【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■76 造物主ナギ=ヨルダ

◆185 宮殿の決戦

 

『墓守り人の宮殿』屋上部に降り立った造物主(ライフメイカー)ナギ=ヨルダ。

 その隣にはべっていた二人の少女は、着地と同時にフェイト・アーウェルンクスのもとへと駆け寄っていった。その少女の一人の手には、『造物主の掟(コード・オブ・ザ・ライフメイカー)』がにぎられている。あれが、『最後の鍵(グレートグランドマスターキー)』なのだろう。

 

 少女が『造物主の掟』を差し出し、雪姫先生の魔法でボロボロになったフェイトがそれを受け取った。

 

「フェイト様、手はず通りに伝えました!」

 

「そう……ありがとう」

 

 手はず通りにとは、なんだろうか。私はのどかさんの方をチラリと見るが、彼女はフェイト・アーウェルンクスの方をじっと見て黙りこんでいる。『いどのえにっき』で何が分かったんだろうなぁ。

 

 そんなことを思っていると、フェイト・アーウェルンクスがナギ=ヨルダに向けて言う。

 

(マスター)、火星開拓事業計画書は確認していただけましたか」

 

 ここで、『ねこねこ計画書』の確認か。本当に、彼はヨルダの判断を仰ぐつもりなんだな。

 そう思って見ていると、ナギ=ヨルダはどこからか計画書の紙束を取り出し、手に持った。

 

「ああ、見た。これならば、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)に魔力は満ちるであろうな」

 

「では……」

 

「だが、これでは虐げられる民の怨嗟(えんさ)の声は止まらぬ。変わらず我らの計画を進めよ」

 

 ナギ=ヨルダはそう言って、手元の計画書を燃やしてしまった。

 ああ、そうだよね。ヨルダはそういう判断をする人だよね。

 

「そう……」

 

 燃える計画書をフェイト・アーウェルンクスはじっと見つめている。

 そして、計画書が全て灰になったところで、ナギ=ヨルダは言う。

 

「魔力がこの場に満ちている今こそ、世界を書き換える時。まずは、我が末裔を確保せよ」

 

 ナギ=ヨルダは、明日菜さんの方を真っ直ぐ見て部下達に指示を出した。

 来るか。戦いは大詰めってわけだ。

 

 世界の書き換え。これへの対抗術式は事前に雪姫先生がいくつか用意しており、今この場で明日菜さんを使って発動されても防げる可能性はそれなりにある。でも、明日菜さんを奪われないに越したことはない。ネギま部が明日菜さんを守るように展開し、再び戦闘態勢に入る。

 

 そして、フェイト・アーウェルンクスとその部下のアーウェルンクスシリーズが動く。

 だが、その矛先は、私達にではなくナギ=ヨルダに向けられていた。無詠唱の魔法が、一斉にナギ=ヨルダを襲う。

 

「何ッ!? アーウェルンクスども、いったい何を!」

 

 デュナミスが驚きの声を上げる。どうやら、アーウェルンクスシリーズの行動は『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』副首領の彼にとって理解の範疇外にあったようだ。

 

 アーウェルンクスシリーズの魔法にさらされ続けるナギ=ヨルダから距離を取りながら、フェイト・アーウェルンクスが言う。

 

「悪の親玉(大ボス)の狂った夢想に、付き合いきれなくなっただけさ。僕は、火星開拓事業を支持する」

 

「貴様、(マスター)の忠実な道具が、何を言い出すか!」

 

 デュナミスがフェイト・アーウェルンクスに殴りかからんと、再び戦闘形態になる。

 

「よい」

 

 だが、アーウェルンクスの魔法攻撃を魔法障壁で防ぎ続けるナギ=ヨルダが、そう告げた。

 

(テルティウム)はそのように私が作った。自由意志を持ち、己で全て判断する存在。私を裏切るのもまた一興」

 

 ナギ=ヨルダのその言葉を受け、デュナミスがさらに言う。

 

「しかし、他のアーウェルンクスどもまでそれに同調しております! これは、何かのバグでは!」

 

 すると、ナギ=ヨルダに攻撃を続けていたアーウェルンクスの一人、(セクンドゥム)が顔を歪ませ笑いながら言った。

 

「バグとは心外だなぁ。今の我々の(マスター)は、(テルティウム)だ。そこのヨルダはただの元主さ」

 

「ッ! そういうことか。何をわざわざ悠長に秘宝などを集めているかと思ったら、裏切りを画策していたか!」

 

