【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

86 / 98
●残された日々
■86 彼方からの使者


◆210 修行の成果

 

「フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ。雷の精霊29柱。集い来たりて的を撃て。『魔法の射手(サギタ・マギカ)・連弾・雷の29矢』」

 

 練習用の杖から放たれた『魔法の射手』が、別荘の空を駆ける。

 今の魔法を撃ったのは夕映さんだ。すでにアークスのヒーローとして強力なテクニックを放てる夕映さんだが、魔法の練習も欠かしていなかったらしい。見事な雷の魔法が空を漂っていた標的を打ち抜いた。

 

「おー、ユエもなかなかやるじゃん!」

 

 そう歓声を上げたのは先ほど『魔法の射手・連弾・風の17矢』を撃ったハルナさんだ。ハルナさんは攻撃魔法を真面目に練習はしていないが、防御魔法は本気で取り組んでおり、『風花(フランス) 風障壁(バリエース・アエリアーリス)』を発動してみせるほどの腕前を見せた。

 始動キーに『ブロマンス』って単語が入っていたのがすごくそれっぽかったな……。中学三年生は恐れを知らない。

 

「やっぱりユエは才能あるよー」

 

 そう言うのどかさんは、先ほど『魔法の射手・連弾・火の29矢』を放っていた。原作漫画では魔法の才能がないと魔法世界人に言われていた彼女だが、今はマナヒューマンとしての高い魔法適性で、夕映さんと同等の魔法を使えるレベルになっていた。

 

「よし、次はウチやな。みんな見ててー」

 

 練習用の杖を片手に、木乃香さんが前に進み出てくる。

 すると、待機していた茶々丸さんが、空にバルーンを打ち上げた。

 

「チェリー・ピオニー・エピファニー。光の精霊59柱。集い来たりて的を撃て。『魔法の射手(サギタ・マギカ)・連弾・光の59矢』」

 

 物凄い勢いで杖から魔法が放たれ、バルーンに殺到する。数だけでなく大きさもそれまでの者が撃った矢とは段違いで、魔法はバルーンを跡形もなく消し飛ばした。

 

「おおー、すごいです」

 

「さすがこのかさん!」

 

「圧倒的才能の差を感じる……!」

 

 夕映さん、のどかさん、ハルナさんがそれぞれ木乃香さんを称賛した。

 この魔法初心者組の四人組で一番伸びているのは木乃香さんだね。魔力容量も規格外だし、このままいけば木乃香さんは私のへっぽこ魔法程度、軽く追い抜いていくだろう。頼もしい限りだ。

 

「えへへ、ウチも順調に成長しとるで」

 

 うんうん、順調だ。いずれやってくる造物主(ライフメイカー)との決戦では、彼女も前線に立ってヒーラーとして活躍してくれることだろうね。

 造物主との戦いをいつ行なうかはまだ決まっていないが、ナギ・スプリングフィールドを救い出す研究は順調に進んでいると聞いている。『墓守り人の宮殿』でナギ=ヨルダと実際に会って、魔力パターンや精神の波長を観測できたためだ。

 造物主とナギ・スプリングフィールドの魂は融合している。それを切り離すために、スマホの中でチームを組んで研究させているのだ。キティちゃんも独自に術式を研究しているというし、私達の未来は明るい。

 

 

 

◆211 使者は夜中にやってくる

 

 別荘での魔法練習を終えて、女子寮に帰った私達。夕食を食べ、大浴場で汗を流し、パジャマに着替えて部屋へ戻ったところでスマホにメールの着信があった。

 なんぞや、と見てみたら、意外な送り主からのメールであった。

 

 送り主は、超鈴音。本文は「今すぐ会いたい」。何コレ。センチメンタルグラフティじゃないんだから。

 そう思っていると、窓を叩く音が聞こえた。

 なんだろうと思って目を向けると、窓の向こうに超鈴音本人の姿があった。

 

「ここ六階だぞ……」

 

 そんなちう様の突っ込みを受けながら、私は窓に向かい、鍵を開けて窓を開いた。

 

「いやー、すまないネ。もう生徒じゃないから、勝手に寮へ入るわけにもいかなくてネ」

 

 そう言って、ボディーアーマー姿の超さんが、部屋に入り込んでくる。

 そして、脚部パーツを外して素足になった超さんが、部屋の中央に正座で座りこむ。土足で踏みこんでくる無作法はしなかったようだ。

 

 さて、未来に帰ったはずの超さん。それが、なんでこんなところにいるのだろうか。

 麻帆良祭からこの時点に直接飛んできたということはないだろう。なにせ、この超さん、少し歳を取っている。具体的には、女子中学生から女子大生くらいになっている。

 

