とあるガンプラ部の日常   作:紅蓮弐式

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今回はMSの武装について書いていきます。

前回少し触れたビームについての説明も、一応SF初心者の為に本編中に軽く説明します。

あと、今回もプラントには厳しめです。

SEEDファンの方は申し訳ありません。


なんだかんだ無難が一番

「う〜ん、何で勝てねーかなー」

 

 

いつものように部室でプラモをイジっていると、今日も山岸がココ最近(と言っても3日ほどだが)の口癖になってきた台詞を、この前買ったプラモ片手に呟いてきた。

 

「俺としては、お前にこの前言われた通りにちゃんと考えて戦ってるつもりなんだけどな~」

 

「………これを言うのももう4回目だし、なんならそいつを買うときにも散々忠告したが、そもそも機体選びの段階で致命的に間違えてんだよ」

 

「仕方ねーじゃねーかー。インジャ買うのに金が足りなかったんだから」

 

「それはお前があのとき買い食いしたからだろうが。それに、俺はお前の予算内で買える範囲でちゃんとオススメの機体を言ったぞ」

 

「だってよ〜、F91はお前ともろ被りだし、バルバトスルプスはビーム撃てないし盾も無いじゃん。一応コイツは盾もあるしビームも撃てるし、何より腰の武装がイカスじゃないか」

 

「確かにビームライフルも盾もあるがなぁ………何でよりによってゲイツなんだよ」

 

そう言って、山岸の手元にあるそいつを見ながら思わず俺は溜息をついた。

 

せめてR型ならと思いながら。

 

 

「そんなに駄目なのか?別に武装も遠近ある程度対応出来るし、腰の武装も俺の得意な近距離戦で使えるし、そんなに悪く無いと思うんだけど。盾のビームクローも、インジャにも似たようなのがあるしいずれ買う時に備えていい練習にもなるだろ?」

 

「まぁ、お前の金で買ったもんだし、どうしてもって言うなら本来俺がどうこう言うべきではないんだが、このまま勝てないのはあまりにも不憫だから敢て言うぞ。個人的にはその機体を選んだのは完全に間違いだと思う。よっぽど愛着が無ければぶっちゃけただの縛りプレイでしかない」

 

「そんなにか。そこまで言うって事はお前の事だからそれなりに理由があるんだろ?」

 

「ああ、ある。個人的に致命的なのが大きく2つ程。かなりボロクソ言うことになるけど聴く?」

 

「まぁ、一応聞いとこう。俺も別に負けたくて負け続けてるわけじゃないし」

 

「そうか。では初めにまず一つ、これが一番大きな問題なんだが、その機体、武装のチョイスが絶妙に噛み合ってないんだ」

 

「え?そうなの?」

 

「うん。まぁ、それもある意味仕方ないことなんだけどな。そもそもその機体、テレビ放映中にやってた視聴者応募企画で当選した落書きを元に創られてんだよ。もっとも、元絵が『幼稚園児や小学生が頑張りました』と言わんばかりの正に落書きだったから、清書されたら殆ど面影もない位別物になったんだが」

 

「へ〜、そうなんだ。で、それが武装の話とどう関係するんだ?」

 

「要するにな、専門のデザイナーだったり監督だったりスタッフなりがちゃんと考えて創った機体じゃないんだよ。子供が思うままにカッコいいと思った武装が適当につけられてるんだ。当然、実際に使う事なんぞ考えてもいないだろうから噛み合わせが悪くて当然だ」

 

「具体的には?」

 

「先ずビームライフル。標準よりやや威力と射程に優れるだけで殆ど誤差の範囲なのに標準的な物より一回り大きく取り回し辛い。多分原案と設定との兼ね合いでそうなったんだろうが、実戦で使うことを想定した場合この時点で結構微妙だ。そもそもゲイツは設定上何れ出てくるであろう連合のMSを圧倒すべく作られてたんだが、対MS戦において多少射程が長い程度の差などほとんど何の意味も無い。なんせ正面から撃ち合った場合、射程距離ギリギリから撃ったら相手に普通に回避されるしな。ましてや連合のストライクダガーは半身を隠せる位の盾を標準装備しているから、躱すよりなお簡単だ」

 

「?ビームなのにそんな簡単にかわせんの?GBNでかわせるのはあくまでゲームとして調整されてるからだろ?」

 

「………この前も言ったが、この場合のビームは光線じゃない。ついでにGBNのビームの弾速は別にゲーム的な都合で遅くしてるわけじゃないし、多分わりと妥当な弾速だぞ」

 

「え?そうなの?」

 