 デュナミスが、フェイト・アーウェルンクスをにらみつける。

 すると、フェイト・アーウェルンクスは涼しい顔をして答えた。

 

「別に、最初から裏切るつもりはなかったさ。ただ、僕の期待していた言葉が返ってこなかったから、見限っただけだよ」

 

「貴様!」

 

 今度こそ、デュナミスはフェイト・アーウェルンクスに殴りかかった。それを見たフェイトの部下の少女達が、デュナミスに挑みかかる。月詠すらデュナミスの敵に回り、『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』は完全に内部崩壊だ。

 

 そして、アーウェルンクスシリーズも、ナギ=ヨルダへの攻撃を再開した。攻撃にさらされたナギ=ヨルダは、わずらわしそうに顔を歪める。

 

「面倒だな。フム、これだけ魔力が集まっているなら少し使ってしまってもよいか」

 

 そう言って、ナギ=ヨルダは手を前に掲げる。

 すると、魔法陣が床に輝き、魔法陣から人が複数体出現した。

 

(プリームム)。地のアーウェルンクスを拝命」

 

(ニィ)。火のアートゥル二代目」

 

17(セプテンデキム)。水のアダドー十七代目」

 

 それぞれ己の名前を宣言して、アーウェルンクスシリーズと戦い始める。

 さらにナギ=ヨルダは、筋骨隆々の大男、長髪の優男、長髪オールバック男を出現させ、自身の周囲に配置する。

 そして、ナギ=ヨルダはあらためて明日菜さんへと向き直った。

 

「我が末裔を捕縛せよ。他は殺して構わん。魂さえ残れば、それでいい」

 

 ナギ=ヨルダの言葉を受け、ネギま部メンバーが即座に迎撃のために攻撃に移る。

 すると、上空に飛んでいた雪姫先生が、こちらに向けて叫ぶ。

 

「のどか! 手はず通りに!」

 

「ハイ!」

 

 雪姫先生の指示で、のどかさんはナギ=ヨルダに指を突きつける。

 その指には、トレジャーハントで見つけてきた魔法具がはめられている。『鬼神の童謡(コンプティーナ・ダエモニア)』。その効果は……。

 

「『我、汝の真名を問う(アナタノオナマエナンデスカ)』!」

 

 相手の真の名前を暴き立てる、まさに『いどのえにっき』のためにあるような効果である。

 ナギ=ヨルダの正しい名前を認識したのどかさんは、ナギ=ヨルダに問う。

 

「ヨルダ・バオトさん、あなたのその身体はナギ・スプリングフィールドさんの本物の身体ですか?」

 

「その魔法具……『いどのえにっき(ディアーリウム・エーユス)』か」

 

 ナギ=ヨルダがのどかさんのアーティファクトを見て、眉をひそめる。

 だが、のどかさんはそんなことおかまいなしに相手の心の内を暴く。

 

「ナギさんの本体は魔法世界のはるか上空に置いてあって、これは精神を乗り移らせた分体だそうです! でも、分体にも倒されたときに相手の身体と魂を奪う能力が健在だと!」

 

 よし、よく聞き出したぞ、のどかさん。このナギ=ヨルダは、ただの人型端末ってことだ。それなら、遠慮なく倒しちゃっても構わない!

 

「ネギま部、フォーメーション『スーパーアスナ』!」

 

 私は、ネギま部のメンバーにそう号令をかけた。

 瞬時にネギま部の面子が、明日菜さんを前面に押し出すような陣形を取る。

 

「んもー、ネギま部じゃなくて『白き翼(アラアルバ)』でしょ、リンネちゃん!」

 

「明日菜さん、『復活薬』は残りありますか?」

 

「そっちは奪われていないから大丈夫!」

 

 明日菜さんがそう言いながら、アーティファクトの大剣を構えた。

 

 そんな明日菜さんに、ナギ=ヨルダの部下三体が迫る。

 だが、ネギま部のメンバーがその妨害に入り、明日菜さんを守った。

 

 のどかさんも、『いどのえにっき』を複数展開しつつ長杖『リフェルアリオン』を手に取りテクニックを敵に放つ。

 楓さんのアーティファクトから出てきた夕映さんは、そんなのどかさんを守るように大剣『クヴェルアリオン』を構えている。

 

 戦闘が開始され、敵味方が入り乱れて激突する中、私は後方でスマホをいじっていた。

 別に遊んでいるわけじゃない。スマホの住人に連絡を取っているのだ。

 

