【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆197 暴露
武装勢力『
徹夜になったので生活時間を戻すためにエヴァンジェリン邸の別荘へと入り、一眠りすることになった。そして、別荘内部でぐっすり眠り、皆で食事を取る。
だが、人の生き死にを目にして気が滅入っているのか、食事の場は盛り上がらない。
これは、無理にでも楽しいことを話した方がいいな。
「ということで、ここでワクワクドキドキ、『幻灯のサーカス』の願望報告会を行ないますよー」
私の声に、みんななんぞやという顔をする。少し唐突過ぎたか。
私は、食事の手を止めた皆に向けて言う。
「
私がそう言うと、嫌そうな顔をする人が何名か。フフフ……これは暴露が楽しみだね?
なお、この場にいるのはネギま部なので、同じように『幻灯のサーカス』を食らっていた龍宮さんや高畑先生はいない。あと食らわなかった結城夏凜さんもいない。
前者の二人がいないのは残念だが、まあ身内の暴露会なので話を聞けないのは仕方ないか。
「あの夢って、本人の願望が反映された夢なんですよね? 確かにみんなの夢、気になりますー」
相坂さんがワクワクした様子でそのようなことを言った。
「フフフ、私だけみんなに見られて不公平だと思っていたからね。じゃんじゃん暴露してもらうよ!」
ハルナさんが、眼鏡をくいっと上げて怪しい笑みを浮かべた。
まあ、ハルナさんがみんなに夢を見られたのは、一人だけ起きてこなかったのが悪いのだが……。
「なんか、私だけ夢を見ていないのはちょっと残念ねー」
「私も見とらんぞ」
『幻灯のサーカス』を防いだ組である明日菜さんとキティちゃんがそんな言葉を交わしている。
ロボットの茶々丸さんや、幽霊の相坂さんですら食らったというのに、二人は防いだというんだからすごいよね。私は防げなかった……。しかも、『LINE』でそのことを人類最後のマスターに言ったら「夢の攻撃は防げたはずだよ、私達の持つ力をもう一度調べてみよう!」とか言われたし。使える力が多すぎて、どれのことか分からん!
「で、誰からいくの?」
蚊帳の外の明日菜さんが、そう催促してくる。
「ここは言い出しっぺからやな」
木乃香さんがそう言って、私の方に皆の目が集まる。
私からか。別に恥ずかしい夢を見たわけじゃないから、話すことに
私はみんなに聞こえるように、少し大きな声で話し始めた。
「私が見た夢は、ガチャを回す夢ですね」
私がそう言うと、みんなが一斉に何を言っているんだこいつは? という顔をした。
「私のスマホとつながる宇宙に人を増やすためのガチャガチャを延々と回し続ける夢を見た感じですね」
今度はみんな、あーなるほどと納得した。
「つまり、リンネさんは火星開拓のために人を呼び出す枠を増やすことではなく、仲間を増やすことを望んでいたということですか」
茶々丸さんがそう私の気持ちを推し量ってくるが、違うんだよなぁ。
私は、ガチャを回してレアを引く行為そのものを存分に楽しみたいと願っていたのだ。仲間を増やすだの私の利益になるだのは二の次三の次だ。
でも、それを口で説明しても、イマイチみんなには伝わらない。
スマホゲームにガチャが実装されていないと、ガチャしたい気持ちがこうも伝わらないとは……!