「いい機会だから軽く説明しとくが、そもそも現実で一般的に言うビームとSFで使われるビームとでは全く別物だ。現実でビームと言えば、基本的にお前の想像どうりの光線を指す事が殆どだ。それに対してSFで言うビームは、特に注釈とかがない限り基本的に粒子ビームのことを指す」

 

「粒子ビーム?」

 

「そう、粒子ビーム。俺も理系じゃないしそこまで詳しくは無いんだが、現実にも金属粒子とかを超高速でぶつけ合う粒子加速器という実験設備があるんだ。物凄くざっくり言うとそれを兵器として利用したのがSFで言うビーム兵器だ。作品によって利用するのがミノフスキー粒子だったりGN粒子だったり他の物だったり様々だが、間違っても光線ではないから高速……つまり高い速度ではあっても光速……つまり光の速度には絶対にならないし、何がしかの物質をを撃ち出す以上必然的に弾切れもおきる。まぁ、それでも普通の実弾に比べれば弾速は速いんだが」

 

「ほ〜ん、それは知らんかったわ」

 

「まぁ、普通に生きてく分には全くいらない知識だからな。で、話を戻すが、要は不意討ちとかでない限り射程ギリギリの射撃なんてまず当てられないって事だ。そもそもの話、そんな遠距離からの攻撃でMSがどうにかなるなら連邦軍も連合軍も初戦であそこまでボロ負けしてないしね。ってことで、対MS戦で一番重要視されるのは中・近距離戦になるわけだが、ここで取り回しの悪さが問題になってくる。山岸もGBNで何度か使って感じただろうけど、あのビームライフル、ある程度相手との距離が詰まると途端に邪魔くさく感じなかったか?」

 

「確かに言われてみるとそうだな。離れてればそうでも無いんだが、ある程度近付くと中々狙いが定まらないし、かと言ってマトモな射撃武器があれだけだから捨てるわけにもいかずで結局殆ど使ってないな」

 

「だろ?あれでヴェスバーやビームマグナムみたいに盾ごとブチ抜ける位の威力があればまだ使いようもあるんだが、別にそういうわけでも無いしな。カタログスペックは悪く無いけど使いづらいのまさに典型的なやつだな。逆に連合のストライクダガーのビームライフルは、標準的な物より若干小振りだ。恐らく射程と威力をある程度犠牲にしてるんだろうが、その分中・近距離での扱い易さは良好だ。本編映像を見る限り威力と射程の低下も許容範囲内に収まってるみたいだし、カタログスペックは微妙でも実用性なら圧倒的にこっちが上だ」

 

「なるほどな~。じゃあ腰のやつとビームクローはどうなん?」

 

「ビームクローに関しては、ビームライフルよりも酷い。なんせあっちはまだカタログスペックだけは褒められたが、こっちはそれすら無いからな」

 

「そんなにか」

 

「微妙な長さの刀身、中途半端に小さい盾、オマケにビームクローなんて余計なギミック付けたせいでサイズの割に分厚く重いときている。これの一体何処を褒めろと言うんだ」

 

「………言われてみると確かに」

 

「一応宇宙で前進する場合は地上で言う匍匐前進に近い姿勢になるから、その状態なら前方の敵に対して体の殆どを隠せる程度の面積はある。だが連合のストライクダガーの盾と違って乱戦になったらあんなサイズでは殆ど役に立たん。それにな、盾を小さくする理由ってのは基本的に装備品を軽くするためか近接格闘戦での取り回しを良くするためかぐらいしか無いんだが、あの盾の場合はさっきも言った通りビームクローのせいで無駄に分厚いし、中身が詰まってると仮定した場合サイズは小さい癖に重さだけは連合の盾と変わらないとかいう笑えないことになる。そもそもの話、前にも言ったが一般兵同士のMS戦は殆どが射撃戦だ。近距離戦と言っても比較的近くで撃ち合うだけで、格闘戦にもつれ込む事など殆ど無い。そうなると盾が大きい方が基本的に有利になるから、少なくとも量産機で小さい盾を採用するメリットなどほぼないわけだ。だいいち、盾が小さいのは近接武器を振り回し易くするためなのに、その肝心の近接武器が盾と一体化してるんだぞ。小さい盾の利点が全く活かせんじゃないか」

 

「そうなるとインジャの盾も駄目なのか?」

 

「いや、インジャのは別にいい。そもそもあれは量産機じゃなくて最初からエースが乗ること前提の機体だから扱い辛い装備もある程度は許容出来る。それに、あの盾はビームシールドにもなるから盾のサイズもある程度融通がきくし、あの盾以外にもあの機体には近接武器がちゃんとある。少なくともゲイツの盾より数倍ましだ」

 

「なるほどね。じゃあ腰のやつは?」

 

「あれは盾以上に論外だな」

 