 呼び出しの了解を得たので、私は『スペース・ノーチラス』側の弓兵を減らし、新たに仲間をこの場に呼び出した。

 一定範囲の仲間に自身のステータスを加算するダンサーの『情熱の踊り子ワルツ』。

 特定の属性を持つ相手のステータスを強化する鍛冶師の『ドワーフの姫ティニー』。彼女の強化対象は女性の近接戦闘職全般。

 数々の支援魔術を使えるキャスターのサーヴァントで、アルトリア陛下の一つの可能性である『アルトリア・キャスター』。通称キャストリア。

 

 それぞれが、戦闘態勢を取ったまま、明日菜さんの近くに展開する。

 

「さあ、一曲奏でますよ」

 

 ワルツが手に持ったリュートをかき鳴らし、躍りながら楽しげな曲を演奏し始めた。

 彼女の味方強化スキル『エンドレスワルツ』の前奏だ。

 

「フン、特別に来てやったわよ」

 

 ティニー様がそう言いながら、手に持ったハンマーを地面に打ちつけた。

 すると、ネギま部の女性陣に不思議な力が宿り、武器が防護される。魔力とも気とも違う力により、女性陣の強さが跳ね上がった。

 

「出陣ですね。いいでしょう。ひとまずは、皆に強化を」

 

 キャストリアが魔術を行使すると、彼女が持つ宝刀マルミアドワーズが輝きを見せ、ネギま部のメンバー達を照らす。

 宝刀の加護が皆に宿り、悪を打ち払う力がもたらされた。ゲーム的に言うなら、『希望のカリスマ』が発動した状態だろう。

 

「よし、いける! 覚悟しなさい、ナギ!」

 

 そう叫んだ明日菜さんが、ナギ=ヨルダに向けて剣を構えた。

 そして、ネギま部のメンバーがヨルダの部下達を押し込むようにして道を開き、明日菜さんをナギ=ヨルダのところへと向かわせた。

 

 これこそ、フォーメーション『スーパーアスナ』。明日菜さんを強化して、造物主(ライフメイカー)に直接差し向ける陣形である。

 

 明日菜さんが向かってくることは予想外だったのか、ナギ=ヨルダはフッと笑い、指を明日菜さんに向ける。

 そして、そこから無詠唱で『雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)』が放たれた。

 

 ナギ・スプリングフィールドの魔力によって放たれたその一撃は、さながら極大ビーム砲。

 だが、明日菜さんはそれを剣の一振りでかき消した。

 

「私に魔法は効かないわよ?」

 

 明日菜さんが笑い、ナギ=ヨルダに迫る。

 

「そうだったな。では、魔法が効かぬなら、魔力を込めた直接攻撃ならどうだ?」

 

 ナギ=ヨルダが前に一歩進み、拳を構える。

 そして、明日菜さんを迎撃しようと拳を振り抜いたところで、それを横から受け止める者がいた。

 

「ネギ!」

 

 明日菜さんが、自身を庇った仲間の名前を叫ぶ。

 それは、竜化したネギくん。彼は竜の素材で作った装備の一つ、竜鱗の盾でもって、ナギ=ヨルダの一撃を防いでいた。

 

「ほう、これがあの死に損ないか」

 

 ナギ=ヨルダが顔を歪ませて、ネギくんに笑みを向ける。ナギ・スプリングフィールドはしそうにない悪そうな表情だ。

 

 そこから、ナギ=ヨルダとの戦いが始まった。

 タンクのネギくんとアタッカーの明日菜さんというコンビで、ナギ=ヨルダと渡り合う。

 ナギ=ヨルダの攻撃はすさまじく、ネギくんの竜の身体はどんどん削られていく。それを私が後方から回復し続けるが、正直回復が追いついていない。

 

 盾を左手に持ち、懸命にナギ=ヨルダの攻撃を防ぎ、右手の魔剣で牽制をするネギくん。

 

 防ぎ防ぎ、防ぎに防いで、その隙をついて明日菜さんがナギ=ヨルダの片腕を切り落とすことに成功する。だが、次の瞬間、ナギ=ヨルダがもう片方の腕で、ネギくんの胸に攻撃をぶち当てた。

 ナギ=ヨルダの腕は、竜鱗を砕き、竜皮を突き破り……心臓を打ち抜いた。

 

