しようとしている。

 対するネギチーム。ネギくんは胸の心臓を駆動させ全身に雷を帯び、小太郎くんは狗神を多数呼び出して周囲に待機させた。

 そして、ネギくんと小太郎くんが同時に前に駆け出した。

 

 カゲタロウが無数の影を一本の槍にして放つが、狗神が飛び出し、それを少しずつ上に弾いていく。

 上に弾かれた槍は宙で枝分かれし、再度地面に向けて雨のように降り注いでいくが、ネギくん達は軽々とそれを避けていく。

 

 そして、ネギくんとジャック・ラカンが激突し、剣で戦い始めた。

 

 一方、小太郎くんはカゲタロウに接近していく。

 距離を取りながら影を放つカゲタロウだが、小太郎くんは狗神を上手く使いながら影をさばいていく。

 さらに、狗神で追い立てるようにしてカゲタロウの進行ルートを誘導し、小太郎くんはカゲタロウに迫る。

 素手の間合いまで入り込み、拳を打ち込む。

 だが、カゲタロウは影を壁のように展開して、それを防ごうとする。

 しかし。小太郎くんの拳は影を突き抜け、さらに魔法障壁も突き抜けて、カゲタロウの身体を打ち抜いた。

 

「ぐがッ!?」

 

 腹を殴られ、くの字になって吹き飛んでいくカゲタロウ。

 

『ここで今試合初めてのクリーンヒット! カゲタロウ選手の障壁を破壊して、小太郎選手が強烈な一撃を叩き込んだ!』

 

『いえ、障壁は破壊されていません』

 

『おっと、解説席、どういうことですか?』

 

『小太郎選手の攻撃は、障壁透過の一撃です。ここまでの戦いでも同じ光景がありましたから、間違いないでしょう。天下に名高い桃源神鳴流の秘技『弐の太刀』を彷彿とさせる技ですね』

 

 そう、小太郎くんが戦いの果てに身につけた新技。

 気の守りや魔法の障壁をすり抜けて相手に攻撃を通す、防御無効の技。『千年戦争アイギス』で多くの者達が得意とする貫通攻撃である。『Fate/Grand Order』でも相手の防御力を無視する技の使い手がそれなりにいるね。

 それらの相手から、小太郎くんは戦いを通じて貫通攻撃を学び取っていたのだ。

 別に、一からやり方を教わったわけではない。その身で相手の技を受けて受けて受け続けることで、自然と覚えたのだ。

 

 その一撃に手応えを感じた小太郎くんは大きく笑みを浮かべ、カゲタロウに追撃をかけた。

 

 一方で、ネギくんとジャック・ラカンの戦いにも動きが見える。

 ネギくんは全身に暴風と雷をまとい、ジャック・ラカンと剣を交えていた。

 本来なら、近くに居るだけで感電して倒れてしまうその暴威も、ジャック・ラカンはけろっとした顔で受け流す。

 攻防を繰り広げるにつれ、暴風は勢いを増していき、やがて制御が怪しくなった風王結界が、魔剣の姿を隠しきれなくなっていく。

 

『おおっと、ここでネギ選手の得物が姿を見せました! 予選大会で一度見せたきりだった、その魔剣! 片刃の長剣です!』

 

 姿を見せてしまって開き直ったのか、ネギくんはそのまま剣をジャック・ラカンに突きつけ、まとっていた風を全解放した。

 

「『風王鉄槌(ストライク・エア)』!」

 

 豪風がジャック・ラカンを吹き飛ばさんとせまるが、彼はそれを耐えた。

 そして、反撃として剣をネギくんに叩きつける。

 だが、そこでネギくんは魔剣に魔力を強く通し、ジャック・ラカンの剣の軌道に合わせて魔剣を振るった。

 

 次の瞬間、ジャック・ラカンの剣は折れ、そのまま魔剣はジャック・ラカンの胸を浅く切り裂く。

 斬りつけられた彼は驚愕の表情を浮かべ、とっさに距離を取った。

 その思いもよらない戦いの結果に、観客席がどよめく。

 

『これは! これはー! 剣が刺さらないと評判のラカン選手の肉体をネギ選手の剣が傷付けたー! 英雄が、血を流している!』

 

 ジャック・ラカンは己の胸に手を当て、流れる血を確認して、さらに折れた剣を見てから大きく笑った。

 

「うはははは! 俺様の伝説のアーティファクトが真っ二つとはな。どんなアーティファクトだよ、その剣」

 

「アーティファクトではありませんよ。刀鍛冶に頼んで打ってもらいました」

 

「マジかよ!」

 

 魔法で拾われたその音声に、観客席がざわめく。

 ジャック・ラカンのアーティファクトを折り、傷付ける魔剣。それが、ただの鍛冶師に作成可能なのか。そんな疑問を口にする観客達。

 だが、ネギくんの剣を打った者達は、ただの鍛冶師ではない。『千の顔を持つ英雄』何するものぞ。あらゆる武器に姿を変えるという魔法具ということは、斬ることに一点特化した武器に敵わないということだ。まあ、あの魔剣は剣ビームも撃てるが。

 

「ずいぶんと切れ味がいい剣だが、俺の剣も負けちゃあいねえぜ」

 

 ジャック・ラカンはそう言って、ネギくんからさらに大きく距離を取った。

 そして、大跳躍してアーティファクトを振りかぶると、剣が別の武器に変化する。

 

 それは巨大だった。ただただ巨大で、人に向けるにはあまりにも大きすぎた。その刀身は、数十メートル規模。

 その巨大な剣をジャック・ラカンはネギくんに向けて思いっきり振り下ろす。

 

「受けてみろ、斬艦剣だ!」

 

 ジャック・ラカンが斬艦剣を呼び出すと同時、ネギくんも魔剣に魔力を込めて攻撃の態勢に移っていた。

 下段からすくい上げるように剣を振るい、白い光を放つ剣から魔力を解き放った。

 

その目でしかと見よ(Behold)!」

 

 巨大な剣と魔力の剣閃が、闘技場中央で激突する。

 観客が総立ちになり、場は大歓声に包まれる。

 

 戦いの結果は……魔剣が打ち勝ち、斬艦剣は真っ二つに折れ、ジャック・ラカンは闘技場の端まで吹き飛び、魔法障壁に激突していた。

 そして、ジャック・ラカンはそのまま地面に落下し、地に伏せる。

 

『ダ、ダウン、ラカン選手ダウンです! 大技対決はネギ・スプリングフィールド選手が競り勝った!』

 

 倒れたままのジャック・ラカン。だが、彼がこのままで終わるとはとても思えない。

 私はネギま部の一同と共に、戦いの行方をじっと見守るのだった。

 


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