「まあ、いいわ。次行きましょ、次!」
私の主張はスルーされ、明日菜さんが仕切って次をうながした。
「次、誰行きます?」
「起きた順でいいのではー?」
夕映さんとのどかさんがそう言ったので、起きた順で話していくことになった。
じゃあ、私達が異空間に閉じ込められた後、最初に目覚めたという楓さんからだ。
「故郷の里で、死んだジジババと過ごす夢でござるな」
「牧歌的ね!」
明日菜さんが、突っ込みなのかなんなのか、そのようなことを叫んだ。
でも、牧歌的になるのも当然だとは思うよ。平和で何不自由なく過ごすことみたいな、そんな素朴な願いをする人が意外と多いと思うから。あの幸せだった日と同じ日が一生続けばいいのに、みたいにね。
「しかし、ジジ様から活を入れられたでござるよ。仲間の危機にのんびり眠りこけるとは何事かと」
と、ここで楓さんが予想外なことを言い出した。
「夢の中の住人が、ですか?」
私がそう尋ねると、楓さんは「ウム」とうなずいた。
「拙者の思うジジ様は、夢を夢だと気づけないほどぼんくらではござらぬ。だから、これは夢だと自ら指摘してくれたのだと思うでござるよ」
「すげー爺様だな……」
ちう様が、苦笑しながらそうポツリとつぶやく。すると、楓さんは嬉しそうに「そうでござろう?」と誇らしげに言った。
さて、次だ。次に起きたのは、古さんらしいが……。
「ジャック・ラカンとナギ・スプリングフィールド杯で戦う夢を見たアル」
あー、やっぱり、拳闘大会に参加できなかったのは心残りだったんだね。
「でも、簡単に打ち負かせたので、こんなはずはないと気づいて目が覚めたアル」
夢の中ですら自分に甘えを許さないのか……。
きっと、古さんは勝ちたいではなく強くなりたいという願望が強くて、いざ強くなる夢を見ても、こんなに簡単に強くなれるはずがないみたいに思うんだろうね。一足飛びで強くなったのではなく、一歩一歩修行を積み重ねて強くなった古さんらしいね。
「次はウチやな? ウチは麻帆良に転校してくるときに、せっちゃんやお父様、お母様と一緒にこっちに移ってきた夢やな」
木乃香さんがこちらに転校してきたのは、小学生の頃。
それに父母や刹那さんも一緒についてきて、みんなで一緒に過ごすことが彼女の望みであったようだ。
舞台が京都じゃなくて麻帆良なのは、長く過ごした麻帆良にそれだけ思い入れがあるってことかな。
「でも、せっちゃんの性格が、子供の頃のものでなあ。今のせっちゃんと違うから、違和感覚えて目が覚めたんや。ウチにとってのせっちゃんは、今のせっちゃんやからな」
「お嬢様……」
刹那さんが感動したように目をうるませているが、あれだよ? 願望の世界に幼い頃の性格の刹那さんが出てきたということは、木乃香さんは昔の刹那さんの性格に戻ることを望んでいるかもしれないんだぞ。まあ、口に出して指摘はしないでおくけど。
さて、次。刹那さんだ。
「私は、幼い頃にお嬢様と一緒に過ごす夢を……」
「ウチら、おそろいの夢やなー」
「はい。お嬢様と違って、舞台は麻帆良ではなく京都でしたが……」
木乃香さんの合いの手を受け、そう説明する刹那さん。麻帆良ではなく京都か。彼女は小六まで京都にいたから、そちらの方がなじみ深いんだろうね。
で、どうやって目覚めたかについてだが……。
「お嬢様が川でおぼれそうになるのですが、私が隠していた翼を使ってさっそうと助けたところで、私にこんなことができるはずがないと思ってしまい……」
うーん、自虐的だなぁ。刹那さんは、もう少し自分を出してもいいと思うのだが。
それこそ、魔法が世間に公開されたら、背の翼を出したまま生活してもいいんじゃないだろうか。
さて、次。ネギくんだ。
「父さんと母さんが麻帆良に来て、一緒に放課後を過ごす夢を見ました」
その内容に、ネギま部の面々はどう反応したらいいか戸惑っていた。
「ナギはともかく、アリカ様のことってネギ、覚えているの?」
おおっと、ネギくんの両親と知り合いの明日菜さんが切り込みに行った!