 ネギくんの背から、ナギ=ヨルダの腕が突き抜ける。

 血が止めどなく流れ、ネギくんはそのまま膝を突き、ナギ=ヨルダの腕にすがるように抱きつく。

 ナギ=ヨルダは、ネギくんの胸から腕を引き抜き、腕に絡みつくネギくんの手をわずらわしそうに払った。

 

 しかし……。

 

「何? なぜ離れぬ」

 

 胸を貫かれて死んだはずのネギくんは、ナギ=ヨルダの腕に再び組みついた。

 それと同時に、私の後方に配置していた『避禍予見の鏡影』が砕け散る。この鏡影は、一度限り仲間の死亡をなかったことにしてくれる。

 一瞬でネギくんの胸の傷が塞がり、蘇ったネギくんは力一杯ナギ=ヨルダの腕を両手でにぎりしめた。

 

 それを見ていた私は、ナギ=ヨルダの部下を宝刀マルミアドワーズで斬りつけていたキャストリアに指示を出す。

 

「キャストリア、今です! 明日菜さんに強化を!」

 

「誰がキャストリアですか、まったく」

 

 キャストリアはそう言いながらも、明日菜さんに向けて二つの魔術を行使。それは、理想郷アヴァロンに住む妖精の加護をもたらすスキルと、人類の脅威に対する聖剣を作成するスキル。

 すると、魔術を受けた明日菜さんのアーティファクト『ハマノツルギ』が光り輝き、姿を変える。それは、白き翼の生えた美しい大剣。

 

 新たに造り出された聖剣でもって、明日菜さんはナギ=ヨルダに挑みかかる。

 

「今なら撃てる! 奥義ィ!」

 

 明日菜さんはその場で跳躍し、落下の勢いのまま地面にその聖剣を叩きつけた。

 

「『岩砕滅隆剣』!」

 

 聖剣の輝きが伝播した地面が隆起し、巨大な槍となってその場から動けないナギ=ヨルダを串刺しにする。

 その大地の一撃には明日菜さんの力がしっかりこもっており、ナギ=ヨルダの肉体を再生不可能なほどに打ち砕いた。

 

 このナギ=ヨルダは端末。その言葉が正しかったのか、身体を貫かれたナギ=ヨルダは魔力になって分解されていく。

 そして、ナギ=ヨルダは、散り際に言葉を残す。それは、ヨルダのものか、ナギの意志によるものか。

 

「ネギ……俺を殺しに来い」

 

 そう言って、ナギ=ヨルダの身体は消滅した。

 

 

 

◆186 天文学者

 

 決着は付いた。

 ナギ=ヨルダが呼び出した部下達は、ネギま部の奮闘と、フェイト・アーウェルンクスが差し向けたアーウェルンクスシリーズの決死の攻撃によって、全て撃破できたようだ。

 代わりに、アーウェルンクスシリーズも全て破壊されてしまったようだが、生き残ったフェイト・アーウェルンクスは部下の少女達に「魔力があればまた復活できるから大丈夫」と言っていた。

 そんな彼の手には『最後の鍵』がにぎられている。確かに、その気になればこの場の魔力で、いつでもアーウェルンクスシリーズを復活させることができることだろう。

 

 そして、その彼と激闘を繰り広げていたデュナミスは、下半身を消し飛ばされ、地面に仰向けになって転がっていた。

 

「おのれ……しかし、我が主の本体はここにはない。分体を破壊した以上、本体に精神が戻っているはずだ!」

 

 デュナミスの叫びを聞き、私は彼に尋ねる。

 

「それは本当ですか?」

 

「その通りだ! (マスター)が再び現れるまで震えて待つがいい! 我が(あるじ)は不滅だ!」

 

「不滅ですか。それは困りましたね。困ったので、封印しちゃいましょうね」

 

「なに……?」

 

 私は再びスマホを取り出し、電話を繋げる。

 そして、ハンズフリーモードで周囲に相手の声を聞こえるようにして、通話を開始する。

 

「こちらリンネ。オペレーション『結灰陣(けっかいじん)』発動」

 

『了解したにゃ。総員、封印術式展開にゃ!』

 

 電話の向こうから、子猫の声が響きわたる。

 そして、しばらく経ってから、再び子猫の声がスマホを通じて聞こえてくる。

 

『小惑星アガルタ封印完了にゃ』

 

「はい、おつかれさまでした。ボーナスのまたたびに期待していてください」

 

『やったにゃー!』

 

 子猫の喜ぶ声を聞いてから、私は通話を終了した。

 それから手元のスマホを消し、私はデュナミスに近づき、見下ろした。

 