「盾だけであんだけ酷評したのにあれ以上なのか………」

 

「腰の武装………正確には『エクステンショナルアレスター』と言うんだが、コイツは公式も認める程の難物でな、ゲイツの改修機でゲイツRというのがあるんだが、盾は辛うじて基本装備として残して貰えたのにコイツはパイロットからの評判が悪かったという公式設定まで付け足された上でレールガンに差し替えられるというあんまりな扱いを受けてる」

 

「公式まで認めてんのかよ………」

 

「盾も大概だったがこいつに関してはマジで何がしたいのかよくわからんってレベルだからな。確かに普通の近接武器に比べればリーチは長いが、近接武器が届かない距離なら大体の場合普通にビームライフル撃ってた方が強いし、近接武器の距離になったら普通にビームクロー使った方がやっぱり強い。相手のビームサーベルを盾で受けてそのスキに使うにしても、別にこんなヘンテコな武装じゃなくて普通に腰にビームガンなりビームサーベルなり付けた方が何倍も便利で使いやすい。正に『子供が考えたなんとなくカッコいい武器』そのものだ。一応ビームガンとしても使えなくはないんだが、狙いはつけ辛いわ射程は短いわで禄に使えたもんじゃ無い。少なくとも俺にはフォローするのは無理」

 

「………なんと言うか、こうやって改めて聞くと何で俺この機体選んだんだろ?」

 

「俺にわかるわけ無いだろ。まぁ俺もショップでは長くなるからあんまり具体的な事は言わなかったけどな。要するに、何となく強そうな武装をとりあえず付けたせいで何をしたいのかよくわからない機体になっちゃってるんだ。一応後付設定として、腰の武装や盾のビームクローは鹵獲したブリッツの武装を参考に後付に近い形で付け足されたっていう記述があるが、これが本当ならザフトは相当な馬鹿だ。なんせ、ザフトが奪取した4機のガンダムの内、一番参考にしちゃ駄目な奴を参考にしたんだからな」

 

「何でブリッツが一番駄目なんだ?」

 

「明らかにアイツだけは非正規戦や偵察、破壊工作とかの特殊任務用の機体だからだ。別にブリッツガンダムそのものが悪いわけじゃないし、機体の基本性能も装備もジンやシグーより上だから通常戦闘も出来るけど、間違っても通常配備前提の機体じゃない。運用目的が違うんだから当然武装の選定基準も一般機とは違う。そんなやつを主力量産機の参考にしたんだからそりゃあチグハグな武装構成にもなる。普通に考えれば連合の主力量産機は癖の少ないストライクかデュエルを元に作る筈なんだから、どう考えても参考にするならそっちだ。実際、連合初の量産機のストライクダガーは名前はストライクでも実際はデュエルの廉価版だし、その後継機のダガーLは殆どストライクの廉価版だ。別にこれらに対してゲイツの武装が特別有効だったかというとそうでもないし、どう考えても普通の武装を積んだ方がマシだったよ。少なくとも設定上、素体は優秀だったんだから」

 

「あ、そうなんだ。こんだけボロクソ言うからてっきり機体本体も問題あるもんだとばかり」

 

「プラモとしては問題なくもないが、少なくとも作品世界的には優秀だったんだと思うぞ。機体本体の機動性とかは連合のダガーより明確に上だったらしいし、武装さえマトモなら普通にいい機体だったんだと思う」

 

「プラモとしては問題あるのか?」

 

「さっき言ったもう一つの問題がまさにそれなんだよ。コイツ、なんだかんだ10年以上前に発売したプラモだから可動域が今のプラモより全体的に狭いんだよ。今のやつと同レベルにしようとするとプラモ本体より余裕で高くつく。それに、ユニバーサル規格にも微妙に対応してないから改造素体にもパーツ取りにもあんまり向かない」

 

「駄目じゃん」

 

「だから駄目だって言ったじゃん」

 

「うわーマジかコイツどうしよう」

 

「だから大人しく俺のオススメを買っときゃ良かったのに」

 

「だってお前のオススメってイマイチ面白味に欠けるというか………ちなみにお前は普段どんな基準で機体を選んでるんだ?」

 

「先ず武装が使いやすいかどうか、そして機体全体のコンセプトが纏まっているか、これが大前提だな。ついでに何か決め手になる様な武器なりがあれば尚いい。そういう点で見ればF91はまるでお手本かのように良く纏まっている。良好な運動性能、収束率の高いビームサーベル、モードチェンジでビームサブマシンガンにもなるビームライフル、近接戦での追撃用の胸部マシンキャノン、遠距離にも対応出来る一撃必殺のヴェスバー、使用時以外はコンパクトなビームシールドと、空を飛ぶ以外は大体何でも高いレベルで卒なくこなせる万能機だ。ガンダムに限らず色んな作品を見てきたが、ここまで欲張ってるのに基本装備だけで綺麗に纏まってる機体はそうそう無い。プラモとしても比較的最近の物だからユニバーサル規格にもしっかり対応してるし、可動域もかなり広いし作りやすいしそのうえ比較的安いと、まさに初心者から上級者まで万人にオススメ出来る良機体だ」

