【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■87 超鈴音の帰還

◆215 復学

 

 朝のショートホームルーム。そこで、ネギくんが「転校生がいます」と言った瞬間、教室が沸いた。

 そこから超さんが姿を見せたところで、クラスメート達の驚愕の声が響きわたった。

 

「ハハハ、恥ずかしながら、戻ってきたネ。卒業までよろしくヨ」

 

 そう言って、恥ずかしそうに微笑む超さん。

 彼女は皆に、国元のややこしい問題が解決したため、中等部卒業まではこちらにいられることを説明した。

 うん、嘘は言ってないな!

 

 ちなみに超さんは麻帆良学園的には自主退学という扱いだったが、問題なくもとの3年A組への復学が認められた。

 

 超さんと私、学園長先生の三者で話し合いを行ない、超さんはその場の秘密とした上で、自身の正体、かつての目的を学園長先生に伝えた。

 そして、もうあのような手段での魔法公開はしないと宣言し、3年A組の仲間として卒業を迎えたい旨を伝えた。

 

 すると学園長先生は、麻帆良祭のことは水に流すと言ってくれ、3年A組への復帰を認めてくれた。

 魔法が世界に公開されることがすでに決まっており、麻帆良祭の事件も麻帆良の外には報告していない。なので、超さんをかばうのは簡単だ。学園長先生は笑ってそう言った。

 

 そして、超さんが火星開拓事業への協力者となることを告げると、学園長先生は「火星のデータは極秘としておきなさい」と私達に向けて忠告した。

 曰く、資源の埋蔵地点や埋蔵量を今の段階で公開すると、せっかくまとまりかけている地球側の国が割れかねないと。

 

 なるほど、確かにそれはありそうだ。

 なので、火星のデータは子猫達がテラフォーミングのためにこっそり使うことにして、学園長先生にも見せないことになった。

 

 さらに、超さんの正体も他の者には秘密にしておくべきだと、学園長先生は超さんに言った。

 時間移動技術は、超さんの命すら脅かす危険があるオーパーツなのだと。

 

 過去の過ちをなかったことにしたい人はいくらでもいる。

 そんな人に超さんが狙われ、時間移動技術を奪われることがあれば、どんな大事件につながるか。

 だから、時間移動技術は次に使う日が来るまで厳重に管理して、未来人であるということも秘密にしておくべきだと、学園長先生は忠告をしてきた。

 学園長先生、いい人だなぁ。まあ、悪人に教師の長は務まらないか。

 

 そうして学園長先生への話は通り、超さんは復学することとなったわけだ。

 中等部を卒業するまで、また超さんと一緒に学園生活を過ごせるとなって、みんな大喜び。ショートホームルームが終わると同時に、超さんはクラスメート達に囲まれた。

 盛大にお別れ会をやって戻ってきたことに、超さんは少し気まずい思いがあるようだが、それはそれ。みんなで卒業することの方が大事だ。

 

「超りん、なんか見ない間にすごく背伸びてない?」

 

「成長期ネ」

 

「五センチは伸びているように見えるなー」

 

「成長期ネ」

 

 おおっと、朝倉さん、十八歳を超えて戻ってきた超さんを突いてはいけないぞ。大学生の歳になって中等部の制服姿は痛いかもしれないが、追究しないであげてほしい。

 後で、超さんが未来人だと知っている朝倉さんには詳しく話しておくか……。

 

 ちなみにオラクル船団のエステで見た目を変える案も超さんに出したのだが、このままでいいと言われた。火星開拓事業で担当技術者として他の者と面会するとき、少しでも大人に見えた方が有利になるという判断らしい。

 なので私は、せめて肌つやだけでも中学生らしさを出させるために、太公望さんの育てた美味しい桃を丸々一個与えておいた。あれは若さを保てる神秘の桃だからね。

 

「卒業したらまた向こうに帰るアルか?」

 

 同じく、超さんの事情をよく知る古さんが、超さんに尋ねる。

 

「いや、しばらくは刻詠サンの手伝いをするので、高等部にも進むヨ。事業の進み具合では高等部の途中で帰ることもあるかもしれないネ」

 

 超さんがそう言うと、親友がまだしばらく帰らないことを知って、古さんが嬉しそうにする。

 うんうん、麻帆良祭では急なお別れだったから、またしっかり縁を深めていってほしい。

 

