仮面ライダームラサメ/スピンオフ 仮面ライダーヴァジュラ   作:teru@T

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お久しぶりです。

とある理由で執筆意欲が湧いてようやく続きを書くことができました。楽しんでいただければと思います。

とある理由はこれを読まれてる方はすでに読まれてると思いますので深くは語りませんが紫乃ロゼはいいですよ。


第九頁[真なる白亜の偽迷宮]

「あの女の言葉は信じるな」

 

 フィンブルと手を組んだロキは自らが拠点としているホテルのスイートルームへと戻り、3人の娘たちを集めるとそう告げた。

 当のフィンブルにはゲストルームの一室を貸し与え、結界を貼った上でそこにいるように命じてある。

 

「お言葉ですがお父様。そもそも手を組むことが危険なのでは?」

「そうだよ! あんなヤツいなくたって仮面ライダーを倒して遺産を奪うなんて私達だけで!」

「……私も2人と同じ気持ち」

「お前たちの気持ちはよく分かる……だが、あいつは遺跡の開け方を知っている。その一点だけでも利用する価値はある」

「矛盾してるよパパ! 言葉を信じるなって今言ったばっかりじゃん!」

 

 ロサードの言葉にペムべとサンゴもうなずく。

 しかし、その反論はロキの予想していた通りで「いいや矛盾してないなさ」と続ける。

 

「この一点と邪魔者(仮面ライダー)については本当のことを言っている。そもそも嘘をつく理由がない」

「根拠はなんですか?」

「それが嘘なら扉の開け方を知らない私たちと手を組んでも得がないだろう? 私たちが邪魔者を排除したら次は自分の番だ。仮に返り討ちにしても最終的に残るのは手の届かない遺産のみ」

「……確かに。そう考えると全て嘘と考えられない」

 

 まずはサンゴが納得する。年こそ3人の中で一番若い、しかしこういった理解力が最もあるのは彼女だ。

 ペムベとロサードも納得こそしないがロキが思いつきでの行動ではなく、考えてのことならとこちらもそれ以上は黙り込む。

 

「その上でアイツは名前さえも教えたくないほどの秘密主義。扉の開け方と名前に関係があると言っていたが取りに行けば何か分るものに関わっているのに教えないということはそれも嘘だろうな。だから、扉を開けること以外は嘘を言っていると考えてもいい。警戒は怠るな」

 

 ロキの言葉に一抹の不安を覚えながら3人はコクリとうなずいた。

 その様子にロキは満足気に笑みを見せるとフィンブルから話された遺産について3人へと説明を始めた。

 

 

******

 

 

 ロキたちが現れてから数日後のミシア。

 昼食時も終わり、多くの店が昼休みのために店を閉め始めた町の中を不機嫌そうにロサードが1人歩いていた。

 

「どーして私だけお留守番なのよ! 理由は聞いたけどそれでも連れてってくれてもいいのになぁ」

 

 フィンブルが欲する遺産、その在処はミシアにあるものとは別の遺跡の中にあり、なおかつ遺跡の中は迷宮になっているらしい。

 そのために内部は狭く、巨大なズメイ・ギガでは中で活動できないためロサードは1人待機を命じられてしまったのだ。

 暇を持て余し、町へと出てきたがこれから昼休憩となる店舗が多く、暇を潰すことも難しかった。

 

「んー……森で暴れれば仮面ライダー来てくれないかな……いや、勝手にそんなことしたらパパに怒られちゃうよね……うーんと……あ、あそこって」

 

 悩みながら当てもなく歩き回り、周囲を見渡すと見覚えのある看板───『Fiori di ciliegio』が目に映る。

 扉にかかる看板は『APERTO(営業中)』。イタリア語にあまり精通していないロサードであるが簡単な単語ならば理解できた。

 

「よし、まだやってた! ラッキー!」

 

 意気揚々と扉へと手を伸ばすとその扉が内側から開き、店内にいた長い黒髪で切れ長の宝石のように紅い瞳の女性───紅芭と目があった。

 お互いに人がいるとは思っていなかったため、ビックリしてその場に固まり、目をパチクリと見合わせる。

 

「えっと……何かお探しだったかしら? これから一旦閉めようと思っていたのだけれど」

「あっ! えー、えーとそういうわけじゃなくて……そ、そうだ! 前いた男の店員さんって今日はお休みですか?」

「応孥のこと? 上にいるけど……呼んでくるから中にどうぞ」

「えっ!? だ、大丈夫ですよ! ちょっと時間あって暇つぶしに寄っただけというか……この前面白かったから来ただけというか……」

「そういうことなら遠慮しないで。お店を閉めると言ってもお客さん来ないから周りに合わせてるだけだし」

 

