Q.コクコク(刻々)の実を食べたメイド長って? 作:政田正彦
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1年後ぼく「ルート分岐すればやりたい事全部やれるじゃん?」
と言う訳でね。
そしてここは二つに分かれたうちの前半の海。
前半とは言え侮ってはならない。
何故ならこの海には
更にここに加えて『三大勢力』と呼ばれる3つの強大な勢力、「海軍本部」「王下七武海」「四皇」が君臨しており、これらの理由から偉大なる航路は別名『海賊の墓場』と呼ばれる程である。
故に、この海で生き残れる者達は悪魔の実の能力であったり、卓越した身体能力であったり、あるいは優れた頭脳、あるいは並外れた運、あるいは、その全てを持つ者だけがこの海で名声を手に入れるに値するのだ。
「その点、貴方達は良い線行ってたと思うわ。悪魔の実の能力を持った船長に、卓越した肉体を持つ部下に、優れた頭脳を持つ参謀、他にも様々な面を一人一人がカバーし合うようになっていて良いと思う。けど、絶望的に運が無かったわね」
何故ならこの私に遭遇してしまったのだから。
そう言い放つ銀髪の美少女は、冷たく足元の海賊達を見下ろす。
彼女の名はサクヤ。
賞金稼ぎのサクヤである。
彼女はある時ひょんな事から悪魔の実を口にし、その結果『時間操作人間』としての異能を手に入れた少女である。
数年の間は海へ出る為、船や
……辞める際に店主に全力で止められたが、金銭以上の価値が見いだせない職場に留まっている理由など無かった。
それから彼女は、自身の能力を活かして賞金稼ぎで日銭を稼ぐ日々を送っていた。
時間を操作する能力を持つ彼女にとって、ならず者の賞金首を捕縛するのは赤子の手を捻るように簡単な事。
その結果、彼女は前半の海ではそれなりに名の知れた賞金稼ぎとなっていた。
曰く、銀髪の美しい少女である。
曰く、彼女の投げるナイフから逃れられた者は居ない。
曰く、戦闘は始まった時にはもう終わっている。
曰く、なんなら始まる前から終わっている。
曰く、というより気付いたら終わっていた。
などなど、様々な噂が噂を呼び、今では『銀髪のサクヤ』と呼ばれ海賊達の間で恐れられるようになった。『銀髪の女を見かけたらとにかく逃げろ』というのが、海賊達の間で密かに広まる程に。
その結果……。
「お、おい……聞いたか? 例の噂!」
「ああ……ここに来たんだろ? あの銀髪が……!」
「に、逃げようぜお頭! アイツはヤバすぎる!」
「ば、馬鹿野郎! ったりめーだろ! さっさとトンズラする準備しろ!」
ある者は彼女を畏れ……。
「ククク……銀髪ねえ……一体どんな奴なのか、今から楽しみだぜ」
「少しは歯ごたえがある奴だと良いんだがなあ」
「どうせ大したこたあねえだろ? 少なくとも、この俺には勝てねえ!」
またある者は彼女との闘いを求め……。
「コイツを一味に加えられたら、俺達ゃ海賊王も夢じゃねえ!!」
「海軍に彼女をスカウトするだと? うーむ……確かに彼女の能力があれば海賊達への抑止力になる、か……一度検討してみよう」
「へえ、そんな奴が居るのか……どれ、面白い奴だったら仲間に誘ってみようかね」
そしてある者は彼女の力を欲した。
しかし肝心の彼女はと言うと……。
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「今後どうしようかしら」
私は人間である。
名前はサクヤ。
あれから数年が経ち、既に十二分に金は稼いで、一人で使うには少し広いぐらいの船に、文明的な生活も手に入った、この海域で生き残るための術も本で学び、これで余程の事が無ければ海でも困る事は無い、そしてその身体にはほぼ無敵の能力。
いつかは完全で瀟洒、という二つ名にも届くかもしれない。
……さて、ではどうしよう。
私は、今後の身の振り方について悩んでいた。
なんならいっそ暇ですらあった。
海賊として活動している訳ではないので、海軍からは腕の良い賞金稼ぎとして顔が知られているものの、別に犯罪を犯している訳ではないのであちらから何か言われる事はほとんどない。
一度スカウトされたこともあるがその程度のモノである。
以前は、海軍なんてゴメンだと考えていたが、安定した収入と衣食住が保証された環境というのも良いものだと思うようにもなった。
一方で海賊と言うのも、気の合う仲間さえいれば悪くないと思うようになった。
……というか、海軍とか海賊とか関係無く……そろそろぼっちが辛くなってきたのだ。
考えてもみて欲しい、今までは確かに一人で生きるのに必死であれこれ努力していた訳だが、いざ安定した暮らしが手に入ったその瞬間、振り返っても誰も居ないという孤独感を。
この大きな海に、船の上で一人きり。
ぽつんと浮かんだその場所で、海賊でも居ないかと眼を凝らすも、そうそうこの広い海で遭遇するばかりではなく、一週間に一度会えば良い方だ。彼らにとっては良い方どころかたまったものでは無いだろうが。
なんなら最近私の事が噂になっているらしく、弱い海賊は私の姿を望遠鏡か何かで確認すると一目散に逃げてしまう。
時間を止めて追いかければいいじゃないかって?