 

「ゲイツの酷評ぶりとはエライ違いだな」

 

「そりゃそうだろ。プラモの販売時期的にもかなり開きがあるし、何より作品設定的にも辻褄合わせで酷い設定にされたゲイツと違って、F91はサナリィが当時の技術の全てを使って限界まで高性能化を目指した機体なんだから、気合の入り方が違う」

 

「サナリィ?アナハイムじゃないのか?」

 

「そこからか。まぁ簡単に説明すると、サナリィってのは宇宙世紀で初めてアナハイムにMSのコンペで勝った企業なんだ。その時コンペに出した機体がF90。コイツはミッションパックっていう簡単に言うとストライカーシステムと似たようなもんを複数種類使い分ける事であらゆる戦場に対応するってコンセプトの機体だったんだが、運用コストの面で連邦軍の高官からイチャモンが入ってな。ミッションパック無しでなるべく広く柔軟に対応出来る機体を要求されたんだ。それでムキになったサナリィが量産前提の機体なのに明らかに普通のパイロットでは扱え無い限界性能の機体を当時の最新技術を惜しげもなく使って作り出したのがF91だ。まぁそのかいあってと言うべきか、テスト用の機体はリミッターかかってないとマトモに扱え無い位の性能になったんだが。正式量産仕様機はコストの関係もあって流石にデチューンしたんだが、それでもリミッターのかかった状態のF91と同等の性能だし、そもそもリミッターかかった状態でも当時の機体では総合性能でダントツのトップだった事を考えると、サナリィが如何に本気だったかってのがわかる」

 

「………とりあえず、F91が凄いのはわかった。しかしふと思ったんだが、サナリィはデチューンしたとはいえガンダムをそのまま量産したのか?なんか結構珍しい気がするんだが」

 

「アナハイムとか他の作品では確かに珍しいけど、サナリィに限って言えば実はそう珍しくない」

 

「え、そうなの?」

 

「アナハイムや連邦軍はガンダムに対して明らかに特別視しているけど、サナリィにとってはただの顧客受けがいい見た目でしかないからな。サナリィの開発した機体で『レコードブレイカー』ってのがあるんだが、試作機は別にガンダム顔でも何でもないのに『連邦に売り込む時は適当にガンダム顔にすればいい』ってハッキリ言うぐらいだからな」

 

「割り切ってるな~」

 

「まぁ、その機体はバチでも当たったのか紹介されて直ぐに大した活躍もせずに開発資料ごと試作機全部粉々にされたんだが」

 

「駄目じゃん。そんなにその機体弱かったの?」

 

「いや、機体は悪くなかったし、むしろかなり画期的だった。仮にもし量産されていたらV2ガンダムよりかなり前にミノフスキードライブを搭載した機体だったから、冗談抜きで歴史が変わったかもしれん。単純に相手が悪かったんだよ。その作品のラスボスが邪魔になるからってわざわざ出向いてスクラップにしていきやがったんだ」

 

「それはなんというか………」

 

「まぁ、それは本題と関係ないからいいんだ。要は、変に奇をてらったような武装をつけるより、標準的な武装でかためた方が良いってことだ」

 

「まぁ、言いたいことは大体なんとなくわかったよ。でもさ、そもそもの疑問なんだが、何でビームライフルとビームサーベルが標準なんだ?他にも斧なり槍なりマシンガンなり色々あるじゃん」

 

「そこは厳密に言うと作品と状況により異なるし、結構相対的な部分もあるんだが、一応説明出来なくは無い。まずビームライフルだが、これは簡単に言うと、相手の胴体に当たったら基本的に一発で確殺出来て、実弾より弾速が速くて当てやすく、なおかつそこそこ取り回しが良いのが理由だ」

 

「実弾じゃ駄目なのか?マシンガンとかの方が連射がきくぶん当てやすそうだが」

 

