【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■88 麻帆良学園大体育祭

◆218 体育祭準備期間

 

 体育祭まで残り二日。麻帆良祭ほど派手な準備は行なわれていないが、それでも競技の練習などが各所でされており、祭りが近づいてきているという感じが気分を高揚させてくれる。

 中には、飛行機レースの練習なども行なわれていて、非日常の風景を演出していた。

 

 我らが3年A組も、放課後に残って体操服姿で競技の練習や応援の準備に追われていた。

 本日は、教室に残って応援用の横断幕を作る作業をしている。

 

 その様子を配信で使うつもりなのか、朝倉さんがビデオカメラで撮影しているが……朝倉さん、妙にニヤニヤとしているぞ。

 

「朝倉さん、なんだかご機嫌ですね?」

 

 朝倉さんと隣の席同士なので仲のいい相坂さんが、素直に尋ねた。

 すると、朝倉さんはカメラを止め、ニヤニヤと笑いながら体操服の短パンのポケットをまさぐる。

 そして、一枚のカードを取り出した。

 

「じゃーん、パクティオーカード。いやー、私もとうとうゲットしちゃったよー」

 

「わー、朝倉さんも手に入れたんですかー。私も持ってますよー」

 

 朝倉さんと相坂さんが、仲良く自分のパクティオーカードを見せ合っている。

 むむむ、朝倉さん、いつのまに仮契約(パクティオー)をしたんだ。

 

「最近動画撮影の手が足りていなかったから、役立つアーティファクトが欲しいと思ってねー」

 

 ひらひらとパクティオーカードを振る朝倉さん。すると、近くで横断幕を作っていた鳴滝姉妹が食いついた。

 

「あー、それって、修学旅行で本屋がゲットしてたやつじゃん!」

 

「ズルいですー。私も欲しいです!」

 

 その騒ぎに、他のクラスメート達も作業の手を止めて、朝倉さんに注目する。

 

「欲しいのー? でも、これをゲットするには、ネギ先生とのキスが必要なんだよ」

 

「キス! えっ、ほっぺにとかじゃないよね?」

 

「あわわ……でもカード欲しいです」

 

 朝倉さんのキス発言を受け、鳴滝姉妹が頬を赤く染めた。

 と、そこで近くで話を聞いていた柿崎美砂さんが、横から朝倉さんに言う。

 

「ちょっと待って朝倉。それを朝倉と相坂が持っているということは、二人ともネギ君とキスしたってこと?」

 

「そうだねー。それくらいの勇気がないと手に入らないレアカードだからね!」

 

「……ちなみに、そのカードって、このクラスで何人が持ってんの?」

 

「んー? さて、それはどうかなー?」

 

 朝倉さんが、ネギま部の面々に目を向けながらはぐらかす。

 すると、柿崎さんはクラス全体に向けて大声で言った。

 

「そのパク何とかカード持っている人! 挙手! そして提出!」

 

 その声に、マジでどうするよという思いを込めて、目で会話するネギま部。それを察知した柿崎さんが、さらに言う。

 

「正直に出しなさい! これは体育祭を前にクラスの結束がかかった大問題よ!」

 

 そう言われちゃあ仕方あるめえ。私は、カバンのところに向かってパクティオーカードを取り出して掲げた。

 すると、それを見たネギま部の面々が、正直にパクティオーカードを掲げていった。

 

 私、明日菜さん、あやかさん、木乃香さん、刹那さん二枚、水無瀬さん、のどかさん、夕映さん、ハルナさん、古さん、ちう様、楓さん、茶々丸さん、相坂さん。

 

 さらにネギま部以外で、朝倉さん、龍宮さん、春日美空さん。龍宮さんのは契約者死亡で枠線が消失しているね。

 

「うおーい、『異文化研究倶楽部』全員じゃない! それ以外にもいるし! 十五人!? クラスの約半数じゃないの!」

 

 あまりの人数の多さに、柿崎さんが叫び声を上げる。

 すると、ネギま部で唯一手を挙げなかったキティちゃんを目ざとく見つけた椎名桜子さんが、言う。

 

「エヴァちゃんはないの?」

 

「私か? 私は相手に作らせた側で、こういうものがある」

 