「何かご用でしょうか」

 

 私がそう尋ねると、超さんは正座のまま真っ直ぐこちらを見て、そして地面に手を突き、頭を下げてきた。土下座である。

 

「ちょっ……」

 

「刻詠サン、どうか火星の民を救ってほしいネ!」

 

 え、ええー……。

 

「とりあえず、頭を上げてください……」

 

 私がそう言うと、超さんは頭を上げ真っ直ぐこちらを見てきた。

 

「並行世界の二一三五年から、火星の代表として来ているネ。アーティファクト『ドコデモゲート』で火星の民を新天地に導いてほしく、交渉の使者として派遣されたネ。刻詠サンには、そのゲートの力で私達の火星と並行世界の地球を繋いでほしい」

 

「なにその超展開……」

 

 想定外の事態に、私はポカーンとするしかなかった。

 そして、ちう様がベッドから降り、お茶を淹れに部屋のキッチンへと向かった。

 とりあえず、私が言えることは……。

 

「一から説明してください……」

 

 まさかの展開に、私はそんなことを言うしかなかった。

 

 

 

◆212 時をかける少女

 

 パジャマ姿の私に向けて、ボディーアーマー姿の超さんが語る。

 麻帆良祭の終わりから一二七年後の未来に飛んだ超さん。その未来は、自分がいたもとの未来ではなく、この時代の直接の未来だった。

 転移先は、麻帆良の郊外。着の身着のまま世界樹が見える草地に降り立った超さんだが、そんな彼女のもとへとやってくるものがいた。

 

 私だ。

 刻詠リンネがピンポイントで超さんの跳躍ポイントにやってきて、こう言ったという。

 

「あなたはまた過去に戻ることになります。その時、過去の私に余計な未来の情報を渡されたくないので、このままあなた本来の火星に飛ばします」

 

 そうして、刻詠リンネは並行世界の理論と自身のアーティファクト『ドコデモゲート』の説明をして、超さんを彼女の故郷である並行世界の火星に送り込んだそうだ。

 それから、超さんはもとの場所の同志達に、「未来は変えられた。しかし、並行世界が生まれたためこの世界は救われなかった」と説明。そこから、超さんは同志達と一緒に、並行世界を観測する装置の開発を開始した。

 その途中で、魔力を結晶化させてタイムマシンを魔力の薄い場所でも動かすことに成功したり、研究が上手くいきすぎて並行世界移動装置が完成したりしつつも、並行世界観測装置の開発に成功。

 そして、超さん達は見つけた。新天地を。

 

 そこは、人類が誕生しなかった並行世界の地球。自然にあふれた手つかずの楽園だった。

 ここに移り住めば、火星の民は救われる。終わりのない地球人類との戦争を続けなくてもいい。

 そう確信した超さんは、何年もかけて火星の民を説得した。

 火星は一つにまとまり、地球との停戦もなり、後は並行世界移動装置で火星の民を並行世界の地球に運ぶだけ。

 

 しかし、それがまた困難を極める。

 火星の民を全員並行世界に連れていき、地球まで運ぶのは途方もない労力がかかる。

 そこで、超さんは一つのことを思い出す。並行世界の未来の地球で刻詠リンネが言っていた言葉。

 

「困ったことがあったら過去の私に頼ってください。あの頃の私は、他人の困りごとを大募集していたので」

 

 そう、刻詠リンネならば、『ドコデモゲート』で自分達を新天地につれていけるのではないか。そう思い、超さんは再び過去に戻った。そして、こっそり私の監視を始めた。すると、私が魔法世界との間でゲートを何度も開いているのが確認できた。

 だが、魔族との戦いで忙しそうで声をかけづらい。やがて、中間テスト間近になり、ゲートのアルバイトも休み期間に入った。ここならいけると思った超さんは、今日こうして訪ねてきたというわけだ。

 

「なるほどなるほど。グッジョブです、未来の私。徳を積む機会を融通してくれたのですね」

 

 まさかの未来からのロングパスに、私はホクホク顔になった。

 

「……なんでまた未来のリンネは、未来の情報を過去の自分に流そうとしなかったんだろうな」

 

 ちう様が、そんな疑問をポツリと述べた。

 すると、超さんが未来の私から理由を聞いていたのか、素直に答える。

 

「昔の自分はすぐ油断するから、確定情報を流して失敗させたくないだそうネ」

 

 いや、油断って……くっ、心当たりが多すぎる!