 ロサードは紅芭に押し負け、遠慮がちに店内へと入る。

 数日しか経っていないこともあり、店内の様子に変化はなく、所狭しと本棚に本が並んでいる。

 紅芭はカウンターの奥から一席の椅子をレジ前の少し開けスペースに置くとロサードを座るように促し、階段の上へと声をかける。

 

「応孥ー。ちょっと降りてきてー。あなたにお客さんよー」

「はーい! 今コーヒー淹れてますから紅芭さーん、急ぎなら変わってくださーい」

「今行くわー。あなた、コーヒーは飲める? カプチーノが良ければそうするけれど」

「え、あー……ミルク入ってれば……」

 

 「OK」と微笑を浮かべ答えると紅芭は階段を上がり2階へと向かう。

 それとすれ違うようにして応孥が階段から下ってきてロサードの顔を見ると「あっ」と声を出した。

 

「君は……ロサードさん、だったかな?」

「は、はい! お久しぶり? です! ごめんなさい、お忙しい時に……」

「大丈夫だよ。それで今回も何か探しに来たのかい?」

「いえ、えっと……暇つぶしというか……時間ができて……私、この辺りのことまだあんまり知らないから……」

「なるほどね。そういうことならゆっくりしていきなよ」

 

 照れくさそうに頬を赤らめ、手を組むロサードに柔和な笑みを浮かべ紅芭と同じ様に座るように促す。

 2人に勧められ、諦めたのか「それじゃあ、お言葉に甘えて」と綺麗な所作で席に着く。

 応孥もカウンターの奥から普段使わない椅子を1つ取り出し、軽く埃を払うとそこに腰掛ける。

 

「今日は1人? 妹ちゃんの……サンゴちゃん? はどうしたの?」

「妹は今日、姉と父と一緒にお出かけで……お仕事の関係だから私は今回行けなくて暇になっちゃったんですよ」

「なら、15時頃まではほとんどどこもやってないし、それまでは好きにしていなよ。僕らも暇してるだけだしね」

「えへへ、ありがとうございます。助かります……ところでお兄さん、あのお姉さんとは一緒に住んでるんですか?」

 

 目を輝かせたロサードが身を乗り出す。緊張が解けたのか様子の変わったロサードに少し驚きながらも応孥はうなずく。

 

「それってやっぱり……彼女さん? それとも奥さんですか? 綺麗な人ですね、お兄さん!」

「そ、そうだね……うん、彼女は……まぁ、色々とね」

「色々……ですか?」

「そう、色々。付き合ってるとか結婚してるわけじゃないけど放っておけない人……一言でどういう関係って言いにくいんだよ。ごめんね」

 

 少女の疑問をはぐらかし、曖昧な笑みを浮かべる。

 追求をされるかと思ったがロサードはその答えに納得し、「そうなんですね!」と楽しそうに笑顔を見せる。

 

「良かったの? こんな答えで?」

「はい。言いたくないことは誰にでもありますから!」

「あぁ……そういえば。追求されないのは僕もありがたいけどね」

 

 彼女は姉妹と血が繋がっておらず、人には言えぬ複雑な関係にあったことを前回話していたことを思い出す。

 自分がそうだから他人にも不用意に踏み込むということはしないのだろう。

 そうこうしているとお盆を手に持った紅芭が2階から下りてくる。

 

「応孥、コーヒー運ぶのお願いしていいかしら? 流石にお菓子と一緒に運ぶのは重くって」

「あぁ、すみません。話し込んでしまってて。持ってきますね」

 

 応孥と入れ替わりで紅芭が手に持ったお盆をカウンターに置く。

 そこにはコーヒー用の砂糖とミルクの他に人数分の取り分け皿と複数の焼き菓子と果物が並んでいた。

 

「本当はケーキとかティラミスがあればよかったんだけど用意がなくてごめんなさいね」

「そんなお構いなく! お菓子すっごい美味しそうです! そうだ、お姉さん! 質問いいですか!」

「ん、なにかしら?」

「お兄さんとはどういったご関係ですか!?」

 