 得意げにネギくんの絵柄が描かれたパクティオーカードを掲げるキティちゃん。

 それを見た佐々木まき絵さんが、本気でうらやましがり始めた。

 主の側でいいならと、ザジさんもカードを提示する。おそらくは、ポヨポヨ言う姉とのパクティオーカードだ。

 

「十七人! えっ、何コレ。もしかして……」

 

「私達……クラスの波に乗り遅れてる?」

 

 柿崎さんと、そして同じチアリーディング部の釘宮円さんが、そんな言葉を発して呆然とした。

 

「これ、私達もゲットすべきじゃない?」

 

 椎名さんがそう言うと、柿崎さんが目を輝かせる。

 

「つまり、ネギ君の唇を今すぐ奪えばいいと! うおお! 待っててネギ君、今すぐお姉さんが奪ってあげるわー」

 

「はいはい、ストップストップ。ただキスしても出ないからね。手順ってものがあるのよ」

 

 駆け出そうとする柿崎さん、釘宮さん、椎名さんのチアリーディング部三人を朝倉さんがなだめすかす。

 さらに、楓さんに向けて、同じさんぽ部の鳴滝姉妹が抜け駆けだと批難の声を上げている。

 

「まー、でも、ネギ君に頼めば、パクティオーカード作りもそうそう拒否はしないと思うよ?」

 

 朝倉さんがチアリーディング部三人にそう説明した。

 すると、柿崎さんは納得したのか、ややテンションを落ち着かせる。

 

「そっかー。でも、教師が女子生徒とキスするって、地味にヤバくない?」

 

 柿崎さんがそう言うと、釘宮さんもそれに乗って言い放つ。

 

「十七人って、史上最大の不祥事じゃない? コレ」

 

 すると、事態を見守っていた龍宮さんが横から言う。

 

「いや、私と春日とザジは、ネギ先生とじゃないぞ」

 

「それでも十四人だよー。ヤバいねー」

 

 椎名さんがそう言うが、それに対して冷静に突っ込みを入れたのは大河内アキラさんだ。

 

「いやっ、その……ネギ君って十歳だし……どちらかというと公になると私達の方がマズイ気が……」

 

「あっ、そうね。小学生相当の少年相手に淫行! ヤバい!」

 

 柿崎さんが、今気づいたという感じでハッとする。

 そして、腕を組んで悩み始めた。

 

「カードは欲しいけど、表沙汰になって問題にされたらちょっとマズイかなー」

 

 すると、朝倉さんが「私に考えがある」と言って、皆に何やら説明を始めた。

 

「こーいうのは、お祭りごとにして勢いで誤魔化しちゃえばいいのよ。体育祭最終日、例によって委員長んとこ主催の全体イベントがあるでしょ? その借り物競走でネギ君を標的にして――」

 

 うーん、何やらネギくんが大変なことになりそうだ。

 面白そうだからネギくんには秘密にしておくが、はたして一般人の彼女達にネギくんの唇が奪えるだろうか? 私は協力しないぞ?

 

 

 

◆219 体育祭開幕!

 

 とうとう始まった体育祭。各々が好きな競技にエントリーして、その順位でクラスに点数が入っていくという仕組みだ。

 運動が得意な人は何項目にもエントリーしていいし、苦手ならば無理に参加しなくてもよい。

 ただし、クラス対抗の点数争いなので、何にも出ないというのはさすがにクラスメートからの批難を受ける。なので、自分ができる範囲で競技を楽しむのが良いだろう。運動能力が全てじゃない競技も、チラホラと混ざっているしね。

 

 ちなみに、私は一日目では槍投げに参加した。ネギま部で決めたルールで、最終日の公式イベント以外では気や魔力を使わないということにしたので、私はちょっと運動が得意なロリボディ少女になったわけだが……槍投げと聞いて負けるわけにはいかない。

 スカサハ師匠やクーフーリンの兄貴、先日奥義を借りたランスマスターのフィロ、フォトンアーツに槍投げ技があるハンターのオーザといった面々から槍投げを教わっている私が、他に後れを取るわけにはいかないのだ。

 

 そして、私が放った槍は中学女子の日本記録を軽々と超え、見事優勝を飾った。

 まあ、麻帆良の体育祭の記録は、魔法使いの都市ということもあって日本記録にはならないんだけど。

 

