ある日、俺がGBN用では無くジオラマ用としてプラモを組んでるとき、山岸がプラモのパッケージの絵を見ながらこんなことを聞いてきた。
「なあ高岡、陸戦型ガンダムって、前にお前ガンダムの量産機じゃないって言ってたけど、正確にはコイツどういう立ち位置なんだ?」
「ん?あぁ、コイツか?コイツはまぁ、簡単に言うと………陸ジムベースのガンダムモドキだな」
「モドキって事は、正確にはガンダムじゃ無いのか?」
「別にそういうわけでも無いというか………そもそも、宇宙世紀のガンダムの定義って結構曖昧なんだよ。別に性能がどうとかで区分されてるわけでもないし、作中でガンダムと認識されているから一応ガンダムの1種ではある。モドキっていうのは、あくまで初期ガンと比較してのことだ。なんせコイツは、初期ガンのパーツの中で規格に満たないけどギリギリ使えるっていう微妙なラインのパーツを陸ジムに組み込んだ機体だからな。だから性能的にも当然初期ガンに劣るし、なにより、一応複数機存在してはいるがパーツや製造に至る事情的にもとても量産機とは呼べないんだよ」
「そんなあやふやな機体だったのか。でも、何でそんな俺にもわかるくらい補給に困りそうな機体をわざわざ作ったんだ?」
「それには当時の連邦軍………というか主に連邦陸軍の非常に差し迫った事情があるんだよ。それにはまず、陸ジムの開発経緯を軽く説明しないといけない」
「ほう?」
「一年戦争初期のジオン軍による地球降下作戦で、連邦軍は宇宙に続き地球でもMSの脅威に晒される事になったんだが、やっぱりというべきかなんというか、ミノフスキー粒子の影響もあってこれまでの戦車や戦闘機ではMSに対してかなり苦戦したんだ。特に、戦車や航空機が十全に機能しない山岳地帯や森林地帯、それから都市部なんかはMSの独壇場となってたから連邦軍からすると悪夢の様な速さでそれらの地域を占領されていったんだ」
「?ミサイルが使えない事は流石にわかるが、別に爆撃なり間接砲撃なり宇宙よりやりようはあったんじゃないのか?」
「事はそう単純じゃ無い。まず間接砲撃だが、これはそもそもある程度正確な観測データを弾着観測も含めて継続して貰わないと大して効果は無い。連邦軍は戦争の初期に制宙圏を取られてるから衛星からの観測データなんて当然貰えないし、航空機で観測するにしても相手も馬鹿じゃないから当然迎撃される。それに、そもそもミノフスキー粒子で通信妨害されたらどのみち不可能だ。爆撃にしても、MS相手に爆弾を狙って当てるなんて不可能だから基本的にはバラ撒く事になるんだが、そうなるとある程度纏まった機数がいる。で、爆撃機だけだと相手の航空戦力のいいカモだから当然護衛も付けなきゃならん。制宙圏を取った相手にそこまでやったら基地の位置まで含めてソッコーでバレるから場合によっては爆撃に成功しても今度は帰る場所が無くなる。それにな、連邦軍に限って言えば爆撃も間接射撃も主に政治的な理由から使える場所は限られるんだよ」
「政治的な理由?」
「戦略目的と言っても良いかもしれない。先ず大前提として、連邦軍はジオンと違って少なくとも地上においてはあくまで防衛戦争をしているんだ。ジオンを追い出す為に爆撃や砲撃でやたらめったらしたあとの更地を取り返しても市民は絶対納得しない。海外だと国によっては個人の財産を国が戦闘の余波で壊しても大丈夫な所もあるが、それにしたって限度があるし、何より法律上問題なくても国民感情は別だから選挙には響く。それに、防衛戦争なのに市民にそっぽ向かれたら笑い話にもならないから、元々何もないか壊しても問題無い場所以外では爆撃も砲撃も相手の妨害関係なく満足に出来ない。ジオン側の基地に対してやるにしても、相手も馬鹿じゃないからやられそうな所の基地は地下に作るなりなんなりして対策してるだろうから、今度はコストやリスクに対してリターンが釣り合わなくなる。ゲリラ戦とかである程度遅滞戦闘が出来ても、基本的にはMSを導入した上で数で圧倒しないと連邦軍は地上では不利なんだよ」
「なるほどね〜。で、そこで陸ジムの出番ってわけか」
「そういうこと。ただ、この陸ジム………正確には陸戦型ジムと言うんだが、当時の連邦陸軍の焦りからか、かなりの無茶振りとゴリ押しによって作られた機体なんだ。連邦軍本来の計画としては、MSの配備はジムの完成を待ってから全軍に配備する予定だったんだが、さっきも話した事情もあって、陸軍の試算ではジムの完成を悠長に待ってる余裕がなかったんだ。そこで、MSの本格配備までの急場を凌ぐために作られたのが陸戦型ジムなんだ」
