【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■7 ガチャは悪い文明

◆23 目指せ神仙!

 

 2001年の師走後半。二学期の終業式を終えた後に、私とちう様、そして古さんは女子寮の一室に集まっていた。

 

「冬休みを利用して、私と千雨さんは強化合宿をします」

 

 お菓子をつまみながら、私はそう宣言する。

 

「それは、私も行っていいやつアルか?」

 

 麩菓子をもぐもぐしながら、古さんが予想通りのことを聞いてきた。

 それに対する私の答えは、ノーだ。

 

「エヴァンジェリン先生の別荘をフルで使うので、古さんにはお勧めできません。二十四倍の速さで老けます」

 

 古さんは、うげっとした顔をする。

 

「んー、でも、リンネとちうは別荘を使うのダロ?」

 

 同じ武術の師匠を持つ古さんは、すっかりちう様と仲良くなっていて、私を真似てちうと呼ぶようになっていた。

 そんな古さんに、再び私は告げる。

 

「私とちう様は、不老なので、いくら別荘を使っても歳を取りません」

 

「不老って、本当カ?」

 

「はい、それぞれ方法は違いますが、二人とも老化を止めています」

 

「それで、別荘を使い放題アルか?」

 

「そうです」

 

 そこまで答えると、古さんは胸の前で腕を組んでうなり始めた。

 

「むむむむむ! ズルいアル! 私も別荘使いたいアル!」

 

「でも、不老になるには今のところ、魔法を熟達するか、エヴァンジェリン先生の下僕になるしか手段はありません」

 

「むむむ! あの魔法とかいうのは、私に向いてないアル!」

 

「では、無理ですね」

 

 悲しいけど、古さんは等速の方のダイオラマ魔法球で我慢してもらうしかない。

 

「うー、何か方法ないアルか? 二人に置いていかれたくないアル」

 

 ふーむ、やっぱりこれ言われてしまったなぁ。

 

「うーん……方法、あるにはあるんですが……ちょっと待ってくださいね」

 

 私は手元にスマホを呼び出し、アプリを起動する。

 すると、それまで我関せずとノートパソコンをいじっていたちう様が、こちらの手元をちらりと見た。

 

「なんだそれ? チャットか?」

 

「これは、『LINE』というアプリです。スマホの中の住人と、メッセージのやりとりができます。メールとチャットの合いの子みたいなものですね」

 

 私はスマホの中の世界に入れないので、『LINE』を使って初めてスマホの中と連絡が取れるのだ。

 

「へー、どうやって中の人とやりとりしているんだと思ったら、そういうソフトがあるんだな」

 

 うむ。スタンプを使いこなしているキャラクター達も多いよ。

 と、さて、交渉成立っと。

 

「よし、古さんの新しい師匠候補が、今から来てくれるそうですよ」

 

 私がそう言うや否や、私の背後に人が出現する。

 私は振り返り、その姿を確認した。

 長い白髪を真っ直ぐ伸ばし、露出の激しい中華風の雰囲気を漂わせる服を着た、胸の大きい大人の女性。

 

 私は立ち上がり、彼女を二人に紹介する

 

「仙人の太公望さんです」

 

 その言葉を聞いて、ちう様はノートパソコンを覗き込んでいた顔を上げて、びっくりした表情を作る。

 

「太公望って、女だったのか!?」

 

「たいこーぼー?」

 

 ちう様は性別に驚き、古さんはこの人が誰か分かっていない様子。

 

「ちう様、英霊の太公望は男の人ですよ。この方は、並行世界の地球の太公望ではなく、ファンタジー系異世界の太公望さんです」

 

「ああ、魔術師のサイラスさん達の世界出身か……」

 

「ちなみに古さん。太公望とはこう字を書きます」

 

 私は手元のスマホの画面で『LINE』を終了させ、メモ帳アプリを起動して『太公望』と入力した。

 

「アイヤ、姜太公(ジアンタイゴン)アルか!」

 

「そう、その太公様の、異世界における類似人物みたいな感じと解釈してください」

 

「はー、すごい人が来たアルね」

 

 うんうん、すごい人なんですよ。

 すると、それまでニコニコと笑っていた太公望さんが、おもむろに口を開く。

 

「どうも。適当に仙人さんとか仙人ちゃんとでも呼んでください」

 

「彼女に、古さんの仙人に向けての修行を担当してもらいます」

 

 あらためて、そう古さんに私は告げた。すると、太公望さんは、にっこり笑って言う。

 

「ビシバシ行きますよ」

 

