【完結】プレイしていたゲームの能力で転生するやつ   作:Leni

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■97 偽神ヨルダ・バオト降臨

◆237 決戦の時は来た

 

 二〇〇六年四月一日。高等部三年の春休み。

 私達は、とうとう造物主(ライフメイカー)ヨルダ・バオトとの決戦の日を迎えた。

 

 ヨルダの本体が宿る小惑星アガルタを空間的に隔離し、転移魔法で逃げられないようにする。

 

 その上で、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の連合艦隊が小惑星の周囲を囲み、封印術式を発動。戦いの最中に、隔離空間を破壊されないように押さえつける手はずとなっている。

 

 万が一、私達が敗北しても、その時は配置したオラクル船団の艦により再度封印を行なえるようになっている。

 そうなると、造物主は永遠に解けない封印をはめられ、ナギ・スプリングフィールドの復活は二度となくなってしまう。それを避けるためにも、頑張らなければいけないのだが……ナギ・スプリングフィールドを復活させるためには、現在造物主を封印している『結灰陣』を完全に外さなければならない。

 隔離空間の中で全力を出せるようになったナギ=ヨルダと戦うことになるため、激戦が待ち受けていることだろう。

 

「いよいよ大詰めですね」

 

 アークスの宇宙戦用シップの甲板にて、もうすぐ十四歳を迎えるネギくんが言う。

 

「ここまで長かったわ」

 

 同じく成長期で背が急に伸びた小太郎くんが、小惑星アガルタを見下ろしながら言った。

 すると、すっかり大人の姿になったフェイトさんがその会話に乗ってきた。

 

「困難な道のりだったね。このまま封印しておくべきという声があまりにも多すぎた」

 

 うん、そうなんだよね。魔法世界人達は、この数年で小惑星一つ分の力を持つ造物主の力を正しく認識するようになった。

 その力は絶大で、封印から解き放たれれば、今の魔法世界人では対処は不可能だ。なので、このまま眠らせておくべきだという声が強かった。

 だが、私達は造物主の討伐を主張した。造物主を倒し、ナギ・スプリングフィールドを救い出す。その主張を通すため、ナギ・スプリングフィールドのファンクラブを巻き込んでロビー活動を行なって……ほんとうに困難な道のりだった。

 

「敵は強大です。小惑星全体が造物主の本体であり、魔力は膨大です」

 

 私がそう言うと、小太郎くんはニッと笑って言葉を返してくる。

 

「惑星表面ならどこにでも出現するんやったな。直径五十キロある惑星から奴を捉えるのは、なかなか骨が折れんで」

 

「ネギくんの雷速移動が有効でしょう。ただし、くれぐれも……」

 

 私がネギくんを見ながらそう言うと、ネギくんは真剣な表情で答える。

 

「はい、足止めに徹する、でしたね?」

 

「そうです。動きを止めさえすれば、のどかさんのフォトンが届きます」

 

 すると、この場にいた全員……ネギま部の面々が、のどかさんに目を向ける。

 その視線を受けて、中等部時代と変わらぬ若さののどかさんが、ロッドをにぎりながらこくりとうなずいた。

 

「のどかさん、私、明日菜さん。この三人が、この戦いの鍵です。各自、サポートをお願いします」

 

 私がそう言うと、ネギま部メンバーは力強く返事をした。

 

 

 

◆238 ヨルダ・バオト・アルコーン

 

 アークスの宇宙戦用シップから、小惑星アガルタに降り立つ。

 そして、私はスマホから今回の決戦に志願してくれた戦士達を呼び出し、いつでも戦えるよう準備を整えた。隔離空間の中は空気で満たしてあり、重力も小惑星方向に働くように調整してある。これなら、普段通り戦うことができるだろう。

 やがて、作戦開始時刻が訪れる。私はスマホでフラグシップに連絡を入れ、子猫の提督に指示を出した。

 

「『結灰陣』解除」

 

『了解にゃ。……封印解除完了!』

 

 すると、次の瞬間、小惑星全体を要石として使っていた封印が霧散し、周囲からおぞましい魔力がただよい始める。

 

「これは、瘴気でござるか……」

 

 楓さんがしかめっ面をしながら言うが、大丈夫。瘴気対策はしてある。

 私達の後方に展開していた王子軍から、神聖な輝きがほとばしる。王子が持つ女神アイギスの盾の神器が、周囲に漂う瘴気を払ったのだ。

 これで、瘴気によって造物主に取り込まれる心配が薄くなった。

 

「こしゃくな……」

 

 そんな男の声が、周囲に響く。ナギ=ヨルダの声だ。

 そして、私達の前に、黒いローブを着こんだナギ=ヨルダが唐突に出現する。

 