「いえ、クルト・ゲーデル総督の映像で見たきりで……」
「ふーん、楽しかった?」
「はい!」
ネギくんの笑みに、ネギま部一同がほっこりする。
だが、ここで古さんが横から余計なことを言う。
「せっかくの両親との幸せな夢なのに、リンネがぶった切って中止させたアル」
みんなの視線が私に集まる。うっ、でもあのときは急ぎだったし……。
「途中で止めさせるにも、もう少し優しく言ってもよかったでござるなぁ」
楓さんも話に乗ってきた。
はいはい、私が悪うございました。
「そもそも、リンネさんは前々からネギ先生に対して当たりが強くなくて?」
あやかさんがそのように述べるが、そうなんだろうか。自覚はないが。
「リンネはアレだな。ネギ先生を大人として扱っているんだ。子供じゃなくて、一人前の社会人として接しているんだと思うぞ。だから、何かと手は貸すのに、無闇に優しい言葉はかけない」
ちう様がそんなことを言う。そうなんだろうか。自覚は全くないぞ。
「まあ。それなら、厳しく見るのは仕事をしているときだけにして、普段は子供として扱うべきですわ」
あやかさんが私に向けてそう言ってくる。
ふうむ。なるほど。
「ネギくんに優しい対応をすべきと」
「その通りですわ!」
「あのー、僕は別に今のままでもー……。剣を作ってもらったり、竜化の手助けをしていただいたりと、普段からお世話になっていますし」
ネギくんが、横から私に助け船を出してくれるが、あやかさんが「それとこれとは話が別ですわ」と言う。
ふーむ、確かにその通りだ。
「私は子供と小動物には優しくする主義なんです。ネギくんに対して優しくないというなら、あらためましょう」
私はそう言って、スマホを取り出す。
「差し当たって、夢を邪魔したお詫びに、アリカ女王の墓参りなどいかがでしょうか」
「墓参り、ですか?」
ネギくんが、予想していなかったとばかりに目を点にする。
「ええ、ナギさんが無事だった頃にアリカ女王が亡くなっているのなら、お墓はあるはずです」
私はそう言って、『ドコデモゲート』でアリカ女王の墓と念じて場所を出す。
「フム。地球のイギリスのようですね。この場所、心当たりありますか?」
ネギくんにスマホの画面に書かれた場所表記を見せると、ネギくんはハッとして答える。
「スタンお爺ちゃんが、今、この場所に住んでいるんです。老後を過ごすにはちょうどいいのどかな村だとか言っていて……」
なるほど。墓守りでもしているのかもしれないね。
「冬休みあたりにでも、アーニャ達に会うついでに墓参りへ向かいますか」
私がそう言うと、ネギくんは嬉しそうに「はい」と返事をした。
ちなみに、ナギの奥さんの墓参りと聞いて、キティちゃんが何やら微妙そうな表情を浮かべていた。
故人は悪く言いたくないが、恋敵。どう触れていいのやらという感じかな? ナギ・スプリングフィールドを救い出した後は絶対にぶつかる事実なんだから、今のうちに自分の中で消化しておいた方がいいと思うよ。
なお、「お詫びと言って即物的な墓参り案を出してくるあたり、イマイチ子供への愛がこもっていない」とかあやかさんに言われた。何かとネギくんにプレゼント攻勢を仕掛けようとするあやかさんが、それを言うのか……。
◆198 それぞれの夢
さて、話の途中で食事を終えたので、テーブルの上を片付けて食後の茶を飲みながら暴露話の続きだ。
次は起きた順で、小太郎くん。
「ネギと決着を付ける夢やな!」
「それ、いつもやっていないかしら。シミュレータールームを使って殺し合いレベルで戦っているでしょう」
水無瀬さんが突っ込みを入れるが、小太郎君が「違うで」と否定の言葉を告げる。
「現実で、公式の場で、白黒ハッキリつける夢や! 現実やと、死ぬまでやれんからな!」
「物騒ね……でも、あれがあればできるんじゃない? リンネさんから貰った『復活薬』」
水無瀬さんが、ポケットの中から一つのアイテムを取り出す。それは、『PSO2es』で購入できる課金アイテムだ。
『復活薬』。死亡した際に、完全回復した上で復活する薬である。みんなにはそれなりの数を渡している。
しかしだ。
「不死者の人でしか試したことないので、それを頼りにするのはやめてほしいのですが……」
私とちう様とキティちゃんでそれぞれ心臓を潰したり首をはねたりしたときに、自動発動するのは試した。でも、不死者だから上手くいったという可能性もぬぐえないからね。
だから、小太郎くん。目を
さて、次だ。次はカモさんだが……正直、まともな夢を見ていないのは分かる。
「古今東西の女人の下着を集めて、俺だけの下着アイランドを作った夢だな!」
ほら、やっぱり。ネギま部一同の刺さるような視線が、カモさんを射貫いているぞ。
「それで、俺っちは悟ったね。女人の中身はどうでもいい。脱いだ下着こそが全てだと。あれこそが俺っちの
いや、アヴァロンを変な場所にするんじゃないよ。