 応孥にしたのと同じ質問を紅芭に投げかける。

 予想外の、いや、久しく周囲が敬遠してされていなかったその問いに紅芭はキョトンとロサードを見つめる。

 こういった男女仲の話を好む年の頃なのだろうロサードは緊張が解け、応孥のときと同じ様に紅芭の答えに瞳を輝かせている。

 

「そうね……大切な人よ」

「お付き合いとかはされてるんですか?」

「……いいえ。一方的な想いだけ。この想いは……うん、口にできない。だって……」

 

 ───ぬるま湯の様に心地の良い今が崩れてしまうから。私の望む答えが帰ってこないと知っているから。

 言葉にできない言葉を飲み込み、「普段言わないこと言うと向こうもびっくりしちゃうでしょ?」と当たり障りのない回答を出力した。

 その答えを聞いたロサードは曖昧に笑みを取り繕う紅芭の手をがしりと掴んだ。

 

「えっ……?」

「お姉さん! それはダメです。いつも一緒にいるからとか普段言わないからとかじゃないんです」

 

 ロサードの口から出る切実な願い。

 先程と打って変わって真剣な眼差しで困惑する紅芭を見つめる。

 

「言わなくても伝わるとか驚かせるかもとかじゃないんです。次に言おうもダメなんです。次が来ないかもしれないから……」

「……ありがとう。あなたの言う通りね」

 

 紅芭は次第に表情を暗くするロサードの頭を撫でる。感謝を込めて優しく柔和な笑みを浮かべながら。

 はたと気づいたロサードは頬を紅潮させ、握りしめていた手をパッと離した。

 

「ご、ごめんなさい、急に! 初対面なのにこんなこと」

「いいのよ。背中を押して貰えて嬉しいわ……ありがとう。私は紅芭。あなたのお名前、教えて貰ってもいいかしら?」

「あ、そうですね! 私はロサードって言います」

「ロサードさんね……こういうお店だからあなたみたいな子と話す機会あまり無いの。ゆっくりお話ししましょうね」

 

 紅芭の言葉をロサードは元気よく頷く。

 話の区切りを見計らった様に応孥がポットと人数分のポットを持ち、2階から降りてきた。

 目を離したのは僅かな時間だがロサードの頭を紅芭が撫でていると初対面だと言うのに近い距離に目を丸くする。

 

「お待たせしまし……えっと仲良くなったようで良かったです……ね?」

「ありがとう。えぇ、良いこと教えてもらっちゃった」

「そんなに大したこと言ってないですよ! ほ、ほら、お兄さん! コーヒー冷めちゃいますから!」

 

 納得はできなかったが2人が楽しそうに笑い合っている姿に応孥自身も自然と笑みを浮かべ、花が増えた昼下がりの休息の支度をすませ一息をついた。

 

 

 

******

 

 

「はあっ!」

 

 白い建材で造られた石造りの狭い通路の中、シミターの振るう鎌が行く手を阻む戯我たちを切り裂いた。

 目の前の敵がいなくなった後も油断することなく通路を進み、角の奥をのぞき込み、増援が無いことを確認すると変身を解きいて来た道へ向けて合図を送る。

 

「アルジェント支部長、お待たせしました。先に進みましょう」

「ありがとう、カナリーくん。しかし、確かにこれはライダーがいないと進むのも一苦労だね」

「えぇ、ただでさえ迷いやすい構造な上、出合い頭に戯我と遭遇しやすいですからね……」

 

 巻き込まれないように隠れていたアルジェント率いるLOTの調査隊は安全を確認するとカナリーと合流し先へと進み始める。

 先頭にはアルジェントとカナリー、殿には3人の封魔司書が背後を警戒し中衛の調査隊が迷わない様にマーキングをしながら周囲の調査を行っていた。

 ここはカタンツァーロからほど近い山間の町サマリティ、その地下に拡がる地下迷宮。

 数週間前に町の地下水路にて入り口が発見されて以降、近くの支部が調査を担当していたがいくつかの理由により調査が進まず、封魔礼装を有するアルジェントたちの元へ応援の要請が届いたのだ。

 その理由の1つが戯我との遭遇だ。ここ以外に出入口があるのか数種の戯我が根城にし、徘徊しているらしくその影響で調査が進まないでいたのだ。

 そしてもう1つの理由は───

 

「……まただね。糸があったよ」

「そうなると……先ほどの部屋を右でしょうね。戻りましょう」

 