「私を殺しに来たか」

 

 ナギ=ヨルダの淡々とした声が、耳に届いた。ナギ・スプリングフィールドの意識はどうやらないようだ。

 そんなナギ=ヨルダに、ネギくんが言う。

 

「ヨルダ・バオト……この数年で、火星に魔力は満ちました。あなたにも魔法世界の人々の声は届いているはずだ。それでもなお、あなたは夢の世界を望みますか?」

 

 すると、ナギ=ヨルダはそんなネギくんに向けて、憎悪にあふれた視線を向ける。

 

「怨嗟の声は消えておらぬ。人は未だに虐げられたままだ」

 

「この数年で、魔法世界も地球も、だいぶ人が生きやすい環境になったはずです。あなたがそれを理解していないはずがない」

 

「弱者は常に存在している。この程度で世界を救済したつもりか、強者どもめ」

 

「……やはり話は通じませんか」

 

「ヒトは歩む道を間違えた。ゆえに、終わらせなければならない」

 

 そう言って、ナギ=ヨルダは腕を上げて魔法を放とうとする。

 だが、それよりも早く、のどかさんの『ラ・グランツ』による光線がナギ=ヨルダを射貫いた。

 

「があっ!? こ、これは……!」

 

 光線を受けたナギ=ヨルダは頭を押さえ、その場で苦しみだした。

 そこへさらにのどかさんがテクニックを放とうとするが、ナギ=ヨルダは音もなく姿を消してしまう。

 

「ふむ、会話で足止めして不意打ち、大成功でしたが、まだ足りませんか」

 

 私がそう言うと、ネギくんは苦笑を返してくる。うん、今さら私達は造物主を言葉で説得しようだなんて思っていないよ。言葉を交わせば、油断してくれると思っただけだ。

 

 のどかさんの一撃には、人々の希望が乗っている。

 それは比喩でもなんでもなくて、人工アカシックレコードから集めた人々の善の気持ちが、テクニックのフォトンを通してナギ=ヨルダに叩きつけられたのだ。

 のどかさんの攻撃を繰り返せば、きっとナギ・スプリングフィールドはヨルダから身体の主導権を取り戻せるはずだ。

 

 だが、ナギ=ヨルダは姿を消してしまった。

 小惑星のどこかに逃げたのかと思っていたら、ふと一キロメートルほど前方に再出現した。

 そして、そこから極太ビームのような『雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)』が飛んでくる。

 

「任せて!」

 

 と、明日菜さんが叫び、明日菜さんはその場から魔法無効化能力の波動を前方に放った。

 すると、はるか向こうでナギ=ヨルダの魔法がかき消える。それと同時に、私は『ドコデモゲート』を起動。ナギ=ヨルダのもとへとネギま部メンバーを送り出した。

 

 古さんが『神珍鉄自在棍(シンチンテツジザイコン)』を振るい、楓さんが拘束符をつけたクナイを投げつける。

 さらに相坂さんと茶々丸さんが拘束弾を撃ち込み、わずかに相手の動きを止めたところで、のどかさんが『ナ・グランツ』を叩き込んだ。

 

「くっ、これは、この光は――」

 

 ナギ=ヨルダが再び姿を消す。私はすぐさま『ドコデモゲート』で位置を捕捉し、次々とネギま部メンバーや別宇宙の戦士達を送り込んでいく。

 

 ナギ=ヨルダの反撃の魔法を明日菜さんと夏凜さんが前に出て壁となることで、防ぎきる。

 小太郎くんの影の術がまとわりつき、ハルナさんの触手ゴーレムが怪しく拘束をかける。

 水無瀬さんの呼び出した死霊が次々と拘束術式をまき散らして自爆し、それに混じったちう様の自爆が相手の動きを止める。

 

 そうして足を止めたナギ=ヨルダに、のどかさんの攻撃が少しずつ、少しずつ当たっていく。

 

 手応えを感じていると、不意に小惑星全体をおおうような巨大な積層魔法陣が出現した。

 これは……? と、スマホに着信だ。相手は、フラグシップの艦長。

 

「もしもし」

 

『隔離空間全域を対象にした夢幻魔法『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』の発動を確認したにゃ』

 

「では、手はず通りに」

 

『了解、対抗術式『夢のおわり』発動にゃ!』

 

 すると、次の瞬間、フラグシップから光がきらめき、魔法陣が粉々に破壊された。

 これは、キティちゃんが以前開発した魔法『完全なる世界』への対抗術式をさらに、『FGO』のガチャで新たに引いたサーヴァントの妖精王『オベロン』の力で改良した、新術式だ。