「あなたの(あるじ)は封印しました。これ以上の戦いは無意味です。投降してください」

 

 私の言葉を聞き、デュナミスが驚愕の表情を浮かべる。

 

「馬鹿な……どうやって封印など!」

 

「麻帆良の封印が解除されたときのために、こっそり本体のところに宇宙艦隊を派遣していたんですよ。もし火星開拓事業計画書をご覧になっていたのなら、分かりますよね。私が別宇宙の宇宙船を呼び出せるって」

 

 そう、私は呼び出せる人員枠を大量消費して、造物主の本体のところへ宇宙船を派遣していたのだ。おかげで、今回の決戦であまり助っ人を呼び出すことができなかった。『完全なる世界』を数で圧殺できなかった理由がこれだ。

 キティちゃんの最終目標、ナギ・スプリングフィールドを造物主から救い出す。これを達成するには、麻帆良に封印されているはずの魂もしくは精神と、肉体がある本体である小惑星を統合させる必要があった。

 なので、麻帆良にある封印を解くこと自体はこちらの狙い通りだったのだ。本当なら、『完全なる世界』をどうにかしてから私達の手で封印解除をするつもりだったが、今回の騒動で封印解除されてしまう可能性も織り込み済みではあった。後は、ヨルダを倒す準備とナギ・スプリングフィールドを救い出す準備をしっかり整えて、いつの日かやってくる最終決戦を待つのみだ。

 

 もちろん、これらのことは予言の書の存在を知らないメンバーには秘密にしていた。なので、敵と一緒に味方達もビックリしているね。

 私は事実の披露にちょっとドキドキしながら、地面に倒れるデュナミスを見下ろして告げる。

 

「これで、戦う準備が整うまで、造物主を封印しておくことができました。震えて待つ必要はありませんね?」

 

「どうやってあの方の本体を見つけたというのだ……。簡単に見つけられるような場所にはいないはずだ」

 

「実はウチの子猫達って、天文学に優れているんですよ。火星開拓事業の説明のために要人の前で連日のように子猫達を呼び出していたんですけど……彼らが魔法世界の空を観察していたら、発見してくれたんです。造物主の本体」

 

「馬鹿な!」

 

 馬鹿じゃないよ。驚くのも分かるけどさ。

 異界である魔法世界のはるか上空、宇宙空間に造物主の本体は存在する。小惑星アガルタ。それが造物主の本体だ。『UQ HOLDER!』で語られていた情報だね。

 

 観測した小惑星が、造物主の本体だという確信はあった。魔法世界中にフォトンを散布したのどかさんがフォトンの反応から演算をして、その小惑星が造物主の本体だと太鼓判を押してくれたからだ。何気に、人工アカシックレコードの司書として初めて役に立った瞬間だった。

 

「それくらいできちゃうのですよ。なにせ、私が抱えるのは科学の申し子達ですから」

 

 私がそう言うと、デュナミスは観念したようにまぶたを伏せた。

 

 実際のところ、今回の騒動に関しては、ゲートを完全開放されて麻帆良を吹っ飛ばされることだけが、私達の敗北条件だったのだ。

 世界の書き換えを実行されても対抗術式を雪姫先生が準備していたし、造物主が復活しても本体封印の準備ができていた。

 万が一仲間が『完全なる世界』のメンバーに殺されないためにも、『復活薬』という『PSO2es』の死亡後復活する課金アイテムをみんなに大量配布してあった。『避禍予見の鏡影』もあったし、死亡対策はしっかりしていた。

 敵がピンポイントで、ゲート開放をしようとしたのには焦ったが……。最終的に阻止はできたので、全部丸く収まったということでいいだろう。

 

 やがて、デュナミスは雪姫先生によって力を封印されることとなった。

 さらに、フェイト・アーウェルンクスが取り出した、約束を魂のレベルで遵守する魔法具『鵬法璽(エンノモス・アエトスフラーギス)』を使ったうえで、私達に敵対しないことを宣言した。

 

 こうして秘密結社『完全なる世界』は瓦解し、『墓守り人の宮殿』における決戦は私達ネギま部の勝利に終わったのだった。

 




※麻帆良に封印されていた造物主は精神を乗り移らせた端末であるという設定は、『UQ HOLDER!』での描写を考慮したオリジナル設定です。造物主の本体が小惑星アガルタというのは『UQ HOLDER!』に出てくる原作設定です。

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