【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■84 魔族襲来

◆205 秋の大停電

 

 麻帆良学園都市では、年に二回、メンテナンスのために大停電が実施される。

 一回目は四月、二回目は十月に行なわれ、夜八時から深夜十二時の四時間の間、麻帆良全域の電気が止まる。

 

 このメンテナンス、電力機器のメンテナンスに思えるが、実のところ麻帆良の学園結界のメンテナンスも同時に行なわれる。今回のメンテナンスで、恩赦を受けたキティちゃんを結界にかからないよう結界に手を加えることになっている。ついでに、竜化したネギくんと獣化した小太郎くんも除外対象になる。

 

 大停電中も、電力で動いている麻帆良の学園結界は停止しない。だが、予備システムに移行して、外部からの攻撃に脆弱な状態になってしまう。

 だから、この日は魔法先生達も、予備システムへの警備を欠かさないのだが……今回、この日を狙って魔族の勢力が麻帆良を攻めることが判明した。

 

 ザジさん等からたれ込みがあった、というわけではない。

 私のアーティファクト『ドコデモゲート』で真祖バアルの居場所を追跡し続けていたら、奴が地球にやってきて埼玉県に潜伏したのが分かったのだ。

 これは麻帆良へ侵入する態勢を整えているなと予測できたため、私はここで禁じ手を投入した。

 それは、のどかさん。対面しなければ使えない『いどのえにっき』ではない方の手札をここで初めて切った。フォトンがある場所のログを取り続けている、人工アカシックレコードを活用すべき時が来たのだ。

 

 スマホ内にいるアカシックレコードの司書であるシオンに手ほどきをしてもらい、のどかさんには自身の司書としての力を制御してもらう。そのうえで、近郊である埼玉県に絞って情報を取得させた。それは、さながら現在を見通す千里眼。『ドコデモゲート』による位置把握との連携によって、のどかさんは過剰な負荷もなく相手の秘密を覗き込んだ。

 

 フォトンによって記録された潜伏中の真祖バアルの会話ログを人工アカシックレコードから取り出し、彼が魔界から連れてきている魔族の全容を明らかにする。

 やがて判明した事実は、恐るべきものだった。奴らは大停電に合わせて学園結界を落とし、私を捕らえて造物主(ライフメイカー)を助けだそうと計画していたのだ。

 

 さらに、真祖バアルは恐ろしい計画を準備していた。それは、造物主から夢の世界に人を閉じ込める魔法の仕組みを聞き出して、造物主と協力して地球人類を夢の世界に閉じ込めてしまおうというものだ。

 もしかして……『UQ HOLDER!』で造物主が、太陽系の全域を対象に夢の世界を構築しようとしたのって……真祖バアルがそそのかしたからなのではあるまいな。もしそうだとしたら、『UQ HOLDER!』のすべての元凶は真祖バアルにあることになる。

 

 彼は、人類を愛しているがゆえに、争いを続ける現代の人類を永遠の夢に浸らせることが幸福だと思い込んでいるが……そんなヤンデレじみた愛など、人類の一人として拒否させてもらうよ。

 

 ゆえに、私達は麻帆良に防衛線を構築し、大停電の日に襲ってくる魔族を一網打尽にする防衛計画を秘かに練り始めた。

 まったく、体育祭も近いというのに、余計なことでわずらわせよってからに。

 大停電のタイミングで麻帆良を襲うとか、昔のネギまの二次創作小説かよって感じだ。

 

 防衛の方針を決めるため、私はエヴァンジェリン邸の別荘でキティちゃんとちう様、のどかさんの予言の書閲覧組を集めて作戦会議を開いた。

 

「判明している敵の中で、一番やっかいなのはこの人です。オティウス・ラウヴィア。固有能力『死亡回生(デスペナルティ)』」

 