「近距離以下の距離なら弾速の違いもあんまり関係無くなるからそれでもいいんだが、さっきも言った通りMS戦は基本的に中距離から近距離がメインだ。その距離だと弾速の差も結構大きく響いてくるから連射速度よりも一発一発の当てやすさの方が重要なんだ。そもそも、MSの初期の実弾装備はあくまで機動力と耐久性で劣る戦闘機相手を想定したものだから、適当にバラまいた内の一発でも当たれば良い想定だったんだ。後期型の貫徹力が増したタイプであっても余程当たりどころが良くない限り基本は複数発当てなきゃならんから、連射出来るからと言って総合的にはあまりビームライフルに対して優位が取れない。それに、MSは人型であってもあくまで機械だから、実弾が手足の端っことかに当たって穴が空いたりしても生身の人間と違ってあんまり効果が無かったりする事もある。その点ビームなら例え手足でも当たればその部分は基本的に機能喪失するから、そういう面でもビームの方が有利だ。まぁ、あくまで宇宙空間や比較的可燃物の少ない場所でなら、という注釈は入るが」

 

「他の場所だと駄目なのか?」

 

「駄目な場所もある。例えばコロニー内とかだと、撃つ方向に気を付けないと最悪コロニーの隔壁や骨格部分をぶち抜く可能性がある。特に宇宙世紀の場合後半になるほどビームの威力も上がっていく傾向にあるから注意が必要だ。ビームライフルでは無いが、実際SEEDでは序盤にコロニー内でのビーム兵器の乱用でヘリオポリスが崩壊しているし。それ以外だと森林地帯とかがそうだな。ここはコロニー内以上に気を付けないとあっという間に森林火災が起こる。マトモに射撃戦がしたいならここでは逆に実弾一択だな」

 

「じゃあビームマシンガンじゃ駄目な理由は?」

 

「威力、射程共に中途半端だからだ。偶に勘違いされるんだが、ビームマシンガンってのは、基本的にビームライフル一発分を小刻みに分割して撃つ事で連射を可能とした武器なんだ。当然小刻みにする分威力も射程も落ちるしその割に排熱効率も悪くなる。地上やコロニー内でもそうだが、特に宇宙空間ではこの排熱効率も無視出来ない問題だ。あと、これは作品や年代にもよるが、整備や補給の上での負担も普通のビームライフルに比べるときつかったってのもある。ゲルググMの使ってたやつとかはまさにそれだな」

 

「排熱効率?」

 

「………そうか、まぁ普通わからんわな。GBNだと意図的に省かれてる要素だから気にならんし。これはSFって言うよりどっちかっていうと物理の話なんだが、まず山岸、『熱』って何で冷めると思う?」

 

「え?何でって、周りの空気が熱を奪うからだろ?」

 

「そう。まぁ正確には周囲の電磁波も微量ではあるが熱を奪うんだが今回は誤差の範疇として切り捨てていい。で、宇宙空間は真空なわけだが、真空ってのはその空気が無い状態だろ?圧縮して加速して滅茶苦茶熱くなった粒子を撃ち出すビームライフルは勿論、マシンガンとかの実弾系の武器にしても火薬が爆発したときの熱や弾が銃身を通って高速で撃ち出される時に生じる摩擦熱とかがあるわけだが、真空状態でその熱はどうなると思う?」

 

「………どうなんの?」

 

「何も対処しなかった場合、真空状態だと永遠に武器の中に蓄積され続ける………ってわけでは流石に無いが、それでも宇宙空間は周りに空気があるのと比べると圧倒的に熱が冷めにくいから、地上で使う時以上に速く熱が溜まる。そもそも、現実にある機関銃とかでも銃身を定期的に冷やさないと冷却が追い付かずにすぐに銃身が焼けて使い物にならなくなるくらいだから、宇宙空間ではより深刻だ。冗談でも何でもなく、溜まっていく熱をどうにかしないと自身の熱で融けてしまう。勿論、空気のある場所で使う場合でも周りの空気だけでは到底排熱が追い付かないから冷却手段は別途必要だ。まぁ、これは別に銃だけに限った話じゃなくて、機体そのものもそうなんだが」

 

「………まぁ、とりあえず色々大変な事はわかった」

 

「まぁ、色々言ったが少なくともビームライフルがスタンダードだという事に関しては色々と例外も多い。さっき言った地理的な要因もそうだし、『鉄血のオルフェンズ』みたくMSにビームはほぼ無力みたいな極端な例は別にしても、相手や状況によっては当然実弾装備が主力になる。まぁ、GBNだとそんな心配しなくていいし、基本的にはビームが有利な環境だからビーム率が高いわけだが」

 

「なるほどね〜。じゃあビームサーベルは?」

 

「そっちはもっと簡単だ。『嵩張らない・威力が高い・扱い易い』と基本的にいい事ずくめだからだ」

 

「欠点とか無いの?」

 

