【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ 作:Leni
◆231 女子高生の流行
麻帆良は魔法使いの都市!
そんな国連事務総長のコメントから数日経ち、麻帆良は世界の注目を浴びていた。
デモンストレーションのために魔法生徒達は認識阻害の魔法を使わずに杖で空を飛び、世界中からやってきた記者達のカメラに映っていた。
巨大な木である世界樹も当然注目され、年に一度の発光はこれまで対外的に言われていた光ゴケによるものではなく、魔力による発光と関東魔法協会から発表がされた。
以前『ねこねこ動画』に朝倉さんが配信した公式動画で、夏休み最終日に発光する世界樹と空に浮かぶ廃都オスティアを撮った映像は、再生回数がうなぎ登りとなっている。
そんな中、今日入学式を迎える麻帆良学園女子高等部の生徒達は気が気ではなかった。
花の女子高生。しかも、大注目を浴びる麻帆良の本校生徒。だというのに、自分は魔法使いではないのだ。
女子高生は流行に敏感だ。その彼女達の最先端の流行は、まさしく『魔法』であった。
そんな中、入学式のために新しい女子寮からこっそりと高等部の校舎に登校した私だが、教室へ辿り着く前に多数の生徒達によって囲まれていた。
「刻詠さん! 魔法!」
「まーほーうー」
「まほー教えて!」
「私も魔法使いたい!」
お、おう……。分かった分かった。分かったから、とりあえず制服をつかむのを止めなさい。
心機一転、新しいセーラー服になって気分が上がっていたんだから。
はー、しかし、魔法を教えてほしいねぇ。春休みに実家に帰ったときには、両親から一言もそんなことは言われなかったんだけど。やっぱり、年齢の違いかな?
「えー、皆さん。魔法ですが、魔法部を設立しますので、それに入って練習してもらいます。ただし、一朝一夕ではできませんよ。簡単な火をおこす魔法でも、数ヶ月かかります」
「空を飛ぶのは!?」
「専用の箒を使っても、一年はかかると見てください」
私がそう言ったことによって盛り下がる……と思われたが、そんなことはなかった。
「数ヶ月で魔法使えるようになるって!」
「やだー、夏休みには見せびらかせるってこと?」
「
やべえ。バイタリティーすげえ。
何が彼女達をここまでさせるのか。
「麻帆良に居るのに魔法使えませんって答えるの、恥ずかしいんだよね」
そんな言葉が聞こえてきて、なるほどと納得した。
これは、早急に部を設立して、彼女達をいっぱしの魔法使いにしてみせるしかないね。
んー、これだけの人数で練習するのだから、最も簡単な『
魔法的な観点だと火の魔法から始めるのは重要な意味を持っていて、神話におけるプロメテウスの火が関わるのだが、安全には代えられない。
物を倒す魔法でいく? いや、もっと視覚で分かりやすい方がいいよね。光を発する魔法でいくかな。使い道も多いだろうし。神話で当てはめると「光あれ」という創世に関わる重要な意味合いも持つし、悪くないね。
とりあえず、入学式が終わったら部の設立だ。練習用の杖は麻帆良に在庫あるかな? 部活動説明会にも出た方がいいだろうし、ちょっと忙しくなりそうだ。
◆232 プラクテ・ビギ・ナル
魔法は西洋魔術だけにはあらず。ということで、私は女子高等部に所属する魔法生徒に、魔法部への指導員として入部してくれるよう頭を下げて回った。
すると、いろいろ出てきた。陰陽術、呪術、法力、神聖魔法、忍術、仙術などなど。
初心者の部員達には、これらの選択肢もありますよと伝えて、西洋魔術よりもそちらがいいという人にはそれぞれの指導員についてもらうようにしてもらう。
そして、部活動初日。体育館に集まった生徒は、ものすごい数になっていた。これ、一〇〇人余裕で超えとるわ。女子高生の行動力なめてた。
「えー、このままだと他の部活の邪魔になりますので、皆さんにはこの
私は、今日この日のために用意した、新しいダイオラマ魔法球をその場に呼び出した。
「一見、ただのガラス球に入ったジオラマに見えますが、この中には一つの小さな世界が広がっています。この中に、こうして入ってもらいます。鳴滝姉妹、ゴー」
「わーい、一番乗りだー」
「ですー!」
朝倉さんのスパイカメラを引き連れた鳴滝姉妹が、ダイオラマ魔法球の転移魔法で姿を消した。すると、周囲が大きくざわめく。
ちなみに、魔法部の部員は『ねこねこ動画』の公式配信に映る旨を了承してもらうことを条件に入部してもらっている。
麻帆良にいないと魔法を学べないのは不公平ということで、練習用の杖を通販して、『ねこねこ動画』に安全な魔法の練習方法を載せることとなったのだ。