残念ながら、そういう訳にもいかない理由がある。
それは私が手にした十六夜咲夜の能力が、あくまでも悪魔の実の能力に過ぎないという事実。
停止した世界の中でも、私は普通に物に干渉する事が出来るが、それは逆に、水や海にも干渉するという事。つまり、海に落ちたら普通に溺れるという悪魔の実の能力者特有の弱点が発覚したのだ。
そして、世界が停止すると当然船も停止する。風も波も海流もピタリと止まるから、推進力が失われるのだ。
それこそ
ロープでも投げて引っ掛けて、停止した世界の中で手繰り寄せて船を乗り付ければあるいは、と考えたこともあるけど、腕力が足りなくて投げても届かない事から諦めた。
ナイフを目一杯投げて沈没させると賞金が手に入らないかもしれないし、難しい。
なので今は、上陸している海賊を主に狙っているというのが現状だ。
弱点と言えば、他にもある。
出来るかもしれないと考えていた「他人の時間を進めて老人にしてしまう」という事は不可能であるという事が分かった。
一度それとなく試そうとしてみたのだが、生命あるものの時間は、操作できてもかなり制限がありそうという事が判明したのだ。
植物等の成長を早めたりはたかだか数週間や数か月、長くても数年単位の時間操作で済む為に可能だったが、人の成長は数十年。
老い、というレベルにまで成長させるのにはかなりの時間と集中力を必要とする。
端的に言えば、身体の何処かに触れっぱなしで一晩中能力を行使してようやっと無力化できるかどうか、といった所である。
相手の年齢にもよるだろうが……実用的でないのは言うまでもない。
では停止した世界の中でやればいいではないか、と思うかもしれないが、それもまた不可能である。
というのも、今の私の力では、同時に二つ以上の時を操る事が出来ないのだ。
時間停止しながら他の物だけ時間を早くする、といった事も出来ないし、逆に、指定した範囲内だけ時間停止して、自分だけ動くという事も出来ない。
感覚的に説明すると、右を向きながら左を向くぐらい難しく、ほぼ不可能。
そもそも時間停止の原理が「自身が無質量で超スピードで動く事に過ぎない」というのが大きい。
早めたり遅くしたりもその応用に過ぎない為、器用な真似は出来ないというのが実情だ。まあ、この世界の事だからもしかしたらいつか能力が覚醒して出来るようになるかもしれないが。
私が能力を開発すればあるいは、と思わないでも無いが……能力を強くするってどうやるのよ? いっぱい使えば良いのかしら?