 その後も学園横断パルクール大会で楓さんとデッドヒートを繰り広げたり、大障害物競走で罠にかかって観客に笑われたりしながら、私は着実に点数を重ねていった。

 

 やがて、最終日。この日は、体育祭の中でも一、二を争う大人気競技の本戦が行なわれる。

 それは、格闘大会のウルティマホラ。

 私の初参加から三年目となるこの競技に、気と魔力なしで挑むことになった。

 

 前日までの予選を軽々と突破し、本戦へ進んだ私、ちう様、古さん。発表されたトーナメント表では、古さんもしくはちう様とは決勝まで当たらない。よしよし。ちう様と古さんが潰し合いをしてくれるな。ちう様も、復活と自爆は使わないこととしているので、純粋な格闘戦で古さんと決着を付けることだろう。

 

 そして、順調に勝ち進み、準決勝。相手は高音・D・グッドマン。うん、魔法生徒だね。しかも、ここまでの戦いで魔法を使い続けていた。

 闘技場の舞台の上で、私は高音さんと向かい合う。

 

「ウルティマホラでは気や魔力を使わないことにしていましたが、相手が魔法を使うなら解禁もやむなしですね?」

 

 私がそう言うと、高音さんはひどくおびえた表情で答える。

 

「ヒイッ! 私はネギ先生と再戦を果たしたかっただけですのに……」

 

「いや、ジャック・ラカンと引き分けた相手に挑むとか、無謀すぎません?」

 

「そっ、それでも乙女にはやらねばいけないときがあるのです!」

 

「そうですか。ネギくんはエントリーしていませんが、勇姿を見せられるといいですね」

 

「はっ! そうですわ! 私の活躍を、ぜひネギ先生に見てもらいませんと!」

 

 そう言って、やる気を取り戻した高音さん。

 そのまま、彼女は開始の合図と共に影の魔法を駆使して挑みかかってくる。うん、影使いとしては、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の拳闘大会にいたカゲタロウには遠く及ばないね。

 私は特にキャラクターの力を引き出すこともなく、気で身体を強化して前方に突っ込み、影の攻撃を払って攻撃を叩き込んだ。すると、小太郎くんも使用していた防御を貫通する一撃が影の衣を突き破り、高音さんの鳩尾に突き刺さる。

 その一撃で、高音さんはもんどり打って倒れ、そのままKO。たった一度の攻撃で私の勝利となった。

 

「うう……ひどい目にあいましたわ」

 

 格闘大会に出て、殴られることを嫌がるんじゃないよ!

 とまあ、そういうことがあって決勝戦。勝ち上がってきたのは古さんで、私と古さん両者共に気功を使わない宣言をしていたため、試合は玄人好みの戦いになると識者達が予想していた。

 

「たまにはこういう戦いも楽しいアルネ」

 

 決勝の舞台で、古さんがそんな言葉を投げかけてくる。

 

「素の刻詠リンネなんて、そこらにいる貧弱な一般女子中学生なんですけどね」

 

 私がそう言うと、古さんが笑って答える。

 

「貧弱な一般女子は、ウルティマホラの決勝に来られないアル」

 

「それはごもっとも」

 

 そして、私達は共に構え、試合の合図を待つ。

 さあ、行くぞ古さん! 私の戦いはこれからだ!

 

 

 

◆220 借り物競走

 

 いやー、負けた負けた。そもそも古さんは五年間、崑崙で修行を積んだんだから、素の人間としての力比べで勝てるはずがなかったよ!

 来年があれば、さすがに魔法の一般公開が進んでいるだろうし、今度は気と魔力ありでやってみたいものだね。参加選手が増えて魔境と化してそうだけど。

 

 さて、ウルティマホラも終わったので、最後のお楽しみ、雪広グループ主催の学園全体イベントだ。

 内容は、教師からの借り物競走。

 

 私の借りる物は……ふむ。『ネクタイ』か。これはまた、簡単そうなお題だね。

 そう思っていたら、上空に立体映像が現れた。映っているのは、朝倉さんと鳴滝姉妹だ。『ねこねこ動画』の公式配信でお馴染みになった組み合わせだね。そう、鳴滝姉妹も今や『ねこねこ動画』の公式スタッフなのだ。

 

 その立体映像で、体操服姿の朝倉さんが口を開く。

 

『さあ始まりました! 本年度体育祭学園全体イベント! 『教師突撃☆スーパー借り物競走』ーッ!』

 

 また派手にやったなぁ。立体映像って魔法の技術なのに、誰に頼んだのだか。超さんか?