 のどかさんが、テーブルの上に広げた敵の詳細データをまとめたファイルを指さした。そこには一人の魔族とその者の所有する固有能力が載っていた。

『死亡回生』。『UQ HOLDER!』の登場人物である桜雨キリヱが持つ固有能力『リセットOKな人生(リセット&リスタート)』と同系統の能力だ。

 その能力を一言で表わすなら『死に戻り』。死んだら記録した時点に世界の時間が逆戻りし、そこから記憶を持ったままやり直すというゲームのような能力だ。

 敵の幹部アガリ・アレプトの腹心で、万が一の事態に備えて連れてきているようだ。

 

「後は、魔界の業魔(ごうま)大陸十二諸侯……『UQ HOLDER!』にも出てきた真祖バアルの眷属ですね」

 

 私はそう言いながら、テーブルの上に十二枚のファイルを並べる。その中に、アガリ・アレプトの名前もあった。『UQ HOLDER!』にも出てきたが、同一人物か、同名のご先祖様か……。『死亡回生』のことを考えると同一人物の可能性が高いかな。魔族って長命だから。

 そのファイルを見て、ちう様が言う。

 

「最上級の魔族か。首を落としても死なないらしいが……不死身っぷりがやべえな」

 

「これにはアンドーを始めとした精鋭を当てます」

 

 私がそう言うと、キティちゃんも腕を組みながら言ってくる。

 

「私にも対魔族用の封印魔法がある。死なないなら、封印してしまえばいいな」

 

 そして、キティちゃんは椅子に座りながら脚を組み、不敵な表情で告げる。

 

「幸い、相手はこちらを舐めている。軍勢を呼び寄せることもなく少数精鋭でやってくるつもりだ。ゆえに、主力がのこのこやってきたところを……叩き潰す」

 

 うん。相手が本気でこちらを落とすつもりなら、魔界の軍隊が攻めてきて、一夜にして麻帆良は滅びるだろう。こちらは一都市。でも、相手は魔界にある大陸一つ分の戦力だ。

 しかし、バアルは関係ない市民を巻き込むことをよしとしない。諸侯とわずかな腹心、それと学園結界を落とすための小規模な下級魔族軍だけを連れてくる。そのいびつな慈悲の心につけ込んで、万全な態勢で迎え撃たせてもらう。人を配置し、兵器を配置し、軍艦を配置する。

 そして――

 

「真祖バアルをここで討ちます」

 

 私は、三人にそうはっきりと告げた。

 

 

 

◆206 魔族との戦い

 

 魔族の襲撃の可能性ありということは、ネギま部部員にも伝えられた。

 ただし、他の魔法先生には絶対に秘密と言い含めてある。というのも、敵の親玉の真祖バアルにはメガロメセンブリアとの伝手があり、魔法先生経由で相手にこちらが警戒していることが伝わりかねないのだ。特に怪しいのが水無瀬さんの元担当の魔法先生。

 だから、私達は秘密で準備を整え、こっそり麻帆良の地に防衛設備を設置していった。

 そして、十月某日。秋の大停電の日がやってくる。

 

 のどかさんによると、敵の集団はまとまって麻帆良の学園結界ギリギリ外に待機しており、完全に油断しているとのこと。うん、人工アカシックレコードがあれば相手の行動は丸裸だね……我ながら、本当にヤベー代物をこの世に生み出してしまった。

 普段は引き出すべき情報が膨大すぎて扱いにくいのだが、今回は『ドコデモゲート』のおかげでどこの位置の情報を取ればいいかが分かっている。コンボ成立ってやつだ。

 

 さて、こちらも待機をしようか。

 ネギま部のメンバーは魔法で身代わりを女子寮に残し、魔族が放った使い魔の目を誤魔化して、楓さんのアーティファクトで郊外に移動。現地で戦闘準備を整え、停電の開始を待った。

 そして、午後八時。麻帆良の灯が消える。

 

 学園結界は予備システムに移行し、その力を減衰させる。そこで、麻帆良の郊外から下級魔族の集団が、予備システムの施設へ襲撃をかけた。

 それに合わせ、最上級の魔族が、空から飛来する。

 堂々とした姿。魔族の諸侯としての矜持(きょうじ)があるのだろう。

 だが、そこに誇りなど知らぬとばかりに、こっそりと隠れる私達がせまっていた。

 