 この術式がある限り、ナギ=ヨルダは夢の世界を構築・維持することができない。

 

 今頃、術者であるナギ=ヨルダは驚愕していることだろう。今のうちに、私はさらに『ドコデモゲート』で位置を捕捉したナギ=ヨルダのもとへ仲間を送り込んでいく。

 

 刹那さんと木乃香さんの符術が捕縛陣となり、夕映さんの『ゾンディール』が敵を吸い込む磁場を形成する。

 あやかさんの合気柔術が相手を地に叩きつけ、キティちゃんの氷魔法が手足を縛りつける。

 

 そして、のどかさんの渾身の光テクニックが、ナギ=ヨルダに炸裂する。

 

 ナギ=ヨルダは精神を乱されているのか、徐々に反撃すらしなくなってひたすらに距離を取ろうとし始める。

 だが、『ドコデモゲート』からは逃げられない。さらに、以前敵対した風のアーウェルンクスから雷化の術式を見取ったネギくんが、惑星表面を縦横無尽に駆け回り、ナギ=ヨルダに追いすがっていく。

 やがて、ネギくんの輝く魔剣による峰打ちがナギ=ヨルダを捉えたところで、ナギ=ヨルダが言葉を放った。

 

「ネギか……でかくなったな」

 

「!? 父さん……!」

 

「アスナもいる、か。今なら、俺を殺しきれるな」

 

 ナギ=ヨルダはフッと笑い、その場で棒立ちになる。

 

「……ッ! 『解放(エーミッタム)』!」

 

 ここでネギくんが待機させていた『魔法の射手(サギタ・マギカ)戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)』が、ナギ=ヨルダを完全に捉えた。

 全身を拘束されたナギ=ヨルダに、私が送り込んだのどかさんが『イル・グランツ』を叩き込む。

 

「ぐっ、いた……くねえな? ただの光か」

 

『イル・グランツ』の光弾を受けて、ナギ=ヨルダが目をつぶる。だが、のどかさんが放ったテクニックは威力を殺してある。殺傷力がないので彼の身体を貫くことはないし、ナギ=ヨルダを殺しきることもない。

 地球と魔法世界、両世界の人々が抱く希望がフォトンを通じて届いたのか、どうやらナギ・スプリングフィールドが身体の主導権を完全に取り戻したようだ。一切拘束を解こうとする動きは見られない。

 作戦第一段階は上手くいったようだ。見事にナギ・スプリングフィールドを表に引き出すことに成功した。

 

 では、次に移ろう。

 私は『ドコデモゲート』でナギ=ヨルダの前に飛び、スマホから一本の刀を取り出して構える。

 

「ん? アスナじゃねえのか? 造物主は、そのまま殺すと殺した相手に乗り移るぞ」

 

「大丈夫です。この刀は、人を殺すための武器ではありません」

 

 私はそう言いながら、スマホから『PSO2es』のチップである『甦りし導きの光 ヒツギ』と主人公『アンドー・ユー』の力を引き出す。

 私が構える刀は、ヒツギさんが持つ力、具現武装『天叢雲(アメノムラクモ)』をアカシックレコードの司書『シオン』が改造したものだ。

 これと同じように改造された『天叢雲』は、『PSO2』のストーリー中にも登場している。そのときは、『深遠なる闇』と同化してしまった別時間軸のアンドーを切り離すことに使われた。

 つまり――

 

「行きます。あなたをヨルダ・バオトから切り離します!」

 

 私は、『天叢雲』を抜刀。ナギ=ヨルダに向けて斬撃を放った。

 刃が、相手の魂魄に食い込んだのを感じ取る。そして、『天叢雲』はそのままヨルダ・バオトの魂からナギ・スプリングフィールドを綺麗に切り離した。

 

「ッ!? こいつぁ一体!?」

 

 驚愕の表情を浮かべるナギ・スプリングフィールド。

 次の瞬間、ナギ・スプリングフィールドの身体から弾き出されたヨルダ・バオトの魂が、彼の背後に具現化する。

 それは、異形の天使。幾重もの翼を持つ偽物の神様(アルコーン)とでもいうべき姿。彼女のその在り方は、すでに人の領域を外れてしまっていることを感じさせた。

 

「ココロちゃん!」

 

 私は、そのヨルダ・バオトが周囲の誰かに乗り移る前に、『ドコデモゲート』で離れた場所にいた『時の魔女ココロ』を呼び出し、ナギ・スプリングフィールドを一旦離れた場所に退避させる。

 

「出番ね! 行くよ、『スーパータイムボム』!」

 