「あれ?連邦ってジムの前に一応ザニーとかなかったっけ?昔のGジェネで世話になったって前にお前言ってたじゃん」
「ザニーが公式設定かは結構微妙なんだが、あれはあくまで連邦軍が回収したザクの残骸とかからえられたデータを元に作った研究用の機体だ。ガワはなんとなくジムっぽいけど、中身はほぼほぼザクと一緒のデッドコピーだし、当然製造ラインなんかも無い。曲がりなりにも製造ラインが存在して量産されたのは連邦軍では陸ジムが最初だ」
「そうなんだ。でも何でザニーじゃ駄目なんだ?急場を凌ぐだけなら別にコイツでもいいじゃん」
「ザクⅡにすら質の面で勝てないんだぞ。いいわけがない。それに、組織としての規模に圧倒的な差があるのに恥も外聞も無く戦争前は弱小勢力と馬鹿にしてた相手の兵器のデッドコピーなんぞ量産したら、それだけで政治的にも軍事的にも拭い難い汚点になる。軍や警察なんかの実力組織ってのは、ナメられたら終わりなんだ。ましてや劣勢の時に市民から見放されたらもはや勝てる勝負も勝てなくなる。仮に量産するにしても、タイミング的に許されるのはジオンが地球に降りてくる前までだ。それ以降は例え実情がどうあれ市民にもう駄目だと誤解される。それに、ジムの開発がある程度進んでいたのもあって、ザク程度の性能では直ぐに限界がくることもわかってたから、後の事を考えてもやっぱりザニーじゃ駄目なんだ。それに、コレは今思い出したんだが、そもそも連邦とジオンではMSの駆動方式が違うんだ」
「駆動方式?」
「そう。連邦側は『フィールドモーター方式』、ジオン側は『流体パルスアクセラレーター方式』というんだが、具体的に何がどう違うのかは特に流体パルスアクセラレーター方式に関する設定が曖昧すぎて俺ではよくわからん。一年戦争以降はフィールドモーター方式に統一されていくんだが、少なくとも一年戦争の間に開発されたジオン側の機体は駆動方式が違うのは確かだ。実は陸ジムには陸軍の戦力強化以外にもう一つ重要な役割があってな。それは、MS関連の現場レベルの実践的なノウハウの蓄積なんだ。これは別にパイロットに限った事ではなく、寧ろ製造・整備部門の人材に対しての総合的なものだな。なんせ、開戦前からMSに関するノウハウを各方面で蓄積してきたジオンと違って、連邦軍にはMSの扱いにある程度慣れた人材なんてほぼ存在しないからな。そんな状態でいきなり前線にMSを配備しても、既存の兵器と違い過ぎて作業マニュアルだけでは最初からマトモに運用するのは難しい事が予想されたし、それに、現場の事情に合わせたより実践的なマニュアルを作るためには、どうしてもある程度実際に運用してみるしかない。そういう事情もあって、ジムが本格配備される前にある程度経験を積ませる必要があったんだ。ジムの事前練習である以上当然駆動方式が違っちゃマズいから、そういう意味でもザニーじゃ駄目なわけだ」
「なるほどね〜」
「で、陸ジムの話に戻るわけだが、先ず開発にあたって、1から作ってる余裕なんて当然無いから当時宇宙軍主体で開発中だったジムの開発データを流用することになったんだが、どうせ開発データを流用してつくるんだから、当初はある程度部品共有できるようにする予定だったんだ。ただ、開発期間と製造・整備に関わる人材の技術レベル等の事情から、部品に要求される精度をジムよりもなるべく下げる必要があったから、取り敢えず先ず機体の運動性能をある程度妥協したんだ。更に、こっちも主に設計・製造・整備の難易度を下げるのが理由でもあるんだが、どうせ陸軍でしか使わないって理由で本来宇宙でも問題無く使えるはずのジムに比べて、機体の気密性と冷却機能を大幅に妥協し、宇宙用のスラスターとかも全部取っ払ったんだ。そのせいで、本来ならジムともある程度部品を共有できるようにする予定だったのが、部品共有率はせいぜい2割程度で駆動方式以外殆ど別物と言っていい機体になってしまったんだ。なんせこの機体、他のMSではおよそ考えられないことに、直前まで戦闘してたからとはいえ少しの間川に水没しただけでコックピットに浸水するくらい気密性が低かったからな。宇宙ではとても使えたもんじゃない」
「なんか今ん所殆ど欠陥しか聞いてないんだが、その機体ホントに役に立ったのか?」