 すると、古さんがいまいち理解していないアホ面をしているので、私はスマホに『目指せ仙人』と入力。すると……。

 

「ふぉおおお! 仙人(シェンレン)! ぜひともお願いするネ!」

 

「はい。それと、修行が終わったら私の手伝いをしてくださいね」

 

 と、そんなことを太公望さんは古さんに言い出す。

 

「むむ、何アルか?」

 

「話せば長くなるのですが……現世の人の協力が必要なのです」

 

 私は『LINE』で太公望さんの要望を聞いているので、話に口を出すことなく、お菓子を手に取って気楽な姿勢を取る。

 

「私達すまほの王国の仙人は、元々は神仙郷という秘境に住んでおりました」

 

 ゲーム時代のお話だね。その神仙郷を邪仙に奪われるところから、彼女のゲーム内イベントは始まるわけだ。

 

「しかし、すまほの中に移住してからは、私達仙人は帰るべき神仙郷を失っております。王国のある惑星Cathからは、神仙郷に類似した神聖な秘境が見つかっていないのです」

 

「すまほは確か、リンネが持っている不思議ケータイアルね」

 

 不思議ケータイ……まあ間違ってはいないが。

 

「それで、実は私……桃が大好物なのですが……。私の所有物の中に、神聖な秘境でしか育たない桃があります。しかし、すまほの中で全て食べてしまいました。私は、その桃をまた食べたい」

 

 思わぬ話の流れに、古さんはポカーンとした顔をしている。

 

「そして、この世界には、神仙郷に似た秘境が存在するらしいではありませんか」

 

「そうなのカ?」

 

 古さんがこちらに目を向けてきたので、私は素直に答える。

 

「ええ、チベットの奥地のどこかに。ちう様、桜雨(さくらさめ)キリヱが仙桃を見つけ出したという仙境、崑崙(こんろん)ですよ」

 

「あー、あれか」

 

 ノートパソコンから顔を上げずに、ちう様は生返事をしてくる。

 

「なので、あなたの修行が完了したら、将来で構いませんから、その仙境を探す手助けをしていただきたい」

 

「了解したアル! 任せてほしいネ!」

 

 安請け合いしたなぁ。

 中国人の古さんがチベットの奥地を探検するって、何か起きそうだね。知らんけど。

 

 そういうわけで、太公望さんの挨拶は終わり、冬休み合宿は三人でやることに決まった。

 太公望さんはまた後日と言ってスマホの中に帰り、古さんも自室に帰っていった。

 私とちう様は同室なので、このまま二人で就寝だ。ちなみにもう一人の同居人のザジ・レイニーデイは曲芸手品部の方で寝泊まりしているので、帰ってはこない。

 

 ちう様もいい加減ネットを堪能(たんのう)しきったのか、ノートパソコンを閉じ、寝る準備を始めた。

 そして、就寝時間となり、それぞれベッドの中に入ってしばし。唐突に、ちう様の声が聞こえてきた。

 

「わざわざ地球の英霊である太公望じゃなくて、異世界の太公望を選んだんだな」

 

 あー、そのことね。いろいろあるんだよ。

 すると、さらにちう様の声が届く。

 

「地球の太公望は人間の軍師であって、漫画みたいに仙人じゃないとかか?」

 

「いえ、英霊の太公望は仙人ですよ。正確には道士ですが。でもですねー……」

 

 私は目を閉じて、心の奥底からこみ上げてくる感情を我慢する。

 

「うちのスマホに、住んでいないんですよ。英霊の太公望」

 

「ああ、なるほど……」

 

「どんだけ回しても、ガチャで出ないんですよ! んもー!」

 

「が、がちゃ? あの子供のおもちゃのガチャガチャか?」

 

「あー、そういえば今、2001年ですもんね。ゲームにガチャが実装されていないんですよね。聞きます? 未来のゲームに実装される罪深き文明のことを!」

 

「いや、別にいい。おやすみ」

 

「ガチャは悪い文明!」

 

「大人しく寝ろ!」

 

 

 

◆24 白熱! ウルティマホラ

 

 2002年、秋。麻帆良体育祭。私達にとっての二年目のウルティマホラ。

 今年も私とちう様、そして古さんは迷うことなくウルティマホラに参加した。

 

 また決勝で戦おう、とはならず、組み合わせの妙により、私と古さんは本戦の一回戦で激突。

 私は今回もアリス師匠の力を身に宿して戦ったが、一年生の冬休みと二年生の夏休みを二十四倍の武術訓練と仙術修行に当てた道士こと古さんは、驚くほど強くなっていて……私は見事に負けてしまった。