「りんりんの手伝いって、ちゃおちゃおも『CatCaster』やるのかー?」

 

 鳴滝姉妹の姉の方が、そんなことを超さんに言った。鳴滝姉妹は、二人とも朝倉さんの動画大好きっこだからね。

 

「キャット……なにカ?」

 

「ちゃおちゃお、もしかしてりんりんの『ねこねこ動画』知らない?」

 

「知らないネ。刻詠サン、何かしでかしたカ?」

 

「りんりんが、ネットに動画をアップするサイトを開いたんだ! ケータイからも見られるぞ!」

 

「刻詠サン……?」

 

 おっと、超さん。ジトッとした目を向けてくるのは止めようか。別に、『YouTube』を先取りして潰すためにやっているわけじゃないぞ。火星開拓事業に必要だからやっているんだ。

 

「んー、じゃあ、りんりんの手伝いってなに?」

 

「えーと、言っていいのか分からないネ。守秘義務とかあるからネ」

 

 いや、別に守秘義務が発生するような契約は、まだ何も交わしていないが……。

 

「りんりんー、今度は何やっているのさ! 面白い話なら、僕も乗せろよな!」

 

 鳴滝姉の風香さんが、私に顔を向けて言った。

 ふむ、まあ対外向けの話は言ってしまっていいか。

 

「ただの新規事業ですよ。宇宙開発です」

 

「宇宙開発!? 何それすごい!」

 

「雪広グループと協力して宇宙船を飛ばします」

 

「思ったより話がでかい! 宇宙旅行とかするの!?」

 

「卒業旅行には間に合いませんが、いつか宇宙に連れていってあげますよ」

 

「本当!? うわー、ふみか、宇宙旅行だって!」

 

 風香さんが、妹の史伽さんに話を振るが、史伽さんは本気にしていないような感じで答える。

 

「お姉ちゃん、宇宙旅行とか、きっと私達がおばさんになったころの話です」

 

「えー、そうなの? どうなのさ、りんりん」

 

 妹の現実的な視点に諭された風香さんが、私に聞いてくる。まあ、地球人類はこのままいったら二十年後も宇宙旅行とか夢のまた夢だが、魔法と子猫の手が入るこの世界に関しては事情が違う。

 

「高等部の卒業旅行までには月まで連れていってあげられそうですね」

 

「マジかー! すげー!」

 

「本当ですかー? 私も行きたいですー!」

 

 そう言って、鳴滝の姉と妹が嬉しそうにはしゃぐ。

 そうして話題が超さんの復学から宇宙開発事業に逸れ、騒がしいまま予鈴が鳴り、本日の授業が始まるのだった。

 宇宙開発もいいけど、学業も真面目にやっていかないとね。

 

 

 

◆216 戦いを振り返って

 

 超さんが復学した日の放課後。超さんはかつて世話になった人達に顔見せに行くと言って、葉加瀬さんと一緒に麻帆良大学へと向かった。

 私は転送のアルバイトがあるので、魔法世界へと飛ぶ。

 メガロメセンブリア外交部の指示を受け、世界二箇所のゲートポートで人を地球へと飛ばし、メガロメセンブリアへと帰還した。

 すると、珍しいことに外交部にリカード元老院議員が顔を見せていた。普段は方々を飛び回っていて、意外と会わないんだよね。

 

「おう、リンネ。ちょっといいか?」

 

 なんだろうか。どうやら、私に用事があるようだが……。

 

「麻帆良から魔族の諸侯が護送されてきた。なんでも、『白き翼(アラアルバ)』だけで襲撃を撃退したっつーじゃねえかよ」

 

「ああ、それですか。正確には、私のスマホと繋がる宇宙の防衛部隊が出張っていますよ。何か、問題ありそうですか? 外交面とか」

 

「いや、そっちはこっちでなんとかするからいい。それよりも、吸血鬼の『貴族』を倒したって本当か?」

 

「真祖バアルですか。造物主(ライフメイカー)の復活と人類文明の崩壊を狙っていたので、完全消滅させました」

 

「そうか……リンネの嬢ちゃん……」

 

 リカード元老院議員は、こちらを真っ直ぐ見ると……私に向けて大声で言った。

 

「ありがとう!」

 

 ……ほあ? なんでリカード元老院議員がお礼を?