しかし、変に目覚めたね……。カモさんって『魔法先生ネギま!』では女性の裸に興奮することがあるんだけど、『UQ HOLDER!』では下着が全てで中身に興味はないっぽいんだよね。
その真理に目覚めるきっかけが、まさか願望の世界だとは、なんともはや。これは、害悪度が下がってよかったと言っておいた方がいいのだろうか。私の下着は絶対に渡さないが。
そもそも生粋のオコジョ妖精が、人間の女性の裸に興奮していた今までがおかしかったといえば、そうだね。
「しかし、なんの苦労もなく集まる下着は、それはそれで物足りなさがあったぜ……」
すごくどうでもいい夢の世界から脱出できた理由も添えて、カモさんの暴露話は終わった。
「次は私ね。あまり言いたくはないのだけれど……」
微妙な顔をした水無瀬さんが、そう告げる。
水無瀬さんかぁ。確かに、いじめられていた過去があるから、それ関連だとよくない夢を見たかもしれない。
「簡単に言うと、私をいじめた人達に魔法で復讐をする夢だったわ。自分の願望にちょっと引くわね……」
まあ、そういう夢もあるだろう。詳しく話すのも辛いだろうから、話を途中で打ち切って、次に行くことに。
次は、のどかさんだ。
「ユエとネギ先生の三人で、ものすごい情報図書館の司書をやる夢でした」
なるほど? しかし、図書館じゃなくて情報図書館?
「情報図書館には、世界中の情報が集まってきて、そこから人々の役に立つ情報を抜き出して、世の中のためになるよう役立てるんです」
あー、人工アカシックレコードの司書の仕事か。今、人工アカシックレコードはのどかさんが一人で演算を行なって管理をしているが、一人で担うのは重荷だったのかもしれないね。いずれは、夕映さんと分担させることも検討した方がいいかもしれない。
人工アカシックレコードのことは皆に秘密なので、ぼかした状態で語ったのどかさんは、早めに話を打ち切った。
次、相坂さんだ。
「私の生前の夢を見ました。近衛君とデートをしていましたねー」
「近衛君って、ウチのじいちゃん?」
「そうですよー。最近思い出したんですけど、私、学園長と知り合いだったんですよねー」
「そうかあ。でも、じいちゃんはばあちゃんのやから、現実では奪ったらダメやで?」
「分かっていますよー。あくまで夢の中でデートしただけですからー」
まあ、夢の中の行動を咎める人なんていないだろう。夢というのは他者がどうにかできるようなものではないし、どうにかすべきではないのだ。カモさんの夢だって、口に出して否定する人はネギま部にはいなかった。
次、ちう様。
「私は普段の麻帆良の風景だったな。普通に授業へ出て、普通に放課後修行して、普通に女子寮で寝るような夢だ」
「ん? いつも通りが一番ってこと? でも『リア充』にはアーティファクトは効かないとかポヨポヨさんが言っていたわよ」
明日菜さんが、ちう様の夢の話にそんな突っ込みを入れる。
すると、ちう様が「うっ」と言って、何かを言いよどむ。フム、何を隠しているのかね?
「あー、普段より少し、リンネ達に頼りにされることの多い夢だったな……」
意外! ちう様は周りに頼りにされたがっていた!
それを聞いたネギま部の面々がニヤニヤした顔でちう様を見て、ちう様は頭を抱えて「うがー!」と叫んだ。
うんうん、今回の暴露話では、こういうシーンを見たかったんだよ。
そして、次。茶々丸さん。
「ロボットの私が夢の世界に囚われるとは、不思議な体験でしたが……夢の中では、猫の集団とたわむれておりました」
うーん、茶々丸さんらしい、平和な夢だね。キティちゃんが猫アレルギーの類じゃないなら、エヴァンジェリン邸に猫を飼ってあげてもいいんじゃないかなぁ。今回みたいな遠征があっても、キティちゃんは魔法で分体を作れるので世話する分には問題ないだろうし。
次、夕映さん。
「次は私ですか……私は子供の頃の夢ですね。亡くなった祖父と一緒に過ごす夢でした……」
おおう、また故人の登場か。場がしんみりしかけたところで、夕映さんは顔を赤くして言った。
「そこに、私が見たことないはずの子供ののどかと、今の姿のネギ先生が出てきて、一緒に小学校に通ったです……」
ネギくんと一緒の学園ライフ! いいねえ。青春だねえ。
夕映さんが顔を真っ赤にして沈黙したので、次に行くことになった。
「私ですわね。私の見た夢は、ネギ先生と結婚し、雪広グループの宇宙開発事業を任され、ネギ先生と共に宇宙進出する夢ですわ!」
あー、あやかさんはネギ婚ね。
誰も彼もが予想通りという顔をしているよ。期待通りの暴露、ありがとうございます。
「始めは若いネギ先生を認めていなかった私のお姉様ですが、その有能さに一目置いてきて、次期総帥の座はネギ先生が相応しいのではないかとおっしゃって――」
いや待て。雪広の総帥の座、さりげなくネギくんに獲らせようと狙っているぞ、この人!