 あー、でも、そうなるといろいろ気になってくるぞ、未来。

 

「これだけは聞きたいのですが、私の未来では、人類は存続していましたか?」

 

「なにをそんな……あー、言えないネ。油断大敵ヨ」

 

 それくらいいいでしょ!?

 このままのやり方で造物主(ライフメイカー)の野望を阻止できるのかとかさー。聞くくらい、いいじゃん!

 

 

 

◆213 火星

 

 その後、夜なので眠らせてもらった私。

 翌朝、パジャマから着替えて朝食を取った後、私は超さんとちう様の三人で未来へ行くことになった。

 そう、ちう様と一緒だ。なにせ、ちう様の本体は私のスマホの中にある。なので、どうせ本体が行くのだからと、意識の宿った現ボディで付いてくることになったのだ。

 

 まずは、超さんの並行世界往還装置兼時間渡航装置で、超さんの故郷がある未来へと飛んだ。

 すると、どこか寂れた感じのある麻帆良へと風景が変わった。

 

「なんかボロいな。軌道エレベーターもないしよ」

 

 ちう様がそんな感想を述べる。

 

「この世界のネギ先生は火星開拓を提案していないでしょうから、麻帆良に軌道エレベーターが建てられることはないのでしょうね」

 

 私がそう言うと、今度は超さんが言う。

 

「この世界のネギ坊主は、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)崩壊後、火星に渡って魔法世界人を助けるために一生を過ごしたそうネ。その子孫が私ということヨ」

 

 そういえば、超さんって並行世界のネギ先生の子孫だったね。すっかり忘れていた。

 さて、未来観光をしたいところだが、そう言ってもいられない。私は、スマホを起動して『ドコデモゲート』を開いた。

 

「『ボスポラスドーム』でよかったですね?」

 

「ウム。ドームの中から逸れると、死ぬヨ。火星はテラフォーミングされていないからネ」

 

「あ、私、宇宙空間に生身で出られるので大丈夫ですよ」

 

 超さんの忠告に私がそう言い返すと、超さんは呆れた顔でこちらを見てくる。

 

「いつの間に人間辞めたネ」

 

「失礼な。ちう様ほど人外ではありませんよ」

 

 私のその言葉を受け、超さんは「そういえば『まほら武道会』ですごいことやっていたネ」とちう様を見た。

 うん、ろくでもないコンビでごめんね。

 

「私は生身だと死ぬので、座標は正確にたのむヨ」

 

 そんなことを言う超さんの細かい位置指定を受けながらゲートを開き、私達は火星へと飛んだ。

 すると、そこには人が複数詰めていて、何やら端末を操作していた。その人達に、超さんが私の知らない言語で話しかける。おおっと、そういえばここ火星だもんね。日本語で話すわけがなかった。中国語かな?

 私は、ネギま部バッヂの翻訳魔法を起動し、彼らの会話を聞く。

 

「ということで、無事に連れてきました」

 

「おお、とうとう新天地に向かえるな!」

 

「よくやってくれた、鈴音君。君の名は、新しい人類の歴史書に記されることだろう」

 

「あはは、博士、大げさですよ」

 

 翻訳魔法で独特の怪しい日本語じゃなくなった超さんが、笑っている。

 そして、超さんはこちらに向き直り、仲間を紹介してきた。火星の未来を憂いた同志達らしい。

 私は彼らと握手して挨拶した後、彼らから火星人移動計画書を見せてもらった。

 

 幾ばくかの荷物を持たせて、並行世界の地球へ向かうだって?

 着の身着のまま新天地に人を放り出すつもりかい。

 

「超さん。あなたはまだ私のゲートを甘く見ているようですね」

 

「ム? どういうことダ?」

 

 私のゲートの範囲は、広い。すなわち……。

 

「所持している乗り物に、積めるだけの荷物を積んでください。私のゲートは、宇宙戦艦だろうが転移させられますよ」

 

 ドヤ顔で言う私に、皆の目が点になった。

 さすがに空間を切り取っての転移はできないので、ドームごと飛ばすことはできないが、急造のキャンプカーでも宇宙船でも作って、全部の荷物を新天地に持っていけばいいよ。

 

 

 

◆214 出席番号19番超鈴音

 

 その後、火星人は一ヶ月かけて大量の乗り物とコンテナを用意した。

 それに荷物をとことんまで満載して、私が各所に開いたゲートで並行世界の地球に移動する。コンテナも、底にゲートを開けば重力で向こう側に落ちていって物を運べる。落下の衝撃があるので、壊れ物は運べないけどね。