 ココロちゃんの時の魔術が炸裂し、ヨルダ・バオトの時間を止める。

 そこへ、さらに私は明日菜さんと『アルトリア・キャスター』を『ドコデモゲート』で呼び出した。

 

 すると、すぐさまキャストリアが魔術を行使し、明日菜さんのアーティファクトの大剣を聖剣へと打ち直す。

 明日菜さんは、白く輝く聖剣となった『ハマノツルギ』を構えた。そして――

 

「これで、終わりよ!」

 

 大上段からの明日菜さんの一撃が、ヨルダ・バオトを真っ二つに切り裂いた。

 無防備な魂に聖剣の一撃を防ぐほどの力はなく、ヨルダ・バオトはそのまま無になって消え去った。

 すると、急に足元が大きく揺れ、地面に亀裂が入った。魂を失ったヨルダ・バオトの仮の身体、小惑星アガルタが崩壊を始めたのだ。

 

「これヤバくない!?」

 

 大きな亀裂がどんどんできていく小惑星を見て、明日菜さんが叫ぶ。

 

「ヘイ、スマホ。『ドコデモゲート』で小惑星にいる全員をフラグシップの甲板に」

 

 私がスマホに話しかけると、どうやら上手く音声認識されたようで、皆の足元にゲートが開く。

 そして私達は、大爆発する小惑星アガルタからギリギリで逃げ出すことに成功したのだった。

 爆発オチなんてサイテー……!

 

 

 

◆239 戦いを終えて

 

 フラグシップに備え付けの宇宙戦用の甲板に落ちたネギま部一同と、スマホ内の宇宙からやってきた戦士達。

 その中には、ナギ・スプリングフィールドの姿もしっかりあった。

 

「ナギ……!」

 

 そんなナギ・スプリングフィールドに、キティちゃんが駆け寄る。

 

「おー、エヴァじゃねーか」

 

 ナギ・スプリングフィールドが、キティちゃんを抱き留めようとするが、ふらついた彼は、そのまま尻餅をついてしまった。

 

「お、おお? なんか力が入らねえ……」

 

「なんだと!?」

 

 キティちゃんが、ナギ・スプリングフィールドに抱きつきながら触診をしていく。

 

「……これは、急性の魔素中毒か。仕方あるまい。あれだけ濃厚で邪悪な魔力の宿主になっていたのだ。しばらくは療養だな」

 

「療養……そもそも何が起きたか分かんねーんだが……なんで俺生きてんの?」

 

 ナギ・スプリングフィールドがそう言いながら私の方を見てくる。

 そんな彼に、私はペコリとお辞儀をした。

 

「初めまして、ナギさん。私は、息子さんのネギくんの教え子、刻詠リンネと申します」

 

「お、おう。これはご丁寧に……」

 

「順を追って説明しますと……あなたは『始まりの魔法使い』ヨルダ・バオトと魂が混ざり合っている状態にありました。以前、ヨルダが私達の前に姿を見せたときにその魂を観測して、そこからあなたの魂をヨルダから切り離す研究を進めました。そして、見事に今回切除に成功したというわけです」

 

「そうか……。俺のためにわざわざ……本当にありがとな!」

 

「いえ、ナギさんを救い出すのはネギくんとエヴァンジェリン先生の望みでしたから、成功してよかったです」

 

 そうして私は、キティちゃんのせいで出るタイミングを逃してしまい、後ろの方で待機していたネギくんの手を引き、ナギさんの前に突き出した。

 勢いよく背中を押したためよろける形になったネギくんが、口を開く。

 

「父さん……」

 

「ネギか……立派になったな」

 

「父さん、ずっとあなたに会いたかった」

 

「はは、その歳で親離れしないのは恥ずかしいぜ」

 

 ナギさんが恥ずかしそうに笑うが、ネギくんはそんな父親の姿を見て、ポロポロと涙を流し始めた。

 

「あー、こら、泣くなよ。せっかくの再会なんだ。笑え!」

 

「はい……」

 

 ネギくんが泣き笑いして、ナギさんは「ぶっさいくだな!」と笑う。

 すると、キティちゃんがナギさんに抱きついたまま「お前なぁ……」と呆れ、周囲を囲むネギま部メンバーから笑みがこぼれる。

 

 そんな平和な光景に、『ドコデモゲート』でヨルダ・バオトの完全消滅を確認していた私も嬉しくなって、思わず口角が上がっていった。

 まあ、なんだ。「今日のところはハッピーエンド」と言われて先延ばしにされてきた結末は、これで本当のハッピーエンドってことで。

 

 これから先も地球と人類にはいろんな困難が待ち受けているけど、みんながいればきっと乗り越えて行けるさ。

 




※次回、エピローグ。
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