確かに未来の可能性としては、あやかさんが総帥の座に就くことは大いにあるのだけれど。『UQ HOLDER!』の世界線では、あやかさんが総帥に就いていたみたいだし。
なんか深く掘り下げたらヤバいことになりそうなので、次に行くことにする。
次、大トリだ。
「いや、私の夢の中にみんな入ってきたんだから、言わなくてよくない?」
ハルナさんがそう言うが、私達が入ったのは途中からだからね。最初から言いなさい。
「くっ、仕方ない。まず……バンバン画力を上げた私は、BL同人で御殿としてタワマンの部屋を買うほど稼ぐ。そののち、『週刊少年ジャンプ』でプロデビューするのよ。初連載はサッカー漫画!」
そこは、『魔法先生ネギま!』が連載されていた『週刊少年マガジン』じゃないのか……。
「もちろん連載は大ヒット! アニメ化! 映画化! 一億部突破よ! ここまで言えば満足かチクショー!」
普段は自信満々なハルナさんだが、さすがに一億部レベルの超売れっ子願望は恥ずかしかったのか、テーブルに突っ伏してしまった。
いやー、すごい夢だ。でもね。
「デビュー後もBLで売れたいわけではないんですね」
私のその指摘に、顔を伏せたままのハルナさんが一瞬震える。
BLとはボーイズラヴの略で、要は男同士の恋愛だ。BL同人というと、大抵の場合は同性愛要素が出てこない原作に同性愛要素を足した、二次創作漫画のことを指す。
ちなみに先ほどハルナさんが言った御殿というのは、同人で稼いだお金で買った家のことを指すスラングだ。
「ぐっ、確かに言われてみればそうね。BLは大好きだけど、メジャーな物を書いて皆に認められたいというのが本当の私の願望だったってことか……いや、違う! 私は、BL同人の人気題材になるような少年漫画が描きたいんだーッ!」
ハルナさんが顔を上げて、そんなことを叫んだ。
原作漫画では魔法世界でBL本を描いて大ヒットを飛ばすハルナさんだが、そういうことなら、魔法世界ではBL文化がブルー・オーシャンなことは黙っておこう。
一部のネギま部部員が「BLって何?」と言っているが、そちらも黙っておこう。ネギま部部員にオタク道を進ませるのも忍びない。
なお、ハルナさんが何を言っているのか完全に理解できている私は、生粋のゲームオタクだが……スマホに入っているゲームのラインナップからも分かる通り、女性向けゲームや腐向けゲームよりも男性向けバトルゲームの方が好きである。
そんな感じで、私達の暴露会は終わった。
場の雰囲気がすっかり明るくなったので、試みは成功と言えるだろう。
そして、私はさらなる催し物を皆に提案する。
「皆さん、この土日は予定空いていますか? ネギくんは確か、表敬訪問の類はなかったと記憶していますが」
私が尋ねると、皆、特に予定は埋まっていないと答えた。なんでも、皆で示し合わせてネギま部の活動をするつもりだったという。それは都合がいいな。
「では、みなさん。この土日を使って、私のスマホに通じる宇宙へ訪問してみませんか?」
私がそう言うと、皆、一瞬キョトンとした後、歓声を上げた。
うん、いろいろ忙しくて先延ばしにしていた、ネギま部による『ドコデモゲート』での別宇宙訪問。いい加減、やっておこうじゃないか。
※アリカ女王がすでに亡くなっているという設定は原作者のtwitterで出た情報ですが、お墓がイギリスにあるというのは魔法世界の外で『完全なる世界』幹部と戦っていたことから推察した当作品のオリジナル設定です。