「いました! あれがオティウス・ラウヴィアです。お願いします、マトイさん」

 

 スマホ内の宇宙から呼んだ最強の助っ人その一、アークスの守護輝士(ガーディアン)『マトイ』さんの名前をのどかさんが呼んだ。

 マトイさんは、アークスの中でも最強のテクニック使い。その力はかつて宇宙の敵、ダークファルス【若人】を封印したほどだ。

 その彼女が、不意打ちでテクニックを相手に放った。

 

「ガアッ!?」

 

 空を飛んでいた『死亡回生』は、地に縫い付けられ、そのまま地面に描かれたフォトンの紋様に力を吸い取られていく。

 周囲の魔族達が何事かと慌てるが、そこへ遠方からフォトン粒子砲による狙撃がなされ、魔族達が撃ち落とされていく。

 

「な、なんだ……!? 力が吸われて……これは、気でもない、魔力でもない……なああああ!?」

 

『死亡回生』のオティウス・ラウヴィアが、マトイさんの力で封印されていく。自身の死をトリガーにする『死亡回生』の弱点は、封印だ。当然、本人もそれを分かっていて封印対策を取っていたことだろう。だが、私達が選んだのはフォトンによる封印である。

 フォトン技術は未だごく一部の人類にしかもたらされておらず、その全容は謎のまま。未だフォトンを知らない魔族が、マトイさんの封印にあらがえる道理はなかった。

 

 さらにそこへ二人目の守護輝士(ガーディアン)『アンドー・ユー』と夕映さんを護衛に連れたのどかさんが近づき、質問を重ねて『いどのえにっき』で『死亡回生』の能力の特性を暴いていく。なるほどなるほど、長期の封印をしてしまえば過去に設置した復帰ポイントは効力を失い、封印解除後に能力を行使して時間を戻ることはできなくなると。よし、これで敵側に、今回の不意打ちの情報を持ち帰られることはなくなった。

 いざとなったら『死亡回生』の時間逆行能力に、アンドーの時間逆行能力をぶつけるつもりだったが、その必要はなさそうだ。

 

 そして、そのまま『死亡回生』は、何もできぬまま麻帆良の郊外の地に封印され姿を消した。

 

「作戦D成功! このまま魔族掃討作戦に移行する!」

 

 私は、全防衛部隊にそう連絡を入れ、魔族との本格戦闘を開始する。

 麻帆良のギリギリ外。学園結界が落ちるまで魔族はここから先に向かえないという場所で、私達は魔族の集団を迎え撃った。

 

「き、貴様ら! 待ち伏せだと!」

 

 魔族の一人がそう叫ぶが、次の瞬間、その首は落ちていた。

 斬ったのは、私達が呼んだ助っ人の一人、獅子巳十蔵さんだ。最上級の魔族と戦うと言ったら、そこまで高くない料金で雇われてくれたよ。魔族を斬ってみたかったんだろうなぁ。

 

「子供の学び舎を攻めようというのだ。なぶり殺しにされても文句は言うまいな」

 

 獅子巳さんは、そのまま首の落ちた魔族の胴体を細切りにしてしまった。

 さらに落ちた首へキティちゃんの封印術式が飛び、魔族の頭を完全に凍り付かせる。

 よし、早速、敵の一人が落ちたぞ。

 

 その勢いに負けまいと、アンドーがガンスラッシュ『闇征刻アジェルティア』を片手に魔族に斬り込んでいく。

 さらに、上空から竜の翼を生やしたネギくんが飛来し、魔剣で魔族を切り裂いた。

 

 そんな戦いを横目に私はこそこそと隠れながら、敵の後方を注視する。

 いた! 長い金髪を垂らした少年。真祖バアルだ。

 私は、後方部隊に指示を出して、真祖バアルを狙撃してもらう。

 

