【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆194 尋問
「『
そんな言葉と共に、襲撃犯の尋問が始まった。
ここは、麻帆良にある魔法使いを捕らえておくための施設。原作漫画の麻帆良祭編で、超鈴音によって未来に送られたネギ先生が収監された施設だと思われる。
そこに麻帆良の魔法先生が襲撃犯を連れて来たのだが、尋問のために私がのどかさんを呼んだというのが今の状況だ。
麻帆良の人達には、のどかさんのアーティファクトの存在はバレていると思うからね。修学旅行では堂々と使っていたわけだし。
そういうわけで、のどかさんは私を護衛にして取り調べ室に入って、捕らえられた下級悪魔を相手に存分に心の内を覗いている。もちろん、相手に『いどのえにっき』の存在がバレないよう、専用の道具で隠してあるよ。
こういうとき、『いどのえにっき』のページを直接覗かなくても文字を読み上げてくれる魔法具、『
「なるほど、アリアドネーの親善大使の方々を狙ったのは、麻帆良とアリアドネーの関係性を悪くして、『
のどかさんが、相手の心の内を見事に暴露した。
すると、取り調べを受けていた下級悪魔が、あせった声で言った。
「馬鹿な! 精神防壁は完璧なはずだぞ! 読心魔法など、効くはずがないのに!」
「大丈夫ですよー……。あなたは何も喋らなくていいんです。今回の襲撃に参加しなかった他の仲間はいますか?」
「ッ!? やめろ! 心を読むな!」
「麻帆良の郊外に、まだたくさん……その人達もアリアドネーの方達が狙いですか? ッ!? なるほど、学校へのテロが目的ですか」
おや? 話の行き先が不穏になってきたぞ。
「アリアドネーはことのついで。本命は、麻帆良学園本校女子中等部の校舎に攻め入り、生徒を人質に取ることですか。最優先目標は、3年A組……よく調べていますねー……人質に取って、何を?」
オイオイオイ、学校にテロリストとか、思春期の少年が授業中にする妄想じゃないんだから。
「なるほど、刻詠リンネさんに要求を突きつけるという計画ですか。だそうですよ。すごいことになっちゃいましたねー。リンネさん」
刻詠リンネ? 誰だよそれ。私だよ!
「えー、要求ってなんですか。そういうの、人質とか取らずに正面から言ってきてくださいよ」
私がボソボソと言うと、それでもちゃんと相手は心の中で考えを思い浮かべたのか、のどかさんが反応する。
「
「ええっ、なんでそれを私に要求しようとしているんですか?」
「魔法世界では、『完全なる世界』の首領を封印したのは、リンネさんの仕業として上流階級の間で知れ渡っているらしいです。
「ええー……」
当たっているよ! いや、秘密にしていたわけじゃないけど……あえて喧伝するようなことはしていない。
しかしまあ、こうしてテロリストが来るとなると、考えものだね。両親のところにサーヴァント派遣しておかないと。
「そもそも、こいつら何者なんですか? 『完全なる世界』の残党に魔族はいなかったはずですが」
私は、ふと思った疑問を口にする。
高畑先生とゲーデル総督が長年『完全なる世界』の力を削り続けた結果、残党は夏休みの始め時点で、フェイト・アーウェルンクスとその部下の少女達、それとデュナミスだけになっていたはずだ。
「今回の『完全なる世界』と『白き翼』の戦いで、『完全なる世界』の真の目的を知った賛同者が作った武装勢力らしいです。団体名は、『
ん? 何か聞き覚えあるな?