後は、元から分かっていた事だけど、時間を戻して起こった事を無かった事には出来ないって事。
まとめると、『停止した世界でも海には落ちる』『生命ある者の時は操作できない』『同時に二つ以上の操作は出来ない』『範囲を決めて止めるといった器用な操作は出来ない』と言ったものだ。
……後は、純粋な攻撃力不足とか。
海楼石で出来た武器でもあれば、能力者に対しても優位に動ける……かもしれない。触れた途端私の能力も解除されたら意味無いけど、グローブや布越しなら平気なら、検討する価値はある。
……なんて長々と振り返ってみたは良いものの、やはりやる事が無い。
やる事が無いというのは、意外と致命的に精神に来る。
趣味に釣りでも始めようかと思って実際に手を出したら案外ハマッてしまったぐらいには。
そもそもの話、私にはこの世界で生きている彼らほど、目標とか夢とか、生きて行くだけに必要不可欠な『熱』が足りないように思える。
海賊王に俺はなるとか、世界一の剣豪にとか、オールブルーを見つけたいだとか、世界地図、偉大な海の男……。
どれも私にとっては輝かしいと同時に、興味も無い目標であった。
賞金稼ぎになったのだって金が欲しかったからであって、その金だって、自身の生活の質を向上させるために必要だったに過ぎない。
しかし今後生きて行くにあたってずっとこのままでいいのか、と思うのだ。
彼らのように、違う目的であっても、同じく夢を叶える仲間同士で結束し、同じ釜の飯を食う、そんな、友達や仲間が居たら、少しは変わるのかもしれない。
ともかく、今のままじゃダメだ。
私はもっと具体的に目標を定めるべきだと考え、いくつか候補を考えた。
まず一つは『完全で瀟洒なメイドとしての完成』
これは、私が私を形作るのに、憧れと言う形で夢見ていた物だ。
十六夜咲夜みたいに、信頼できる主に仕えるメイドになってみたい。
これが出来たらどんなに良いだろうと私は本気で思っている。
そして二つは『原作への介入及び鑑賞』
これは、この世界に生まれ落ちた以上は、この世界を、ワンピースを知る誰もが思う事ではないだろうか。
例えばエースを救いたいだとか、ルフィの隣で冒険の手助けになりたいとか、原作で起こったあらゆる不幸をこの手で払ってあげたいと思うのは、読者なら自然な事では無いだろうか。
だからこそ、その理不尽な不幸を拳で殴り倒す彼らの姿に興奮と感動を覚えるのだから。
そしてその興奮と感動を目の前で体感したいと思うのもまた自然な事だと私は思う。
他にも、謎の第三者ムーブで『ドン!』『!?』ってやってみたかったり。
海賊団に入っておとぼけ天然キャラ(戦ったら一番強い)みたいなムーブしたかったり。
海軍に入って正義の為にその身を捧げたり捧げなかったり。
やるからには、それこそ命を懸ける覚悟が必要だ。
そして今の私にはそれが無い事も自覚している。
だが、だからこそ、命を懸けて何かを成そうと思う程の『熱』が欲しい、だから今、私は一歩踏み出す必要があるのだ。
そうして考えて考えて考えて、私は……。
次回からルート分岐、分岐後は3~5話ぐらいかな?という構想で書いていきます。
ルートによっては時系列がシャボンディ諸島で再会した後だったり前だったり、グランドライン突入前だったり後だったりするかもしれません。
これから先色々戦い方とか模索していくつもりなんですけど「頭悪いなお前wこう戦えばいいじゃんw」とかあったら遠慮せず教えてください。
あと1話で海賊船で盗んだ水で身体を洗うシーン、よく考えたら全身が濡れたらダメなんじゃね?(にわか)と思ったんでこっそり「少しずつ洗った」っていうふうに書き換えたりなどしてます。姑息だねえ……。感想で「別にいんじゃね」との事なので無かった事にしました。
(2023/04/13)追記
時間停止中や加速中の物理法則に関してですが、これ系の感想ばっちくそに来てたけど(停止してんだから光とか空気も止まってるハズだ~から始まるうんぬんかんぬんみたいなやつね)少年漫画の冒険バトル漫画の世界なのと、原作(東方)でも「その辺の理屈はこうこうこうなってますよ」という具体的な解説が(調べた限りでは)無い為、光がどうのとか熱がどうのといった細かい理屈は当作品では「悪魔の実の力だから」「十六夜咲夜だから」でゴリ押します。すみません。
この世界は『心が燃え滾っているから』という理由で足とか腕が燃えたりする世界だし、これくらい許し亭許して……。
(2023/04/20)
感想にて、植物は成長させられるのに人は出来ないのは納得がいかないとの事なので、植物と人間では成長速度に差があり、無力化するまで老化させるには集中力と時間を要する(時間停止中に二つ以上の操作は出来ない為停止中に老化させることも出来ない)と言う事にしました。