【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■91 クリスマス

◆223 クリスマス撮影会

 

 翌日の午後、私は昨夜に女子寮で朝倉さんに指定された場所である、撮影用のプレハブ小屋へと向かった。これは、『ねこねこ動画』の経営母体である『ねこねこテクノロジー』社が所持する物件で、プライベート臭あふれる女子寮で撮影をさせないために、私が以前用意したものだ。

 朝倉さんも、鳴滝姉妹も女子寮の部屋は個室じゃないからね。なので、こうやって専用の部屋を作る必要があったのだ。

 

 プレハブ小屋だが、ちゃんとエアコンは設置してあって、冬でも暖かい。

 その小屋に、朝倉さんと鳴滝姉妹、そして十歳くらいのケモミミの少年と、同じく十歳くらいの額から角の生えた少年の計五人が集まっていた。

 

 この少年二人が、撮影に参加したいという魔法世界人らしい。うん、見覚えのある二人だ。私が麻帆良に『ドコデモゲート』で連れてきた、とある国のお偉いさんだね。

 

「まさか、刻詠殿のお知り合いだったとは」

 

 ケモミミの少年が、私を見て言う。うん、クラスメートです。

 

「じゃあ、りんりん。幻術ってやつかけて!」

 

 風香さんが、さっそく催促をしてくる。

 ふむ。ケモミミと角を隠すだけでいいかな?

 

「お願いいたします。幻術はまだ習っていなくて……」

 

 角の少年が、深々と頭を下げてお願いしてくる。うん、日本的な所作だが、親善大使として日本のマナーを学んでいるのかな。

 

「まったく、お前は魔法だけが取り柄だというのに、まさか幻術を使えないとは」

 

「いや、兄さんだって使えないじゃないか」

 

「俺は気を極めるから、魔法は使えなくてもいいんだ」

 

 少年達が、そんな言葉を交わす。うん、この二人、兄弟なんだよね。確か双子という話だ。

 それぞれ得意分野が違うようだが、英才教育を受けているであろう魔法世界人でも自身に幻術をかけられないものなんだね。自らを偽る必要はないと教育係に判断されているのかな?

 

「では、幻術をかけますね。アプリ・テリオリ・アプリオリ――」

 

 呪文を唱えて、幻術をかける。

 幻術と言っても、見た目だけ誤魔化すものではなく、キティちゃん直伝の触覚すら誤魔化す高度な術式だ。

 その証拠に、ケモミミ少年は自身の頭の横に現れた人の耳を興味深そうに触っている。

 

「すごいな! 本当にこれが幻術なのか? 変身魔法ではないのか?」

 

 ケモミミ少年がそう言ってきたので、私は闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)直伝の幻術魔法だと教える。

 

「闇の福音か……現実に存在するんだな……」

 

 ケモミミ少年の表情がこわばる。それを見て、角の少年がニヤニヤとした顔になった。

 

「兄さん、怖いの?」

 

「なっ!? そんなわけがあるか!」

 

「本当にー?」

 

「闇の福音は恩赦が通ったと聞いたぞ! つまり悪いことをしても、さらいにこないんだ!」

 

 あー、この子達、見た目よりも幼いかもしれないな。ナマハゲとしての闇の福音を半分本気にしているよ。

 そんな幼い子達だから、動画に出たいとか言い出したのかな?

 

「それよりも、動画とやらを始めないか?」

 

 ケモミミ少年がそう言うが、実は先ほどから朝倉さんのアーティファクトが出現して四方からこちらを囲んでいるから、すでに撮影自体はしていると思うんだよね。

 だが、それを教える気がないのか、朝倉さんが「じゃあ始めるよ」と言った。

 

 導入の挨拶等は別撮りにするつもりなのか、朝倉さんは早速本題を話し始めた。

 

「二人はクリスマスの概念がない国から来たんだよね。ということで、本日はクリスマスを知らない国の人に、クリスマスを教えるよー」

 

 朝倉さんがそう言うと、鳴滝姉妹が「わー」と拍手をして場を盛り上げる。

 

「クリスマスか。今日がそうらしいが、未だにどういう日かよく分からん」

 

「ひと月前から準備していて、すごく大がかりだよね」

 

 兄弟がそんな雑感を述べてくる。

 そこで、朝倉さんがクリスマスについて説明を入れる。

 

「とある宗教の開祖になったすごい人の誕生を祝う日というのが大本だね。まあ、その宗教を信仰している人は日本ではそこまで多くなくて、祝いにかこつけて騒ごうって日になっているんだけど」

 

「教会とか行ったことないな!」

 

「ミサとかちょっと見てみたいですけど」

 

 朝倉さんのざっくりとした説明に、鳴滝姉妹がそれぞれそんな合いの手を入れる。

 すると、角の少年が言う。

 

「なるほど、宗教家の誕生日というわけですか」

 

「いやー、そこはちょっと違うんだよね。誕生を祝う日だけど、誕生日ではないんだよね」

 