 

『毎回教師に対する無理難題な借り物要求が好評の当イベント! ここでスペシャルボーナスの発表です!』

 

 朝倉さんがそう言うと、鳴滝姉妹がババンと一枚の紙を掲げた。まるで雰囲気が西部劇の『WANTED』と書かれた手配書だ。

 

『ボーナスターゲットは麻帆良中学3年A組担任ネギ先生! 話題の子供先生からの借り物に成功した団体には、なんと、ポイントが百倍!』

 

 その朝倉さんの台詞に、スタート地点にいた他の競技者達からどよめきが走る。

 

『教師は教え子以外に借りられると、クラスにペナルティ! ネギ君は百倍ペナルティだから、逃げてねー!』

 

 そう言って、朝倉さんの立体映像が消える。

 ふむ、とりあえず、私もクラスのためにネギくんからネクタイを借りるとして……まずは様子見だな。

 私は、『ドコデモゲート』で朝倉さんのもとへと飛んだ。場所は、世界樹広場か。

 

「どうもー、朝倉さん、ネギくんの様子はどうですかー?」

 

 と、やってきたところで、撮影を終えたばかりの朝倉さんと鳴滝姉妹が、超さんと葉加瀬さんと一緒になにやら映像を見ているのを発見した。

 

「おっ、刻詠じゃん。ちょうどネギ君の様子を私のアーティファクトで見ていたところよ」

 

 朝倉さんが、映像から目を離さずにそう言ってくる。

 確か、朝倉さんのアーティファクトは『渡鴉の人見(オクルス・コルウィヌス)』。遠隔操作可能な飛行型スパイカメラ六台セットという、いかにも報道部としての取材に悪用できそうな代物だ。しかし、今の朝倉さんはもっぱら自分を撮影して動画にすることに使っている。そのスパイカメラが、とうとう本領を発揮したというわけか。

 

「今、柿崎サン達がネギ坊主に好きな人がいないか尋ねたところネ」

 

 超さんも朝倉さんの悪ノリについていっているのか、悪い笑みでそんなことを言った。

 なるほどなるほど。

 で、そのネギくんの様子はというと……。

 

『わ、分かりません! 好きとか嫌いとか、イマイチ理解できなくて……』

 

 フム。今のネギくんは、恋の自覚なしか。原作漫画の魔法世界編のように、自分を正しく導いてくれる長谷川千雨のような存在は、今のネギくんにはいないからね。この世界のネギくんは、様々な人に導かれて今の姿がある。

 

 そして、その答えに納得した柿崎さんは、そのままネギくんの唇を奪った。

 そのまま、連続して釘宮さん、椎名さんもキスをして、仮契約が成立する。

 えーと、確かこの三人のアーティファクトは原作漫画には登場しないが、いったい何が出てくるんだろうか。

 

「よしよし、3年A組にポイント百倍が三人分入ったね!」

 

 朝倉さんがほくそ笑む。こ、こやつ、あやかさんを口先で丸め込んでルールを改変したと思ったら、ここまで狙っていたのか!

 

「ねえ、僕もカード欲しいんだけど」

 

「私もキスするですー!」

 

 と、鳴滝姉妹がそんな主張をし出した。

 

「うーん、やるならやってきていいけど、ネギ君が全学園生徒から狙われている中で上手くやれる?」

 

 朝倉さんが、画面に映るネギくんの様子を鳴滝姉妹に示す。

 すると、その画面では、キスが終わった後に居場所がバレたネギくんが、必死に学園中を逃げ回っている様子が映っていた。

 

「むむむ、これはなかなか……」

 

 鳴滝の姉の風香さんが、腕を組んで悩ましげに言う。

 ふむ。ここは、手助けするのもやぶさかではない。この場にネギくんを呼ぶとしようか。あ、その前に確認だ。

 

「超さんと葉加瀬さんは、パクティオーカード要ります?」

 

 私は、この場に居た二人に確認を取った。

 

「私は故郷に帰ったらパクティオーカードの効力が切れるから要らないネ」

 

 と、超さん。次元を隔てるので、契約相手が死亡扱いになるのか。

 