「まぁ、確かに色々問題点はあるが、一応ちゃんと役には立った。そもそも、連邦陸軍はこの機体の要求仕様として、最低限ザクより強い機体を第一に求めてたから、連邦の開発陣としてもその要求に応えるべく時間が無いなりに最大限努力したんだ。ただ、さっきも言った理由から、運動性能に関してはザクとそこまで大差無いものになることが設計段階で既に想定されていた。そのフォローと手っ取り早くザクのカタログスペックを超えるため、そして何より機体強度に余裕を持たせることで設計を楽にするために、先ず装甲材をジムで使用する予定のチタン合金ではなく、初期ガンで使用されてるルナチタニウム合金………通称ガンダリウム合金にすることが提案されたんだが、このガンダリウム合金、丈夫なのは良いんだが、比較的安価な改良品が開発されたのは一年戦争が終戦してしばらく経ってからで、少なくとも一年戦争中は素材の希少性と生産・加工難易度の高さから、本来ならとても量産機に使えない位高価だったんだ。ただ、とにかく早くMSを配備したかった当時の連邦陸軍の事情もあって、各方面が渋い顔をしつつもやむなく採用したわけだ。武装に関しては残念ながら射撃武器は諸々の事情で実弾兵器になったからこの辺はザクと大差無いが、近接武器は比較的早く完成していたビームサーベルを採用出来たから、装甲の頑丈さと併せて一応カタログスペック上はザクを上回っていると言える程度の性能は確保出来てる。ただ、それでもやはりと言うべきか、陸ジムは一定の成果は上げつつもその性能に不満の声があがっていることも確かだったし、何より、装甲材の件もあってコストがかなり上がったせいでせいぜい50機くらいしか作れなくて数の面でも十分とは言えなかったから、陸軍は陸ジムのさらなる性能向上を目指したわけだ。そこでようやっと陸ガンの話になるわけだ」
「やっとか。待ちくたびれたぞ」
「スマンスマン。で、その陸ガンなんだが、最初に言った通り、コイツは陸ジムをベースに初期ガンのパーツを一部流用した機体だ。と言っても、ジェネレーターや関節とかの陸ジムがジムと部品共有してる部分を初期ガンの検査落ちした部品と入れ替えただけだから、おおよそ8割は陸ジムと同一の機体だ。したがって、当然宇宙では使えない。一応カタログスペック上は地上での初期ガンと同等の性能を発揮出来るんだが、如何せん部品の出自的に特にジェネレーター以外の部品の精度にバラつきがあるから、本当に全力稼働をした場合いつ限界がくるのかわかったもんじゃない。だから普段はリミッターをかけて性能を抑えてるから、総合的にはジム以上初期ガン以下ってところだな。あと、陸ジムと明確に違うのは、一応性能的には問題無くビームライフルが外付けの電源とか無しで使えることかな。まぁ、ビームライフル自体が一年戦争中は貴重品扱いだったから、性能的に使えるだけで戦争中は殆ど実弾装備だったんだが」
「あれ?でもジムって射撃武器はビームスプレーガンだよな?ビームライフルも似たようなもんだろうし、そんなにビームライフルって貴重だったのか?」
「あぁ、それな。まあ本編しか見てないと勘違いして当然なんだが、実のところ、ちゃんとビームスプレーガンなりビームライフルなりのビーム兵器を配備されたジムってのはかなり少数で、実際は殆どのジムは実弾メインだ。アニメ本編でそう見えるのは、当時のアニメの制作現場の都合上作業量的に書き分けれなかったからにすぎない。実際、この辺の年代を描いたOVAや外伝作品のジムは、ほぼ実弾しか持ってないし。っていうかこれ確か前にも言ったぞ?」
「そうだっけか?でもまあさっきの話の流れから察するに、ひょっとしてまた現場の問題か?」
「そのとおり。というかこれ、あくまでどの程度かは資料によるんだが、別にビームライフルに限った話じゃ無いんだよ」
「というと?」