「例によって『鉄血のオルフェンズ』だけは例外なんだが、基本的にはあんまり無い。そもそも、それを言うならヒート系の武器や重斬刀とかの実体剣のほうがもっと欠点が多いし、機体の性能的に使えないとかで無ければ基本的には脳死で積んで大丈夫だ」

 

「そんなにか。でも、実体剣の方が燃費良さそうだけどそこんとこどうなん?」

 

「何度も言うけど、一般兵にとってMS戦ってのは中・近距離戦がメインだ。近接戦なんて稀にしか起きない。アニメとかで一般兵同士でそういう描写があるのは、殆どの場合演出上の都合でしかない。したがって、偶にしか使わない武器の燃費なんて余程極悪でなければあんまり気にしなくていい。それに、確かに使用時に限れば実体剣の方が燃費はいいが、基本的には一度でも使えば恐らく資源ゴミ確定の使い捨てだからコスト的にかなりもったいないぞ」

 

「え?あれ使い回し出来ないの?」

 

「殆どの場合特に描写は無いが、常識的に考えるとほぼ間違い無い。少なくとも、ちゃんと補給が受けられるなら使い回しなんてしないはずだ」

 

「何で?」

 

「ヒートホークとかに代表される所謂『ヒート系』の武器は、刃の部分を超高熱にして使うわけだが、金属ってのは基本的に急激な熱の変化に弱い。その高低差が大きければ大きい程、速ければ速い程急速に劣化して脆くなる。どういう原理で刃を熱しているかは知らないが、とりあえず刃の部分に急激な温度変化が起こっている事は確実だから常識的に考えると間違っても使い回せる代物じゃない。重斬刀とかの特に機械的な仕掛けが何もないものも、使い捨てという点では恐らく同じだ。一応刃は付いているが基本的にあれは『斬り裂く』んじゃなくて相手に叩きつけて使う為のものだから、大して切れ味も良くないしその割に使ったらすぐに刃がガタガタになる。振り方や当て方によっては刀身も直ぐに歪むだろうし、どっちにしろ数回打ち合えばほぼ間違い無くボロボロになるだろうからどのみち交換しなきゃならん。まぁ、GBNだとそのへんは上手く調整されてるからプラモの完成度次第である程度どうとでもなるんだが」

 

「なるほどな~」

 

「それにな、例え使い捨てじゃなかったとしてもまだ問題はある。実体剣はビームサーベルに比べると当然重いわけだが、そうなると振り回したときの関節に掛かる負荷も当然実体剣の方が大きくなる。ヒートホークくらいならまだ誤差の範疇と言えなくも無いが、それより大きいとそうも言ってられなくなる」

 

「そんなに違うのか?」

 

「全然違うと思うぞ。現実には存在しないものだから正確にはわからないが、多分生身でハリセン振り回すのと鉄パイプ振り回す位の差はある。まぁ、重量差や関節の負荷はまだいいんだ。個人的に一番大きな差は別にあるから」

 

「というと?」

 

「扱い易さが格段に違うんだよ。当たり前の事だが実体剣の場合はモチーフにした武器と扱い易さ的には大差ないわけだが、この場合何が問題になってくると思う?」

 

「?何が問題なんだ?」

 

「実体剣の場合、刃筋をちゃんと立てなきゃならないんだ」

 

「?当たり前じゃない?」

 

「そう、当たり前なんだが、動く相手にこれを正確にやるのは正に『いうがやすし行うは難し』なんだ。止まってる目標ですら素人がやると結構てこずる。GBNだとある程度補正が入っているからわかりにくいが、キャンプとか行った時に薪割りでもしてみればわかるよ」

 

「でも、流石にそこはGBNみたいに機体側で補正するんじゃないの?」

 

「補正したとしても素人でも問題なくなるのは斧までだよ。斧は現実でも比較的扱い易い部類に入るし、何より多少刃筋がズレてても武器の重心バランスが偏ってるからただ振り回しただけで結構な威力が出るからな。だが剣は駄目だ。剣の場合ただ刃筋を立てて振るだけじゃなくて、ちゃんと威力を出そうと思ったら当てる位置やタイミングまでちゃんと考慮して振らなきゃならん。この辺の塩梅はただモーションパターンをなぞるだけでは解決しないはずだ。『叩き切る』前提の西洋剣ですらそうなんだ。『斬り裂く』事を考慮した場合更に難易度は跳ね上がるからとてもじゃないが一般兵には扱え無い。それでも採用されてたのは、少なくとも初期のMSの近接武器はあくまでメインの目的が戦艦や基地なんかの隔壁をブチ壊すためであって、動く的を狙うことはあまり考慮されてなかったからだ」

 

「なあ、さっきから疑問だったんだが、『叩き切る』と『斬り裂く』って具体的にどう違うんだ?どうせ斬るのは一緒だろ?」

 