そう思ったら、のどかさんが私の手を取り、念話を流してきた。
『『UQ HOLDER!』の二十二巻以降に敵対する、魔族の武装勢力ですよー』
『あー、なるほど。よく覚えていますね』
『予言の書の内容は、しっかり覚えるようにしているのでー……』
『三回くらいしか通しで読ませていないのに、立派ですね……』
記憶力すごいねぇ。
しかし、魔族が構成員の武装勢力か。魔族はその気になれば魔界に帰ればいいんだから、魔法世界の未来なんてどうでもよさそうなものだけど。
そう思って、私は魔族に問いかけてみると。
「……この人、わざわざ魔界から魔法世界に出てきて『新たなる夜明け』に加わったそうです。でも、なんでそんなことを? ……上級魔族に言われた?」
そうのどかさんが相手の心を読み取った。
黒幕は、魔界の魔族? 待てよ、ということは、もしや……。
「ポヨポヨ言うレイニーデイ?」
私がその名前を出すと、のどかさんが「違うようです」と答えた。
フム。ポヨ女の命令じゃないと。となると、他にありえるとしたら。
「真祖バアル」
ポツリと私が言うと、黙り込んでいた魔族が、突然叫びだした。
「なぜ貴様が、尊きあの方の名を知っている!?」
マジかよ……。ここで名前が出てきたか、真祖バアル。
いや、待てよ。
私は取り調べ室をいったん出てスマホを呼び出し、電子書籍閲覧アプリを起動する。
そして、『UQ HOLDER!』の二十二巻を開き、『新たなる夜明け』が出てくるページを表示する。
その中で、『新たなる夜明け』幹部がこんな台詞を言っていた。
『バアル様の
フム。『新たなる夜明け』の最初の登場は、雪姫達UQホルダーが真祖バアルの逃走ルートを探っていた中で敵対した魔法世界の武装勢力としてだ。つまり、彼らは真祖バアルの眷属。それが、『完全なる世界』の目的に同調した人間を取り込んで魔法世界で根付こうとしている最中というのが、本当のところだろう。
私は、試しに『ドコデモゲート』のアプリで、真祖バアルの居場所を検索してみた。
……うん、魔界の業魔大陸にいるぞ、こいつ。てっきりメガロメセンブリアあたりにでも潜伏しているのかと思っていたけど、こんなところで暗躍しているとは。
私は取り調べ室に取って返し、のどかさんの肌に触れて、そのことを念話で伝える。
すると、のどかさんはさらに質問を魔族に重ねていき、その組織の全容を丸裸にしていった。
うん、なんというか、『いどのえにっき』はやっぱりすごいね。しかも、いざとなったら人工アカシックレコードでの情報閲覧もあるし、のどかさんは敵に回したくないよ、本当に。
◆195 大捕物
さて、相手の目的が分かり、学校が狙われていることが魔法先生の間に広まった。
麻帆良の郊外には、未だに武装勢力『新たなる夜明け』が居座っており、虎視眈々と襲撃を狙っている。
狙われている以上、こちらも座して待つわけにはいかない。迅速に制圧をする必要がある。
ということで、魔法先生が集まって武装勢力の者達を捕らえることとなったのだが、そこに我らがネギま部もメンバーに加わった。
私達が参加することに、魔法先生達は渋る。当然だ。危険な場所に、子供を連れていくわけにはいかないだろう。魔法先生達の感性がまともであるほど、反対する声は大きい。
だが、そこにキティちゃんが告げた。こいつらはお前らよりもはるかに強いと。
そして、敵の戦力は多く、魔法世界の本国から援軍を待つ間に攻め入られたら、甚大な被害が出てしまうとキティちゃんは魔法先生達にせまった。
そのキティちゃんの主張に、魔法先生達も困ってしまった。
子供を危険な場所に連れていきたくない。しかし、このままだと武装勢力が攻めてきて無数の子供達が危険に晒されてしまう。
そこで新たな意見を述べたのが、高畑先生だ。
曰く、『白き翼』は他の力を借りることなく『完全なる世界』の残党を打倒した集団。力を借りるならこれ以上頼もしい者達はいないと。
さらに、刀子先生も、意見を述べる。
桜咲刹那とは今まで一緒に任務をこなしてきており、参加を容認できる。刻詠リンネも、先のアリアドネーの親善大使への救援で大活躍をしてくれた。
その二人が保証するメンバーならば、参加させてもいいのではないか、と。
そういうわけで、ネギま部の捕り物への参加が決まった。
いや、実のところ、私がスマホから戦士達を呼び出せば、ネギま部の参加は必要なかった。
では、なぜ彼らを参加させたかというと、経験を積ませるためだ。
ネギま部メンバーは、いずれやってくる真祖バアルとの戦いに、否応なしに巻き込まれることだろう。