 彼らが四方に入り口のある小部屋に出たところで自身たちが入ってきた以外の3方向に赤い2本のラインが見えた。

 1本は物理的な赤い紐、もう1つはポインターからポインターへと延びる赤外線のライン、複数用意することで帰り道を見失わないように施した仕掛けがある以上、ここはすでに通過した道なのだ。

 

「本物のアリアドネの糸があればこんな何重にもやる必要ないけれど、ない以上は知恵を絞るしかないからね」

「いえ、流石です、アルジェント支部長! それに”贋作”の迷宮に本物を持ち出しては不釣り合いでしょう」

「油断はしないでくれよ。贋作とはいえ”本物の贋作”だ。……それもあのクノッソスの迷宮のね」

 

 クノッソスの迷宮、クレタ島にあったとされる迷宮でありミノス王の子にして人を喰らう牛の怪物(ミノタウロス)であったアステリオスを幽閉するために建造された遺物。

 英雄であるテセウスにより討たれている今、彼が戯我であったのかどうかは定かではないがそれに近しい存在を閉じ込めるだけの力があった遺物であることは疑う余地も無いだろう。

 あくまでもその贋作であるこの迷宮には巣食う戯我は居れど幽閉された怪物はいない。

 

「この迷宮で暮らしていた贋作職人の気がしれませんね……毎度毎度この中を行き来していたんですか?」

「どうかな? 意外と抜け道みたいなのを用意していたのかもしれないけどそれは今後の調査次第だね。もっとも、今回の目的はこの遺跡の最奥にあるその贋作職人の工房だけどね」

 

 今回の調査の目的はこの迷宮の奥にある職人の工房だった。

 発見された後の調査でこの迷宮を作った職人は紀元前の時代の人物であり、当時の大工に相当する人物であることが判明した。

 彼は”とある機械”を用い測量を行い、建築や発明を行っていたとされ、彼の死後も根城としていたこの迷宮の最奥にその機械は安置されているという。

 その機械の回収こそが今回の目的であり、アルジェントたちにはそれが何か大まかな予測がついていた。

 

「真作にしろ贋作にしろ、放置はまずいものに違いないはずだ。先を急ごう」

「えぇ。特に今は厄介なのが近くにいますしね……」

「まぁ、ロキ神はミシアの方に夢中みたいだし大丈夫だと思うけどね」

 

 会話もそこそこにアルジェントたちは迷宮を進む。

 幸いというべきか罠の類は設置されておらず迷宮そのものには危険はなかった。

 だが、代り映えのしない風景と無限に続いてるのではと思わせる複雑に入り組んだ通路は彼らの精神を摩耗させていく。

 それに加えて時折の戯我の襲撃、幸い強敵と言える戯我はいなかったがそれでも気を抜くことすら許されない。

 そんな折、ある地点を超えた時、迷宮の内部に光が灯った。

 

「っ! アルジェント支部長、これは」

「待って、カナリーくん。調べてくれ」

 

 突然の変化にレリックライザーを構えるカナリーを制止し、アルジェントが指示を飛ばして周囲を調査する。

 その結果、壁内を伝う魔力を利用した照明であろうと推論付けられた。

 

「……わざわざ通路の途中にこんなもの用意すると思うかい?」

「いえ……ゴールが近いんでしょうね」

「そうだろうね。あと少し、みんな頑張ってくれ!」

「はい! 頑張りましょう!」

 

 終わりが見えた、その事実に全員の士気が上がり再度進み始めようとしたその時。背後からこちらへ向かって走る足音が響く。

 全員が身構える中、足音の主たちがアルジェントたちの前に現れる。

 それは4匹の群青色の大型犬の化け物。

 統率された動きで襲い掛かるそれにカナリーは目を見開いた。

 

「こいつらスキュラの……! 変身!」

BRUSH-UP(ブラッシュ・アップ)!》

 

 デザートルフカラーのシミターへと変じたカナリーは一団の中を抜け応戦する封魔司書たちへ加勢する。

 敵の強さは下級戯我相当、だが完全に統制された連携はそれ以上の実力を発揮する。

 封魔司書たちの援護を受け肉薄するシミターだったが犬たちは牽制を織り交ぜながら牙や爪を突き立て応戦していた。

 

「アルジェント支部長! お気を付けください、ロキ神の手先です! まだ他にもいる可能性が……」

「……気づくのが遅い。じゃあね」

「っ!?」

 

 犬の攻撃でシミターが仰け反ったその隙を付き、身を低く屈めたランダ・ギガが脇をすり抜け駆ける。

 攻撃を捌き、支部長たちの安否を確認するために振り返るが幸いなことにランダ・ギガは調査隊すら追い抜き、奥へと向かっていた。

 