「そうですねー。研究に役立つアーティファクトが出るかもしれないので、やっておきますかね。キスは恥ずかしいですけど」

 

 と、葉加瀬さん。なるほど、仮契約は三人ね。

 私はスマホを呼び出し、『ドコデモゲート』でネギくんの足元にゲートを出現させ、この場にネギくんを呼び出した。

 

「うわっ! えっ、あれ? リンネさん!?」

 

 ネギくんは、急に変わった景色に驚いて、周囲を見回している。

 

「はい、リンネですよー。ちょっと用事があったので呼び出しました」

 

「うわ、ネギ先生だ! りんりんがやったの? どうやったの?」

 

 と、鳴滝風香さんが、急に登場したネギくんを見て混乱している。

 

「ちょっとしたマジックです」

 

「マジック! 脱出マジックみたいな?」

 

「はい、魔法(マジック)です」

 

 そんな言葉を風香さんと交わし、落ち着かせる。そして、未だに状況が飲み込めていないネギくんに向けて、私は言った。

 

「ネギくん、ちょっと借りたい物があるので、いいですか?」

 

「あ、借り物競走ですね。いいですよ。なんですか?」

 

 すると、鳴滝姉妹と葉加瀬さんが、白紙にサインペンで文字を書き、ネギくんに突きつけた。

 それぞれ内容は、くちびる、キス、パクティオーカードだ。

 

「えーと……」

 

 目を点にしながらそれらの紙を見るネギくん。すると、ネギくんの肩にいたカモさんが目を光らせた。

 

「カモさん、出番ですよ。パパッと魔法陣敷いちゃってください」

 

「おーけー、任せておきな!」

 

 私の要請に、快くカモさんが応えてくれる。

 

「うわ、カモカモがしゃべった!」

 

「しゃべるオコジョですー!」

 

 さすがにカモさんがしゃべったことはスルーできなかったらしく、鳴滝姉妹が驚く。

 そんな二人に、私は言う。

 

「実はカモさんはネギくんがイギリスから連れて来た妖精さんなんです。みんなには内緒ですよ?」

 

「リンネの嬢ちゃん、公開がもうすぐだからって隠さなくなってきたな……」

 

 カモさんがそんなことを言いながら、一瞬で仮契約の魔法陣を地面に描いた。

 それを見たネギくんが、状況を察したのか、諦め顔になる。うん、連続ですまないが、また仮契約だよ。

 そして、ネギくんは三人と仮契約を交わし、パクティオーカードを出現させた。その場でカモさんが複製のカードを作り出す作業に入る。

 その間に、私の用事だ。

 

「ネギくん、これお借りしていいですか?」

 

 私は、スタート地点で確保した紙をネギくんに見せた。

 

「ネクタイですか。お待ちくださいね」

 

 ネギくんは、ようやくのまともな借り物にホッとした表情を浮かべ、その場でスルスルとネクタイを外した。

 そのネギくんに向けて私は言う。

 

「競技が終わったらお返ししますね。あと、ネクタイ狙いの人がこれで減ると思われます」

 

「確かにそうですね。眼鏡とかシャツとか靴とか、いろいろあるみたいで、素直に応じていたら裸にされそうです」

 

「少なくとも、うちのクラスに関しては、半数がネギくんとの仮契約を目標にしていますので、覚悟してくださいね」

 

「えっ」

 

 私にネクタイを差し出した格好でネギくんが固まり、カードの複製を終えたカモさんが「うほほー」と笑いながらネギくんの肩に飛び乗った。

 私はネクタイを受け取って、「ファイト」と言ってネギくんの背中を叩いた。

 

 そして、チラホラと広場に人が増えてきて、ネギくんの方へ目を向ける者が出てきた。

 

「そろそろ居場所がバレた頃合いカナ?」

 

 超さんがそう言って、機材の撤収にかかる。私もゴールにネクタイを運ばないとね。

 

 その後、3年A組のクラスメート達は次々とネギくんとの仮契約を成立させ、さらにネギくんは他のクラスの学生達からの借り物を見事阻止。

 3年A組には高得点が入ると思われたが、正規の借り物用の紙を使った人はほとんどいないということでことごとく失格判定を受ける。

 しかし、私のネクタイはしっかり百倍ポイント対象となり、体育祭で3年A組は好成績を残すことができたのだった。

 


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