 朝倉さんがそう言って、少年の言葉を否定する。

 

「あれ? 違うの?」

 

「誕生日じゃないです?」

 

 鳴滝姉妹が不思議そうにする。

 

「うん、元々は別の宗教の冬至を祝うお祭りがあって、それにかこつけた今の宗教が、冬至のお祭りに重ねてクリスマスを持ってきたというのが本当のところらしいよ。だから、誕生日じゃなくて誕生を祝う日なの」

 

 朝倉さんのその説明に、少年二人は興味深そうに言う。

 

「乗っ取りとは、なかなかしたたかではないか」

 

「合理的ですね。相手の信者を取り込むこともできるでしょう」

 

 幼い少年らしからぬコメントだね。

 

「ちなみに、二人の国はクリスマスが伝わっていないというけど、どんな宗教があるの?」

 

 朝倉さんにそう尋ねられ、ケモミミ少年が答える。

 

「我が国は精霊信仰だな」

 

「それとは別に神話もありますね」

 

 角の少年の補足に、朝倉さんが「どんな神話?」と問い返す。

 

「そうですね、ざっくり言うと……古の時代、虐げられていた魔法使いの民を導く偉大な魔法使いが、新しい世界を作り出して民をそこへと導いたというものです。僕達は、その魔法使いの民の末裔なのだそうです」

 

 なるほど、『始まりの魔法使い』が魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を作ったときの伝説か。二六〇〇年前に実際にあったことと予想されているね。

 

「魔法使いを虐げるとか、古の時代の人達どうなってんだ。魔法を跳ね返すのか?」

 

「きっと筋肉ムキムキだったですー」

 

 鳴滝姉妹がそう言うが、多分そうじゃなくて、圧倒的に数に差があったとかだと思うよ。

 

「なるほど。旧世界から新世界にエクソダスしたわけね。さて、じゃあクリスマスの説明に戻るよー」

 

 朝倉さんがそう言って、話をもとに戻す。

 

「日本のクリスマスはそういった宗教的事情からは切り離されて、みんなでイベントを楽しもうって日になっているんだよね。パーティーをして、みんなで盛り上がろうってわけね」

 

「それを考えると、もとの冬至のお祭りに戻っているのかもしれないですね」

 

 ここで初めて私が合いの手を入れる。

 うん、そうだよ。私もなぜか、撮影メンバーの一人にカウントされているんだよ。『ねこねこテクノロジー』の社長なんだからいいでしょとか言われた。何がいいんだ。

 

「なるほど、確かに今の宗教色が薄いクリスマスは、冬至のお祭りと言われてもおかしくないね」

 

「カボチャ食べるの?」

 

「カボチャよりもケーキの方がいいですー」

 

 朝倉さん、風香さん、鳴滝妹の史伽(ふみか)さんがそれぞれそんな言葉を返してきた。

 うん、確かに冬至といえばカボチャだけど、その文化を知らない兄弟が不思議そうにしているぞ。

 

「確かに、カボチャよりケーキよね。あ、クリスマスと言えば、特別なケーキを食べてチキンを食べるのが定番なのよ」

 

 朝倉さんがそう言うと、ケモミミ少年が目を輝かせて、「どんなケーキなのだ?」と問う。

 

「ブッシュドノエルっていう、丸太を模したケーキが定番ね。日本だと雪を表した白いショートケーキも人気かな」

 

「丸太のケーキ! それは食べてみたいな!」

 

「とのことですが、社長ー?」

 

 ケモミミ少年の希望を聞いて、朝倉さんがこちらに話を振ってくる。

 

「しょうがないですね。後で買いにいきましょうか。おごりますよ」

 

 私がそう言うと、鳴滝姉妹が「いえーい」とハイタッチした。

 兄弟も、ケーキを食べられると聞いて嬉しそうにしている。

 

「じゃあ、チキンも買ってもらおうかな。フライドチキンがいいなー、社長」

 

 朝倉さんが、さらに私に求めてくる。まあ、朝倉さん達は事業に貢献してくれているし、これくらいのボーナスもあっていいだろう。

 

「構いませんよ。フライドチキンをバーレルで買いますか。でも、クリスマスにチキンを食べるのは、日本の文化で、アメリカではローストターキー……七面鳥を食べるんですよ」

 

「おー、聞いたことあるわ。七面鳥。美味しいのかしら?」

 

 朝倉さんが言うが、私は「チキンの方が好き」と答えた。フライドチキン屋さんのチキン、美味しいよね。

 そして、そこからクリスマス料理について話していき、クリスマスの後のお楽しみ、クリスマスプレゼントの話になった。

 

「サンタクロースというお爺さんが、トナカイが引くソリに乗って空を飛んで、世界中の子供達にプレゼントを届けるって伝説があるのよ」

 

 朝倉さんがそう言うと、角の少年が「素敵な伝説ですね」と言った。

 そして、ケモミミ少年が言う。

 