「私たちを無視するということは狙いは同じですか……!」

「カナリーくん! ここは僕らでなんとかする! ランダを追ってくれ!」

「ですが!」

「いいから! 奪われる方がまずい……!」

 

 アルジェントの指示により調査隊たちも護身用の武器を構え始める。

 迷うシミターであったが全員が動き出したことに覚悟を決め、振り返って走り出す。

 

「こちらはお任せします! 支部長!」

「そっちは任せるよ、カナリーくん!」

「グルァッ!」

「やらせない!」

 

 背を向けたシミターの狙いを察したのか、犬の1匹が爪を突き立てるがアルジェントの放った銃弾がその動きを抑え、シミターはランダ・ギガを追いかけ迷宮の奥へと向かう。

 戦闘の喧騒から離れるにつれてシミターの耳に先行するランダの駆ける音が届く。

 

「このままでは追いつけない……この狭さじゃ飛ぶのも無理、なら」

 

 腰のホルダーから2本のリキッド、プルジャンブルーと月白色の2種類を取り出し、走りながら起動しリキッドを交換する。

 

《ブリザード!》

《スネグーラチカ!》

Loading Color(ローディング・カラー)! GRADATION(グラデーション)!》

 

 告げる音声は良相性を示すグラデーションカラー。

 シミターは躊躇うことなくグリップを引き込みトリガーを弾く。

 

「カラーシフト!」

BRUSH-UP(ブラッシュ・アップ)!》

《吹き荒れる白雪の妖精! ブリザードスネグーラチカ!》

 

 

 ******

 

 

 1人先行したランダ・ギガ―――サンゴは迷宮を駆ける。

 背後から戦闘音が響き、追いかける足音は聞こえてこない。

 シミターの飛行能力もこの狭さでは機能していないだろうと考え追手はいないと考えながらも足を緩めることはなかった。

 

「(ここは昔を思い出すからすごく嫌……早く帰って本の続き……は読み切ってたんだった)」

 

 帰ったら再びあの書店に行くことをロサードにねだろうか、それとも彼女(マローネ)と再び出会った時に備えて読み返そうか、もしくはそんな事している時間はもう無くなるのかあえて無駄な思考を巡らせる事で気を紛らわせていた彼女の視界が開ける。

 ここに辿り着くまでにいくつもあった十字路となった部屋と似ていた。

 しかし、これまでの場所とは違い、道はランダの来た物を含めて3方にしか伸びておらず、残りの1面の壁には当時の工具や仕事に使っていたと思われる道具が当時の形のまま残されていた。

 

「あれだね……アンティキティラ島の機械」

 

 ランダの視線の先、それらの中央の台座に安置された辞書の様な大きさの直方体の機械。

 かつてアンティキティラ島で作られたと言われる最古のコンピューターと言われる機械がそこにはあった。

 目的であるそれにランダが手を伸ばしたその時。

 

《ブリザード!》

calling(コーリング)!》

 

 背後から響いた発動音に反応し、ランダは咄嗟にその場を跳び退く。

 直後、背後から吹き込んだ吹雪が先ほどまでいた場所ごとまとめて室内の一部を氷漬けにする。

 安堵の息を付く間もなくランダの前を白い影が高速で通り過ぎ、目の前に鎮座する機械を奪い取る。

 

「ッ! 仮面ライダー……!」

「なんとか、間に合いましたか」

 

 歯噛みするランダの前に立ちはだかったのは新たな姿となったシミター。

 氷雪を思わせる青と白の軽装、背中には消失した翼の代わりに白いロングマントを纏った戦士。

 ハイヒールの脚部の先には氷で形成されたスケートのブレードで器用に立ちランダへと対峙する。

 

「これは我々(LOT)がいただきます」

「渡さない……お父様のために」

 

 アンティキティラ島の機械を奪取したシミター、それを奪い返すため部屋の中央に陣取り構えるランダ。

 睨み合った両者の戦いが今火蓋を切る───




付録ノ八[スネグーラチカ]
ロシアの民間伝承に伝えられる雪に命を吹き込まれた少女。
ロシアにおけるサンタクロース、ジェド・マロースの孫娘であり、クリスマスの祝賀が成功するように手伝いを行っているといわれている。
夏の祭事とともに溶けて消えてしまうといわれている。
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