 

 さらに、二回戦。古さんとちう様が当たる。

 互いに李書文先生の弟子として格闘の手札を知り尽くしている間柄。後は功夫の差が勝敗を決めるが、ちう様はどちらかというと後衛魔法使いとしての力量を磨いている人で、拳法に関しては古さんが抜きんでていた。

 そして、終始、古さんが翻弄(ほんろう)する形で試合は進み、今年は骨を折ることなく古さんが勝った。

 

 そうなれば、最早、古さんを止められる相手はおらず、決勝戦になった。決勝戦のカードは、古さん対長瀬さん。

 長瀬(ながせ)(かえで)。2年A組のクラスメートの一人で、本人は隠しているが、忍者だ。中学生ながら、甲賀の中忍である。甲賀には上忍という区分はないので、中忍が一番上の階級だ。

 

 そんな世を忍ぶ存在のはずの彼女がなぜウルティマホラに出場しているかというと……、古さんが誘ったのだ。一度、白黒つけてみないかと。

 そんな古さんの挑発に、のんきな顔で応じた長瀬さんは、他者を寄せ付けない強さで見事に決勝まで勝ち進んでいた。

 

「いやはや、三人のうちの誰にも当たらず決勝まで来られるとは、拙者も運がよいでござるな」

 

 決勝戦の舞台上で、長瀬さんがそのようなことを古さんに言う。

 三人とは、私、ちう様、古さんのクラスメート三人のことだろう。

 

「そうネ。私だけ全員と当たるとか、不公平過ぎると思うアル」

 

「ははは、ちょうどいいハンデだと思うでござるよ」

 

「おっと、それは早計アルよ? 怪我は残っていないアルし、疲労も特製の丹で癒やしてあるネ」

 

「ふむ、中国の丹薬とは、興味深いでござる」

 

「残念ながら、私の国の薬ではないアル。まあ、仙人特製の丹であるのは確かアルが」

 

「ほう……」

 

 アナウンサーが実況で盛り上げる中、二人はそんな会話を舞台の上で繰り広げていた。

 

『それでは、皆様お待たせしました! チャイニーズケンポーガールとジャパニーズニンジャガールの戦い、いよいよ開始です!』

 

「おっと、もう開始アルね」

 

「拙者、忍者ではないでござるよ」

 

『それでは決勝戦ー、ファイト!』

 

 忍者ではないと言いつつも、長瀬さんは開幕から分身の術を発動。こやつ忍ぶ気ゼロである。

 

『おおっとー!? 長瀬選手、いきなり分身した! いったいどういう原理だー!』

 

「ニンニン。ただの残像でござるよー」

 

「長瀬、おぬし、はっちゃけすぎアル。術は、バレないように使うアルヨ」

 

 そう言いながら、古さんはこっそり仙術を発動。彼女の目が神眼へと変わる。

 

「行くアルヨー。ハイッ! ハイッ ハイーッ!」

 

「ぬうっ!? くっ、どうやって見破ったでござるか!?」

 

 十体を超える分身の中から正確に本体を見切った古さんが、猛攻をかける。

 長瀬さんはめまぐるしく分身の位置を入れ替えるが、そのたび古さんが本体を的確に察知する。

 

 やがて、分身は無意味と悟ったのか、長瀬さんは分身を消し、格闘の構えを取る。

 

「やれやれ、正面から寸鉄も帯びず組み打ちとは、骨が折れるでござるな」

 

「骨を折らないよう、力加減には気を付けるアル!」

 

「そういう意味ではないでござるよ」

 

 そこからは、互いに『気』を解放しての全力のぶつかり合いだった。

 だが、長瀬さんは忍者であり、手裏剣といった暗器を使っての不意打ち等が本来の戦い方。正面からの殴り合いは、古さんに一日の長があった。二十四倍で修行しているから、一日どころの長ではないが。

 

 舞台を縦横無尽に使っての激突は……古さんに軍配が上がった。

 

「くっ、無念でござる」

 

「私の勝ちアル!」

 

 十カウントを取って、古さんが勝利。こうして、私達にとっての二年目のウルティマホラは、古さんが征したのであった。

 

 

 

◆25 人に必要な物

 

 ウルティマホラが終了しても、体育祭は続く。今年初の競技として、麻帆良全域を使った学園横断パルクール大会が開催された。そこでは長瀬さんがリベンジとばかりに駆け回り、古さんに勝利した。