「結果だけ見るならそう言えなくも無いが、結構違う。俺もそこまで詳しくは無いんだが、『叩き切る』っていうのは簡単に言うと、剣自身の重さと振るときの勢いで切る事を言う。刃の部分を文字通り相手に思いっ切り叩きつけて押し切るんだ。それに対して『斬り裂く』ってのは刃物自身の切れ味を活かして斬る事を言う。ここで一つ問題なんだが、『刃物の切れ味がいい』ってどういう事だと思う?」

 

「?切れ味は切れ味じゃないのか?」

 

「刃物の切れ味ってのは、物凄くざっくり言うと摩擦係数なんだよ」

 

「摩擦係数?」

 

「そう。『切る』ってのは簡単に言うと摩擦なんだ。現実にも『高周波カッター』ってのがあるんだが、これは刀身を細かくかつ高速で動かすことによって刃の部分に強烈な摩擦を発生させて切りやすくするって仕組みなんだよ。このとき刃の摩擦係数が高いほどより楽に切ることが出来る。これが所謂『切れ味がいい』って事なんだよ。で、話を戻すが、『切れ味を活かす』って事は要するに摩擦を発生させるって事だから、刃を当てた後に引くなりなんなりして動かさなきゃならん。当然こっちの方が難易度は上だ。そして、どっちの用途かは大体形を見ればわかる」

 

「どうやってそれ用の剣だって見分けるんだ?」

 

「別に剣に限らないんだが、ちゃんと考えて作られた物ってのはある程度目的に沿った形をしてるんだよ。『叩き切る』為の剣は力を乗せやすいように刀身が真っ直ぐな直剣と呼ばれるタイプがメインだ。西洋剣が大体これだな。実用品は使い方の関係で切れ味よりも頑丈さに重点を置いて作られてる。それに対して『斬り裂く』為の剣は切れ味を活かす為に刀身を反らしているし、その都合上余程特殊な物以外は片刃だ。こっちはシミターとか日本刀とかがそうだな。刃を当てながらスムーズに動かすには刀身が反っていた方が良いから、効率を求めると自然とそうなる。まぁ、同じ日本刀でも鎧ごと叩き切る用途の物もあるから一概には言えんが、少なくとも典型的なファンタジーとかに出てきそうな西洋剣は間違い無く『叩き切る』用途の物だと思っていい。で、話を戻すんだが、要は実体剣の場合システムアシストがあって尚扱いに苦労するだろうって事だ」

 

「言いたいことはなんとなくわかった。で、ビームサーベルの場合はどうなんだ?」

 

「ビームサーベルの場合簡単だぞ。なんせ実体剣と違って刀身のどこから当てても切れるんだから」

 

「あっ、そっか。確かにそう言われてみればそうだわ」

 

「そもそも、名前に『サーベル』なんて入ってるしモーションパターンも剣を元にしてる事が殆どだから勘違いされてるが、ビームサーベルの武器としての性質は剣って言うよりむしろ棍棒とかヤンキー映画で不良が振り回す鉄パイプとかの方が近い。なんせ、剣と違ってただ思いっ切り振り回して当てればそれで十分な威力が出るんだからな。『サーベル』とついているのは単に溶断するからにすぎない。それに、名前が『ビーム棍棒』とかでは商業的にもイマイチパッとしんだろ」

 

「まぁ、それは確かにな。じゃあ、ビームアックスとかはどうなんだ?」

 

「あ〜、それは作品の技術設定とかによって異なる感じかな。エースとかが使う専用機とかは除いてあくまで一般機での話にはなるんだが、宇宙世紀の場合、ビームアックスと言えば主にジオン系の機体で『ギラ・ドーガ』とかが持ってるんだが、これは戦場での効率とか有用性とかを狙った物じゃないんだ」

 

「え?じゃあ何のためなの?」

 