 私が疑問に思っていると、彼はそのまま言葉を続けた。

 

「バアルは、メガロメセンブリアに何百年も前から根を張っていて、余計なことを散々しでかしてくれた元老院の癌だったんだ。それを排除してくれて、本当に感謝している」

 

 あー、なるほどね。メガロメセンブリアが中世に地球を侵略しようとしたのも、黒幕は真祖バアルだったからね。

『UQ HOLDER!』の未来でも、麻帆良にいる魔法世界出身の魔法教師から水無瀬小夜子の魔法ウィルスを手に入れて、人類に魔法の病気を感染させていたし……そんなフィクサーがいなくなって、リカード元老院議員的には万々歳ってことか。

 

「まあ、地球にやってきてこそこそ麻帆良を攻める用意をしていたので、迎撃させてもらいましたよ」

 

「攻められることを麻帆良に秘密にしていたのはなんでだ?」

 

「メガロメセンブリア出身の教師がいるので、そこ経由でバアルにこちらが迎撃できる準備が整っていることを知られたくありませんでした」

 

「なるほど……しかし、よくもまあ真祖を殺し尽くせたもんだ」

 

「不死殺しがこちらにはいっぱい居ましたからね」

 

「桃源神鳴流みたいなのか?」

 

「そんな感じです。復活することはないと思いますので、安心してください」

 

「そうか……よくやってくれた」

 

 うん、我ながらよくやったと思うよ。のどかさんが居てくれたおかげだね。人工アカシックレコードの存在を知られるわけにはいかないので、言わないけれど。

 

「しかしまあ、吸血鬼の『貴族』以外にも、魔界の十二諸侯、さらに光の精霊までいて、よくもまあ勝てたもんだな」

 

「あー、私は真祖バアルと戦っていたので、他の人達がどうやって戦っていたのかは知らないんですよね」

 

「そうか。正直、光の上位精霊とか勝つ方法が分かんねえな! 光の速さで動くんだろう?」

 

 光の上位精霊か。真祖バアルが造り出した人工精霊の七尾(ななお)・セプト・七重楼(しちじゅうろう)のことだろう。

『UQ HOLDER!』における味方キャラだが、真祖バアルが活動中は制御を彼に奪われ、敵に回るという面倒臭いポジションだった。

 その七尾・セプト・七重楼が作中で言っていたことを思いだし、私はリカード元老院議員に言う。

 

「光速で動いている間は本体の質量がゼロになるので、移動中に直接攻撃をしてくることはありませんよ。要は、転移を多用する敵と戦うと思えば」

 

 そう、光の精霊は『光速で動く物体の質量はゼロ』という物理法則に縛られる存在なのだ。ピカピカの実の能力者や黄金聖闘士ほど理不尽な存在ではない。

 私の説明を受け、リカード元老院議員はなにやら考え込む。

 

「うーん、そうなると、カウンター主体の戦い方が有効か……」

 

「あとは、光を閉じ込める罠ですかね。今度、みんなにどうやって倒したか聞いてきますよ」

 

「おっ、そうか。じゃあ、今度、飯でもおごるから、じっくり戦いの内容を教えてくれな」

 

「はいはい」

 

 と、そこでリカード元老院議員と別れ、私は仕事を終えて麻帆良へと帰還した。

 そして、ネギま部が活動中とスマホに住むちう様の本体から『LINE』が来たため、私はエヴァンジェリン邸に向かい、別荘へと入った。

 すると、ネギま部は中間テストに向けた勉強会を開いていた。

 あー、そうね。十月中旬にはテストがあるね。私も、勉強しないとなぁ。

 

 そして、三十分ほど勉強をした後の休憩時間で、私はみんなに先の迎撃戦で光の精霊と戦った人がいるか聞いた。

 

「それなら、夕映殿とのどか殿が戦っていたでござるな」

 

 楓さんが、アークスコンビを見ながら言った。

 すると、夕映さんが代表してその戦法を告げる。

 

「のどかと二人がかりで『ゾンディール』を仕掛け、そこに捕らわれたところを四方から攻撃したです」

 

「ああ、その手がありましたか」

 