「どうもジム本体もガワが一緒でも中身に結構な差があったらしくてな。戦争末期はとにかく数を揃えるために、カタログスペック通りの性能のものからビームサーベルを辛うじて使える以外ザクと大差無いものまでそれこそピンキリだったらしいからな。ビームを満足に使える機体だけで揃えた部隊なんて実際には殆ど無い。それに、ガンダムにしても、あの性能を当時の連邦軍の技術レベルで維持するために、たった5機しかない機体のピンハネされた部品だけで曲がりなりにも陸ガン20機分の部品を捻出出来るだけの不良品を出しながら部品の精度を維持してたくらいなんだ。これは現実でもそうなんだが、いくら技術的には完成したからといって、実際に製造を請け負う下請け業者やら戦場でメンテナンスする現場の整備士がそれにすぐ対応出来るわけではない。生産設備も新しく導入しなきゃならんし、それの扱いに関しての教育も必要だ。そもそも、普通の戦車や戦闘機を作れる工場でさえ、現実基準ならある程度技術的にも信頼のおける少数派なのに、MSなんて今迄の兵器と比べものにならないくらい複雑なモノをいきなり大量に作ろうっていうんだ。技術レベルが追い付いてるところなんて試作段階から関わってるような一部の工場とかだけだよ」
「そうなのか。っていうか、陸ガンって20機も作られてたのかよ⁉どんだけ不良をだしてたんだ⁉」
「それほどまでに基準を厳しくしないと駄目なくらい、ガンダムは限界まで切り詰めた設計をしてるんだよ。まぁ、一応陸ガンにも製造ラインはあったらしいから、流石に多少は陸ガン用に部品を作ってたとは思うけどね。ただ、連邦軍がガンダムに対してある種凶気的なまでに採算を度外視して性能を追求してただけに、当時の連邦にとってゲルググは相当に衝撃的だったんだと思う」
「あぁ、前に言ってた、『ゲルググがあと一月早ければ』ってやつ?」
「ああ。あれはジオン側の事情を加味した場合は流石に誇張表現と言わざるをえないんだが、少なくとも当時の連邦にとっては冗談でも何でもなく純然たる事実だったんだよ。なんせ、ゲルググは大量生産前提の機体のくせに連邦が相当な無茶をしてコスト度外視で作ったガンダムと装甲以外大差無い性能だったんだから。一応連邦にもゲルググに匹敵する機体として、ジムスナイパーカスタムとかがいたけど、あれもガンダムよりマシなだけで十分に非常識なレベルの検査基準と引換に性能を上げてる機体だったから生産性悪くてとても主力になんてできなかったし、かと言って性能にバラつきがあることを誤魔化してたジムでは正直荷が重い。そんな状況でもしゲルググが完全に主力になってたらと考えたら、連邦軍からしたら正に悪夢としか言いようがないからな」
「なるほどね〜」
「まぁ、そうは言ってもジムも別に悪い機体というわけではない。むしろ基礎設計の点から見ればザクやゲルググなんかよりもよっぽど優秀だ。なんせ、ただのマイナーチェンジでしかないジムⅡの時点で戦力的にはガンダム以上の性能だし、ジムⅡの改修機であるジムⅢは第一次ネオ・ジオン抗争でもギリギリ使える位の性能は持っていた。一年戦争中の機体で量産機としてここまで延命出来た機体は他に無いことからも、コイツが如何に将来を見据えて設計されたかがわかるし、設計にそれだけの余裕があったからこそ精度の低い部品でも一応動かせる程度にはできたんだろうとも思う。そもそも、一年戦争の時点でちゃんとカタログスペック通りに全部作れてたら、ゲルググより性能的に多少劣ってようが数でゴリ押し出来る程度の差でしかないし、他の機体には十分優位をとれたから、その点から見てもゲルググに単機で勝てない以外は優秀だよ」
「なんかジムってやられ役のイメージが強かったけど、案外凄かったんだな」
「まあイメージとしては、やられ役と言えばジオンのザク、連邦のジムってくらい頻繁にやられてる感じだからな。アニメの演出的に仕方ない部分もあるからなんともいえんが。っと、もうこんな時間か」
「結局長くなったな。まぁ、いつもの事だけど」
「スマンスマン、どうしても語りだすとついな。取り敢えず今日はこんくらいにして帰るか」
「今日はGBN行かねーの?」
「今日はジオラマに集中したい気分だからパス」
「そうか。じゃあな~」
「おう、また明日〜」
また何回か上手く書けず書き直しを繰り返したせいで遅くなりました。
書き直して尚お世辞にも読みやすいと言えないのが残念ではありますが、書きたい事をちゃんと伝わるようにかつ会話のていをなすように書くことの難しさを改めて痛感する毎日です。
次回はジオンとザフトの独立戦争に関する経緯なんかを書こうかと思ってるんですが、設定的に曖昧だったり不明瞭な部分も多く、独自解釈せざるをえない部分が多々あるのと、かなり賛否両論荒れそうな内容になりそうなので正直悩んでます。
取り敢えずもう一回そこらへんの設定なんかを調べなおしてモチベが保ってたら書きます。