 アークスの人型搭乗ロボット『A.I.S』が、空の上から一斉に銃を構え、フォトンブラスターを真祖バアルに撃ち込む。

 すると、完全に不意打ちとなったのか、真祖バアルは「なんだと!」と叫び声を上げながらごんぶとビームを受けて、地面へと落下していく。

 その最中、私はスマホをいじり、『ドコデモゲート』を操作していた。落下するバアルの直下。そこにゲートを開き、遠くへと転移させる。

 

「作戦B成功! このままバアル討伐作戦に移行する! 各班は、各自の判断の下、魔族掃討作戦を続行せよ!」

 

 私は、そんな言葉を通信機に向けて叫び、さらに『ドコデモゲート』を操作。

 単身、バアルが転移した先へと向かった。向かう先は、スマホ内の惑星Cathにある無人島。そこには、対真祖バアル用に組織された軍勢が手ぐすね引いて待ち受けていた。

 

 

 

◆207 真祖の主張

 

 転移した先で、私は真祖バアルの前に姿を初めて見せた。

 自身が転移させられたことに気づき、周囲を見渡している真祖バアルに、私は話しかけた。

 

「こんばんは。吸血鬼の真祖バアルでよろしいですね?」

 

 すると、バアルはこちらに気付く。

 

「貴様は……刻詠リンネか。そちらから姿を見せるとはな」

 

「はい。私に用事があったようなので、準備を整えて待たせてもらいました」

 

「なるほど、私はまんまと罠にかかったというわけか」

 

「その通りですね。我々は、このままあなたを殺し尽くします」

 

「私を殺す? ハハハ! 何を言い出すかと思えば! 吸血鬼の『貴族』を殺すだと? 片腹痛い!」

 

 頭に手を当てて、心底おかしいといった様子でバアルが笑う。本当に、自分を脅かすものがこの場にはないと思っているようだ。

 私は、そんな真祖バアルに向けて言う。

 

「殺す前に、その主張を一応聞いておきましょう。真祖バアル。私を捕らえて何をするつもりでしたか?」

 

「フン、貴様が『始まりの魔法使い』に施した封印は、私でも解析できないものだったからな。貴様を捕まえ、なぶり、封印を解かせようとしたまでだよ」

 

「ヨルダを今さら解放して、何になるというのです? 火星は子猫達の手によって開拓され、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)には魔力が満ち、人々は世界の危機から救われます」

 

「ヒトは猫の奴隷ではない!」

 

 と、いきなり真祖バアルがキレた!

 

「私が愛する人類は、猫などにいいようにされる家畜ではない!」

 

 なるほど、子猫達が人類の手助けをするのが気にくわないと。

 

「ヒトは私によって導かれるべきなのだ! 私は、ヒトを終わりなき楽園に(いざな)おう! ヒト種から生まれた天才ヨルダ・バオトの叡智、異界降臨極大究極魔法術式『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』で、ヒトは永遠の安寧を得るのだ!」

 

「夢の世界で眠り続けるのが人間の幸せだと?」

 

「そうだとも。今の人類はどうだ? 地球人類も魔法世界人も、終わらぬ紛争で苦しみ続けている。そんな彼らに、私は慈悲をかけるのだ! おお、まさに弱く幼きヒト種へ私が送る、理想の揺籃(ようらん)!」

 

 なるほどね。彼にとって、人類というのは今にも滅びてしまいそうなほどか弱い赤子のようなものなのだろう。だから、保護して眠らせると。

 人類の範疇(はんちゅう)を超えてしまった私が、人類を代表して言えることはないが……人類をなめすぎだ。猫の手で救われるのだとしても、その後の人類は自分の足でしっかり歩んでいけるはずだ。

 

「やはり、あなたはここで殺します」

 

 私はそう言って、スマホから不死者を滅ぼすための力を引き出した。

 




※真祖バアルが造物主をそそのかしたという可能性については、あくまで可能性という名のオリジナル設定です。『死亡回生』も名前と能力系統以外の大部分がオリジナルです。ついでに二回目の大停電の時期を十月(一回目の四月の半年後)にしたのもオリジナルです。
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