 個人用の乗り物以外にも、地球との宇宙戦争に使っていた宇宙船も、もれなくすべて新天地送りだ。

 

 そして、私は五日間で全ての人員の移動を完了。この世界から、魔法世界人の末裔である火星人は姿を消した。

 後は、私をもとの時代まで送り届けてくれた超さんが向かえば、ミッションコンプリートだ。

 その超さんが、私にフラッシュメモリを一つ渡してくる。

 

「これが、お礼の火星の全データネ。本当にこんなデータだけでいいのカ? 別に、火星の資源を持っていってもいいヨ? 宝石とか」

 

「いやあ、向こうでこれから火星開拓するというのに、火星から採掘した資源を私が市場に流すのは不味いんですよ。資源を勝手に着服したと思われて」

 

 私が笑ってそう言うと、超さんは納得顔で「そういうものカ……」と答えた。

 それよりも、この火星人達が詳細に取った火星のデータの方が重要だ。地形の詳細データに、地下埋没資源の位置。極点の氷の埋没量。気象。これらは火星のテラフォーミングの役に立つ。個人的に資源で大儲けすることなんかよりも、はるかに重要な報酬だ。

 

 さらに、ここ百三十年で起きた地球の気候変動についてもまとまっている。

 実は、『魔法先生ネギま!』の世界の地球って、今後数十年で大規模な寒冷化と温暖化が起きて、文明が大ダメージを受けるんだよね。

 

「さて、それじゃあ、私もこれでお別れネ」

 

 そう言って、超さんは私に火星人達が移動した場所の座標までのゲートを催促してくる。並行世界往還装置兼時間渡航装置には、テレポート機能がついていないのだ。

 

「それなんですけど……超さん。3年A組に戻りませんか?」

 

 私がそう言うと、超さんはピクリと肩を動かした。

 

「超さんは、もう目的を果たしました。これからは、新天地を開拓する忙しい毎日を送ることでしょう。ですが、その前に……麻帆良で一人の少女としての日々を過ごしませんか? モラトリアムってやつです」

 

「それは……なんとも魅力的ネ」

 

「そして、私達は今、火星開拓事業に手を付けています。それを進める上で、火星に住んでいた超さんの知識は、非常に役立ちます」

 

 私は今度こそ、超さんを仲間にするために誘いの言葉を投げかけた。

 そして、私は彼女に向けて手を差し出す。

 

「私達には、超さんの助けが必要です」

 

 超さんは目を伏せ、何かを考え込んだ。

 そして、彼女の選択は……。

 

「よろしく、刻詠サン。子猫達の技術、私も気になっていたところヨ。全部吸収して、地球開拓の役に立てて見せるネ」

 

 ニッコリと笑い、超さんは私の手を取った。

 




※早乙女ハルナの始動キーについて
●ロマンス・フレンズ・ブロマンス
・ロマンス
恋物語。ハルナ曰く、BL漫画を指す。
・フレンズ
友人の複数形。ハルナ曰く、男友達の関係性を指す。
・ブロマンス
ブラザーとロマンスの合成語。性的な要素を含まない男同士の親密な関係。ハルナ曰く、少年漫画における濃い友情を指す。
なお、始動キーの没案として「フレンド・ブレンド・ハズバンド」もあった。

※近衛木乃香の始動キーについて
●チェリー・ピオニー・エピファニー
・チェリー
桜の木。桜咲刹那のことを指す。
・ピオニー
牡丹。公家の五摂家である近衛家の家紋は近衛牡丹。
・エピファニー
神聖を通した洞察。もしくは、平凡な日常の中で物・事・人の本質が姿を現す瞬間を描写するという文学用語。占い好きな彼女が持つ独特の超感覚を表わしているのかもしれないし、日常こそが彼女にとっての至福ということを表わしているのかもしれない。
なお、三節目をデスティニーにする案もあったが、愛が重すぎるので没になった。

※ついでに未登場の宮崎のどかの始動キー
●ブックス・マギクス・コントラクトス
・ブックス
本。本が好きという以外にも、アカシャの図書迷宮になぞらえて人工アカシックレコードに集まる情報群のことも指す。
・マギクス
ラテン語で「魔法の」を意味する言葉。男性形容詞なので、ネギ先生のことを指していると思われる。女性形容詞のマギカにすると円環の理に導かれそう。
・コントラクトス
ラテン語で「契約」を意味する言葉。自分の人生を変えた仮契約を意味しているが、あわよくばネギ先生と本契約を結びたいという願望も込められている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。