今回のような魔族の襲撃は今後も予想できることであり、実戦を一つでも多く積み重ねることは急務とも言えた。
そして、彼女達が造物主との決戦に参加したいと願うならば、少しでも強くなっていてもらう必要がある。
そのための戦い、そのための試練が、今回の大捕物である。
もちろん、その経験を積むべきネギま部メンバーの中には、私も入っている。
私がバアルへの対処や造物主との決戦に参加しないというのはまずありえないこと。ならば、積まないとね。実戦経験。
というわけで、アリアドネーの人達が襲撃を受けたその日の夜、郊外の雑居ビルにいる『新たなる夜明け』の捕縛作戦が、迅速に実行された。
「ニクマン・ピザマン・フカヒレマン!」
魔法先生の
これで、大魔法を使っても周辺住民に気づかれることはなくなった。
結界の展開と同時に、魔剣を手にしたネギくんとアンオブタニウムの手甲をはめた小太郎くんが真っ先に敵施設に突っ込む。ちなみに二人は竜化も獣化もしていない。二人とも人間の姿でないと、麻帆良の学園結界の効力を受けてしまうようになったのだ。
結界をいじって効力外に指定する例外処理をするには、次の結界のメンテナンスを待たなければならない。年に二回の大停電だね。
ちなみに、例外処理はキティちゃんも受ける予定だ。魔法世界での恩赦が通ったので、危険性無しという扱いになったためだ。
むしろ、麻帆良的には警備員として万全なキティちゃんに居てもらう方が、保安上都合がいい。来年の中等部卒業以降は、このまま高等部へ上がってもらい、さらには麻帆良大学の教育学部へと進んでもらって、ゆくゆくは魔法先生や広域指導員への就任をしてもらえないかと話が来ているそうだ。
と、話が逸れた。今は捕り物だね。
「魔法罠が大量にあります!」
先に侵入したネギくんが大声で叫ぶ。
どうやら、アリアドネーの襲撃に失敗したことで敵は警戒を高めていたようだ。
どうせならさっさと逃げておけばいいのに、本命の学園テロを諦めきれなかったのかな? まあ、その判断が命取りになったね。命までは奪わないけど。
「敵、悪魔多数です。しぶといので、思いっきりやって大丈夫です」
刀子先生が、大太刀で下級悪魔をズンバラリンと切り裂きつつ言う。悪魔は悲鳴を上げており、もうどっちが悪魔なんだかって状態だ。
悪魔と聞いて、ガンドルフィーニ先生が退魔弾を銃から撃ち出す。
それで動きを止めた悪魔に、神聖魔法の使い手であるシスター・シャークティが封印術式を叩き込んだ。
中には人間の構成員もいたが、そちらは
もちろん、敵も魔族と魔法世界人だ。魔法で抵抗してくる。が、
うん、魔法先生も強いね。数は相手の方が多いが、ネギま部メンバーによるフォローでどうにかなっている。それに、そもそも屋内戦だから、囲まれる危険性が少ない。
そんな中、一際悪魔らしい外見をした敵構成員が、ビルの上の階から降りてきた。
感じる魔力の高さは、学園結界に引っかからない上限ギリギリ程度。敵の幹部だろうか。
だが、その程度の強さで、私達に敵うはずもない。
ポケットに両手を突っ込んだ高畑先生が前に出ていき、その悪魔と対峙する。
「おのれ! 我らが敗れても、第二第三の――」
と、何かを言いかけたところで、高畑先生の無音拳が炸裂する。
悪魔は一瞬で数百発の無音拳を食らい、そのまま沈黙した。
「話は、取り調べ室で聞こうか」
高畑先生はそう言って、次の標的を探しに移動した。
それを目撃していたネギくんは、ポカーンとした表情で高畑先生を見ている。
私はネギくんに近づいて、ぼそりと小さな声で言う。
「あれが本当の高畑先生の強さですよ。ちなみに、高畑先生は魔法世界の軍艦すら落とせます」
「あはは……『まほら武道会』では手加減されていたんですね」
「いやー、相手を殺しかねない技を全部封印していたとかじゃないですかね?」
『魔法先生ネギま!』の終盤で見せていた『
そんな感じで大きな被害もなく雑居ビルの制圧は終わり、敵の幹部らしき者達は『いどのえにっき』で取り調べを受けることとなるのであった。
◆196 逆侵攻
アリアドネーの親善大使襲撃から数日後。尋問でその組織の全容を明らかにされた『新たなる夜明け』だが、魔法世界に本拠地があることが判明した。
それを知ったアリアドネーは事態を重く見て、『新たなる夜明け』の本拠地に魔法騎士団を差し向けることを決定した。さらには、敵の本拠地が新オスティアのすぐ近くということで、メガロメセンブリアの飛行艦隊も出動することになる。