「簡単に言うと、『ジオンっぽさ』を求めた結果だな。一応刀身の長さは調節出来るから普通のビームサーベルみたいに使えるし、ザクの頃から積み重ねてきた斧のモーションパターンがあるから使用上の問題はあんまり無かったみたいだが、別にそれで優位が取れるかと言うと別にそうでも無かったから、完全にクライアントのワガママだな。他にも特に一年戦争あたりだとゲルググの『ビーム薙刀』やジムストライカーの『ツインビームスピア』とかがあるが、これは単純に近接戦で優位をとるためだな。現実でもそうだが、『剣道3倍段』と言われるように近接戦は基本的にリーチが長い方が有利だ。一年戦争あたりだと刀身の調節機能なんてまだ無かったし、そもそも極端に刀身を長くすることも出来なかったからリーチを長くするには『柄』の部分を長くするしかなかったんだ。一年戦争の頃はお互い生産能力とかの関係でビームライフルとかのビームの射撃武器なんて全体のほんの極一部で、基本的には射撃はまだまだ実弾メインだったんだよ。実弾射撃で相手に有効打を与えようとすると弾速や地上だと距離減衰の関係でどうしてもビーム兵器より近付く必要があるわけだが、そうなると特に地上の場合近接戦の機会もボチボチあったわけだ。それに、一年戦争の頃は両軍共に対MS戦に関して手探りな部分も多かったから、後から見ると妙ちきりんな武器がボチボチあったんだよ。ただ、ノウハウの蓄積とビーム兵器の普及、それと技術レベルの向上の結果として、近接戦闘は殆どビームサーベルだけで事足りるようになったから、一部の機体以外はわざわざ他の近接武器を積まなくなったんだ」

 

「ふーん」

 

「で、SEED系に関してだが、こっちはこっちで宇宙世紀系とは別の理由がある。ストライクの『シュベルトゲベール』に代表されるレーザー対艦刀やらザクウォーリアのビームトマホークやら、連合・ザフト問わず近接武器に関してはやたら色々あるわけだが、これは試行錯誤の末のある種の苦肉の策なんだよ」

 

「苦肉の策?」

 

「そう。まず大前提として、SEED系の機体は一部例外を除き全てバッテリー機だ。故に、他のガンダム作品に比べてエネルギー関連の制約が大きい。特にビーム兵器が主力になってからはそっちにも電力を取られるから、あの手この手で節約しようとしたわけだ。で、その結果としてなるべく少ないエネルギーで高い威力を出すために刀身の一部だけをビームにしたレーザー対艦刀や刀身を短くしたビームトマホークなんかが作られたわけだ。ただ、それでもやっぱり使い勝手だけならビームサーベルの方が上だし、近接戦の機会もそう多いわけでもないから連合側の機体は殆どの場合無難にビームサーベルにしてるわけだが」

 

「なるほどね〜」

 

「まぁ、色々言ったが、結局使い易さを優先した場合武装は大体在り来たりなものになるんだよ。アニメとかだと演出上どうしてもエースパイロットが目立つから、そいつ等が使う奇抜な武装や機体が強く見えがちだが、多くの場合其れ等はあくまでそいつ等が使うから強いんであって、一般兵ではそもそも使えないか使い熟せない事が殆だ。GBNだとシステム側である程度サポートがあるから多少マシだが、それでも『使える』のと『使い熟せる』の間には歴然たる差がある以上、やっぱり無難な武器や機体にしたほうが大概は勝率も良くなるわけだ」

 

「でもそれじゃつまんねーじゃんよ~」

 

「そんなことは知らん。大体、大して才能とかに恵まれて無い場合、真面目に勝率を上げようと思ったら普通は面白味とか考慮出来ないんだから、そこはもう割り切るしかない。まぁ、変な機体や武装を楽しみたいって言うなら、そういうのも全然有りだから否定はしんが」

 

「別にそういうわけでも無いんだが、やっぱ1つくらい派手な武装が欲しいじゃんよー」

 

「まあわからんでも無いがな。そもそも、お前は先ず俺に勝ち越したいならいい加減自分でちゃんと作れるようになれ。俺に頼んでるようじゃ情報モロバレなんだからその時点で不利に決まってんだろ。作り方くらい教えるから」

 

「う〜ん、考えとく」

 

 

 

 

 

後日、バリ取りや墨入れ等を最低限教えたあとで一人で作らせてみたが、完成度が微妙だったので結局手直しすることになった。

 

 




本当はもっとアッサリ終わる予定だったんですが、話が途中で横道に逸れまくってしまったため何回か書き直していたらだいぶかかってしまいました。

本編中ビームについて軽く説明したとき、ビームサーベルについてはあえて触れませんでした。

これは、比較的共通項の多いビームライフルと違って、ビームサーベルは各シリーズ毎に結構設定がバラバラで性質も違ったりするので一概に言えなかったのと、詳しく説明しだすとただでさえ横道に逸れまくっているのに話の本筋からあまりに脱線しすぎて収拾がつかなくなるからです。

あと、SEED関連に限って言えば、技術設定と本編描写が演出の都合だったりスタッフの勉強不足で矛盾することもままあるので、そこまで説明すると余計混乱しますし。(例えば鍔迫り合い出来ないビームサーベルで鍔迫り合いやっちゃったり地上で飛ばせない筈のドラグーンを地上で飛ばしたり。ビームサーベルはリマスター版作製の時に監督が見直してて思わず椅子からズリ落ちたそうです)

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