 私は、感心して手をポンと打った。

『ゾンディール』とは、アークスが使う雷系テクニックの一つで、特殊な磁場を発生させて敵の動きを阻害するテクニックだ。

 発生点の中央に向かって円形の磁場が発し、数秒間相手を捕らえることができる。しかも、その磁場は相手が軽ければ軽いほど効力を発揮する。つまり、光速で動いている最中は、磁場に捕らわれやすいことを意味している。

 

「後は、相手の身体から直接発生する類のテクニックを中心に戦いましたね」

 

 あー、確かに、対象をターゲットさえしていれば、遠距離からでも直接食らわせることができるテクニックってそれなりにあるね。

 杖の先から発生することの多いこの世界の魔法とは、違う点だと言っていいだろう。

 

 七尾・セプト・七重楼戦で、アークスの二人が活躍したことは分かった。

 他の人達にも魔族とどう戦ったか聞いてみたが、なかなかに奮闘したようだ。

 ネギくんは、魔剣を使ったら世界樹が光って力を貸してくれたなんて話もしていた。いや、世界樹、ネギくんのこと好きすぎでしょ。ただまあ、真祖バアルの目的が目的なので、人類全体のために手伝ってくれたのかもしれないけどさ。

 世界樹って、型月的に言うとガイアというよりアラヤ的なところあるよね。人類の危機に力を貸してくれるあたりが。

 

 この調子で、造物主戦でも世界樹が力を貸してくれると嬉しいんだけど、どうなるかな。

 

 

 

◆217 二学期中間テスト

 

 そんな勉強会から数日後、中間テストが行なわれた。

 中間なので一日で終わり、日をまたいで結果が明らかになった。いつものごとくクラス間の平均点争いが放送され、我らが3年A組の順位はどうなったかというと……。

 

『一位! またもやA組です!』

 

 食堂での発表を聞いていたネギま部が、一斉に歓声を上げた。

 その場にはネギま部以外にも、『超包子』の復帰オーナーとして肉まんを売りさばいていた超さんがいて、3年A組のクラスメート達にもみくちゃにされていた。

 超さんは相変わらず全教科満点だったようで、その貢献は大きいだろう。

 

「いや、私よりも、古の成績アップの方が大きいと思うヨ?」

 

 超さんのその言葉に、古さんに視線が集まる。

 ふーむ、古さんか。

 

「くーへさん、平均点いくつでした?」

 

 中学の範囲に限って成績優秀な相坂さんが、古さんに尋ねた。

 

「九十八点アル」

 

 マジかよ! 私九十六点だったんだけど! 負けとる!

 

「あはは、バカレンジャーはもう存在しないのよ」

 

 きっと自身の点数もよかったのだろう、明日菜さんがそう言って笑う。

 でも、それにしても成績が急上昇しすぎだろう。超さんも怪しんだのか、古さんに何をしたのか問われている。

 

「いや、単に崑崙の仙人に学んで、勉強のコツをつかんだだけアルヨ。道士は学問にも精通しなければならないアル」

 

「崑崙! 伝説の仙境ではないカ! 古、いつの間に!」

 

 超さんが、古さんの言葉に驚いて、古さんの頬をぷにぷにと触る。

 

「夏休みに、ちょっと崑崙で修行してきたアルヨ」

 

「……また刻詠サンの仕業カ?」

 

 いや、ちょっと超さん。なんでも私のせいにしないで。

 

「ダーナっていう吸血鬼の真祖に案内されたアル」

 

「ああ、彼女カ……」

 

 超さんが、すごく微妙な顔をした。おや? 超さん、ダーナを知っているのか。

 これは、並行世界観測マシンか並行世界移動マシンを使ったときに、何かあったな。

 

「……超も苦労しているアルネ」

 

「ウム。まあ、私の事情はもうほとんど片付いたから、今はこちらに専念するけどネ。テストも終わったので、本格的に動くヨ」

 

 超さんがそう言うが、ちょっと待ってほしい。

 

「いや、その前にすることがありますよ」

 

 私がそう言うと、超さんが首をかしげる。何かあっただろうかと。

 ふっふっふ、宇宙開発もいいけど、学業も真面目にやっていかないとだぞ。そう……。

 

「体育祭が待っていますよ!」

 

 麻帆良祭に並ぶ、ビッグイベント。都市全体を挙げた、麻帆良学園大体育祭がせまっている!

 


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