「サンタクロースは破産しないのか?」

 

「サンタクロースに業務を委託された子供の親が、代わりにプレゼントを用意するから大丈夫よ」

 

 いやまあ、確かにプレゼントを用意するのは親だけど、委託って……。

 

「なので、子供にプレゼントを用意するために親がこの時期玩具とかを買うんだけど、他にもクリスマス用の料理を用意したり、飾り付けを買ったり、消費が活発になるの。当然売り手側もあの手この手でいろいろ買わせようとする。なので、この時期をクリスマス商戦って言い表すのよ」

 

「祭りにかこつけて商人達が奮起するというわけか……」

 

「商魂たくましいですね」

 

 少年達が苦笑い。うん、この歳の子供のコメントじゃないね。

 その後、クリスマスの定番をいくつか説明して、コメントを交わした後、撮影は終了した。

 そして、ケーキと料理を買いに行こうということになり、私達は市街地へと繰り出した。

 

「ケーキ、ケーキ!」

 

「チキン、チキンですー」

 

 鳴滝姉妹が嬉しそうにしており、それを兄弟がほっこりした表情で見つめている。

 さらにその様子を朝倉さんのアーティファクトが撮影する。うん、アーティファクト使いこなしまくりだな、朝倉さん。

 

 やがて、ケーキ屋に到着し、どのケーキを買うかで姉妹と兄弟がワイワイと仲良く話し込み始めた。

 と、そこで見覚えのある客が、店内に入ってきた。

 

「あら、刻詠様?」

 

 それは、アリアドネーの親善大使の二人。エミリィ・セブンシープさんとベアトリクス・モンローさんだ。

 

「こんばんは。お二人ともクリスマスケーキですか?」

 

 私がそう尋ねると、セブンシープさんが答える。

 

「ええ、今日は特別なケーキを食べる日だと教えていただいたのです」

 

「そうですか。あちらがクリスマスケーキのコーナーですよ」

 

「まあ、華やかですわね! 目移りしてしまいますわ!」

 

 セブンシープさんが、嬉しそうにケーキを眺める。

 すると、その隣にいたケモミミ少年がその姿に気づく。

 

「おお、アリアドネーの者か。クリスマスケーキなら、このブッシュドノエルがいいと思うぞ」

 

「えっ? はっ、これは王子殿下。ご機嫌麗しゅう」

 

「よいよい。そうかしこまるな」

 

 そんな二人のやりとりに、鳴滝姉妹は不思議そうな表情を浮かべる。

 

「王子殿下?」

 

「王子様です?」

 

 そう鳴滝姉妹に言われた兄弟の表情が、わずかにこわばった。

 すると、朝倉さんがぎこちない動きでこちらを見てきた。

 

「刻詠、この人達、もしかして……」

 

「はい、お二人とも、魔法世界にある国の王子様ですよ。アリアドネーとはお隣同士ですね」

 

「そういうことは早く言ってよ!」

 

「いやー、撮影で緊張されたら上手く撮れないですからね。ネタバレは控えました」

 

 うん、この二人、王子なんだよねぇ。

 しかも、おそらくは『魔法先生ネギま!』の最終回で鳴滝姉妹が結婚した相手。地理的にも、容姿的にも間違いないだろう。

 

 明日菜さんやネギくんの母親の例を見れば分かるとおり、魔法世界では王政の国というのはまだ普通に残っている。

 魔法の国で王子様と言えば、『ネギま!?neo』という『魔法先生ネギま!』のスピンオフ漫画があって、それに登場するフェイト・アーウェルンクスはオスティア国の王子様という扱いだった。

 フェイトが王子様というのも驚きだけど、一地域でしかないはずのオスティアが国扱いというのも面白いよね。

 

「すげー! 王子様とか初めて見た!」

 

「王子様もケーキとか食べるのです?」

 

 鳴滝姉妹は、特に引くこともなく二人の身分を受け入れた。

 それが嬉しかったのか、兄弟は満面の笑みを浮かべ、四人で仲良くケーキ選びに戻っていった。

 うんうん、どうやら四人の相性はいいようだね。もしかしたら、原作漫画の最終回のように、将来は結婚することもありえるかもしれない。

 

 とりあえず、今日のところはクリスマスパーティーで一緒にチキンとケーキを食べてもらって、仲を深めてもらおうじゃないか。

 

「はー、私にもいい男転がっていないかなぁ」

 

 朝倉さんが仲むつまじい鳴滝姉妹と兄弟を見ながらため息をつく。

 いや、今の朝倉さんなら彼氏とか簡単に見つかるだろうけど、人気配信者の恋愛事情を動画に流して炎上しないよう、気を付けていただきたいものだね。

 




※ケモミミ少年と角少年は、原作最終話の未来の鳴滝姉妹のコマに後ろ姿だけ映っている王子達をもとにした双子半オリキャラです。
※完結まで書き溜めできたので、しばらくは一日二話更新です。
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