ここで、我ら『白き翼』も『新たなる夜明け』殲滅作戦に参加することが決まった。これもまた、実戦経験を積むための試練の一環である。
今回は麻帆良が一切関係ない作戦なので、学園から止められることはない。
アリアドネーは学生が参加することに異は唱えなかった。そもそもが、学生を騎士団の演習に参加させることが日常的にあるシビアな魔法都市なのだ。日本の麻帆良のように、博愛精神に満ちているということはない。
むしろ、『完全なる世界』を打倒した『白き翼』の参戦は、大歓迎と言ってきたほどである。
そして、作戦当日。学生の私達の日程に合わせて、地球時間の金曜放課後からの作戦開始となった。
私達は、メガロメセンブリアの軍艦に乗り込み、緊張した面持ちで待機する。
今回の作戦において、敵の扱いはデッドオアアライブ。生かして捕らえてもよいが、殺してしまっても構わない。むしろ、手間を考えたら殺してしまった方が楽。そんな戦いに、ネギま部は参加する。
人を斬る感覚は、夏休みに私を巻き藁にしたことで慣れている彼女達だが、敵を完全に殺してしまうことには慣れていないだろう。
楓さんですら緊張顔で、平然としているのは古さんと刹那さんだけだ。
人殺しとか女子中学生に経験させることじゃないが、これには慣れておかないといけない。なにせ、私達はいずれ造物主を討伐するのだからね。
そして、緊張した雰囲気の中、敵本拠地を発見する。
場所は、廃都オスティア近くの地上部。どうやら奴らは要塞を建築中のようで、周囲の岩場から石材を切り出しているようだ。
「さて、先日はお前達が活躍を見せてくれたからな。今日は私が、砲台としての魔法使いの本領を見せてやるとしよう」
恩赦を受けて、堂々と魔法世界入りしたキティちゃんが、フフンと笑いながらそんなことを言った。麻帆良の郊外は学園結界の範囲内だったから、キティちゃんは不参加だったんだよね。
その後、私達は軍艦の甲板に出て作戦開始時刻を待つ。
軍艦が敵本拠地のすぐそばまでやってきたところで、軍艦の乗組員が「時間です」と知らせてくる。
それと同時、キティちゃんが敵本拠地に向けて手をかざした。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック。集え氷の精霊。槍もて迅雨となりて敵を貫け――」
すると、キティちゃんの後方に無数の魔法陣が現れ、そこから巨大な杭状の氷が膨大な数出現する。
「『
キティちゃんが魔法を唱えると、氷の杭が一斉に飛んでいき、敵の本拠地を貫いていく。それはもはや、絨毯爆撃といっていい規模だ。
『氷槍弾雨』は本来、小規模の氷弾の雨を降らせる魔法だ。『魔法先生ネギま!』にて、アリアドネーのエミリィ・セブンシープが
だが、これはどうだ。もはや極大魔法と言ってもいい規模であり、メガロメセンブリアの軍艦乗組員ですら唖然とした顔でその戦果を見つめているではないか。
これが本気のキティちゃん。これが、
「それ、次だ」
キティちゃんが、上機嫌で砲台となって魔法を次々と撃ち込んでいく。
これ、私達の出番ないんじゃないかなぁ、などと思っていると、敵本拠地に魔法障壁が展開した。
どうやら強固な障壁のようで、キティちゃんの追加攻撃を見事に防ぎきった。
「む、生意気な。仕方ない、明日菜、出番だ」
キティちゃんが魔法の手を止め、明日菜さんを呼ぶ。
名前を呼ばれた明日菜さんは、緊張した面持ちで、アリアドネーが用意した個人サイズの魔法飛行機に乗りこむ。操縦は、アリアドネーの女性騎士だ。
他のネギま部部員も飛行できる者はそれぞれ飛び立ち、飛べない者は魔法飛行機に乗りこむ。
そして、軍艦が敵本拠地の上空を占拠し、突入隊が敵本拠地に降下する。
先陣を切る形になった明日菜さんは、アーティファクトの『ハマノツルギ』を振りかぶり、そのまま魔法障壁をバターのように切り裂いた。
『ハマノツルギ』で裂かれた箇所は大きな穴となり、そこから次々と突入隊が入り込んでいく。
私も魔法の杖で飛行をしながら突入し、キティちゃんの砲撃でボロボロになった敵本拠地に降下する。
敵本拠地には、麻帆良の雑居ビルではいなかった亜人が数多く姿を見せており、全力を引き出した私は彼らを一方的に蹴散らすことになった。
敵の大幹部には上級悪魔の姿も複数見え、それらとネギま部は壮絶なバトルを繰り広げ……テロリストの殲滅作戦を成功させた私達は、精神的に一つ大人になった。麻帆良に戻って浴びた夜明けの光は、ひどく目に染みた。
※麻帆良の学園結界に例外処理が可能という設定は、当作品のオリジナル設定です。