 古さんも仙術を習得して移動能力は格段に上がっているのだが、そこは忍者の面目躍如というところか。

 

 そして、学園全体種目も楽しくこなして、麻帆良体育祭は無事に終了した。

 体育祭はクラスごとにポイントを集めて競い合う仕組みになっている。我が2年A組はなかなかの好成績を残し、中学部門のトロフィーを獲得することができた。

 そうなれば、どうなるか。当然、打ち上げである。

 

 クラス全員で祝杯(ノンアルコール)をあげ、全力ではしゃぎ始めた。

 皆、歓喜の表情を浮かべており、担任の高畑先生もニコニコとした顔で私達を見守っている。

 

 だが、そんな中一人だけシリアス顔の少女が居た。

 長瀬さんである。

 そんな長瀬さんを同じさんぽ部の双子、鳴滝姉妹が心配そうに見つめている。

 

 それを見かねたのだろうか、ちう様が長瀬さんに近づいていった。

 

「どうした、長瀬。せっかくの打ち上げだってのに、憂鬱そうだな」

 

「これは、長谷川殿。うむ、少々思うところがな……」

 

「ウルティマホラか?」

 

「そうでござるなー」

 

 長瀬さんは、超さんと一緒に肉まんを食べてはしゃいでいる古さんをちらりと見た。

 

「負けたのが悔しかったとかか?」

 

 そう言うちう様に、長瀬さんは頭を横に振って答えた。

 

「いや、勝ち負けそのものではなく、自身の修行不足を恥じ入るばかりでござってな……」

 

「ふーん。私も古には負けたけどよ、修行不足を恥ずかしいとまでは思わなかったな」

 

「長谷川殿は、古と一緒に修行を積んでいるのでござろう? となれば、修行が足りていないとは思えぬ。しかし拙者は……」

 

 そう言って、長瀬さんは大きなため息をついた。

 

「明らかに修行不足でござるな。麻帆良に来て、ぬるま湯につかりすぎたか」

 

 長瀬がそう言うと、心配そうに鳴滝姉妹が彼女を見上げる。

 その様子を見て、ちう様がやれやれといったような表情を浮かべた。

 

「そりゃ、私達は日々修行に明け暮れているけどよ、長瀬は修行がもう必要ないから麻帆良に来たんじゃねえか?」

 

 ちう様のそんな言葉に、長瀬さんはうつむいていた顔を上げた。

 

「これ以上の忍者の修行がいるなら、地元で続けていたはずだ。それを切り上げてわざわざこちらに来たってことは、修行はもう十分で、あとは普通の中学生として日常を過ごせって意図があったんじゃねーのか?」

 

「それは……」

 

「修行ばっかしている私が言えたことじゃねえかもしれないけどよ……戦うだけが人生じゃねえ。人としての豊かさを作るのは、徒人(ただびと)としての普通の生活だ。日常を謳歌(おうか)していることを誇れよ、さんぽ部部員さんよ」

 

 私は、予言の書『UQ HOLDER!』の終盤を思い出す。

 造物主(ライフメイカー)ヨルダに取り込まれた未来のエヴァンジェリン。その闇堕ちを防いだのは、3年A組の穏やかな日常の記憶だった。

 人としての心の芯を作り上げるには、戦うための修行では足りないのかもしれないね。

 それを考えれば、夏休み冬休みをフルで別荘ごもりに使うのは考えものだ。

 

「……そうでござるな。戦うだけが人生ではない、か」

 

「そうそう、たまには立ち止まって、足元を見ることも大事だぜ? 小さな姉妹が転がっているかもな」

 

「ははっ、そうでござるな」

 

 長瀬さんが鳴滝姉妹を見て笑うと、鳴滝の姉の方がむくれる。

 

「小さい言うなー!」

 

「あ、そりゃすまんかった」

 

 鳴滝姉に迫られて、ちう様はヒョイヒョイとかわしながら謝っている。

 うん、丸く収まったようでよかったよかった。

 

「ああ、そうだ、長谷川殿」

 

「ん? どうした」

 

「拙者、忍者ではないでござるよ?」

 

「さすがに無理ねえかな、その主張」

 

 そうして、2002年の秋はゆっくりと過ぎていく。

 やがて冬に入り、二学期が終わり、冬休みへ。冬休みもいろいろありつつ、三学期が訪れる。

 2003年1月。いよいよ運命の時が訪れた。

 

 ウェールズから、一人の子供がやってくる。子供先生、ネギ・スプリングフィールドが。

『魔法先生ネギま!』が始まるのだ。

 

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