つまり、魔法部にいると世界中の魔法使い志願者が自分達を見る。女子高生達は色めき立ち、気合いを入れて髪型を整え化粧をしてこの場に挑んでいた。
今や、麻帆良学園女子高等部は、世界の流行の最先端にいた。
「では、前から順に中に入ってもらって、中にいる人から練習用の杖を受け取って整列していてください」
そうして、私は魔法使い見習いとなった女子高生達を次々とダイオラマ魔法球へと送り出していく。
全員送り出したところで、ダイオラマ魔法球を用意してもらった部室に運び、動かせないよう魔法で設置した後に、防護の魔法をかけて私も中へと向かった。
すると、中ではわいわいきゃいきゃいと杖を手にしてはしゃいでいる女子高生の集団が目に入った。
「では、いきなり座学もなんですので、これを練習し続ければ何ヶ月かで初級の魔法が使える! という方法を教えますよー。いいですかー、皆さん、しっかり聞いてくださいね」
私がそう言うと、場がしんと鎮まった。
「いきますよー。プラクテ・ビギ・ナル。『
私が練習用の杖を振り上げると、杖の先に光が灯った。この場は少し照明を弱くしているので、皆の目にも光ったのが分かるだろう。
「いいですか? 『プラクテ・ビギ・ナル』というのが、魔法を使う時に必ず必要となる始動キー。『ルケアット』というのが光れという意味の呪文です。杖を振りながら、この呪文をひたすら唱え続けることで、そのうち魔法が使えるようになります」
「えっ、それだけ?」
誰かが、ぽつりとそんな言葉を発した。
「はい、初心者用の魔法はたったそれだけです。魔法の社会では、幼い子供の頃に習うことですから、簡単な理屈と一緒に覚えるだけで十分です」
私は、そう説明をしながら、用意していたホワイトボードに『プラクテ・ビギ・ナル ルケアット』と書き、その下に『息を吸うようにして万物に宿るエネルギー『魔力』を体内に取り込み、杖の一点にエネルギーを集中するイメージをしながら!』と書いた。
「これが呪文と注意点ですから、ケータイにでもメモしておいてくださいね」
私がそう言うと、生徒達は一斉にケータイを取り出し、前に出てパシャパシャとホワイトボードを写真に撮り始めた。
そして、そこからみんなで練習を開始する。当然ながら、いきなりできるような人は一人もいない。
「いいですか。とにかく練習回数が重要です。このダイオラマ魔法球の中は魔力が濃いので成功しやすいですが、外でも十分成功の可能性はあるので、暇なときはとにかくこのイメージを念頭に呪文を唱えてみてください。人前で言うのが恥ずかしい? いえいえ、皆さんは、最先端の魔法を練習しているんです。学校の休み時間でも、家の自室でも、どんどんやりましょう。熱くない光を発するだけの魔法ですから、安全ですよ」
皆が練習するのを見ながら、私はそう解説を入れた。
はてさて、この中でどれだけの子が脱落せずに魔法を使えるようになるかな?
◆233 魔法部活動中
ひたすら呪文を唱えるだけというのは辛いものだ。
だから、私は魔法部で定期的に催し物を開催することにしている。
魔法生徒によるデモンストレーションをしたり、魔法世界の映像を流したり、魔法具を使わせて魔力と精神力を使う感覚を覚えさせたりと、様々だ。
その試みがよかったのか、思いのほか退部者や幽霊部員は少なくて、今日も多くの生徒がダイオラマ魔法球、通称部室にやってきている。
部室内部には、私が『Minecraft』の能力で建てた施設がいくつかあって、魔法を練習する以外に放課後だらだら過ごすことにも活用されていた。
「さて、今日はこの魔法具でゴーレム退治をして遊びましょうか。皆さん、これ、見覚えありますか?」
「あっ、去年の学祭の!」
将来魔法社会のエージェントになるために、思い切って彼女にとっての青春だったはずのバスケットボールを辞めた明石裕奈さんが、私の用意した魔法具を見て声を上げる。
そう、これは昨年の麻帆良祭で使い終わって、そのままキティちゃんの別荘に死蔵された、魔法人形の動きを止めるための魔法具だ。キティちゃんに特別に借りてきた。
その時、キティちゃんから、たまには『異文化研究倶楽部』の方にも顔を出せとか言われてしまった。
いやー、未だに週に三回ほどの『ドコデモゲート』のアルバイトはあるし、なかなか忙しいんだよね。火星開拓事業に関しては本格始動がまだなので、たまにお偉いさん達のパーティーに出席するだけで済んでいるけど。
「はい、この魔法具で私が操るサンドゴーレムを退治してもらいます。砂で汚れますから、皆さん事前に知らせた通り、体操着は持ってきていますね?」
「持ってきているけど、制服でやってもいいんだよね?」
と、部員の一人がそんなことを言い出した。
「ええ、構いませんが、砂がつきますよ?」
「えーでも、カメラに映るなら制服の方がよくない?」
「確かに! ゴーレムっていうのから離れていればいいでしょ」
まあ、止めないけどね。
というわけで、着替える人は着替えさせて、ゲームを開始した。
「うわー、砂が空飛んでる!」
「あれ撃ち落としたら、絶対砂で汚れるやつじゃん!」
「制服がー!」
はっはっは、だから言ったのに。まあ、魔法で綺麗にしてあげるよ。
と、そんなことがあって、また別の日。
「今日は魔法世界で評判の映画を観ますよー。ナギ・スプリングフィールドという実在の人物を扱った映画です」
「ん? スプリングフィールドって聞き覚えある」
「ほら、中等部の子供先生」
そんな女子高生達の会話に露骨な反応を示したのは、和泉亜子さんだ。
亜子さんは、ナギ・スプリングフィールドを名乗る人物に惚れて、昨年の麻帆良祭で彼をライブに招いたことがある。それ以来、亜子さんは偽のナギ・スプリングフィールドとメル友になったのだが……バレンタイン当日に、ネギくんが幻術で年齢を誤魔化した存在だと気づいてしまう事件が起きた。いやあ、まさかカラオケの最中に幻術薬の効果が切れるとはねー。
それ以来、亜子さんはネギくんの成長を温かく見守る勢になったが、ナギ・スプリングフィールドの名前にも反応してしまうようになったのだ。
「そう、そのネギくんのお父さんが、二十一年前に魔法世界で起きた戦争で大活躍する映画ですよ」
「戦争映画かー」
「あーでも、兵器じゃなくて魔法撃ち合うなら見たいかも」
キャーキャーと部員達が騒ぎ始めたので、私は部室内に作って置いた映像ホールに皆を集めて、映画を流した。
そして、二時間後……。
「ナギとアリカが結ばれてよかったー!」
「愛の逃避行……隠れ住むしかなかったのが悲しいねー」
「子供先生はひっそりと生まれていたんだねぇ」
そう、この映画、アリカ女王の扱いがまともだ。というのも、昨年にクルト・ゲーデル総督がアリカ女王の復権のために作らせた映画で、封切りは今年の二月。今回、特別に総督からフィルムを借りてきたものになる。
ゲーデル総督的には、興行収入よりもアリカ女王の名誉回復の方が重要であり、私の判断で地球人に見せていいと言われている。
こんな感じで、時にはゲームをしたり時には映画を観たりと、存分に遊びながら魔法部の日々は過ぎていき……。
麻帆良祭が終わり、夏休みに入る頃には、初級の魔法に成功する人が何人も出始めていた。
「プラクテ・ビギ・ナル。『
「プラクテ・ビギ・ナル。『
「いいなー。私はまだ部屋を暗くしないと、光ってるって分からないよ」
「光っているならもうすぐだって!」
魔法成功組が、キャッキャウフフと楽しそうに魔法を使っていた。
それを見て、自分も成功させるのだと他の者も気合いを入れている。
「でもよかったー。火星開発に間に合って」
「ん? 何かあるの?」
「いやだって、絶対大ニュースになるじゃん? そうなったら、また麻帆良が注目されそう。そのとき、魔法使えたら格好良くない?」
「分かるー。今年の麻帆良祭で魔法使える子、ヒーロー扱いだったもんね」
「魔法生徒の集団飛行、すごかったよねー」
今年の麻帆良祭は、確かにすごかった。来客数も過去最高に登っていたが、それ以上に魔法を大っぴらに使ってよいこととなり、いろんな場所で魔法を使ったデモンストレーションが行なわれていたのだ。
さらに超さんが今年も『まほら武道会』を開催した。これにはネギ・スプリングフィールドの参加を聞きつけた魔法世界の猛者まで参加して、すごいことになっていた。『ねこねこ動画』にもその映像はアップされており、それを見たスポーツ界が、魔力や気の扱いをどうするか連日のように揉めているのをテレビで見た。
将来的にはここにサイボーグも混ざるのだが、私はスポーツ界には興味ないので今のところその問題にはノータッチでいる。いずれ収まるところに収まるだろう。
「えー、私、火星開発までに魔法習得間に合うかな?」
「そもそもいつなの?」
「分からん!」
「部長に聞いてみよう。部長ー、火星開発っていつー?」
部員達が、話をこっそり聞いていた私の方に集まってくる。
「テラフォーミング開始は八月一日からですよ。『ねこねこ動画』で公式配信しますので、是非見てくださいね」
私がそう言うと、部員達が口々に「ケータイじゃ見づらい」「部長みたいなケータイ欲しい」「誰かパソコン持ってないか」などと騒ぎ始める。
うん、女子高生にとっても、火星開拓は興味の対象のようだ。かつて『アポロ十一号』が月に行った時以上の騒ぎになるかもしれないね。
私はそんな彼女達に、部室に飾るための火星の石を持ち帰るよう要請され、私は笑いながらそれを了承したのだった。私、別に今回は火星まで行かないんだけどね。
※オリジナル魔法『
※原作に登場する初等魔法『